2018(03)
■あつあつおでんとぬるめの燗で
++++
「えー、それでは2年間お疲れさまでした。これで2年生へと代替わりもしたので晴れて自由の身としてね。うん。お疲れっしたー!」
「かんぱーい!」
やって来ました圭斗宅。今日は定例会3年の慰労会という体のおでん大会が開催されている。ビッキーは圭斗ン家だと帰れないからって理由で欠席だけど、家主の圭斗と俺、それからちーちゃんとカオルが集まって男4人のおでん大会だ。
こたつを囲んで土鍋でおでん。最高かよ。当然酒もある。台所にはまだ寸胴もスタンバイされていて、圭斗の本気度が伺える。ただ、圭斗曰く今シーズンの初回だからこれは練習に過ぎないとのこと。向島の先輩たちとやるときに備えているらしい。そりゃ備えも必要だ。
「うっわ、大根うまっ」
「この大根は朝霞君から提供されたものでね」
「え、カオルいつの間に」
「定例会おでん大会の話自体は前からあっただろ。先週末、ウチの農学部がやってるオープンファームって行事があったんだけど、そこで大根も売ってたからゲットしといたんだ」
「えー!? そんな行事あるなら教えてよカオル! 野菜とかお米とか売ってるヤツっしょ!?」
「ああ。それそれ」
星ヶ丘には他のインターフェイスの大学にはない農学部という学部がある。何か大学の敷地に畑とか果樹園とか、いろいろあるらしいね。って言うか野菜の即売会みたいな行事とか興味しかないよね。うん、大根美味い。
「えー! 俺も行きたかった! 朝霞ー、誘ってよもー」
「悪いって。覚えてたら来年一緒に行こうぜ」
「絶対だよ!」
「カズは走るの速いし大石は力とスタミナがあるから十分戦えるはずだ」
「ん、そんな戦争のような表現が必要なのかい?」
「あれは戦争だ。俺は命辛々野菜を入手してだな……難関の米や肉なんかは山口に開場ダッシュしてもらって何とかゲットして」
これもオープンファームで買ったヤツなんだ、と漬け物まで出てくる。そうなればご飯が必要だねと白いご飯が出てくる圭斗宅の充実仕様だな。俺もこのサービス精神は見習わないと。今日は座ってるだけでも勉強になるなあ。
さて、みんながおでんをはふはふと食べ進めていく中、ちっとも動かない箸がひとつ。世話役の圭斗ですらちょこちょこ食べているのに、器の中の大根や玉子などが佇むまま、動かない。
「圭斗、ご飯おかわりー」
「大石君は本当によく食べるね。それより朝霞君は食べているかい?」
「食える熱さになるまで待ってなきゃ死ぬからな。あつあつのおでんとかお前、フリじゃねーんだから。食えるようになるまでトークリーダーやってるし、お前らは食っててもらって」
「猫舌も大変だね」
「それな」
食べるときには喋らないカオルが延々と喋り続けているのは、おでんが程良いあったかさになるのを待たなければならない猫舌ならではの事情があったらしい。ちーちゃんは熱いの大丈夫っぽいからどんどん食べてるし、対比がすごい。
「俺もMBCCでおでん大会やりたいなー」
「何でも、伊東は真空保温調理鍋と電気圧力鍋と買ったそうじゃないか」
「多分ね、おでんとの相性もいいと思うんだよね」
「緑ヶ丘のおでんなら、ビールとの相性を見ることになるのかな?」
「ウインナーやロールキャベツを入れてもいいかもね。向島は熱燗合わせ?」
「先輩方とやるときはそうなるね」
今日のおでんは本当にスタンダードなおでんだ。ウインナーとかロールキャベツの入った洋風おでんもあるけど、圭斗が練習したいのは先輩方と日本酒をちびちびやりながら食べるおでんだそうだ。MBCCはわいわい型だから洋風もいいかもね。
「あー、いいな熱燗。圭斗、今熱燗って出来るか」
「仕方ないね、菜月さんからもらった秘蔵の酒を開けてあげようじゃないか。朝霞君、感謝したまえ」
「ぬるめの燗でお願いします!」
「伊東と大石君はどうする?」
「俺日本酒苦手なんだよね。他ある? チューハイとか」
「俺はせっかくだしもらおうかな。えっと、ぬるすぎないくらいで」
「大石くぅーん、俺ぇー、シャンディガフも飲みたいなー」
「ねえ待って? すでに朝霞のキャラが違う気がするんだけど!? って言うか圭斗、ジンジャーエールはさすがにないよね?」
「あるよ」
「あるんだ!」
「大石君はカクテルが作れるのかな?」
「兄さんのお店で少し手伝ってるうちに覚えたんだ」
そうこうしている間にそれぞれが注文したお酒が出てきましたよね。カオルとちーちゃんにはそれぞれの温度の熱燗、俺には冷蔵庫の中にあったらしい適当な缶チューハイが。そして、酒を作り終えた圭斗が久々に席に落ち着いた。
「でもさ、熱燗出来るって凄いな圭斗」
「わかるかい伊東、先輩方をお招きしたときに粗相があってはいけないんだよ」
「あ。察し」
「だからおでんという意味でも、熱燗という意味でも実験台なんだよ」
「まあ、いいんじゃない? 俺も含めてみんな実験台を謳歌してるんだし」
圭斗は何をやるにもこだわり派だから、これで満足せずに来たるその日に向けて練習をし続けるんだろうな。で、今日はそれを俺たちが美味しくいただいて。いや、でもマジで勉強になったし今度高ピーにおでん大会を打診してみよう。
end.
++++
定例会おでん大会です。朝霞Pがきゃっきゃしていてお前誰だ状態になってますが、部活を引退すればこんなモンです。
さて、圭斗さんの練習が進んでいますね。12月に入ると毎年のパターンでMMPお米大会が開かれるので、大体そこまでに上手になっておけばいいのかな
いち氏はきっとここで勉強したことを緑ヶ丘に持ち帰って頑張るんだろうなあ。主に高崎が恩恵を受けるヤツ
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「えー、それでは2年間お疲れさまでした。これで2年生へと代替わりもしたので晴れて自由の身としてね。うん。お疲れっしたー!」
「かんぱーい!」
やって来ました圭斗宅。今日は定例会3年の慰労会という体のおでん大会が開催されている。ビッキーは圭斗ン家だと帰れないからって理由で欠席だけど、家主の圭斗と俺、それからちーちゃんとカオルが集まって男4人のおでん大会だ。
こたつを囲んで土鍋でおでん。最高かよ。当然酒もある。台所にはまだ寸胴もスタンバイされていて、圭斗の本気度が伺える。ただ、圭斗曰く今シーズンの初回だからこれは練習に過ぎないとのこと。向島の先輩たちとやるときに備えているらしい。そりゃ備えも必要だ。
「うっわ、大根うまっ」
「この大根は朝霞君から提供されたものでね」
「え、カオルいつの間に」
「定例会おでん大会の話自体は前からあっただろ。先週末、ウチの農学部がやってるオープンファームって行事があったんだけど、そこで大根も売ってたからゲットしといたんだ」
「えー!? そんな行事あるなら教えてよカオル! 野菜とかお米とか売ってるヤツっしょ!?」
「ああ。それそれ」
星ヶ丘には他のインターフェイスの大学にはない農学部という学部がある。何か大学の敷地に畑とか果樹園とか、いろいろあるらしいね。って言うか野菜の即売会みたいな行事とか興味しかないよね。うん、大根美味い。
「えー! 俺も行きたかった! 朝霞ー、誘ってよもー」
「悪いって。覚えてたら来年一緒に行こうぜ」
「絶対だよ!」
「カズは走るの速いし大石は力とスタミナがあるから十分戦えるはずだ」
「ん、そんな戦争のような表現が必要なのかい?」
「あれは戦争だ。俺は命辛々野菜を入手してだな……難関の米や肉なんかは山口に開場ダッシュしてもらって何とかゲットして」
これもオープンファームで買ったヤツなんだ、と漬け物まで出てくる。そうなればご飯が必要だねと白いご飯が出てくる圭斗宅の充実仕様だな。俺もこのサービス精神は見習わないと。今日は座ってるだけでも勉強になるなあ。
さて、みんながおでんをはふはふと食べ進めていく中、ちっとも動かない箸がひとつ。世話役の圭斗ですらちょこちょこ食べているのに、器の中の大根や玉子などが佇むまま、動かない。
「圭斗、ご飯おかわりー」
「大石君は本当によく食べるね。それより朝霞君は食べているかい?」
「食える熱さになるまで待ってなきゃ死ぬからな。あつあつのおでんとかお前、フリじゃねーんだから。食えるようになるまでトークリーダーやってるし、お前らは食っててもらって」
「猫舌も大変だね」
「それな」
食べるときには喋らないカオルが延々と喋り続けているのは、おでんが程良いあったかさになるのを待たなければならない猫舌ならではの事情があったらしい。ちーちゃんは熱いの大丈夫っぽいからどんどん食べてるし、対比がすごい。
「俺もMBCCでおでん大会やりたいなー」
「何でも、伊東は真空保温調理鍋と電気圧力鍋と買ったそうじゃないか」
「多分ね、おでんとの相性もいいと思うんだよね」
「緑ヶ丘のおでんなら、ビールとの相性を見ることになるのかな?」
「ウインナーやロールキャベツを入れてもいいかもね。向島は熱燗合わせ?」
「先輩方とやるときはそうなるね」
今日のおでんは本当にスタンダードなおでんだ。ウインナーとかロールキャベツの入った洋風おでんもあるけど、圭斗が練習したいのは先輩方と日本酒をちびちびやりながら食べるおでんだそうだ。MBCCはわいわい型だから洋風もいいかもね。
「あー、いいな熱燗。圭斗、今熱燗って出来るか」
「仕方ないね、菜月さんからもらった秘蔵の酒を開けてあげようじゃないか。朝霞君、感謝したまえ」
「ぬるめの燗でお願いします!」
「伊東と大石君はどうする?」
「俺日本酒苦手なんだよね。他ある? チューハイとか」
「俺はせっかくだしもらおうかな。えっと、ぬるすぎないくらいで」
「大石くぅーん、俺ぇー、シャンディガフも飲みたいなー」
「ねえ待って? すでに朝霞のキャラが違う気がするんだけど!? って言うか圭斗、ジンジャーエールはさすがにないよね?」
「あるよ」
「あるんだ!」
「大石君はカクテルが作れるのかな?」
「兄さんのお店で少し手伝ってるうちに覚えたんだ」
そうこうしている間にそれぞれが注文したお酒が出てきましたよね。カオルとちーちゃんにはそれぞれの温度の熱燗、俺には冷蔵庫の中にあったらしい適当な缶チューハイが。そして、酒を作り終えた圭斗が久々に席に落ち着いた。
「でもさ、熱燗出来るって凄いな圭斗」
「わかるかい伊東、先輩方をお招きしたときに粗相があってはいけないんだよ」
「あ。察し」
「だからおでんという意味でも、熱燗という意味でも実験台なんだよ」
「まあ、いいんじゃない? 俺も含めてみんな実験台を謳歌してるんだし」
圭斗は何をやるにもこだわり派だから、これで満足せずに来たるその日に向けて練習をし続けるんだろうな。で、今日はそれを俺たちが美味しくいただいて。いや、でもマジで勉強になったし今度高ピーにおでん大会を打診してみよう。
end.
++++
定例会おでん大会です。朝霞Pがきゃっきゃしていてお前誰だ状態になってますが、部活を引退すればこんなモンです。
さて、圭斗さんの練習が進んでいますね。12月に入ると毎年のパターンでMMPお米大会が開かれるので、大体そこまでに上手になっておけばいいのかな
いち氏はきっとここで勉強したことを緑ヶ丘に持ち帰って頑張るんだろうなあ。主に高崎が恩恵を受けるヤツ
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