2018(03)
■政治・運営、関係なし!
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緑ヶ丘×向島の3年懇談会という名の下に、ツートップの食事会が開かれている。この2校の行事の何が楽って、わざわざ星港まで出て行かなくても豊葦(とよあし)市駅周辺で済むところだね。
メニューは菜月さんの意向で鍋の食べ放題に決まり、予約なんかは高崎が取っておいてくれたそうだ。三井がどうしたとか、サークルとかインターフェイスとか、そんなものが関係ない食事会。控えめに言って素晴らしいね。
「やあ、待たせたね」
「遅いぞ圭斗、菜月」
「仕方ないだろ、緑ヶ丘勢とは使う路線が違うんだ」
「まあいい。さっさと行こうぜ、寒くて仕方ねえ」
高崎の先導で、店へと向かう。駅から徒歩3分くらいのところにあるというその店は、少し入り組んだ路地の中にあるとか。絶対によそ見するな、はぐれるなという注意が伊東にされたところで、RPGのパーティーのように歩を進める。
「4人で18時に予約の高崎です」
「高崎様ですね。お席にどうぞ」
靴は下駄箱にしまうシステム。そして、店員さんについて少し薄暗い店の中を進んでいく。席の方は掘り炬燵のように座れるようだ。なかなか雰囲気があっていい店だね。何でも、大人数での予約は入れられない店だとか。
「高崎、なかなかいい店だね」
「1回来たかったんだけど、ちょうどいい人数にならなくてよ。あ、上着ある奴、今ならかけるぞ」
「ん、それじゃあお願いしようかな」
「うちのもー」
「つか菜月、お前ダウンジャケットなんか持ってたか? 大体ロングカーデだろ」
「こないだ買ったんだ。大石がバイトしてる会社のファミリーセールとかで、すっごい安かったから」
「このクラスのを普通に買ったらどんだけ安くても3万から4万はするじゃねえか。すっごい安いっていくらだよ」
「え、4800円」
「頭おかしいだろ」
菜月さんが新調したというダウンジャケットについての話はここに来るまでの間に少し聞いていた。大石君が、この値段でダウンが来ることはほとんどないから絶対に買った方がいいと勧めてきたとか。
壁の物掛けには、僕の赤いダウンと高崎の紫、それから菜月さんのネイビーが並ぶ。菜月さんのダウンは高崎のそれと同じブランドのようだ。だからこそ値段の相場も知っていて、4800円という値段に思わず出たコメントだ。
「あ、お鍋の具が来たね。圭斗、どっちが世話する?」
「ん、2人で協力したらいいんじゃないかな」
「じゃあそういう方針で」
鍋の具が来て、世話を誰がしようという選択肢に最初から僕と伊東しかないのがね、いかに普段僕らがこのテの行事でお世話をしていたり、奉行として仕切っているかというのが現れているね。
「つか菜月、お前大石とそこまで仲良かったか?」
「大石は割と仲がいい方だぞ。ファンフェスで同じ班だし、三井関係で相談に乗ったりとか、ご飯食べに行ったりとか」
「何だよ三井関係って。物騒だな」
「学祭シーズンに三井が惚れてた子が大石の幼馴染みとかで相談されてたんだ。ほら、三井の話を直接引き出してたのがうちだったから」
「何か三井に焼き肉奢らせたとかいう噂も聞いたぞ」
「ああ、奢ってくれるって言うからついてった。一番いいコースに飲み放付きで」
「頭おかしいなマジで」
三井が菜月さんに貢ぐレベルがおかしいという話はMMPでも大体のメンバーの間で一致している。当たり前だけど、他校の人が聞いてもおかしかったらしい。でも、ひとつ相談に乗るのに一食とか、奢るから焼き肉食べようっていうのはね。さすがにね。
「あ、煮えてきたよー。あっ、なっちさん鍋盛ろうか」
「葉物抜きで」
「やっぱお前めんどくせえな、NGがあるならてめェでやれよ」
「器が熱くて持てないんだ」
「大丈夫だよ、ちゃんと注文通りにやるから」
「伊東、コイツのNG注文はガン無視でいいぞ」
「自分だってグリンピース嫌いなクセに」
「俺は嫌いでもちゃんと食ってる」
「ん、争いの方向がだんだん低レベルになってきたね」
「大体こないだの缶蹴りン時の鍋だって、あれがイヤこれがイヤって高木と一緒になってワガママ言いやがって、お前らのおかげで俺らがどんだけ葉物と豆腐ばっか食ってたか」
「確かに菜月さんの偏食は夏合宿の時にも遺憾なく発揮されていたからね」
「伊東クン、しらたきが食べたいです」
コンビニでおでんを買うときも、しらたき3つと板こんにゃく1枚、余裕があれば卵1個というのが菜月さんの基本。コンビニで注文の光景に遭遇したという村井おじちゃんも引いてましたよね。マジかお前って。
伊東が頑張って盛った菜月さんの器だけど、どうしても避けきれなかった春菊などはもれなく高崎の器に葉っぱだよーと移されていく。それを渋い顔で睨みつけながら、高崎は換気扇に向かって煙を吐く。
「てめェ、熱入ってんだから食えよ。温野菜なら食えるっつってただろ」
「春菊はおいしくない」
「まあまあ高ピー、最初から入れなきゃ無駄になることもないし。ねっ。楽しく食べよう、せっかくいい店なんだから」
「菜月さんも、くたくたになった葉物はちゃんと食べるんだよ。あまり我が儘を言うようならMMPのおでん大会ではこんにゃくと卵を少なくしますよ」
「それは困る」
食べ放題メニューを見ながら、他にはどんな具が欲しいかなと考える。僕は葉っぱも好きだからね、食べたいんだけどね。あと、本当はお酒も飲みたいんだけどね、飲むと最終的に家まで帰れなくなるからね、残念だよね。
end.
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緑ヶ丘向島のツートップがただただ集まってきゃっきゃとしてるだけのお話。高崎の「頭おかしいだろ」の件がやりたかっただけの。
あまり大人数だと学生だしカジュアルな店に行くことが多いんだろうけど、人数が少なければ少し落ち着いた店にも行きそうなメンツだと思いました
そう、何気にこの4人は星港に出て行くのが面倒だなーって思ってるぞ! 他のインターフェイスの学校はみんな星港市内だけどね。
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緑ヶ丘×向島の3年懇談会という名の下に、ツートップの食事会が開かれている。この2校の行事の何が楽って、わざわざ星港まで出て行かなくても豊葦(とよあし)市駅周辺で済むところだね。
メニューは菜月さんの意向で鍋の食べ放題に決まり、予約なんかは高崎が取っておいてくれたそうだ。三井がどうしたとか、サークルとかインターフェイスとか、そんなものが関係ない食事会。控えめに言って素晴らしいね。
「やあ、待たせたね」
「遅いぞ圭斗、菜月」
「仕方ないだろ、緑ヶ丘勢とは使う路線が違うんだ」
「まあいい。さっさと行こうぜ、寒くて仕方ねえ」
高崎の先導で、店へと向かう。駅から徒歩3分くらいのところにあるというその店は、少し入り組んだ路地の中にあるとか。絶対によそ見するな、はぐれるなという注意が伊東にされたところで、RPGのパーティーのように歩を進める。
「4人で18時に予約の高崎です」
「高崎様ですね。お席にどうぞ」
靴は下駄箱にしまうシステム。そして、店員さんについて少し薄暗い店の中を進んでいく。席の方は掘り炬燵のように座れるようだ。なかなか雰囲気があっていい店だね。何でも、大人数での予約は入れられない店だとか。
「高崎、なかなかいい店だね」
「1回来たかったんだけど、ちょうどいい人数にならなくてよ。あ、上着ある奴、今ならかけるぞ」
「ん、それじゃあお願いしようかな」
「うちのもー」
「つか菜月、お前ダウンジャケットなんか持ってたか? 大体ロングカーデだろ」
「こないだ買ったんだ。大石がバイトしてる会社のファミリーセールとかで、すっごい安かったから」
「このクラスのを普通に買ったらどんだけ安くても3万から4万はするじゃねえか。すっごい安いっていくらだよ」
「え、4800円」
「頭おかしいだろ」
菜月さんが新調したというダウンジャケットについての話はここに来るまでの間に少し聞いていた。大石君が、この値段でダウンが来ることはほとんどないから絶対に買った方がいいと勧めてきたとか。
壁の物掛けには、僕の赤いダウンと高崎の紫、それから菜月さんのネイビーが並ぶ。菜月さんのダウンは高崎のそれと同じブランドのようだ。だからこそ値段の相場も知っていて、4800円という値段に思わず出たコメントだ。
「あ、お鍋の具が来たね。圭斗、どっちが世話する?」
「ん、2人で協力したらいいんじゃないかな」
「じゃあそういう方針で」
鍋の具が来て、世話を誰がしようという選択肢に最初から僕と伊東しかないのがね、いかに普段僕らがこのテの行事でお世話をしていたり、奉行として仕切っているかというのが現れているね。
「つか菜月、お前大石とそこまで仲良かったか?」
「大石は割と仲がいい方だぞ。ファンフェスで同じ班だし、三井関係で相談に乗ったりとか、ご飯食べに行ったりとか」
「何だよ三井関係って。物騒だな」
「学祭シーズンに三井が惚れてた子が大石の幼馴染みとかで相談されてたんだ。ほら、三井の話を直接引き出してたのがうちだったから」
「何か三井に焼き肉奢らせたとかいう噂も聞いたぞ」
「ああ、奢ってくれるって言うからついてった。一番いいコースに飲み放付きで」
「頭おかしいなマジで」
三井が菜月さんに貢ぐレベルがおかしいという話はMMPでも大体のメンバーの間で一致している。当たり前だけど、他校の人が聞いてもおかしかったらしい。でも、ひとつ相談に乗るのに一食とか、奢るから焼き肉食べようっていうのはね。さすがにね。
「あ、煮えてきたよー。あっ、なっちさん鍋盛ろうか」
「葉物抜きで」
「やっぱお前めんどくせえな、NGがあるならてめェでやれよ」
「器が熱くて持てないんだ」
「大丈夫だよ、ちゃんと注文通りにやるから」
「伊東、コイツのNG注文はガン無視でいいぞ」
「自分だってグリンピース嫌いなクセに」
「俺は嫌いでもちゃんと食ってる」
「ん、争いの方向がだんだん低レベルになってきたね」
「大体こないだの缶蹴りン時の鍋だって、あれがイヤこれがイヤって高木と一緒になってワガママ言いやがって、お前らのおかげで俺らがどんだけ葉物と豆腐ばっか食ってたか」
「確かに菜月さんの偏食は夏合宿の時にも遺憾なく発揮されていたからね」
「伊東クン、しらたきが食べたいです」
コンビニでおでんを買うときも、しらたき3つと板こんにゃく1枚、余裕があれば卵1個というのが菜月さんの基本。コンビニで注文の光景に遭遇したという村井おじちゃんも引いてましたよね。マジかお前って。
伊東が頑張って盛った菜月さんの器だけど、どうしても避けきれなかった春菊などはもれなく高崎の器に葉っぱだよーと移されていく。それを渋い顔で睨みつけながら、高崎は換気扇に向かって煙を吐く。
「てめェ、熱入ってんだから食えよ。温野菜なら食えるっつってただろ」
「春菊はおいしくない」
「まあまあ高ピー、最初から入れなきゃ無駄になることもないし。ねっ。楽しく食べよう、せっかくいい店なんだから」
「菜月さんも、くたくたになった葉物はちゃんと食べるんだよ。あまり我が儘を言うようならMMPのおでん大会ではこんにゃくと卵を少なくしますよ」
「それは困る」
食べ放題メニューを見ながら、他にはどんな具が欲しいかなと考える。僕は葉っぱも好きだからね、食べたいんだけどね。あと、本当はお酒も飲みたいんだけどね、飲むと最終的に家まで帰れなくなるからね、残念だよね。
end.
++++
緑ヶ丘向島のツートップがただただ集まってきゃっきゃとしてるだけのお話。高崎の「頭おかしいだろ」の件がやりたかっただけの。
あまり大人数だと学生だしカジュアルな店に行くことが多いんだろうけど、人数が少なければ少し落ち着いた店にも行きそうなメンツだと思いました
そう、何気にこの4人は星港に出て行くのが面倒だなーって思ってるぞ! 他のインターフェイスの学校はみんな星港市内だけどね。
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