2018(04)
■新たに作る僕らのスタイル
++++
「あ、このセーターいいな。合わせてみよう。うん、やっぱりいい感じだ。えっと、次は」
「え~と、朝霞クン?」
「ちょっと待て、次はこのパンツを……あー、柄が違和感ないってすげえなお前やっぱ」
とうとう始まった1泊2日の朝霞クンとの旅行。最初の行程はアウトレットでの買い物。アウトレットパークは向島の周りにならちょこちょこあるんだけど、向島には確かなかったと思うんだよね。少なくとも星港近郊にはなかったかと。
朝霞クンが日頃から服のコーディネートとかには気を遣う方だとは知ってたけど、ここまでテンションが上がるとは思わなかったワケで。朝霞クンは行く店行く店でどの服の何がどうオシャレでいいなあと興奮気味。
「ねえ朝霞クン、さっきから俺に合わせてばっかりで自分の服は見てる?」
「俺は最終的にカーディガンに落ち着くからいいんだよ。それより俺はお前が何をどう着こなせるかの方に興味ある」
「まあ、朝霞クンが楽しいならいいんだけど。俺も気に入ったら朝霞クンのコーディネートごとマネキン買いするよ。自分じゃなかなか出来ないし」
チェック柄のパンツを色違いでどっちが好き、と俺に訊く朝霞クンだ。そんな風に、さっきから俺の服ばっかり見てるんだよね。確かに部活の現役の頃から俺のクローゼットに興味があるみたいなことは言ってたけど。
俺はどうやらファッションセンスが残念らしい。選ぶアイテムの趣味はむしろいいそうだけど、それを組み合わせるコーディネート能力がとにかく残念とは朝霞クン談。だからこうしてマネキン役になるのもむしろ勉強になっていいんだけど。
「柄物に違和感がないっつってもやっぱ賑やかな柄は前の方が似合ってたな」
「今は髪色からして違うからね」
「いや、今は今で前より落ち着いた感じのコーディネートがめっちゃ似合うようになってるからやっぱ元の素材がいいんだよ。クソッ、これだからスタイルのいいイケメンは」
「お褒めにあずかり光栄です」
「自分のコーディネートばっかりやるより、自分じゃ出来ないのをやるのが楽しいんだ。そういうことだからもうちょっと付き合ってくれ」
こういう落ち着いたチェック柄のパンツが1枚あると冬は便利なんだと朝霞クンが熱弁している。1枚持っとけと。ただ、素材的に秋冬以外は履けないぞ、と注意事項を添えて。緑のチェック柄のパンツは70%オフで2900円。上には無地のセーターでも着ておけばそれらしくなるらしい。
「俺このパンツ買おう。セーターの他には何が合いそうかな」
「白シャツにカーディガンとか……ってそれは俺のスタイルだ。でも、割と何でもイケる。色と柄さえ間違えなきゃな」
「俺も朝霞クンスタイルで行ってみようかな」
「マジかよ」
「部活も引退したし、学内で顔を合わせることも少なくなったからね。放送部の人に経済はそういないし。つばちゃんには茶化されそうだけどね」
「お前ならかわすのも楽勝だろ」
「まあね」
今こそステージスターでない顔で歩いているけど、ステージスターであるべき相手の前では瞬時に顔をそれ仕様に戻している。あれはあれで俺のもうひとつの顔ではあるけど、やっぱり、ずっとだとちょっと疲れるよね。適度に息抜きは必要。
で、髪型もステージスター仕様でなくなったし、前よりシンプルな服だって多分似合うと思うんだ。それこそ朝霞クンみたいなカーディガンスタイルだって。脱ぎ着しやすい羽織みたいな物を1枚持っとくと便利だもんね。パーカーでもいいけど、カーデな気分だ。
「ところで、朝霞クンは何が欲しいとかっていうのはあるの?」
「時計が欲しいなと思ってる」
「時計? 目覚まし時計とか?」
「いや、腕時計だ。今も時計自体は持ってるけどチャチだし。就活でも使えて普段使いも出来るような感じのが1本欲しい」
「え、こんな時まで就活のことなんて考えてるの」
「むしろこんな時じゃないと。これでレポートを書き始めたらそんなことは考えられなくなるから」
「あ、そうだよねえ。そしたら次は時計屋さん行く?」
「順番に回りながらでいいんじゃないか? どこ行ったかわかんなくなるし」
「じゃ、順番に回ろっか」
順番に回っていく中で気になる店があったらその都度入るという形式でいくことに。服や時計の他にキッチン用品や食品の店もあるみたいだし、俺は靴とかスポーツ用品も気になる。ショップガイドによれば、雑貨店もちょいちょいあるみたい。
「山口、そう言えば飯はどうする」
「ああ、そうだね。まだちょっと早いけど、見ながら考えよっか。でもせっかくなら星港になさそうな感じの店があればいいね」
「そうだな。あっ、後でチョコレート屋に行きたい」
「いいよ。そんなにいい店なの?」
「いや、知らないんだ。でも、実は今日伏見からも遊びに誘われてて、そっち断ってるから一応お詫びのお土産をだな」
「ふーん。伏見サンてあの子でしょ? 映研の」
「ああ」
「朝霞クンも隅に置けないデショデショ~」
「何でそこでステージスター仕様なんだよ」
「べぇっつにぃ~」
多分俺の方が先に言ってたからだろうけど、朝霞クンが俺と遊んでくれて本当に嬉しい。だって、言っちゃえばクリスマスイブだし。女の子を優先する人はするだろうからね。映研のあの子には悪いけど、今日に懸けるガチ度は俺の方が上ってことでいい?
「寿司か小籠包かって感じだな、今の気分だと」
「あっ、お寿司いいね。回るヤツだよね?」
「オール100円とかじゃない、回るけど高級な寿司だな」
「たまに贅沢しても罰は当たらないよ」
end.
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洋朝イブデート、ショッピング編! 最近始まったこのイブデートの件でしたが、大体夜だったのでお昼は新鮮ですね。
朝霞P的にはどう転んでもカーデに落ち着く自分よりも洋平ちゃんのコーディネートを作る方が楽しいようですね。スタイルのいいイケメンだから
朝霞P、ここでお金を使い過ぎたらこの先の生活が大変なことになるぞ…! また働きに出なければ。
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「あ、このセーターいいな。合わせてみよう。うん、やっぱりいい感じだ。えっと、次は」
「え~と、朝霞クン?」
「ちょっと待て、次はこのパンツを……あー、柄が違和感ないってすげえなお前やっぱ」
とうとう始まった1泊2日の朝霞クンとの旅行。最初の行程はアウトレットでの買い物。アウトレットパークは向島の周りにならちょこちょこあるんだけど、向島には確かなかったと思うんだよね。少なくとも星港近郊にはなかったかと。
朝霞クンが日頃から服のコーディネートとかには気を遣う方だとは知ってたけど、ここまでテンションが上がるとは思わなかったワケで。朝霞クンは行く店行く店でどの服の何がどうオシャレでいいなあと興奮気味。
「ねえ朝霞クン、さっきから俺に合わせてばっかりで自分の服は見てる?」
「俺は最終的にカーディガンに落ち着くからいいんだよ。それより俺はお前が何をどう着こなせるかの方に興味ある」
「まあ、朝霞クンが楽しいならいいんだけど。俺も気に入ったら朝霞クンのコーディネートごとマネキン買いするよ。自分じゃなかなか出来ないし」
チェック柄のパンツを色違いでどっちが好き、と俺に訊く朝霞クンだ。そんな風に、さっきから俺の服ばっかり見てるんだよね。確かに部活の現役の頃から俺のクローゼットに興味があるみたいなことは言ってたけど。
俺はどうやらファッションセンスが残念らしい。選ぶアイテムの趣味はむしろいいそうだけど、それを組み合わせるコーディネート能力がとにかく残念とは朝霞クン談。だからこうしてマネキン役になるのもむしろ勉強になっていいんだけど。
「柄物に違和感がないっつってもやっぱ賑やかな柄は前の方が似合ってたな」
「今は髪色からして違うからね」
「いや、今は今で前より落ち着いた感じのコーディネートがめっちゃ似合うようになってるからやっぱ元の素材がいいんだよ。クソッ、これだからスタイルのいいイケメンは」
「お褒めにあずかり光栄です」
「自分のコーディネートばっかりやるより、自分じゃ出来ないのをやるのが楽しいんだ。そういうことだからもうちょっと付き合ってくれ」
こういう落ち着いたチェック柄のパンツが1枚あると冬は便利なんだと朝霞クンが熱弁している。1枚持っとけと。ただ、素材的に秋冬以外は履けないぞ、と注意事項を添えて。緑のチェック柄のパンツは70%オフで2900円。上には無地のセーターでも着ておけばそれらしくなるらしい。
「俺このパンツ買おう。セーターの他には何が合いそうかな」
「白シャツにカーディガンとか……ってそれは俺のスタイルだ。でも、割と何でもイケる。色と柄さえ間違えなきゃな」
「俺も朝霞クンスタイルで行ってみようかな」
「マジかよ」
「部活も引退したし、学内で顔を合わせることも少なくなったからね。放送部の人に経済はそういないし。つばちゃんには茶化されそうだけどね」
「お前ならかわすのも楽勝だろ」
「まあね」
今こそステージスターでない顔で歩いているけど、ステージスターであるべき相手の前では瞬時に顔をそれ仕様に戻している。あれはあれで俺のもうひとつの顔ではあるけど、やっぱり、ずっとだとちょっと疲れるよね。適度に息抜きは必要。
で、髪型もステージスター仕様でなくなったし、前よりシンプルな服だって多分似合うと思うんだ。それこそ朝霞クンみたいなカーディガンスタイルだって。脱ぎ着しやすい羽織みたいな物を1枚持っとくと便利だもんね。パーカーでもいいけど、カーデな気分だ。
「ところで、朝霞クンは何が欲しいとかっていうのはあるの?」
「時計が欲しいなと思ってる」
「時計? 目覚まし時計とか?」
「いや、腕時計だ。今も時計自体は持ってるけどチャチだし。就活でも使えて普段使いも出来るような感じのが1本欲しい」
「え、こんな時まで就活のことなんて考えてるの」
「むしろこんな時じゃないと。これでレポートを書き始めたらそんなことは考えられなくなるから」
「あ、そうだよねえ。そしたら次は時計屋さん行く?」
「順番に回りながらでいいんじゃないか? どこ行ったかわかんなくなるし」
「じゃ、順番に回ろっか」
順番に回っていく中で気になる店があったらその都度入るという形式でいくことに。服や時計の他にキッチン用品や食品の店もあるみたいだし、俺は靴とかスポーツ用品も気になる。ショップガイドによれば、雑貨店もちょいちょいあるみたい。
「山口、そう言えば飯はどうする」
「ああ、そうだね。まだちょっと早いけど、見ながら考えよっか。でもせっかくなら星港になさそうな感じの店があればいいね」
「そうだな。あっ、後でチョコレート屋に行きたい」
「いいよ。そんなにいい店なの?」
「いや、知らないんだ。でも、実は今日伏見からも遊びに誘われてて、そっち断ってるから一応お詫びのお土産をだな」
「ふーん。伏見サンてあの子でしょ? 映研の」
「ああ」
「朝霞クンも隅に置けないデショデショ~」
「何でそこでステージスター仕様なんだよ」
「べぇっつにぃ~」
多分俺の方が先に言ってたからだろうけど、朝霞クンが俺と遊んでくれて本当に嬉しい。だって、言っちゃえばクリスマスイブだし。女の子を優先する人はするだろうからね。映研のあの子には悪いけど、今日に懸けるガチ度は俺の方が上ってことでいい?
「寿司か小籠包かって感じだな、今の気分だと」
「あっ、お寿司いいね。回るヤツだよね?」
「オール100円とかじゃない、回るけど高級な寿司だな」
「たまに贅沢しても罰は当たらないよ」
end.
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洋朝イブデート、ショッピング編! 最近始まったこのイブデートの件でしたが、大体夜だったのでお昼は新鮮ですね。
朝霞P的にはどう転んでもカーデに落ち着く自分よりも洋平ちゃんのコーディネートを作る方が楽しいようですね。スタイルのいいイケメンだから
朝霞P、ここでお金を使い過ぎたらこの先の生活が大変なことになるぞ…! また働きに出なければ。
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