2018(02)
■pledge of friendship
++++
実家から向島に戻って来ると、まず最初に降り立つのが星港駅。そこからマンションに戻るにはまた電車を乗り継いで行かなきゃいけないんだけど、せっかく星港に来たからには少しだけでもウィンドウショッピングをしておきたい。
買い物は基本的にスタンドプレイだけど、今日は久々に友達との買い物だ。星港に降り立ってそのまま出かける約束になっている。うちが降りるバス停の前では、美奈が待っていてくれた。久し振りと声を掛けると、「おかえり」と返してくれる。
「……とりあえず、スーツケースを預ける…?」
「あー、そうだなあ。こんなの転がしたまま歩くのはちょっと辛いかも」
帰りは美奈がうちの方まで車で送ってくれることになっている、と言うか厳密に言えば美奈がうちに泊まりに来ることになっている。だからこの辺の安い駐車場に車を停めてあって、星港駅周辺を回ろうかという計画。
駅のロッカーにスーツケースを預けて身軽になる。それこそ財布とケータイだけ持って歩くような感覚。うちは基本すっぴんだし、化粧ポーチみたいな物も持ち歩かない。あっ、ハンカチとかはさすがに持ってるけど。
「あの、美奈さん合流して早々に空気読まない発言していいですか」
「……どうしたの…?」
「うち、お腹が空いてまして」
「……確かに、お昼時ではある……何か、食べに行く……」
「ありがと。ホントに途中のサービスエリアで買った五平餅しか食べてなくて」
何かを食べるにしても、この辺りには選択肢が多すぎる。一応ランチだから、スイーツ系はなし。って言うか美奈が甘いの食べられないから。どこに何があるのかもうちはあまりわからないから、美奈が提示してくれる選択肢の中から選ぶ形になる。
美奈の何が凄いって、うちの好きな物を大体わかってくれてるから選択肢が非常にシンプル。イタリアン、ラーメン、お好み焼き。美奈はそれでいいんですかという気持ちが少々。申し訳なさがちょっと。
「えーと、美奈は何が食べたいとか」
「……私は、甘い物以外は何でも食べる……菜月が好きな物を選んで……」
「でも美奈がラーメンを食べてるのが想像出来ないな」
「ゼミ室での夕飯は、麺類が多い……私がいるときは、袋めんの上に野菜炒めを乗せたり……それを、人数分作る……」
「へえ、そうなんだ。じゃあ逆に、お好み焼きにしよっか。うち、お好み焼き焼くの上手いんだ」
「菜月が焼いたお好み焼き……楽しみ……」
お好み焼きを食べることに決まったところで、お店はどこなのかうちにはさっぱり。美奈が地図を出してくれて、それについて歩く。星港は何度来ても慣れない。地上は何となく歩けるようになったけど、地下はまだまだ方向感覚が残念で。
「あっ、ちょっと待って!」
「……どうしたの…?」
「ちょっと見てもいいですか!」
「どうぞ……」
通りには、スポーツブランドの店。かわいいTシャツとか、ちょっとしたカバンとかタオルがないかなーと思って立ち止まってみる。ウィンドウショッピングはもう始まっているのだ。でも、スポーツ系だし美奈の興味とは違うだろうなあ。
「……菜月、ウエストポーチに興味が…?」
「うん。ちょっとした買い物とかによく使ってるんだ。前まで使ってたの、すぐ破けてさ。こういうブランド物は長く使えるかなあ」
「……実は、この前、このブランドのポーチを買った……」
「えっ、美奈が? 何か意外」
すると美奈は、この柄が素敵でと花柄のポーチを寄せてくれる。大柄で鮮やかなピンクが映える、確かに美奈が好きそうだなーっていう感じの。柄に一目惚れをして使い道の前についうっかり買ってしまったそうだ。
「私が買ったのは、もう少しピンクが強い……多分、布地の位置によって色柄に差が出る……これは、青が強い……」
「でも、美奈には似合うと思う。まあ、使い道はともかく。え、でもいいなあ」
脇のポケットにちょっとしたものをしまうだろ? うちの財布とケータイくらいだったら余裕で入るし、これでストップウォッチとネタ帳が入れば番組の収録くらいであればこれひとつで出掛けられるじゃないか。
「えー、いいなあ。ヘッドホンが蛍光ピンクだからコーデに全く合わないこともないんだよなあ」
「青が強い柄だから、菜月にはよく似合う……」
「決めた、買おう! 美奈とお揃いだ!」
「……お揃い」
「あっ、嫌なら違う柄に」
「ううん、全然…! むしろ、嬉しい……」
嬉しいと言ってくれる美奈が可愛いので即買いますよね。5000円以内だし、これから秋学期に入れば使い倒すもんね。安い安い。美奈とお揃いでポーチを買えたことに大変満足していると、さて、どうしてここにいるんだったかなということがすっぽ抜けていた。はて。
「菜月……改めて、ご飯に行く…?」
「あっ、そうだった。お好み焼きね」
「焼いてもらえるの、楽しみ……」
今日はこんな感じで終始うちが美奈を振り回すんだろうな。序盤からこうだもんなあ。でも、1日はまだまだ長い。買い物編と部屋編があるし、お土産だってまだ渡してない。夜は何を食べて、何を話そうか。
end.
++++
菜月さんと美奈がきゃっきゃしてるだけの話をたまに書きたくなります。冬になったらリン様ともバッタリやらせたい。
ゼミ室ではラーメンも食べる美奈だけど、カップラーメンよりも袋めんタイプの物に具を乗せてちゃんとする方が好き。
お好み焼きを焼く菜月さんてどんな感じなんだろうなあ。でも、たこ焼きをよくやってるので粉もんは得意な印象。
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実家から向島に戻って来ると、まず最初に降り立つのが星港駅。そこからマンションに戻るにはまた電車を乗り継いで行かなきゃいけないんだけど、せっかく星港に来たからには少しだけでもウィンドウショッピングをしておきたい。
買い物は基本的にスタンドプレイだけど、今日は久々に友達との買い物だ。星港に降り立ってそのまま出かける約束になっている。うちが降りるバス停の前では、美奈が待っていてくれた。久し振りと声を掛けると、「おかえり」と返してくれる。
「……とりあえず、スーツケースを預ける…?」
「あー、そうだなあ。こんなの転がしたまま歩くのはちょっと辛いかも」
帰りは美奈がうちの方まで車で送ってくれることになっている、と言うか厳密に言えば美奈がうちに泊まりに来ることになっている。だからこの辺の安い駐車場に車を停めてあって、星港駅周辺を回ろうかという計画。
駅のロッカーにスーツケースを預けて身軽になる。それこそ財布とケータイだけ持って歩くような感覚。うちは基本すっぴんだし、化粧ポーチみたいな物も持ち歩かない。あっ、ハンカチとかはさすがに持ってるけど。
「あの、美奈さん合流して早々に空気読まない発言していいですか」
「……どうしたの…?」
「うち、お腹が空いてまして」
「……確かに、お昼時ではある……何か、食べに行く……」
「ありがと。ホントに途中のサービスエリアで買った五平餅しか食べてなくて」
何かを食べるにしても、この辺りには選択肢が多すぎる。一応ランチだから、スイーツ系はなし。って言うか美奈が甘いの食べられないから。どこに何があるのかもうちはあまりわからないから、美奈が提示してくれる選択肢の中から選ぶ形になる。
美奈の何が凄いって、うちの好きな物を大体わかってくれてるから選択肢が非常にシンプル。イタリアン、ラーメン、お好み焼き。美奈はそれでいいんですかという気持ちが少々。申し訳なさがちょっと。
「えーと、美奈は何が食べたいとか」
「……私は、甘い物以外は何でも食べる……菜月が好きな物を選んで……」
「でも美奈がラーメンを食べてるのが想像出来ないな」
「ゼミ室での夕飯は、麺類が多い……私がいるときは、袋めんの上に野菜炒めを乗せたり……それを、人数分作る……」
「へえ、そうなんだ。じゃあ逆に、お好み焼きにしよっか。うち、お好み焼き焼くの上手いんだ」
「菜月が焼いたお好み焼き……楽しみ……」
お好み焼きを食べることに決まったところで、お店はどこなのかうちにはさっぱり。美奈が地図を出してくれて、それについて歩く。星港は何度来ても慣れない。地上は何となく歩けるようになったけど、地下はまだまだ方向感覚が残念で。
「あっ、ちょっと待って!」
「……どうしたの…?」
「ちょっと見てもいいですか!」
「どうぞ……」
通りには、スポーツブランドの店。かわいいTシャツとか、ちょっとしたカバンとかタオルがないかなーと思って立ち止まってみる。ウィンドウショッピングはもう始まっているのだ。でも、スポーツ系だし美奈の興味とは違うだろうなあ。
「……菜月、ウエストポーチに興味が…?」
「うん。ちょっとした買い物とかによく使ってるんだ。前まで使ってたの、すぐ破けてさ。こういうブランド物は長く使えるかなあ」
「……実は、この前、このブランドのポーチを買った……」
「えっ、美奈が? 何か意外」
すると美奈は、この柄が素敵でと花柄のポーチを寄せてくれる。大柄で鮮やかなピンクが映える、確かに美奈が好きそうだなーっていう感じの。柄に一目惚れをして使い道の前についうっかり買ってしまったそうだ。
「私が買ったのは、もう少しピンクが強い……多分、布地の位置によって色柄に差が出る……これは、青が強い……」
「でも、美奈には似合うと思う。まあ、使い道はともかく。え、でもいいなあ」
脇のポケットにちょっとしたものをしまうだろ? うちの財布とケータイくらいだったら余裕で入るし、これでストップウォッチとネタ帳が入れば番組の収録くらいであればこれひとつで出掛けられるじゃないか。
「えー、いいなあ。ヘッドホンが蛍光ピンクだからコーデに全く合わないこともないんだよなあ」
「青が強い柄だから、菜月にはよく似合う……」
「決めた、買おう! 美奈とお揃いだ!」
「……お揃い」
「あっ、嫌なら違う柄に」
「ううん、全然…! むしろ、嬉しい……」
嬉しいと言ってくれる美奈が可愛いので即買いますよね。5000円以内だし、これから秋学期に入れば使い倒すもんね。安い安い。美奈とお揃いでポーチを買えたことに大変満足していると、さて、どうしてここにいるんだったかなということがすっぽ抜けていた。はて。
「菜月……改めて、ご飯に行く…?」
「あっ、そうだった。お好み焼きね」
「焼いてもらえるの、楽しみ……」
今日はこんな感じで終始うちが美奈を振り回すんだろうな。序盤からこうだもんなあ。でも、1日はまだまだ長い。買い物編と部屋編があるし、お土産だってまだ渡してない。夜は何を食べて、何を話そうか。
end.
++++
菜月さんと美奈がきゃっきゃしてるだけの話をたまに書きたくなります。冬になったらリン様ともバッタリやらせたい。
ゼミ室ではラーメンも食べる美奈だけど、カップラーメンよりも袋めんタイプの物に具を乗せてちゃんとする方が好き。
お好み焼きを焼く菜月さんてどんな感じなんだろうなあ。でも、たこ焼きをよくやってるので粉もんは得意な印象。
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