2018(03)
■衝撃のカザミドリル
++++
さて、今日はアルバイトだよ。とは言えポイント倍付け施策のない平日の午前中は人があまり来ないので、割とゆるっとしていてね。僕はレジ前の商品の補充をしながら、退屈なんだーとレジに立つ星羅と軽くお喋りをしていたよ。
「タンデムに憧れるんだ!」
「タンデムと言うと、バイクの2人乗りのことだね」
「そうなんだ!」
「星羅には立派なジープがあるじゃないか」
「ボクのジープもカッコいいんだ!」
「なら、どうして」
「昨日の朝、猫にご飯をあげてたんだ。そしたら、向かいのマンションの駐車場に白いビッグスクーターがやってきたんだ! 前が男の子で後ろが女の子だったんだ!」
「朝帰りという感じだね。うん、いいね。朝焼けに映えそうで」
「いかにもなデート帰りだったんだ! ボクは猫にご飯をあげるついでに隠れて2人の様子を見てたんだ! いい雰囲気だったんだ!」
星羅の家は向島大学の近くで、それはもうザ・学生街というところにドドンと建つ一軒家だ。と言うか、向かいに建つマンションというのが何を隠そう菜月さんの住んでいるマンションで、そのマンションに白いビッグスクーターとかピンポイント過ぎるよね。
それはそうとして、星羅はその2人が駐車場に帰って来た光景を見てタンデムに憧れを抱いたようだった。まあ、わからないでもないね。カップルのタンデムは絵になるよね。次の定例会で伊東にでも聞いてみようかな。
「でも、タンデムに憧れる気持ちはわかるよ。僕はバイクには乗れないけど、憧れは一応あるからね」
「圭斗は将来的にマニュアル車に乗りたいんだ。それは聞いてるんだ」
「ところで、星羅が見たというそのカップルはどんな様子だったんだい?」
「そう頻繁に会ってる感じでもなかったんだ。だから、多分付き合ってはないけどもうすぐ付き合いそうなんだ」
「へえ、楽しい時期だね」
「バイバイの挨拶が長くなってたんだ」
「名残惜しかったんだね」
「きっとそうなんだ。そしたら、奥のアパートに住んでるお姉さんがゴミ捨てのついでにやってきて、2人に挨拶してたんだ。見た感じ、お姉さんは先輩なんだ」
……と言うか、それって完全に高崎と菜月さんの朝帰りの現場を押さえたお麻里様じゃないですかー、やだー。恐怖しかなーい。僕はそんな恐ろしいことについては何も聞いてないけど星羅の話はもっと聞きたいんだー。
「お姉さんは挨拶だけして帰ったのかな?」
「尋問してる風だったんだ……ちょっと怖かったんだ」
「ですよね!」
「心当たりがあるんだ?」
「あ、いや。ちなみに、どんな尋問を」
「2人は付き合ってるんだーとか。それは2人とも否定してたんだ」
「まあ、付き合ってはないけど楽しい時期ではあるみたいな感じかな」
「きっとそうなんだ。あと、男の子の部屋ではどんなことをしてたんだーとか」
「どんなことをしてたんだろう」
「ちらっとしか聞こえなかったけど、男の子が女の子にちゅーしてるみたいな再現はしてたんだ!」
「ナ、ナンダッテー!?」
ちょっとこれは……星羅からの情報が断片的である以上、しっかりと全貌を尋問してくれたであろうお麻里様を突っついてみる必要がありそうですね!? いや、って言うか高崎お前、とうとうやったか!?
しかし、そうなってくると野坂にとっては風向きが悪いような感じだね。装飾の件でも菜月さんは大分キレてるような感じだったし。そこに高崎がこう、猛チャージをかけてくるようなところがわかってんなーって感じですね。俄然面白くなってきたよね。お麻里様、会議しましょう!
「男の子も女の子も照れてると言うか恥ずかしそうと言うか、初心な感じがしたんだ。甘酸っぱかったんだ! 圭斗だったら押し倒してるんだ。甘酸っぱさの欠片もないんだ」
「ん、今は僕のことはいいんじゃないかな」
「ちゃんと避妊はするんだ」
「ご心配なく」
「とにかく、青春って感じだったんだ。だからボクはタンデムがしてみたいんだ」
やっと話がタンデムに戻って来たけど、何か僕にとっては情報量が多すぎて混乱しそうだよ。とても今日のサークルで菜月さんの顔を見て平常心でいられる自信がないよね。愛の伝道師たるもの、何事にも動じないでいたいのだけど。いやー……でもマジか。
「だけど、タンデムがしたいとなると……星羅の彼氏さんはバイクに乗れるのかい?」
「乗れないんだ。でも車の免許はあるから原付なら乗れるんだ」
「原付じゃダメだね。じゃあ、今はドライブが精一杯だね」
「ドライブも基本ボクが運転してるんだ」
「彼氏さんの運転で乗らないのかい?」
「ボクは運転が好きなんだ。それに、助手席で泰稚がナビをしてくれたり飲み物の気を遣ってくれたりするのが優しくって好きなんだ」
「結局惚気かな。僕も星羅の彼氏さんみたいな相手がいればいいんだけどね。そんな子を助手席に乗せてドライブ。うん、いいね」
――とか何とか喋っているとお客様が来るものだから、僕も星羅もいらっしゃいませーと店員のモードに。星羅はレジを打ち、僕は真面目に商品の補充に戻っていく。いや、でもその白いビッグスクーターの件が気になってとてもバイトどころじゃないですよね。
end.
++++
猫にご飯をあげるついでに星羅が例の現場を目撃していたんだ! ……となると、当然こうなりますよねー
星羅は運転などが好きなのでスガPとのデートなどでも基本的に自分で運転をするよ。黄色いジープである。
と言うか星羅が圭斗さんに対して割と直球。圭斗だったら押し倒してるんだとかw やっぱり圭斗さんは押せ押せの人種であると理解されているようですね
.
++++
さて、今日はアルバイトだよ。とは言えポイント倍付け施策のない平日の午前中は人があまり来ないので、割とゆるっとしていてね。僕はレジ前の商品の補充をしながら、退屈なんだーとレジに立つ星羅と軽くお喋りをしていたよ。
「タンデムに憧れるんだ!」
「タンデムと言うと、バイクの2人乗りのことだね」
「そうなんだ!」
「星羅には立派なジープがあるじゃないか」
「ボクのジープもカッコいいんだ!」
「なら、どうして」
「昨日の朝、猫にご飯をあげてたんだ。そしたら、向かいのマンションの駐車場に白いビッグスクーターがやってきたんだ! 前が男の子で後ろが女の子だったんだ!」
「朝帰りという感じだね。うん、いいね。朝焼けに映えそうで」
「いかにもなデート帰りだったんだ! ボクは猫にご飯をあげるついでに隠れて2人の様子を見てたんだ! いい雰囲気だったんだ!」
星羅の家は向島大学の近くで、それはもうザ・学生街というところにドドンと建つ一軒家だ。と言うか、向かいに建つマンションというのが何を隠そう菜月さんの住んでいるマンションで、そのマンションに白いビッグスクーターとかピンポイント過ぎるよね。
それはそうとして、星羅はその2人が駐車場に帰って来た光景を見てタンデムに憧れを抱いたようだった。まあ、わからないでもないね。カップルのタンデムは絵になるよね。次の定例会で伊東にでも聞いてみようかな。
「でも、タンデムに憧れる気持ちはわかるよ。僕はバイクには乗れないけど、憧れは一応あるからね」
「圭斗は将来的にマニュアル車に乗りたいんだ。それは聞いてるんだ」
「ところで、星羅が見たというそのカップルはどんな様子だったんだい?」
「そう頻繁に会ってる感じでもなかったんだ。だから、多分付き合ってはないけどもうすぐ付き合いそうなんだ」
「へえ、楽しい時期だね」
「バイバイの挨拶が長くなってたんだ」
「名残惜しかったんだね」
「きっとそうなんだ。そしたら、奥のアパートに住んでるお姉さんがゴミ捨てのついでにやってきて、2人に挨拶してたんだ。見た感じ、お姉さんは先輩なんだ」
……と言うか、それって完全に高崎と菜月さんの朝帰りの現場を押さえたお麻里様じゃないですかー、やだー。恐怖しかなーい。僕はそんな恐ろしいことについては何も聞いてないけど星羅の話はもっと聞きたいんだー。
「お姉さんは挨拶だけして帰ったのかな?」
「尋問してる風だったんだ……ちょっと怖かったんだ」
「ですよね!」
「心当たりがあるんだ?」
「あ、いや。ちなみに、どんな尋問を」
「2人は付き合ってるんだーとか。それは2人とも否定してたんだ」
「まあ、付き合ってはないけど楽しい時期ではあるみたいな感じかな」
「きっとそうなんだ。あと、男の子の部屋ではどんなことをしてたんだーとか」
「どんなことをしてたんだろう」
「ちらっとしか聞こえなかったけど、男の子が女の子にちゅーしてるみたいな再現はしてたんだ!」
「ナ、ナンダッテー!?」
ちょっとこれは……星羅からの情報が断片的である以上、しっかりと全貌を尋問してくれたであろうお麻里様を突っついてみる必要がありそうですね!? いや、って言うか高崎お前、とうとうやったか!?
しかし、そうなってくると野坂にとっては風向きが悪いような感じだね。装飾の件でも菜月さんは大分キレてるような感じだったし。そこに高崎がこう、猛チャージをかけてくるようなところがわかってんなーって感じですね。俄然面白くなってきたよね。お麻里様、会議しましょう!
「男の子も女の子も照れてると言うか恥ずかしそうと言うか、初心な感じがしたんだ。甘酸っぱかったんだ! 圭斗だったら押し倒してるんだ。甘酸っぱさの欠片もないんだ」
「ん、今は僕のことはいいんじゃないかな」
「ちゃんと避妊はするんだ」
「ご心配なく」
「とにかく、青春って感じだったんだ。だからボクはタンデムがしてみたいんだ」
やっと話がタンデムに戻って来たけど、何か僕にとっては情報量が多すぎて混乱しそうだよ。とても今日のサークルで菜月さんの顔を見て平常心でいられる自信がないよね。愛の伝道師たるもの、何事にも動じないでいたいのだけど。いやー……でもマジか。
「だけど、タンデムがしたいとなると……星羅の彼氏さんはバイクに乗れるのかい?」
「乗れないんだ。でも車の免許はあるから原付なら乗れるんだ」
「原付じゃダメだね。じゃあ、今はドライブが精一杯だね」
「ドライブも基本ボクが運転してるんだ」
「彼氏さんの運転で乗らないのかい?」
「ボクは運転が好きなんだ。それに、助手席で泰稚がナビをしてくれたり飲み物の気を遣ってくれたりするのが優しくって好きなんだ」
「結局惚気かな。僕も星羅の彼氏さんみたいな相手がいればいいんだけどね。そんな子を助手席に乗せてドライブ。うん、いいね」
――とか何とか喋っているとお客様が来るものだから、僕も星羅もいらっしゃいませーと店員のモードに。星羅はレジを打ち、僕は真面目に商品の補充に戻っていく。いや、でもその白いビッグスクーターの件が気になってとてもバイトどころじゃないですよね。
end.
++++
猫にご飯をあげるついでに星羅が例の現場を目撃していたんだ! ……となると、当然こうなりますよねー
星羅は運転などが好きなのでスガPとのデートなどでも基本的に自分で運転をするよ。黄色いジープである。
と言うか星羅が圭斗さんに対して割と直球。圭斗だったら押し倒してるんだとかw やっぱり圭斗さんは押せ押せの人種であると理解されているようですね
.