2018(03)
■UNO, DOS, TRES!
++++
「よし、これで完成だ!」
「やァー、見事なプチグランピングすわァー」
テントの中は飾り付けられ、簀の子で作られた簡易ラックが設けられた。簡単なマットまで敷かれた瞬間テント内は土足厳禁になった。テントの入り口には「終わりました」との看板。MMPは本格的な引きこもりモードに入った。
信じられるか、これが学祭3日目午後1時半の光景なんだぜ。元々やる気のないMMPは、どこまでも食品ブースで商売を続けるのではなく一定数を売り切ったらおしまいという緩いスタンス。早々に終わったんですね、昨日思ったより売れたから。
と言うか菜月先輩のこの気合いの入れよう。むしろスープの販売が終了してからが本番であるかのような感じじゃないか。早々にブーツを脱いでリラックスモードに入っていらっしゃる。簀の子ラックにはみんなの荷物が固められた。
「やあ菜月さん、精が出るね」
「どうだ、ちょっと広くならなかったか?」
「ん、いいね。僕も座らせてもらおうかな」
「それじゃあ、昨日青女さんにもらった差し入れのジュースを開けよう」
出不精サークルMMPは、大学祭だからと歩き回るでもなくほぼ全員が自分たちのブース近くにいた。奈々は友達と見て回っているそうだし、三井先輩は今日もどこかに出かけているようだけど、ほぼいますよね。
早々に営業を終え備品も粗方片付けたテントの中は、6人くらいが輪になって座れるくらいのスペースは余裕で確保されていた。圭斗先輩と菜月先輩、それから2年4人が輪になって座るその真ん中にはウノがある。
「よーし、MMP杯争奪ウノ大会やるぞ!」
「いえーい」
「とりあえずさ、負けた奴は天文部が出してるチョコバナナ買ってきて」
「あ、自分は美術部の焼き鳥買ってきてもらいたいでース」
「ん、負けたらおつかいというルールだね。わかりやすくて実にいいじゃないか」
MMPあるあるだよなあ、何かにつけてトランプがウノが始まるのは。今日にしても例に漏れず。ただ、今日は負けたらおつかいというルールだ。さすがに奢りではないと思いたい。外に出るのは面倒なので、負けたくないですね。
「野坂スキップすわ」
「マジかよ律てめえ」
「私ですね。出せませんが」
「次ボク。あ、黄色の9出せたわ」
「ん、僕だね。じゃあ、赤の9で」
「ナイス赤。はい」
「やァー、菜月先輩ナイスですわァー。リバースっとぉー」
「律てめえ!」
「さすがりっちゃん、ノサカに対するラブ&ピースが遺憾なく発揮されている」
結局この後、こーたにもリバースをかまされ律はさらにスキップでたたみかけ、俺は全然カードを出すことが出来ないでいた。ちくしょうこのドSコンビめ! そうこうしている間に圭斗先輩と菜月先輩は淡々と上がられたし。うう、華麗だ。
「待ってノサカそれカード何枚になっとんの?」
「知るか。30枚くらいは軽くあるんじゃないのか」
「やァー、見事なドロー2とドロー4の応酬っシたわ」
何か俺の負けムードが濃厚になってるけど、手札が多いということは重ね出しがしやすいし、減らすことには減らせるんだ。問題は両サイドのドSコンビがさらなる妨害をしてこないかと、残り手札の少なさだ。
菜月先輩と圭斗先輩のパシリなら喜んで引き受けるけど、コイツらのパシリには死んでもなりたくないんだよな~…! 絶対負けたくない、絶対負けたくない…! 何とかして平等に戦えるところまで減らさないと…!
「ん、何やら外に人がいるようだね」
「圭斗、見てみてくれ」
「わかったよ」
「とりあえずスキップ4枚重ねで……さらに俺のターンで5枚重ねで……」
「ふう」
「圭斗、何だった?」
「このブースはやってないのかという問い合わせだったよ。終わりましたと答えておいたよ」
「自分スね。はい」
「えーと、ここで3枚で黄色にして……」
「野坂さん黄色ナイスです」
「次ボクー。はい」
「あっ、こーたウノ言ってないスね。20枚追加で」
「2枚でしょうよ!」
外からはガヤガヤと人の往来の音が漏れてくる。大学祭の真っ最中ではあるんだけど、やってることがいつものサークルと何ら変わりない。出不精サークルに籠もれる場所を与えたらこうなるんだなと。菜月先輩の気合いも功を奏しただろう。
ウノは白熱を極めていた。何かしれっとヒロが上がっていたけど未だ俺と律とこーたが残っている。終わりそうでなかなか終わらない、かなりの長期戦。もしかしなくても菜月先輩と圭斗先輩は飽きているようだった。
「圭斗、うち自分でチョコバナナ買ってくる」
「ん、そうかい。行ってらっしゃい」
「菜月先輩がお出かけになられるだって…!?」
「野坂スキーップ」
「土田さんナイスでーす。ドロー2、上がり~」
「こーたお前英字残しだろ! 反則だ!」
「そースわ、20枚ドローしろよ」
「ペナルティは基本2枚でしょうよ!」
罰ゲームのことなんて完全に消えていた。この長期戦にいかにして決着をつけるか、それが目的。それにしたって何故こんなに終わらないんだ…!
「圭斗先輩、ボク飽きました。わざと終わらんようにやっとんちゃうの」
「菜月さんはとうの昔に飽きて自分で買い物に出かけてしまったよ」
「あー、それならボクも何か頼めばよかったです」
「ヒロのクセに菜月先輩をパシらせようとかふざけるな!」
「野坂さんの番ですよ」
「あ、はい」
end.
++++
愉快なMMPの面々は、大学祭の最中だろうといつも通りに落ち着くよ! しかしウノが終わらない。
結局菜月さんは簀の子ラックを作っていたんですね。しかしその経費ってどこから出てるのかしら。
天文部と言えば今年は学祭関係でバンデンの姿を見てないなそういや。来年また期待しましょう
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「よし、これで完成だ!」
「やァー、見事なプチグランピングすわァー」
テントの中は飾り付けられ、簀の子で作られた簡易ラックが設けられた。簡単なマットまで敷かれた瞬間テント内は土足厳禁になった。テントの入り口には「終わりました」との看板。MMPは本格的な引きこもりモードに入った。
信じられるか、これが学祭3日目午後1時半の光景なんだぜ。元々やる気のないMMPは、どこまでも食品ブースで商売を続けるのではなく一定数を売り切ったらおしまいという緩いスタンス。早々に終わったんですね、昨日思ったより売れたから。
と言うか菜月先輩のこの気合いの入れよう。むしろスープの販売が終了してからが本番であるかのような感じじゃないか。早々にブーツを脱いでリラックスモードに入っていらっしゃる。簀の子ラックにはみんなの荷物が固められた。
「やあ菜月さん、精が出るね」
「どうだ、ちょっと広くならなかったか?」
「ん、いいね。僕も座らせてもらおうかな」
「それじゃあ、昨日青女さんにもらった差し入れのジュースを開けよう」
出不精サークルMMPは、大学祭だからと歩き回るでもなくほぼ全員が自分たちのブース近くにいた。奈々は友達と見て回っているそうだし、三井先輩は今日もどこかに出かけているようだけど、ほぼいますよね。
早々に営業を終え備品も粗方片付けたテントの中は、6人くらいが輪になって座れるくらいのスペースは余裕で確保されていた。圭斗先輩と菜月先輩、それから2年4人が輪になって座るその真ん中にはウノがある。
「よーし、MMP杯争奪ウノ大会やるぞ!」
「いえーい」
「とりあえずさ、負けた奴は天文部が出してるチョコバナナ買ってきて」
「あ、自分は美術部の焼き鳥買ってきてもらいたいでース」
「ん、負けたらおつかいというルールだね。わかりやすくて実にいいじゃないか」
MMPあるあるだよなあ、何かにつけてトランプがウノが始まるのは。今日にしても例に漏れず。ただ、今日は負けたらおつかいというルールだ。さすがに奢りではないと思いたい。外に出るのは面倒なので、負けたくないですね。
「野坂スキップすわ」
「マジかよ律てめえ」
「私ですね。出せませんが」
「次ボク。あ、黄色の9出せたわ」
「ん、僕だね。じゃあ、赤の9で」
「ナイス赤。はい」
「やァー、菜月先輩ナイスですわァー。リバースっとぉー」
「律てめえ!」
「さすがりっちゃん、ノサカに対するラブ&ピースが遺憾なく発揮されている」
結局この後、こーたにもリバースをかまされ律はさらにスキップでたたみかけ、俺は全然カードを出すことが出来ないでいた。ちくしょうこのドSコンビめ! そうこうしている間に圭斗先輩と菜月先輩は淡々と上がられたし。うう、華麗だ。
「待ってノサカそれカード何枚になっとんの?」
「知るか。30枚くらいは軽くあるんじゃないのか」
「やァー、見事なドロー2とドロー4の応酬っシたわ」
何か俺の負けムードが濃厚になってるけど、手札が多いということは重ね出しがしやすいし、減らすことには減らせるんだ。問題は両サイドのドSコンビがさらなる妨害をしてこないかと、残り手札の少なさだ。
菜月先輩と圭斗先輩のパシリなら喜んで引き受けるけど、コイツらのパシリには死んでもなりたくないんだよな~…! 絶対負けたくない、絶対負けたくない…! 何とかして平等に戦えるところまで減らさないと…!
「ん、何やら外に人がいるようだね」
「圭斗、見てみてくれ」
「わかったよ」
「とりあえずスキップ4枚重ねで……さらに俺のターンで5枚重ねで……」
「ふう」
「圭斗、何だった?」
「このブースはやってないのかという問い合わせだったよ。終わりましたと答えておいたよ」
「自分スね。はい」
「えーと、ここで3枚で黄色にして……」
「野坂さん黄色ナイスです」
「次ボクー。はい」
「あっ、こーたウノ言ってないスね。20枚追加で」
「2枚でしょうよ!」
外からはガヤガヤと人の往来の音が漏れてくる。大学祭の真っ最中ではあるんだけど、やってることがいつものサークルと何ら変わりない。出不精サークルに籠もれる場所を与えたらこうなるんだなと。菜月先輩の気合いも功を奏しただろう。
ウノは白熱を極めていた。何かしれっとヒロが上がっていたけど未だ俺と律とこーたが残っている。終わりそうでなかなか終わらない、かなりの長期戦。もしかしなくても菜月先輩と圭斗先輩は飽きているようだった。
「圭斗、うち自分でチョコバナナ買ってくる」
「ん、そうかい。行ってらっしゃい」
「菜月先輩がお出かけになられるだって…!?」
「野坂スキーップ」
「土田さんナイスでーす。ドロー2、上がり~」
「こーたお前英字残しだろ! 反則だ!」
「そースわ、20枚ドローしろよ」
「ペナルティは基本2枚でしょうよ!」
罰ゲームのことなんて完全に消えていた。この長期戦にいかにして決着をつけるか、それが目的。それにしたって何故こんなに終わらないんだ…!
「圭斗先輩、ボク飽きました。わざと終わらんようにやっとんちゃうの」
「菜月さんはとうの昔に飽きて自分で買い物に出かけてしまったよ」
「あー、それならボクも何か頼めばよかったです」
「ヒロのクセに菜月先輩をパシらせようとかふざけるな!」
「野坂さんの番ですよ」
「あ、はい」
end.
++++
愉快なMMPの面々は、大学祭の最中だろうといつも通りに落ち着くよ! しかしウノが終わらない。
結局菜月さんは簀の子ラックを作っていたんですね。しかしその経費ってどこから出てるのかしら。
天文部と言えば今年は学祭関係でバンデンの姿を見てないなそういや。来年また期待しましょう
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