2018(03)
■タナボタ・エレガント
++++
「はー……本当に贅沢」
「……本当に……」
見たこともないような料理を来たこともないような場所で優雅に食べる日曜の昼。ホテルのランチバイキングなんて、よっぽどのことがないと来ることがないし、一生来ないものだと思ってたから本当にビックリしてる。
それというのも、こないだ美奈と圭斗と一緒にダーツをした日のこと。石川と美奈が片想いをしている彼……確かリンさんて呼ばれてたかな。その彼らと漫喫でバッタリ会ったんだ。せっかくだからと一戦交えてから5人で食事をして。
彼が唐突に、ランチバイキングのペア招待券があるから誰か行かないかと切り出したんだ。その券は日付が指定されていて、彼はどうしても外せない用事があって行けないからと譲渡先を探しているようだった。
「でも、本当にうちがもらっちゃって良かったのかな」
「他に譲る宛てもなかっただろうし、問題ない……それに、誕生日なんだから……」
「誕生日はたまたまじゃん。まあ、何やかんや美味しい料理をうまうましてたワケですが」
「それこそ、ペアの相手……私で、良かった…?」
「美奈が良かったです。調べてたんだよ、あの後。調べてたらあ~もうこんなトコ敷居が高いし、ご飯もオシャレだからやっぱそういうのを知ってそうな美奈にいてもらいたいと思って」
「……相手に選んでもらえて、光栄です……」
美奈に来てもらって本当に良かったなと思うのは、所謂スーパーフードというものをふんだんに使った料理が並んでいたんだけど、何がどういうものなのかっていう知識はうちには皆無だから。そういうのに詳しい美奈に教えてもらいながら未知の体験をしてましたよね。
今は食事も一段落してデザートの時間。紅茶とケーキでアフタヌーンティーって感じ。美奈は甘いものが食べられないけど、クリームチーズが乗ったクラッカーなんてのもあってそれを摘まんでる。クラッカーもいいな、おいしそう。
「ところで、彼はどうしてこんなところの券を持ってたの?」
「……確か、バイト先の同僚の人からもらった、って……」
「へえ。巡り巡ってきたんだ」
ケーキがうまー。お皿の上には3種類のケーキが乗ってる。甘いものは別腹。なんならこれからスイーツバイキングでも全然イケる。あ、こんなことしてるから肥えるんだ。知ってたけどやめられないとまらない……んん~、うまー!
「菜月、美味しい…?」
「うまーです」
時間の限り食べてるのはホテルのランチバイキングの雰囲気とはちょっと違うのかな。でも、美味しいから仕方ない。美奈はそんなうちを眺めながら、コーヒーを。コーヒーもきっと美味しいんだろうなあ。一杯一杯ここで挽いてます、とかそんなヤツなんじゃない?
ちなみにデザートに入る前にも焼きたてのパンを延々と食べてたんですよね。そのときも、延々と食べ続けるうちを美奈がじーっと眺めてて。「えっコイツ食べ過ぎじゃね?」って感じに見られてるのかと思ってそわそわしちゃってたよね。
「菜月の美味しい顔は、本当に美味しいってわかる……見ていてほっこりする……」
「そういうもんかなあ」
「私も、料理を食べてもらうことがある……だから、美味しいという反応をもらえると、とても嬉しい……」
「彼は何かそういう反応をくれたりするの?」
「……彼は、言葉で伝えてくれる……」
「ひゅー、やるぅ」
美奈の恋の話を聞くこともあるから、こないだその彼を実際に見て、こう……言語化出来ないんだけど、ひゅーって。それは別に冷やかしのひゅーじゃなくて、どっちかと言えばいいなあっていうひゅー。
普段の話とか、大学祭でやってたっていうライブの話とか、それを語る美奈の表情がとても可愛くて。鈍感そうな彼だけど、美奈には本当に頑張って欲しい。でも、こないだの感じを見てると既に結構いい雰囲気な気がするんですよね~…! この下世話な発想、絶対某3人に毒されてる…!
「この後、どうする…?」
「あ、そっか。もうすぐ終わりの時間なんだ」
「良ければ、買い物でも……」
「手持ちの問題で何も買わないかもだけど、いいかな」
「問題ない……見て歩いて話すだけで、楽しい……それに、菜月は結構食べてるし、歩いた方がいい……」
「うっ。誕生日だから無礼講はダメ?」
「……その分、夜でコントロール……」
「はい」
それかあれかな。ウィンドウショッピングでめっちゃ歩けばまだセーフ。これで夜に何かが間違ってコンビニで肉まんやチューハイなんか買ったりしちゃうとアウトなんだ。ついうっかり食べ過ぎちゃうんだよなあ、夜って。
「……とか言いながら……夜は、バーにでも、どう…?」
「バー!? 敷居が高い~…!」
「……大丈夫……入りやすい店だから……」
「よ、よろしくお願いします……」
今日はとにかくはじめてのことでいっぱいだ。だけど、こんなことでもないと二度とないようなエレガントな1日を満喫しようと思うんだ。
end.
++++
今年の菜月誕のお相手は美奈さんです。日曜日だしEMERGENCY CALLからの流れをやりにくいっていうのと、今年のトレンドなんですよねナツミナ。
というワケで何かおしゃんなランチバイキングに来てもらいました。菜月さん、そういうところに冒険するときは大体美奈を呼ぶよね。
うまうましてる菜月さんを眺めてる美奈だけど、食べ過ぎですよと暗に釘を刺してるところがまたなんとも
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「はー……本当に贅沢」
「……本当に……」
見たこともないような料理を来たこともないような場所で優雅に食べる日曜の昼。ホテルのランチバイキングなんて、よっぽどのことがないと来ることがないし、一生来ないものだと思ってたから本当にビックリしてる。
それというのも、こないだ美奈と圭斗と一緒にダーツをした日のこと。石川と美奈が片想いをしている彼……確かリンさんて呼ばれてたかな。その彼らと漫喫でバッタリ会ったんだ。せっかくだからと一戦交えてから5人で食事をして。
彼が唐突に、ランチバイキングのペア招待券があるから誰か行かないかと切り出したんだ。その券は日付が指定されていて、彼はどうしても外せない用事があって行けないからと譲渡先を探しているようだった。
「でも、本当にうちがもらっちゃって良かったのかな」
「他に譲る宛てもなかっただろうし、問題ない……それに、誕生日なんだから……」
「誕生日はたまたまじゃん。まあ、何やかんや美味しい料理をうまうましてたワケですが」
「それこそ、ペアの相手……私で、良かった…?」
「美奈が良かったです。調べてたんだよ、あの後。調べてたらあ~もうこんなトコ敷居が高いし、ご飯もオシャレだからやっぱそういうのを知ってそうな美奈にいてもらいたいと思って」
「……相手に選んでもらえて、光栄です……」
美奈に来てもらって本当に良かったなと思うのは、所謂スーパーフードというものをふんだんに使った料理が並んでいたんだけど、何がどういうものなのかっていう知識はうちには皆無だから。そういうのに詳しい美奈に教えてもらいながら未知の体験をしてましたよね。
今は食事も一段落してデザートの時間。紅茶とケーキでアフタヌーンティーって感じ。美奈は甘いものが食べられないけど、クリームチーズが乗ったクラッカーなんてのもあってそれを摘まんでる。クラッカーもいいな、おいしそう。
「ところで、彼はどうしてこんなところの券を持ってたの?」
「……確か、バイト先の同僚の人からもらった、って……」
「へえ。巡り巡ってきたんだ」
ケーキがうまー。お皿の上には3種類のケーキが乗ってる。甘いものは別腹。なんならこれからスイーツバイキングでも全然イケる。あ、こんなことしてるから肥えるんだ。知ってたけどやめられないとまらない……んん~、うまー!
「菜月、美味しい…?」
「うまーです」
時間の限り食べてるのはホテルのランチバイキングの雰囲気とはちょっと違うのかな。でも、美味しいから仕方ない。美奈はそんなうちを眺めながら、コーヒーを。コーヒーもきっと美味しいんだろうなあ。一杯一杯ここで挽いてます、とかそんなヤツなんじゃない?
ちなみにデザートに入る前にも焼きたてのパンを延々と食べてたんですよね。そのときも、延々と食べ続けるうちを美奈がじーっと眺めてて。「えっコイツ食べ過ぎじゃね?」って感じに見られてるのかと思ってそわそわしちゃってたよね。
「菜月の美味しい顔は、本当に美味しいってわかる……見ていてほっこりする……」
「そういうもんかなあ」
「私も、料理を食べてもらうことがある……だから、美味しいという反応をもらえると、とても嬉しい……」
「彼は何かそういう反応をくれたりするの?」
「……彼は、言葉で伝えてくれる……」
「ひゅー、やるぅ」
美奈の恋の話を聞くこともあるから、こないだその彼を実際に見て、こう……言語化出来ないんだけど、ひゅーって。それは別に冷やかしのひゅーじゃなくて、どっちかと言えばいいなあっていうひゅー。
普段の話とか、大学祭でやってたっていうライブの話とか、それを語る美奈の表情がとても可愛くて。鈍感そうな彼だけど、美奈には本当に頑張って欲しい。でも、こないだの感じを見てると既に結構いい雰囲気な気がするんですよね~…! この下世話な発想、絶対某3人に毒されてる…!
「この後、どうする…?」
「あ、そっか。もうすぐ終わりの時間なんだ」
「良ければ、買い物でも……」
「手持ちの問題で何も買わないかもだけど、いいかな」
「問題ない……見て歩いて話すだけで、楽しい……それに、菜月は結構食べてるし、歩いた方がいい……」
「うっ。誕生日だから無礼講はダメ?」
「……その分、夜でコントロール……」
「はい」
それかあれかな。ウィンドウショッピングでめっちゃ歩けばまだセーフ。これで夜に何かが間違ってコンビニで肉まんやチューハイなんか買ったりしちゃうとアウトなんだ。ついうっかり食べ過ぎちゃうんだよなあ、夜って。
「……とか言いながら……夜は、バーにでも、どう…?」
「バー!? 敷居が高い~…!」
「……大丈夫……入りやすい店だから……」
「よ、よろしくお願いします……」
今日はとにかくはじめてのことでいっぱいだ。だけど、こんなことでもないと二度とないようなエレガントな1日を満喫しようと思うんだ。
end.
++++
今年の菜月誕のお相手は美奈さんです。日曜日だしEMERGENCY CALLからの流れをやりにくいっていうのと、今年のトレンドなんですよねナツミナ。
というワケで何かおしゃんなランチバイキングに来てもらいました。菜月さん、そういうところに冒険するときは大体美奈を呼ぶよね。
うまうましてる菜月さんを眺めてる美奈だけど、食べ過ぎですよと暗に釘を刺してるところがまたなんとも
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