2017(02)

■Discomfort saturated

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 雑記帳のページがなくなってしまった。金曜日にはあと4ページほどが残っていたと思ったのに。その原因はうちが全て書き潰してしまったからで、元を辿ればノサカが悪いと結論付ける午後4時前。
 昼放送の収録は、サークル室で午後2時に待ち合わせ。くどいけど、現在時刻は午後4時前。うちへの連絡はなし。どうせケータイの充電がなくなったとかそんなようなことだろう。
 暑いし、眠いし。お腹もすいて来たし。甘い物が手元にあればいいけど、あるのはフリスクばかりなり。フリスクでお腹は満たされないし、自販機で炭酸の飲み物でも買おうか。
 いや、1階ロビーにはカップラーメンの自販機があるじゃないか! 番組前にそんなの食べて、声がどうとか知ったこっちゃない。全てノサカが悪い。そうと決まればロビーに行こう。200円あれば足りるな。
 ラーメンに向けてうきうきと階段を下っていると、何やら外が慌ただしい。騒がしい原因であろう顔を見れば、それまでのうきうきが全部吹っ飛んだじゃないか。

「あっ…!? 菜月先輩! 派手に遅れてしまい本当に申し訳ございません!」
「ああ、本当だな。おまけにお前が今来てしまったおかげでラーメンが食べられなくなってしまった」
「ラ、ラーメン? ですか?」
「あんまりお前が来ないモンだから、腹ごしらえでもしようかと。そう思って降りてきたところにお前が来たんだ」
「それは重ねて申し訳ございません」

 雑記帳の最後の頁に、今の時間を書き加えた。こうしておくことでノサカがどれだけ酷いかを皆に知らせ、うちもそれを覚えておくことが出来る。遅れた時間の分だけ返してもらいたい気持ちだ。何を、とはまだ言えないけど。

「機材が立ち上がればすぐにでも収録を始められます」
「なんかなー」
「……はい?」
「こうまで蒸し暑いとやる気が。ラーメンも食べられなかったし。まあ、やるけど」
「申し訳ございません」

 今日のノサカは起きた時点で12時半とかなりギリギリだったらしい。その上慌てて飛び乗った電車の行き先が逆方向。改めて正しい電車に乗ったものの、ついうっかり寝てしまって終点で折り返した結果、結構な距離を戻ってしまったそうだ。
 ノサカはよく「病院に行って遅刻癖が治るなら行きたい」と言っているけど、お前のそれは病院に行ったところで治るようなモンじゃないし、治ったならそれは世界レベルの大事件じゃないかと思うワケだ。

「ラーメンたべたい」
「ええと、本日の夜に召し上がればよろしいかと」
「今食べたいんだ! バカなんじゃないのか! あーもう、さっさと番組やる。ったく何なんだお前は。理不尽に怒ってるように見えるかもしれないけど、2時間遅れてる時点で八つ当たりされる義務があるんだぞお前には」
「ええ、それは重々承知しています」

 番組はごくごく普通に収録したし、声に機嫌の悪さを乗せることもなく。ただ、テーマが七夕のあれこれだったから、多少言葉が鋭利になってしまったかもしれない。七夕と言えば、給食で出た懐かしの七夕ゼリーが食べたい。

「ノサカ」
「はい」
「ラーメンを食べるぞ」
「ええと、これからでしょうか」
「当たり前だ。スーパーに行くから、お前は荷物持ちだ」

 ラーメン屋に行きたい気もするけど、ラーメン屋だとやけ食いするには量が少ないし、お金もかかる。ここは適当な袋めんを買って大量に食べたい。もちろん、味わいもするけど。元々はカップラーメンで満たされる可愛らしい欲だったんだ。

「野菜炒めを作って、冷凍食品とかの餃子も用意して、そうだお酒も買わなきゃ」
「随分と豪勢ですね」
「付き合うよな? ついでに三井の所為で溜まったストレスの捌け口になれ。何が悲しくてアイツのデートの話をうちが昼のラーメンを食べてるのに聞いてやらなきゃいけないんだ」
「それでしたら、お付き合い致します」


end.


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久々にノサカがやらかしました。菜月さんは雑記帳にわーわーと書き殴った結果、大学ノートの4ページを埋め尽くしたそうな。
カップラーメンの自動販売機って、あるところにはあるだろうけど結構レアな気がする。でも向島大学サークル棟のロビーにはあるんだよ! 箸があるかは運次第。
と言うか菜月さんドカ食いするのか……そんなことしたら肥えるぞ夏なのに!!!

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