2018(03)
■Staple food or a side dish
++++
「おでんは主食かおかずか」
これがお好み焼きとかたこ焼きといった粉もんであれば、それらしい議論になったと思うよ。だけど、おでんでこの議題になった場合、問答無用でおでんは主食だろうと満場一致になると信じていた頃が僕にもありました。
「そもそもおでんを主食とかおかずとかで語ることがおかしい」
「いえ、おでんはおかずです」
「おでんがあればご飯は別に食べなくていいじゃないか」
「おでんだけでは食べた気にならないではありませんか……ご飯は必要不可欠でしょう…!?」
「そもそもおでんってそこまで味も濃くないじゃないか。ごはんと合わせるにはちょっと」
「合わせる合わせないではなくご飯はご飯としてですね…?」
そう、MMPでは「おでんは主食」派の菜月さんと「おでんはおかず」派の野坂が熱いバトルを振り広げているのだ。僕は菜月さんの意見に賛成している。おでんは酒の肴としては非常に有用ではあるけれど、主食とかおかずで語ることはしたことがないからね。
「圭斗先輩、自分ちッとツッコんでいースか。ツッコむと言うか、考察または仮説スかね」
「どうぞ」
「菜月先輩と野坂の間で行われてる戦いは、おでんが主食おかずどーこーじャなく、食事に白米が要るか要らないかっつー話じゃないスかね」
「確かに。それだ。お前たち、やめなさい。これ以上は水掛け論だよ」
菜月さんはふりかけなどで味を変えないご飯が苦手だし、野坂はとにかく米ありきの食事だ。りっちゃんが早々にこの不毛な戦いに結論を出してくれたところで、この戦いに至った理由となった物に目をやって、本題に戻ることにするよ。
「で、この米の消費方法スよね」
「そうだね。菜月さんが寄贈してくれた緑風産コシヒカリ5キロをどうするかという話だよ」
事の発端は、菜月さんが生協のガラポン抽選会で当てて来たお米だ。菜月さんが狙っていたのは2等のゲーム機だったので非常に残念な結果になってしまったのだけど、さらに残念なことに、菜月さんの家には実家からお米が送られてきたばかりだったのだ。
ただでさえ菜月さんは米の消費量がそこまで多くない。米櫃に虫を湧かしたり、炊飯器の中でカビが育つくらいには。それに、冬休みや春休みで実家に帰る機会も増えるのにこれ以上米があってもどうしようもない。というワケでMMPに抽選会の米が寄贈されたんだ。
消費するだけなら、それこそMMPの最高戦力・野坂の前に出してやればすぐだ。神崎とりっちゃんもまあまあ頑張ってくれることだろう。問題は、米と一緒に何を食べるか、何パーティーを開くかという話。そこでおでんという単語が出て現在に至ります。
「冬だしおでんパーティーはやるだろ普通に考えて」
「おでんパーティーには誰も異論はないんだよ。ただ、米の消費となるとどうかなというだけで」
「おでんだからこそ米は必須じゃないですか…! 普通に主食ですし、最終的に出汁に味噌を溶いたものをかけて食べるとシメのお茶漬け的な感じで美味しいのですが……」
「と言うか、おでんだけじゃ食べた気がしないっていうのがまずおかしいんだ」
「果林に戦いを挑む度胸があるという時点で俺の胃の容量もお察しいただければと」
「そんな度胸ばっかり付いてやがって」
全くだね。そんな度胸があればさっさと菜月さんに告白してしまえばいいものを。
それはともかく、おでんパーティーではさほど米の消費が見込まれなさそうなので、それとは別にまた消費方法を考える必要があるんだね。みんな否応なしに米を食べざるを得ないメニューと言えば、あれだね。あれしかないね。
「菜月さん、カレパもやろう」
「カレーか。まあ、カレーなら確かにおでんよりは米も減るだろうなあ。さすがにうちも食べるし」
「菜月先輩のカレーがあれば丼3杯は余裕で行けます」
「……圭斗、ノサカのドヤ感が腹立つんだけど」
「奇遇だね、実は僕も少しイラッとしたよ」
「ナ、ナンダッテー!? 菜月先輩と圭斗先輩を苛立たせてしまうだなんて俺の本意ではありませんでした…! 調子に乗って大変申し訳ございませんでした!」
「ヤ、菜月先輩のカレーだったら自分も丼1杯は余裕スね」
「律! お前ならもっと行けるだろ!」
「僕も茶碗2杯くらいは余裕だね」
「さすが圭斗先輩です!」
「じゃあカレー作るかあ。圭斗、日程調整よろしく」
「了解です」
さて、おでんパーティーも開かれることになったので、練習をしないといけないね。こないだ定例会メンバーでもやったけど、微妙に日にちが空いているからね。本格的なシーズン入りもしたことだし、ここで上手く行ったなら村井おじちゃんとお麻里様を招待する計画を立ててもいいかもしれない。
多分このおでんパーティーとカレーパーティーが現メンバーでやる最後のパーティーになるだろう。サークルを引退すれば食べたいときに菜月カレーは無しということになるし、最後に僕の本気というものも見せつけておきたい。
「それで、この米袋はどうしようか」
「とりあえず圭斗が持っててくれないか。車あるし、パーティー会場って大体圭斗の部屋だし」
「わかったよ。それでは僕が責任を持って預からせてもらうよ」
end.
++++
いつものように菜月さんが抽選会でお米を当てて来たのですが、どうやらそれを巡ってナツノサの間で大論争が始まった様子。
とは言え着地点は毎年同じ、おでんパーティーとカレーパーティーの開催なのでMMPは安定ですね
調子に乗ってるノサカにちょっとイラッとした先輩たちがかわいらしいお話でした。
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「おでんは主食かおかずか」
これがお好み焼きとかたこ焼きといった粉もんであれば、それらしい議論になったと思うよ。だけど、おでんでこの議題になった場合、問答無用でおでんは主食だろうと満場一致になると信じていた頃が僕にもありました。
「そもそもおでんを主食とかおかずとかで語ることがおかしい」
「いえ、おでんはおかずです」
「おでんがあればご飯は別に食べなくていいじゃないか」
「おでんだけでは食べた気にならないではありませんか……ご飯は必要不可欠でしょう…!?」
「そもそもおでんってそこまで味も濃くないじゃないか。ごはんと合わせるにはちょっと」
「合わせる合わせないではなくご飯はご飯としてですね…?」
そう、MMPでは「おでんは主食」派の菜月さんと「おでんはおかず」派の野坂が熱いバトルを振り広げているのだ。僕は菜月さんの意見に賛成している。おでんは酒の肴としては非常に有用ではあるけれど、主食とかおかずで語ることはしたことがないからね。
「圭斗先輩、自分ちッとツッコんでいースか。ツッコむと言うか、考察または仮説スかね」
「どうぞ」
「菜月先輩と野坂の間で行われてる戦いは、おでんが主食おかずどーこーじャなく、食事に白米が要るか要らないかっつー話じゃないスかね」
「確かに。それだ。お前たち、やめなさい。これ以上は水掛け論だよ」
菜月さんはふりかけなどで味を変えないご飯が苦手だし、野坂はとにかく米ありきの食事だ。りっちゃんが早々にこの不毛な戦いに結論を出してくれたところで、この戦いに至った理由となった物に目をやって、本題に戻ることにするよ。
「で、この米の消費方法スよね」
「そうだね。菜月さんが寄贈してくれた緑風産コシヒカリ5キロをどうするかという話だよ」
事の発端は、菜月さんが生協のガラポン抽選会で当てて来たお米だ。菜月さんが狙っていたのは2等のゲーム機だったので非常に残念な結果になってしまったのだけど、さらに残念なことに、菜月さんの家には実家からお米が送られてきたばかりだったのだ。
ただでさえ菜月さんは米の消費量がそこまで多くない。米櫃に虫を湧かしたり、炊飯器の中でカビが育つくらいには。それに、冬休みや春休みで実家に帰る機会も増えるのにこれ以上米があってもどうしようもない。というワケでMMPに抽選会の米が寄贈されたんだ。
消費するだけなら、それこそMMPの最高戦力・野坂の前に出してやればすぐだ。神崎とりっちゃんもまあまあ頑張ってくれることだろう。問題は、米と一緒に何を食べるか、何パーティーを開くかという話。そこでおでんという単語が出て現在に至ります。
「冬だしおでんパーティーはやるだろ普通に考えて」
「おでんパーティーには誰も異論はないんだよ。ただ、米の消費となるとどうかなというだけで」
「おでんだからこそ米は必須じゃないですか…! 普通に主食ですし、最終的に出汁に味噌を溶いたものをかけて食べるとシメのお茶漬け的な感じで美味しいのですが……」
「と言うか、おでんだけじゃ食べた気がしないっていうのがまずおかしいんだ」
「果林に戦いを挑む度胸があるという時点で俺の胃の容量もお察しいただければと」
「そんな度胸ばっかり付いてやがって」
全くだね。そんな度胸があればさっさと菜月さんに告白してしまえばいいものを。
それはともかく、おでんパーティーではさほど米の消費が見込まれなさそうなので、それとは別にまた消費方法を考える必要があるんだね。みんな否応なしに米を食べざるを得ないメニューと言えば、あれだね。あれしかないね。
「菜月さん、カレパもやろう」
「カレーか。まあ、カレーなら確かにおでんよりは米も減るだろうなあ。さすがにうちも食べるし」
「菜月先輩のカレーがあれば丼3杯は余裕で行けます」
「……圭斗、ノサカのドヤ感が腹立つんだけど」
「奇遇だね、実は僕も少しイラッとしたよ」
「ナ、ナンダッテー!? 菜月先輩と圭斗先輩を苛立たせてしまうだなんて俺の本意ではありませんでした…! 調子に乗って大変申し訳ございませんでした!」
「ヤ、菜月先輩のカレーだったら自分も丼1杯は余裕スね」
「律! お前ならもっと行けるだろ!」
「僕も茶碗2杯くらいは余裕だね」
「さすが圭斗先輩です!」
「じゃあカレー作るかあ。圭斗、日程調整よろしく」
「了解です」
さて、おでんパーティーも開かれることになったので、練習をしないといけないね。こないだ定例会メンバーでもやったけど、微妙に日にちが空いているからね。本格的なシーズン入りもしたことだし、ここで上手く行ったなら村井おじちゃんとお麻里様を招待する計画を立ててもいいかもしれない。
多分このおでんパーティーとカレーパーティーが現メンバーでやる最後のパーティーになるだろう。サークルを引退すれば食べたいときに菜月カレーは無しということになるし、最後に僕の本気というものも見せつけておきたい。
「それで、この米袋はどうしようか」
「とりあえず圭斗が持っててくれないか。車あるし、パーティー会場って大体圭斗の部屋だし」
「わかったよ。それでは僕が責任を持って預からせてもらうよ」
end.
++++
いつものように菜月さんが抽選会でお米を当てて来たのですが、どうやらそれを巡ってナツノサの間で大論争が始まった様子。
とは言え着地点は毎年同じ、おでんパーティーとカレーパーティーの開催なのでMMPは安定ですね
調子に乗ってるノサカにちょっとイラッとした先輩たちがかわいらしいお話でした。
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