2018(04)
■露骨だろうが姑息だろうが
++++
「うっわ~、お前マジで露骨だわ~」
「うるせえ。露骨だろうが姑息だろうが出席は出席だ」
「さあみんな、クリスマスパーティーを始めるよ」
年内最終日の安部ゼミでは、クリスマスパーティーが開かれることになっていた。今回のドレスコードはクリスマスっぽい小道具(サンタ帽やトナカイの角)を用意することと、赤もしくは緑といったクリスマスカラーの服で来ることだ。
俺は緑のダウンジャケットにトナカイの角というコーディネートでドレスコードを無事にパスし、遅刻をすることもなくパーティーの始まる14時40分に間に合った。それをぶつくさ言ってくる飯野とかいうアホサンタだ。
七夕祭りだろうとハロウィンパーティーだろうと、クリスマスパーティーだろうと安部ゼミのパーティーの中身は変わりない。お茶会を都合良く季節に合わせて言い換えただけだ。ただ、クリパは予算1000円でプレゼントを用意しなければならない。
去年はビンゴ大会をやって、ビンゴになった順番に好きなプレゼントをもらっていくという感じだった。俺はそれでハチミツをもらって、しばらくはホットミルクを作るときに砂糖の代用品として使っていた。きっと今年もそんな感じだろう。
「うわっ、何かすげーかりんとう回ってきた! これ絶対お前だろ高崎! 賄賂があからさまなんだよ!」
「賄賂じゃなくて、安部ちゃんが好きな物を買ってきた結果だ。大体てめェだって毎回高いお茶買ってきてやがるクセに」
「お茶会なのにお茶がしょぼかったら残念だろうがよ! 緑茶は山羽人の心だぞ!」
「アンタらが何やっても怪しく映るのは日頃の言動でしょ?」
「ンだと倉橋ィ!」
倉橋はやたら俺を目の敵にしてくる。飯野によれば、来ないクセにレポートだけ高い評価をされるのが気に入らないらしい。悔しければ俺よりいいモンをてめェが書けばいいだけの話だし、評価をするのは安部ちゃんなんだから文句ならそっちに言えという話だ。そもそも、レポートがS級でもゼミの成績自体は出席がないからBだ。
「言ってろ。俺は最低限の出席さえ確保出来りゃまず余裕なんだよ。コイツと一緒にすんな」
「高崎てっめぇ~!」
「って言うか出席ボーナスがなきゃ落とすとか論外だわ」
「そーだそーだ! 俺のボーナスすらガメてく癖に!」
「お前の出席ボーナスを分け合ってるのはレポートを手伝ってるからだけど、もうレポートは手伝わなくていいっつーことだな」
「そんな殺生な~、冗談ですやん高崎さま~」
「その似非方言お前どこ人だよ」
「コテコテの山羽人ですやん」
みんなが持ち寄ったお菓子などが回ったところで、改めてパーティーが始まる。と言うかお茶会が。何気にこのお茶会では向こう1週間の間食が集まる。それだけゼミ生はちゃんと用意をしてきているらしい。つか俺だけじゃねえじゃねえかよ。
「僕からのプレゼントは毎度お馴染み出席1回分です」
壁に映し出されたエクセルは、縦にゼミ生の名前が、横には日付が並んでいる。そこに丸が記されて、いつ出席したかがわかるようになっているのだ。丸が1回分、三角が45分以内の遅刻、空欄は欠席という具合に。俺の欄は圧倒的に三角と空欄が多いし、飯野の欄は丸で埋まっている。
安部ちゃんが今日の欄に二重丸をひとつ出して、それを縦に全員分コピーしていく。二重丸は出席ボーナスのある日に使われることの多い記号だ。1回分ボーナスだから、今日の出席が2回分にカウントされる。俺にとってはこれ以上ない制度なのだ。パーティー最高。
「よーしそれじゃあビンゴやるぞー! 高崎、俺の穴開けといて」
「おう」
そのまま安部ちゃんのパソコンを使って始めるビンゴ大会。わざわざ玉をガラポン方式で回さなくても、ビンゴプログラムというのがあってそれを使う。画面に数字が映し出されて、先に出ていた数字も確認しながらやれるのが便利だ。
真ん中のフリー枠を開けて、飯野の第一声を待つ。ちなみに、飯野がこういう行事で幹事っぽい役割に就くのはポイント稼ぎの一環だ。1ばーんと声が挙がれば、2枚の紙からそれを探す。あっ、あった。そしてこれを繰り返す。
「飯野お前リーチだぞ」
「マジか! あっ、リーチになった奴起立なー! 次ー、33番ー!」
「俺もリーチだ」
「マジかよ。高崎お前何番待ち?」
「72」
「じゃあ徹底的に避けるわ」
「てめェの意志で避けれんのかよ」
まあ、得てしてこういうのはリーチになってからが長い。俺も飯野もダブルリーチだのトリプルリーチにはなるものの、なかなかビンゴにはならない。その間に、何人もがビンゴと声高らかに宣言して、プレゼントを持って行った。
「えー、次。えいっ! 72!」
「よし来たビンゴ!」
「お前マジかよ!」
「じゃ、お先」
持ち帰りやすいように小さめの袋を選ぶ。でも思ったより重いな。みんな開いて中身を見てるし、俺も開けてみよう。
「あっ、去年と同じハチミツだ。つかこれ誰だ?」
「私です」
「大場か。これ美味かったんだよな。サンキュ」
「高崎! 俺の開けてるか!?」
「あ、忘れてた。何番だ?」
「55!」
「ねえわ」
「っざけんな」
今年も美味いハチミツをもらえたし、出席は2回分だし、1週間分の間食も確保できたし言うことねえじゃねえか。パーティー最高。あとは通常回でどれだけ頑張れるかだな。レポートは問題ないワケだし。
end.
++++
安部ゼミのクリスマスパーティーの時間です。問題児×2は今回もぎゃあぎゃあとやかましいです。
未結嬢に対する高崎の言い分としては、評価する方に文句を言えということですね。
高崎の日課になっているのがホットミルクですが、ハチミツが入ると確かに美味しそう。ヨーグルトにかけてもよさそうね
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「うっわ~、お前マジで露骨だわ~」
「うるせえ。露骨だろうが姑息だろうが出席は出席だ」
「さあみんな、クリスマスパーティーを始めるよ」
年内最終日の安部ゼミでは、クリスマスパーティーが開かれることになっていた。今回のドレスコードはクリスマスっぽい小道具(サンタ帽やトナカイの角)を用意することと、赤もしくは緑といったクリスマスカラーの服で来ることだ。
俺は緑のダウンジャケットにトナカイの角というコーディネートでドレスコードを無事にパスし、遅刻をすることもなくパーティーの始まる14時40分に間に合った。それをぶつくさ言ってくる飯野とかいうアホサンタだ。
七夕祭りだろうとハロウィンパーティーだろうと、クリスマスパーティーだろうと安部ゼミのパーティーの中身は変わりない。お茶会を都合良く季節に合わせて言い換えただけだ。ただ、クリパは予算1000円でプレゼントを用意しなければならない。
去年はビンゴ大会をやって、ビンゴになった順番に好きなプレゼントをもらっていくという感じだった。俺はそれでハチミツをもらって、しばらくはホットミルクを作るときに砂糖の代用品として使っていた。きっと今年もそんな感じだろう。
「うわっ、何かすげーかりんとう回ってきた! これ絶対お前だろ高崎! 賄賂があからさまなんだよ!」
「賄賂じゃなくて、安部ちゃんが好きな物を買ってきた結果だ。大体てめェだって毎回高いお茶買ってきてやがるクセに」
「お茶会なのにお茶がしょぼかったら残念だろうがよ! 緑茶は山羽人の心だぞ!」
「アンタらが何やっても怪しく映るのは日頃の言動でしょ?」
「ンだと倉橋ィ!」
倉橋はやたら俺を目の敵にしてくる。飯野によれば、来ないクセにレポートだけ高い評価をされるのが気に入らないらしい。悔しければ俺よりいいモンをてめェが書けばいいだけの話だし、評価をするのは安部ちゃんなんだから文句ならそっちに言えという話だ。そもそも、レポートがS級でもゼミの成績自体は出席がないからBだ。
「言ってろ。俺は最低限の出席さえ確保出来りゃまず余裕なんだよ。コイツと一緒にすんな」
「高崎てっめぇ~!」
「って言うか出席ボーナスがなきゃ落とすとか論外だわ」
「そーだそーだ! 俺のボーナスすらガメてく癖に!」
「お前の出席ボーナスを分け合ってるのはレポートを手伝ってるからだけど、もうレポートは手伝わなくていいっつーことだな」
「そんな殺生な~、冗談ですやん高崎さま~」
「その似非方言お前どこ人だよ」
「コテコテの山羽人ですやん」
みんなが持ち寄ったお菓子などが回ったところで、改めてパーティーが始まる。と言うかお茶会が。何気にこのお茶会では向こう1週間の間食が集まる。それだけゼミ生はちゃんと用意をしてきているらしい。つか俺だけじゃねえじゃねえかよ。
「僕からのプレゼントは毎度お馴染み出席1回分です」
壁に映し出されたエクセルは、縦にゼミ生の名前が、横には日付が並んでいる。そこに丸が記されて、いつ出席したかがわかるようになっているのだ。丸が1回分、三角が45分以内の遅刻、空欄は欠席という具合に。俺の欄は圧倒的に三角と空欄が多いし、飯野の欄は丸で埋まっている。
安部ちゃんが今日の欄に二重丸をひとつ出して、それを縦に全員分コピーしていく。二重丸は出席ボーナスのある日に使われることの多い記号だ。1回分ボーナスだから、今日の出席が2回分にカウントされる。俺にとってはこれ以上ない制度なのだ。パーティー最高。
「よーしそれじゃあビンゴやるぞー! 高崎、俺の穴開けといて」
「おう」
そのまま安部ちゃんのパソコンを使って始めるビンゴ大会。わざわざ玉をガラポン方式で回さなくても、ビンゴプログラムというのがあってそれを使う。画面に数字が映し出されて、先に出ていた数字も確認しながらやれるのが便利だ。
真ん中のフリー枠を開けて、飯野の第一声を待つ。ちなみに、飯野がこういう行事で幹事っぽい役割に就くのはポイント稼ぎの一環だ。1ばーんと声が挙がれば、2枚の紙からそれを探す。あっ、あった。そしてこれを繰り返す。
「飯野お前リーチだぞ」
「マジか! あっ、リーチになった奴起立なー! 次ー、33番ー!」
「俺もリーチだ」
「マジかよ。高崎お前何番待ち?」
「72」
「じゃあ徹底的に避けるわ」
「てめェの意志で避けれんのかよ」
まあ、得てしてこういうのはリーチになってからが長い。俺も飯野もダブルリーチだのトリプルリーチにはなるものの、なかなかビンゴにはならない。その間に、何人もがビンゴと声高らかに宣言して、プレゼントを持って行った。
「えー、次。えいっ! 72!」
「よし来たビンゴ!」
「お前マジかよ!」
「じゃ、お先」
持ち帰りやすいように小さめの袋を選ぶ。でも思ったより重いな。みんな開いて中身を見てるし、俺も開けてみよう。
「あっ、去年と同じハチミツだ。つかこれ誰だ?」
「私です」
「大場か。これ美味かったんだよな。サンキュ」
「高崎! 俺の開けてるか!?」
「あ、忘れてた。何番だ?」
「55!」
「ねえわ」
「っざけんな」
今年も美味いハチミツをもらえたし、出席は2回分だし、1週間分の間食も確保できたし言うことねえじゃねえか。パーティー最高。あとは通常回でどれだけ頑張れるかだな。レポートは問題ないワケだし。
end.
++++
安部ゼミのクリスマスパーティーの時間です。問題児×2は今回もぎゃあぎゃあとやかましいです。
未結嬢に対する高崎の言い分としては、評価する方に文句を言えということですね。
高崎の日課になっているのがホットミルクですが、ハチミツが入ると確かに美味しそう。ヨーグルトにかけてもよさそうね
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