2018(03)
■実らぬ話に花が咲く
++++
「って言うかさ、今の話にはいろいろと突っ込みどころが多すぎたね」
「ええ、本当ですね。まあ、おかげで僕の中で点と線が繋がってスッキリしてはいますが」
ひょんなことから大石君の誕生日祝いに巻き込まれた僕と麻里さん、それから村井のおじちゃん。だけど、その中でとても面白くなりそうな話が始まってしまったのだから、これもお麻里様の引きの強さなのかもしれないと思いました、まる。
「ちーちゃんさ、今星大は三井に何人告られてたっけ」
「みちゃこさん、何人いましたっけ。先輩にまで遡ると軽く5人はいたような気がしますけど」
「うん、あたしの上が3人でしょ、今の4年で2人」
「で、こまっちゃんも告白されてたし」
「星大だけで6人とかバカなの?」
「よくもまあ手近なところで済ませようとしますね三井は」
「俺も話には聞いてるから普通じゃないなとは思うし、あまり恋愛という意味での付き合いはお勧め出来ないなと。まあ、あずさには朝霞がいるので大丈夫だとは思うんですけど」
そう、年中春の色惚け野郎・三井が運命を掲げて追いかけ回している星ヶ丘の映研の女の子が、なんと大石君の幼馴染みだったのだ。ちなみにその子についての話は菜月さんがこれでもかと仕入れてくれていました。
そして、その幼馴染みのあずさちゃんが三井に付きまとわれていて困っているという話を大石君のお兄さんであるベティさんのお店でしていたんだそうだ。で、その場に居合わせた大石君と朝霞君の助言が「無視しろ」の一択。ですよね。
やたら揚々として映画撮影現場の話をしていると思ったんだ。女性絡みでなければ動かない奴だとは思っていたけど、ここまでとは。菜月さんによれば、映画の脚本家の子(あずさちゃん)が自分に猛アタックして来るので脚本とは、映画とはどうあるべきかを教えてあげているらしい。
「言って朝霞も大概だと思うけどね」
「ま、まあ……朝霞も恋愛という意味での付き合いはあまりお勧め出来ないですけど、ステージが絡まなければ普通にいいと思うんです」
「ステージが絡まなければね」
「ただ、あずさはステージに熱を上げてる朝霞が好きみたいなんで、あずさも物好きだなあとは」
「すごーい、ちーの本音だ」
三井が運命を感じているあずさちゃんの想い人は何を隠そう朝霞君だ。大石兄弟の総意としては、朝霞君のことを話すときのテンションがめちゃくちゃわかりやすかったのでほぼ間違いないとのこと。うん、まあ、あずさちゃんが物好きだというのは否定しないね。
「三井はまーた人様の物に手出して玉砕するのかなあ、楽しみだなあ!」
「お麻里様、顔がとても悪いです」
「えっ、って言うかマーさんとみちゃこって今どっち?」
「今は付き合ってないよ」
「ちょっ、みちゃこお前圭斗と麻里はともかく大石の前でだなあ」
「ちーは知ってるから平気だよ」
「あ、村井さんとみちゃこさんの話は大体聞いてます」
「――ってそりゃそうですよね!」
ちなみに、村井さんとみちゃこさんは2年の頃から付き合ったり別れたりを繰り返す関係をぐだぐだと続けている。最初に別れたのがみちゃこさんに三井が告白をした出来事がきっかけで何かわーっとなって。それからくっついたり別れたりですね。僕とお麻里様はそれを面白がってますけど。
インターフェイスメディアネットワークの中心にいる村井おじちゃんの話があまり知られていないのは、みちゃこさんと大石君の関係にもある。この2人、基本的に行動を共にしているおかげで付き合ってるのかという噂が広がってましたよね。実際には姉弟か犬と主人のような間柄だけど。そのおかげかおじちゃんはノーマークでした。
「とにかく、あずさには気をつけてもらわなくちゃ」
「って言うか、菜月さんに情報引き出してもらえばいいんじゃない?」
「お麻里様、菜月さんに財布を叩かせる気ですか」
「うん」
この業界では“三井”と書いて“財布”と読みます。
「でも、こっちのことでなっちに迷惑かけるのも悪いですもん」
「へーきへーき、菜月は三井と喋れば食費浮かせられるし一石二鳥だって」
「え、食費って」
「菜月は三井の恋愛相談カッコ笑いを聞く代わりに相談料として何かしらご飯奢ってもらってるんだよね。ちょっと前にはそれで焼き肉ゴチになったって」
「菜月パねえだろ焼き肉奢らせるとか」
「流石過ぎますね。ですが、菜月さんとて一応は女性なのですから、過度に財布を叩かせるとさすがにそろそろ危険水域まで行ってしまうのではないでしょうか」
「菜月に手を出した奴は全員アタシが殺すよね」
「……圭斗、菜月には最強のモンペがついてんだぞ」
「そうでしたね」
「……あ、えっと、俺が個人的になっちと会って相談してみようかなーと思います……はい」
大石君が自分で導き出した解決方法が一番適切な気がするね。言ってしまえば、向島勢は三井がどうこっぴどくフられて連敗記録を伸ばすかにしか興味がないのだから。
end.
++++
圭斗さんも一応は菜月さんのことを心配してはいるのですが、最強のモンペの前では手も足も出ないぞ!
三井と書いて財布と読むというのも大概だけど、その界隈では本当にそうなのだから如何ともしがたい。
くっついたり別れたりを繰り返している村井のおじちゃんとみちゃこさん。でもなんやかんや仲良しなので今後どうなるんですかね
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「って言うかさ、今の話にはいろいろと突っ込みどころが多すぎたね」
「ええ、本当ですね。まあ、おかげで僕の中で点と線が繋がってスッキリしてはいますが」
ひょんなことから大石君の誕生日祝いに巻き込まれた僕と麻里さん、それから村井のおじちゃん。だけど、その中でとても面白くなりそうな話が始まってしまったのだから、これもお麻里様の引きの強さなのかもしれないと思いました、まる。
「ちーちゃんさ、今星大は三井に何人告られてたっけ」
「みちゃこさん、何人いましたっけ。先輩にまで遡ると軽く5人はいたような気がしますけど」
「うん、あたしの上が3人でしょ、今の4年で2人」
「で、こまっちゃんも告白されてたし」
「星大だけで6人とかバカなの?」
「よくもまあ手近なところで済ませようとしますね三井は」
「俺も話には聞いてるから普通じゃないなとは思うし、あまり恋愛という意味での付き合いはお勧め出来ないなと。まあ、あずさには朝霞がいるので大丈夫だとは思うんですけど」
そう、年中春の色惚け野郎・三井が運命を掲げて追いかけ回している星ヶ丘の映研の女の子が、なんと大石君の幼馴染みだったのだ。ちなみにその子についての話は菜月さんがこれでもかと仕入れてくれていました。
そして、その幼馴染みのあずさちゃんが三井に付きまとわれていて困っているという話を大石君のお兄さんであるベティさんのお店でしていたんだそうだ。で、その場に居合わせた大石君と朝霞君の助言が「無視しろ」の一択。ですよね。
やたら揚々として映画撮影現場の話をしていると思ったんだ。女性絡みでなければ動かない奴だとは思っていたけど、ここまでとは。菜月さんによれば、映画の脚本家の子(あずさちゃん)が自分に猛アタックして来るので脚本とは、映画とはどうあるべきかを教えてあげているらしい。
「言って朝霞も大概だと思うけどね」
「ま、まあ……朝霞も恋愛という意味での付き合いはあまりお勧め出来ないですけど、ステージが絡まなければ普通にいいと思うんです」
「ステージが絡まなければね」
「ただ、あずさはステージに熱を上げてる朝霞が好きみたいなんで、あずさも物好きだなあとは」
「すごーい、ちーの本音だ」
三井が運命を感じているあずさちゃんの想い人は何を隠そう朝霞君だ。大石兄弟の総意としては、朝霞君のことを話すときのテンションがめちゃくちゃわかりやすかったのでほぼ間違いないとのこと。うん、まあ、あずさちゃんが物好きだというのは否定しないね。
「三井はまーた人様の物に手出して玉砕するのかなあ、楽しみだなあ!」
「お麻里様、顔がとても悪いです」
「えっ、って言うかマーさんとみちゃこって今どっち?」
「今は付き合ってないよ」
「ちょっ、みちゃこお前圭斗と麻里はともかく大石の前でだなあ」
「ちーは知ってるから平気だよ」
「あ、村井さんとみちゃこさんの話は大体聞いてます」
「――ってそりゃそうですよね!」
ちなみに、村井さんとみちゃこさんは2年の頃から付き合ったり別れたりを繰り返す関係をぐだぐだと続けている。最初に別れたのがみちゃこさんに三井が告白をした出来事がきっかけで何かわーっとなって。それからくっついたり別れたりですね。僕とお麻里様はそれを面白がってますけど。
インターフェイスメディアネットワークの中心にいる村井おじちゃんの話があまり知られていないのは、みちゃこさんと大石君の関係にもある。この2人、基本的に行動を共にしているおかげで付き合ってるのかという噂が広がってましたよね。実際には姉弟か犬と主人のような間柄だけど。そのおかげかおじちゃんはノーマークでした。
「とにかく、あずさには気をつけてもらわなくちゃ」
「って言うか、菜月さんに情報引き出してもらえばいいんじゃない?」
「お麻里様、菜月さんに財布を叩かせる気ですか」
「うん」
この業界では“三井”と書いて“財布”と読みます。
「でも、こっちのことでなっちに迷惑かけるのも悪いですもん」
「へーきへーき、菜月は三井と喋れば食費浮かせられるし一石二鳥だって」
「え、食費って」
「菜月は三井の恋愛相談カッコ笑いを聞く代わりに相談料として何かしらご飯奢ってもらってるんだよね。ちょっと前にはそれで焼き肉ゴチになったって」
「菜月パねえだろ焼き肉奢らせるとか」
「流石過ぎますね。ですが、菜月さんとて一応は女性なのですから、過度に財布を叩かせるとさすがにそろそろ危険水域まで行ってしまうのではないでしょうか」
「菜月に手を出した奴は全員アタシが殺すよね」
「……圭斗、菜月には最強のモンペがついてんだぞ」
「そうでしたね」
「……あ、えっと、俺が個人的になっちと会って相談してみようかなーと思います……はい」
大石君が自分で導き出した解決方法が一番適切な気がするね。言ってしまえば、向島勢は三井がどうこっぴどくフられて連敗記録を伸ばすかにしか興味がないのだから。
end.
++++
圭斗さんも一応は菜月さんのことを心配してはいるのですが、最強のモンペの前では手も足も出ないぞ!
三井と書いて財布と読むというのも大概だけど、その界隈では本当にそうなのだから如何ともしがたい。
くっついたり別れたりを繰り返している村井のおじちゃんとみちゃこさん。でもなんやかんや仲良しなので今後どうなるんですかね
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