2018(03)
■10月の鉄人
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10月12日が金曜日なのは、思う存分戦争をしてくださいと言われているようなものだと思う。13日の金曜日よりも戦意が高まり、高揚している自分がいる。戦闘着はエプロン。サークルも早抜けして今夜の戦いに備えていた。MBCC流オクトーバーフェストはもう始まっている。
さて、日頃は無制限飲みという名前で行われているのがMBCCの飲み会だ。誰かの誕生日を口実に開かれることが多い。祝われる人の好みに合わせたお酒が出てきたりして、雰囲気も気持ち主賓に引きずられる。今日は果林の誕生日。つまりそういうこと。飲みつつも、食がメイン。
タカシが星大のミドリからもらってきてくれた大量のジャガイモのおかげで、財布に大きなダメージを負うことなくこの戦いに挑むことが出来ていた。下拵えは前々から進めていた。マッシュポテトのようなものであれば、作って冷凍しておくことも保存の基本。
「おーい伊東、来たぞ。ビール入れとく余裕あるか」
「うん。あまりいっぱいは入らないかもだけど、料理してくにつれスペース出来るしなんか上手いことやるよ」
「つかすげえなこれ。お前どんだけ下拵えしてんだよ」
「冷凍庫の中にもあるよ」
冷蔵庫の中にはマッシュポテトにフライドポテト、それからコロッケなどなど。あらかじめ作って、後は揚げたり戻したりするだけの状態にしてある。大会が始まってからやってちゃ消費のペースに間に合わない。果林だけじゃなくて、高ピーもめっちゃ食べるから。
高ピーはオクトーバーフェストと言えばということでビールの担当を買って出てくれていた。と言うかオクトーバーフェストじゃなくたってデフォだもんなあ。そして、俺に手渡してくれるもうひとつのビニール袋。中を覗いてみると、すっごく本格的なウインナー。
「ドイツの祭りをオマージュしてんなら、ウインナーは要るだろ」
「ありがとう! てかこれすごいいいウインナーっぽいけど」
「安部ちゃんがドイツ語のセンセと仲良くてよ。いい店教えてもらったんだ」
「じゃあ、みんな揃ったらボイルするね」
「頼むぜ」
俺が台所で戦闘準備をしている中、部屋の方では高ピーが会場設営をしてくれていた。ちなみに、部屋の方でも地味に調理中。こないだ買った電気圧力鍋が調理をしてくれている。当然、真空保温調理鍋の方も活用中。って言うかこの会で使うために今まで練習してたようなモンだしね。
「あっ、ところでアレ伝えてくれたよね」
「ああ。買い出しでポテチは買ってくるなっつーヤツだろ」
「うちで作るからね」
「つかお前制限時間内にどんだけ作れるかみたいな企画でもやってんのかよ」
「まあ、戦いには違いないからね。俺は飲んでる暇なんてないよ」
当然ポテトチップス用のジャガイモもあらかじめスライス済み。表面のでんぷんも洗い流してあるし、後は揚げるだけっていう感じにはしてある。高ピーが来てるってことはそろそろみんな来そうだけど、買い出しでもしてるかな。
「話には聞いてたけど、すげえ量のジャガイモだな」
「タカシがもらってきてくれたんだよ。なんか、量をもらうことが人助けになるとかでさ」
「だからってこの量はバカじゃねえのか」
「でも、北辰産のじゃがいもがこの量でタダってオイシくない? 本当に助かってるんだよ。言っちゃなんだけどさ、果林の回だし食べ物はいくらあってもいいじゃんね。俺らが寝た後のことも考えておかなくちゃいけないでしょ」
タカシがジャガイモのケースを持ってきたときは本当にびっくりしたよね。5ケースあるので100個は軽くあると思いますーなんて真面目な顔して言うんだから。なんか、ミドリの職場が特殊な環境らしくて、事務所がジャガイモで溢れそうになってたとか何とかって。
でも、そのおかげで練習に精が出たのは事実だよね。だって、いくら使ってもなくならないし、いくら使ってもタダだもん。レシピ開発用の芋を自分で買ってたら、どこかでブレーキがかかってたと思うから。ある物を使って何が悪いっていう、高ピーイズムが浸透してる感じ。
「いっちーせんぱーい、来ましたー」
「あっ、果林、タカシ、来たね。上がって上がってー」
「はーい、お邪魔しまーす」
「お邪魔します」
「つか高木、お前どんなツテがあってこんだけの芋をもらってきてんだ」
「ミドリから救援要請が入りまして。最初は3ケースのつもりだったんですけど、そのバイト先に伊東先輩の高校の同級生っていう人がいて、伊東先輩の所に行くならあと2ケースは積んで行けと言われてさらに増えたような感じです」
「あれっ、こないだそんなこと言ってなくなかった?」
「忘れてましたね」
「星大ってことはリンちゃんかなー……」
「林原さんて呼ばれてましたね」
「あっリンちゃんだ。すべてを察した」
そうこうしている間に参加者がどんどんやってきて、みんなが持ち寄るお酒や食べ物もどんどん増えていく。本格的な戦いはここから。まずは高ピーからもらったウインナーをボイルして、じゃがバター用にバターを出して……やることが山積みだ。よし、練習の成果を発揮するぞ!
end.
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いち氏にとってこのオクトーバーフェストは戦争だったようです。冷蔵庫がとんでもないことになってんだろうなあ。
でも確かにコロッケみたいな物はあらかじめ作って置いておけばいいもんね。余っても後から自分で食べればいいし。さすがいち氏だぜ!
リン様の名前が出てきた瞬間全てを悟るいち氏であった。情報センターじゃ良心化してるけど尖ってる人ではあるからなあ
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10月12日が金曜日なのは、思う存分戦争をしてくださいと言われているようなものだと思う。13日の金曜日よりも戦意が高まり、高揚している自分がいる。戦闘着はエプロン。サークルも早抜けして今夜の戦いに備えていた。MBCC流オクトーバーフェストはもう始まっている。
さて、日頃は無制限飲みという名前で行われているのがMBCCの飲み会だ。誰かの誕生日を口実に開かれることが多い。祝われる人の好みに合わせたお酒が出てきたりして、雰囲気も気持ち主賓に引きずられる。今日は果林の誕生日。つまりそういうこと。飲みつつも、食がメイン。
タカシが星大のミドリからもらってきてくれた大量のジャガイモのおかげで、財布に大きなダメージを負うことなくこの戦いに挑むことが出来ていた。下拵えは前々から進めていた。マッシュポテトのようなものであれば、作って冷凍しておくことも保存の基本。
「おーい伊東、来たぞ。ビール入れとく余裕あるか」
「うん。あまりいっぱいは入らないかもだけど、料理してくにつれスペース出来るしなんか上手いことやるよ」
「つかすげえなこれ。お前どんだけ下拵えしてんだよ」
「冷凍庫の中にもあるよ」
冷蔵庫の中にはマッシュポテトにフライドポテト、それからコロッケなどなど。あらかじめ作って、後は揚げたり戻したりするだけの状態にしてある。大会が始まってからやってちゃ消費のペースに間に合わない。果林だけじゃなくて、高ピーもめっちゃ食べるから。
高ピーはオクトーバーフェストと言えばということでビールの担当を買って出てくれていた。と言うかオクトーバーフェストじゃなくたってデフォだもんなあ。そして、俺に手渡してくれるもうひとつのビニール袋。中を覗いてみると、すっごく本格的なウインナー。
「ドイツの祭りをオマージュしてんなら、ウインナーは要るだろ」
「ありがとう! てかこれすごいいいウインナーっぽいけど」
「安部ちゃんがドイツ語のセンセと仲良くてよ。いい店教えてもらったんだ」
「じゃあ、みんな揃ったらボイルするね」
「頼むぜ」
俺が台所で戦闘準備をしている中、部屋の方では高ピーが会場設営をしてくれていた。ちなみに、部屋の方でも地味に調理中。こないだ買った電気圧力鍋が調理をしてくれている。当然、真空保温調理鍋の方も活用中。って言うかこの会で使うために今まで練習してたようなモンだしね。
「あっ、ところでアレ伝えてくれたよね」
「ああ。買い出しでポテチは買ってくるなっつーヤツだろ」
「うちで作るからね」
「つかお前制限時間内にどんだけ作れるかみたいな企画でもやってんのかよ」
「まあ、戦いには違いないからね。俺は飲んでる暇なんてないよ」
当然ポテトチップス用のジャガイモもあらかじめスライス済み。表面のでんぷんも洗い流してあるし、後は揚げるだけっていう感じにはしてある。高ピーが来てるってことはそろそろみんな来そうだけど、買い出しでもしてるかな。
「話には聞いてたけど、すげえ量のジャガイモだな」
「タカシがもらってきてくれたんだよ。なんか、量をもらうことが人助けになるとかでさ」
「だからってこの量はバカじゃねえのか」
「でも、北辰産のじゃがいもがこの量でタダってオイシくない? 本当に助かってるんだよ。言っちゃなんだけどさ、果林の回だし食べ物はいくらあってもいいじゃんね。俺らが寝た後のことも考えておかなくちゃいけないでしょ」
タカシがジャガイモのケースを持ってきたときは本当にびっくりしたよね。5ケースあるので100個は軽くあると思いますーなんて真面目な顔して言うんだから。なんか、ミドリの職場が特殊な環境らしくて、事務所がジャガイモで溢れそうになってたとか何とかって。
でも、そのおかげで練習に精が出たのは事実だよね。だって、いくら使ってもなくならないし、いくら使ってもタダだもん。レシピ開発用の芋を自分で買ってたら、どこかでブレーキがかかってたと思うから。ある物を使って何が悪いっていう、高ピーイズムが浸透してる感じ。
「いっちーせんぱーい、来ましたー」
「あっ、果林、タカシ、来たね。上がって上がってー」
「はーい、お邪魔しまーす」
「お邪魔します」
「つか高木、お前どんなツテがあってこんだけの芋をもらってきてんだ」
「ミドリから救援要請が入りまして。最初は3ケースのつもりだったんですけど、そのバイト先に伊東先輩の高校の同級生っていう人がいて、伊東先輩の所に行くならあと2ケースは積んで行けと言われてさらに増えたような感じです」
「あれっ、こないだそんなこと言ってなくなかった?」
「忘れてましたね」
「星大ってことはリンちゃんかなー……」
「林原さんて呼ばれてましたね」
「あっリンちゃんだ。すべてを察した」
そうこうしている間に参加者がどんどんやってきて、みんなが持ち寄るお酒や食べ物もどんどん増えていく。本格的な戦いはここから。まずは高ピーからもらったウインナーをボイルして、じゃがバター用にバターを出して……やることが山積みだ。よし、練習の成果を発揮するぞ!
end.
++++
いち氏にとってこのオクトーバーフェストは戦争だったようです。冷蔵庫がとんでもないことになってんだろうなあ。
でも確かにコロッケみたいな物はあらかじめ作って置いておけばいいもんね。余っても後から自分で食べればいいし。さすがいち氏だぜ!
リン様の名前が出てきた瞬間全てを悟るいち氏であった。情報センターじゃ良心化してるけど尖ってる人ではあるからなあ
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