2018(03)
■tactics re-creation
++++
「さて、戦争の時間だよ」
大学祭が終わって、MMPも代替わりした。うちや圭斗の手から実権は離れ、新代表のりっちゃんを中心にラブ&ピースなサークルになっていくことだろう。新体制になったという理由で再びやるようになった発声練習を終えたその時、圭斗が物騒なことを言い出した。
「なに、戦争?」
「定例会で話してたんだけど、緑ヶ丘と合同で飲み会と缶蹴りの2部構成でなるイベントを開催することになりました。昔よくやってた交流会の一環だね」
「あー……そういやあったな。でも昔は本当に技術を向上させるための合同練習だったと思うけど」
「ん、それは時代の移り変わりということで納得してもらえると嬉しいよ。とにかく、やることには決定しているのでぜひ参加してください。交流会とは言え、戦争だ。僕は当然負ける気なんかこれっぽっちもないからね」
少し前までのMMPでは、缶蹴りや○○鬼(○の中にはいろんな単語が入る)といった遊びが日常的に行われていた。最近ご無沙汰だなと思っていたら、まさかの緑ヶ丘との合同で行われるだなんて。しかも圭斗はやたらやる気だし。
「いくらお前に負ける気がなくたって、緑ヶ丘の連中はウチとは比べ物にならないくらい身体能力が高いんだぞ」
「それなら、戦力分析をして作戦を練るまでだよ」
代替わりをしたというのに、話を進めるのが圭斗だというのはいかがなものか。まあ、圭斗の持ち込み企画だからいいのか。戦力分析をするということで、ホワイトボードには新総務のカンザキによって緑ヶ丘の面々の名前がつらつらと書かれていく。
「緑ヶ丘の主な顔ぶれはこのような感じでしょうか」
「やっぱり、この中で最も注意しなければならないのは高崎だろうね。ねえ菜月さん」
「まあ、順当に行けばそうだな。高崎はハンドボールやってたしそもそもの身体能力が高い。よっぽど寒いとかよっぽど眠いとかじゃないとアイツを封じるのは難しいだろうな」
「ウチで高崎と張り合えそうなのはいるかな?」
「ノサカがワンチャンあるかないかって感じ」
「ウチの最高戦力をぶつけてもワンチャンあるかないかなのか……」
そもそも、陽キャ集団緑ヶ丘と陰キャ集団向島で走り回る能力を比べるのが間違いなのだ。MMPは引きこもりにメタボに文化系の集まりだけど、緑ヶ丘は体育会系だった人間の方が圧倒的に多いのだから。ウチは卑怯さで勝負するしかないのだ。
唯一の救いは缶蹴りの会場が向島大学であるということか。ホームアドバンテージで能力の差を爪の先程でも埋められれば。と言うか、そもそも飲み会の後に寒空の下で缶蹴りをやること自体、死人が出るんじゃないかと思うんだけど。主に向島から。
「こうして見ると緑ヶ丘は強いね。伊東は動体視力と反射神経がいいし」
「走力で言えば、果林がいる時点でMMPは誰も敵いませんからね……」
「そういやノサカ、果林ってそんなに凄いのか? 陸上やってたとは聞くけど」
「果林は短距離の元インハイ選手で、向島の中高の記録も持っててまだ破られてないそうです」
「そんなガチなのがいるとか反則じゃないか!」
「やァー、いくら緑ヶ丘が粒揃いでもウチの理不尽&不条理にャ敵いヤせんて」
「律が理不尽&不条理とか言うとシャレにならないんだよなあ」
りっちゃんの言う「理不尽&不条理」がどんなレベルのラブ&ピースなのかはわからないけど、りっちゃんの言うことだからとにかく凄そうだ。まあ、何にせよ正面から戦っても勝ち目が薄いということだけがわかったところで、どうするのかと。
ホワイトボードには、緑ヶ丘の面々の名前と特徴や気を付ける点などが書かれている。運動部とかであるようないかにもなミーティングが開かれているワケだけど、最終的には「ラブ&ピース」という一言でちゃぶ台をひっくり返しそうだから何だかな。
「圭斗先輩は戦争っつってノリノリすけど、言って圭斗先輩のいつもの戦術を考えると、まーァ卑怯だとしか言いようがないじャないスか」
「律お前! いくら圭斗先輩が毎回絶対的な死角で息を潜めてるだけで特に何かする訳でもないかオイシイ所を持っていくだけだからと言って、言っていいことと悪いことがあるぞ!」
「やァー、お前が決定打を放ってるンすよねェー。緑ヶ丘に身体能力で対抗しうる戦力がお前と菜月先輩しかいない以上、圭斗先輩ばりの卑怯さが求められるンすわ。真正面からは戦わないこった」
「そうだぞ野坂! 僕は正しい、つまり勝つのはMMPだ」
「あ、ところで圭斗先輩。缶蹴り会場にコンロ持ち込みヤせん? お湯があるといーと思うンすよネ」
「ん、いいね。採用しようか?」
「やりーィ、おっ湯割っりおっ湯割っりーィ」
「あー、いいなお湯割り。杏露酒用意しとかないと」
そして改めて思う。戦争じゃなくてただのレクリエーションじゃないかと。まあ、やるからには負けたくはないのだけど。杏露酒もいいけどココアとかも用意したいところだな。紙コップとマドラーも用意しておこう。
end.
++++
代替わり後恒例、MMPの缶蹴り対策会議です。今回は戦力分析なんかが始まって結構本格的な様相。
しかし基本的にMBCCとMMPでは運動能力などに差があり過ぎるので、やはり向島は理不尽&不条理で勝負しなければならないのであった
お湯割りにうきうきするりっちゃんがかわいい件。りっちゃんはMMP比では強い方だぞ!
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「さて、戦争の時間だよ」
大学祭が終わって、MMPも代替わりした。うちや圭斗の手から実権は離れ、新代表のりっちゃんを中心にラブ&ピースなサークルになっていくことだろう。新体制になったという理由で再びやるようになった発声練習を終えたその時、圭斗が物騒なことを言い出した。
「なに、戦争?」
「定例会で話してたんだけど、緑ヶ丘と合同で飲み会と缶蹴りの2部構成でなるイベントを開催することになりました。昔よくやってた交流会の一環だね」
「あー……そういやあったな。でも昔は本当に技術を向上させるための合同練習だったと思うけど」
「ん、それは時代の移り変わりということで納得してもらえると嬉しいよ。とにかく、やることには決定しているのでぜひ参加してください。交流会とは言え、戦争だ。僕は当然負ける気なんかこれっぽっちもないからね」
少し前までのMMPでは、缶蹴りや○○鬼(○の中にはいろんな単語が入る)といった遊びが日常的に行われていた。最近ご無沙汰だなと思っていたら、まさかの緑ヶ丘との合同で行われるだなんて。しかも圭斗はやたらやる気だし。
「いくらお前に負ける気がなくたって、緑ヶ丘の連中はウチとは比べ物にならないくらい身体能力が高いんだぞ」
「それなら、戦力分析をして作戦を練るまでだよ」
代替わりをしたというのに、話を進めるのが圭斗だというのはいかがなものか。まあ、圭斗の持ち込み企画だからいいのか。戦力分析をするということで、ホワイトボードには新総務のカンザキによって緑ヶ丘の面々の名前がつらつらと書かれていく。
「緑ヶ丘の主な顔ぶれはこのような感じでしょうか」
「やっぱり、この中で最も注意しなければならないのは高崎だろうね。ねえ菜月さん」
「まあ、順当に行けばそうだな。高崎はハンドボールやってたしそもそもの身体能力が高い。よっぽど寒いとかよっぽど眠いとかじゃないとアイツを封じるのは難しいだろうな」
「ウチで高崎と張り合えそうなのはいるかな?」
「ノサカがワンチャンあるかないかって感じ」
「ウチの最高戦力をぶつけてもワンチャンあるかないかなのか……」
そもそも、陽キャ集団緑ヶ丘と陰キャ集団向島で走り回る能力を比べるのが間違いなのだ。MMPは引きこもりにメタボに文化系の集まりだけど、緑ヶ丘は体育会系だった人間の方が圧倒的に多いのだから。ウチは卑怯さで勝負するしかないのだ。
唯一の救いは缶蹴りの会場が向島大学であるということか。ホームアドバンテージで能力の差を爪の先程でも埋められれば。と言うか、そもそも飲み会の後に寒空の下で缶蹴りをやること自体、死人が出るんじゃないかと思うんだけど。主に向島から。
「こうして見ると緑ヶ丘は強いね。伊東は動体視力と反射神経がいいし」
「走力で言えば、果林がいる時点でMMPは誰も敵いませんからね……」
「そういやノサカ、果林ってそんなに凄いのか? 陸上やってたとは聞くけど」
「果林は短距離の元インハイ選手で、向島の中高の記録も持っててまだ破られてないそうです」
「そんなガチなのがいるとか反則じゃないか!」
「やァー、いくら緑ヶ丘が粒揃いでもウチの理不尽&不条理にャ敵いヤせんて」
「律が理不尽&不条理とか言うとシャレにならないんだよなあ」
りっちゃんの言う「理不尽&不条理」がどんなレベルのラブ&ピースなのかはわからないけど、りっちゃんの言うことだからとにかく凄そうだ。まあ、何にせよ正面から戦っても勝ち目が薄いということだけがわかったところで、どうするのかと。
ホワイトボードには、緑ヶ丘の面々の名前と特徴や気を付ける点などが書かれている。運動部とかであるようないかにもなミーティングが開かれているワケだけど、最終的には「ラブ&ピース」という一言でちゃぶ台をひっくり返しそうだから何だかな。
「圭斗先輩は戦争っつってノリノリすけど、言って圭斗先輩のいつもの戦術を考えると、まーァ卑怯だとしか言いようがないじャないスか」
「律お前! いくら圭斗先輩が毎回絶対的な死角で息を潜めてるだけで特に何かする訳でもないかオイシイ所を持っていくだけだからと言って、言っていいことと悪いことがあるぞ!」
「やァー、お前が決定打を放ってるンすよねェー。緑ヶ丘に身体能力で対抗しうる戦力がお前と菜月先輩しかいない以上、圭斗先輩ばりの卑怯さが求められるンすわ。真正面からは戦わないこった」
「そうだぞ野坂! 僕は正しい、つまり勝つのはMMPだ」
「あ、ところで圭斗先輩。缶蹴り会場にコンロ持ち込みヤせん? お湯があるといーと思うンすよネ」
「ん、いいね。採用しようか?」
「やりーィ、おっ湯割っりおっ湯割っりーィ」
「あー、いいなお湯割り。杏露酒用意しとかないと」
そして改めて思う。戦争じゃなくてただのレクリエーションじゃないかと。まあ、やるからには負けたくはないのだけど。杏露酒もいいけどココアとかも用意したいところだな。紙コップとマドラーも用意しておこう。
end.
++++
代替わり後恒例、MMPの缶蹴り対策会議です。今回は戦力分析なんかが始まって結構本格的な様相。
しかし基本的にMBCCとMMPでは運動能力などに差があり過ぎるので、やはり向島は理不尽&不条理で勝負しなければならないのであった
お湯割りにうきうきするりっちゃんがかわいい件。りっちゃんはMMP比では強い方だぞ!
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