2018(03)

■Let's take a walk

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「さァーて、そろそろ年末特番のことについても考えヤすよー」
「わぁーい、もうそんな季節なんだねー」
「こーたウザ。で、何をどうしヤしょーか」

 さて、律を中心に始まった話し合いだ。大学祭を境に代替わりをしたMMPは、律を代表に何やかんや動き始めた感がある。話し合いは大体律とこーたの茶番から始まるという形も出来上がりつつある。これから始まるのは年末特番についての話し合いだ。
 年末特番というのはその名の通り、年の末に作られる特別番組のことだ。それをどこに発表したり提出したりすることはないけれど、思うがままに1時間程度の番組を作るのだ。一応毎年やっていて、企画番組だったりラジドラだったり内容はいろいろだ。

「去年は30分程度のラジドラと企画番組スね。その前はラジドラメインで合間に番組をちょこちょこ挟むー的な。さァーて今年はどうしましョ」
「やっぱり企画番組が無難なのかなあ」
「企画はいーンすけど、時間の割合スわ」
「どんな企画にするかにもよりますよね」
「ブレストの時間だああああ」

 この話し合いには3年生の先輩も参加していらっしゃるのだけど、基本的に2年生を中心に回してもらいたいねという風に圭斗先輩が仰ったのだ。その言葉の通り、ブレーンストーミングという名の大喜利が始まっても、先輩方はそれを見ているばかり。
 年末特番は年度最後の番組にしてサークルから引退される3年生の集大成としての位置づけがある。だけど、それ以前にそれぞれがこの1年でどれだけ成長したのかを見るという性質もある。圭斗先輩はそれを重んじられているようだ。
 番組も、自分たちはアナウンサーとして与えられた仕事は全うするけれど、企画は2年生が中心となって以下略というお話があった。これはつまり、3年生の先輩方がサークルから引退する前に、どれだけやれるか見せてみろということなのだろう。そう俺は解釈している。

「一応アイディアは少し出ヤしたね」
「それでは、ここから非現実的な物を削っていきましょうか。ブラケイトはどうしますか?」
「この寒空の下圭斗先輩がお散歩をされるかと言えば、かなり怪しいよなあ」
「それなんスわ。自分的にはブラケイトやりたかったスけどね。三井先輩の使いどころもありヤすし」
「そうだよなあ。ナレーション役がバッチリハマるっていう話は覚えてる」
「それではブラケイトは保留にしておきましょう。それでは、これはどうですか? MMP俳句の才能査定ラブ&ピース」
「どれだけ残虐な句を詠めるかが才能アリかナシかっていう基準になるヤツだろ」
「菜月先輩に先生をやってもらったら楽しいカナーと思うンすけどね」
「ばっさばっさとラブピされるヤツ…! と言うか律の圧勝で終わるじゃないか」

 ちなみにMMPでラブ&ピースというのは“抹殺”という言葉の言い換えです。テレビで見たような企画のパロディやらインスパイアされた案、それから誰でも思いつくけど面白くないなというのがわかるから誰も言わないような案まで様々。
 ひとつひとつの案に対して妄想やらツッコミやらを入れながら精査して、しっかりと話し合える案を絞っていく。3年生の先輩方は俺たち2年生がぎゃあぎゃあ話し合っている横でそれにさらにツッコミを入れて楽しんでいらっしゃるようだ。

「おい……ブラケイトが残ってるぞ…!」
「今残ってる案はブラケイトとラブピ俳句とMMPカレンダーか、それからラジドラか」
「ブラケイトをラジドラ枠に入れて、それと別に企画番組の枠を取りヤせん?」
「律お前ブラケイト推し過ぎじゃね?」
「単純にやりたいだけスね。ヤ、でも野坂、考えてみろ」
「ん?」
「年末特番はちゃんと録音して後世に残るモンじゃないスか」
「そうだな」
「野坂、圭斗先輩のお散歩の姿を残しておきたいと思いヤせんか」

 律のその言葉に、別に反対派でもなかったけど「マジでやんの?」という風には思っていた俺の心は一気にオチた。いや、この説得は反則だろ、圭斗先輩のお散歩の姿だなんてそもそもレアだぞ。

「ブラケイト、是非やりましょう!」
「土田さんが悪魔の囁きで支持者を増やしてきましたよ!?」
「りっちゃんはノサカの扱い方を完璧にわかっとるよ! てゆーかノサカがチョロいわ!」
「うるさい、何とでも言え! 圭斗先輩のお散歩だなんてそんなロイヤルラグジュアリーな番組、後世に残さずしてどうなる! 律、俺は個人的に動画を撮影するぞ! あっ、来年の作品出展にも出せる番組にしよう! 圭斗先輩の悠然としたお散歩姿をインターフェイスに知らしめてだな」
「野坂、定例会経験者から忠告を入れさせていただくけど、作品出展で出す番組はその年度に制作した作品でという規則が一応存在するからね。その点だけは覚えておいてくれ」
「うう……それでは個人的に見て楽しむためだけに撮影するのは構わないでしょうか……」
「と言うか、本当にブラケイトをやるのかい?」
「それが2年生の総意であれば3年生の先輩方はそのように動いていただけると」

 さて、ブラケイトをやるのが濃厚になってきたところで、あと1つの番組はどうなる。その辺はまた時間の限りやいやいと話し合いながら決めるのだ。ちゃんとイスに座ってやる番組が好ましいよなあ。


end.


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MMPの年末特番の話です。今回は3年生がきゃいきゃい口を挟むことはなく、2年生メインです。
夏にちょろっと言ってたブラケイト企画がここに来て再燃しているようです。そしてりっちゃんの口車である。
ブラケイト路線になった場合、菜月さんはどこで活躍してもらおうかしら。台本書き?w

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