2018(02)
■好きの買い物は実質無料!
++++
「ただいまー」
「お帰りー。何か大きな買い物だね。何買ったの?」
「見てくれ慧梨夏! じゃーん!」
今日は浅浦クンと買い物に行くんだとウキウキして出かけたカズが、出かけたときよりもっとウキウキして帰ってきた。あ、ちなみにうちは部屋で一人原稿やってました。せっかくのデートを邪魔するのも野暮だしね。
じゃーんとカズが見せびらかしてきたのは、お鍋の写真が載った箱。えっ、もしかしてお鍋買いに行ってたの? でも確かにそういう買い物だったらうちよりも浅浦クンの方が適任だね。料理が出来る出来ないの差があまりにも大きいですからね。
「何これ。新しいお鍋?」
「これは電気圧力鍋です」
「普通の圧力鍋とは違うの?」
「普通の圧力鍋はガスを使うけど、これはその名の通り電気で調理が出来る」
「技術って日々進歩してるねえ。これって何が作れるの?」
「何でも出来るけど、代表例は豚の角煮とかビーフシチューとかが今までよりすっごい短い時間で作れる」
今日はさっそくこの電気圧力鍋を使ってみたいということで、夕飯のメニューはビーフシチューに決まっているそうだ。材料を入れてほっとけばいいって本当にいいよねえ。他のことをやってる間に機械がご飯を作ってくれてるんだから。
そしてカズはこの圧力鍋のどんなところがすごいかを延々プレゼンしている。無線LANに対応していてレシピをダウンロード出来るとか、音声で案内してくれるとか。すごいのはわかるけどカズの熱量がすごすぎて何も入ってこない。サッカーまではいかないけどこれも趣味の話の範疇だよねえ。
「それから慧梨夏さん」
「はい」
「もうひとつすごいのを買ってきたんですよ」
「何が出てくるの?」
「じゃーん。これです」
次に出てきたのは、オレンジ色でかわいいお鍋の絵が書いた箱。ってまたお鍋? 今使ってるお鍋がダメになってきたなーって話は聞かないんだけど。台所のことはカズに任せてるから好きにしてもらっていいんだけど、鍋ばっかり増やしてどうするの?
「えっ、またお鍋? これは何が出来るお鍋なの?」
「聞いて驚け。これは真空保温調理器と言って、電気も使わずに余熱で調理するタイプの鍋だ。内鍋と外鍋があってー」
「ちなみに、今日の買い物でいくら使ったの?」
「4万」
「さすが! 普段は無駄遣いしないのに趣味には一切惜しまない! オタクの鑑!」
「怒られるかと思った」
「オタクの買い物で4万は安いっしょ。むしろ実質無料。それに生活費統一してるとかじゃないし」
「まあな。つか俺はオタクではないけどな?」
「そもそもがサッカーオタクなんだから素質は十分。キッチンアイテムオタクとしても開花しつつあるよね」
「いや、どうせオタク認定ならそこに洗濯も追加してくれ」
怒りませんよね。だって趣味には不干渉がうちらのルールなんだもん。それに、圧力鍋とか真空何とかってお鍋ならうちもその恩恵が受けられそうな気がするし。真空何とかのお鍋の方ではデザートに桃のプリンを作ってくれるんだって。
そしてカズはそれぞれのお鍋でこんな物が作れますとプレゼンしてくれる。カズは電子レンジの魔術師みたいなことを高崎クンが言ってたけど、もっとすごいことになりそうだよね。メニュー見てるだけでお腹空いてきちゃう。あ~、これ太るヤツ~。
「カズ! これはうちを太らせて食べようとしてますね!?」
「太らせはしないって」
「あっ」
「どうした?」
「甘酒も作れるんだねえ」
「あー、そうみたいだな。何だっけ、飲む点滴だっけ?」
「美容にもいいらしいんですよー。その他諸々いい効果があるんですよー」
「そっかー、じゃあ作ってみるか。今年の夏は暑かったし、疲れを引きずらないためにも」
「やったー! あっ、米麹の方ね!」
計算通り…! これで学祭の女装ミスコンに向けたカズの美肌計画も一歩前進ですよ。これを習慣化することによって内面からカズがかわいい女の子になるのにじわじわと近付いているのであった。ふふふ、目的に対するうちの執念をナメちゃあいけない。
「って言うか浅浦クンは相談役だったんだよね?」
「相談役と言うか厳密にはドライバーだな」
「浅浦クンはこういうの買わないのかな。浅浦クンも料理するのに」
「アイツはな、こういうレシピや取説に縛られる系の道具とは相性が悪い」
「あー……結構大雑把と言うか豪快なところあるもんね。A型なのに」
「俺の使命はもうひとつ」
「うん」
「これを来月開催されるであろう無制限飲みまでにフルで活用出来るように極めることだ」
「あっ、誰とは言わないけど誰かさんの顔が浮かんでくるよ」
高崎クンに満足してもらえるようにっていうことを考えると、しばらくは圧力鍋と真空何とか鍋を使った料理の練習が続くんだろうなあ。まあ、好きでやってるし楽しそうだし、何より出来上がる物が美味しいから何でもいいんですけどね! カズならきっとお値段以上に使いこなすから。
end.
++++
本当は化学と料理についての話にするつもりがどうしてこうなった。いち氏の趣味のお買物です。
しかし今年はワールドカップもあってテレビなども買い替えているはずなので、今年は本当にお金をよく使っているいち氏である。まあ、長く使えるからね
そして慧梨夏。「オタクの買い物で4万は安い、むしろ実質無料」とな。うん、まあ将来の家計はどう管理するのかな
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「ただいまー」
「お帰りー。何か大きな買い物だね。何買ったの?」
「見てくれ慧梨夏! じゃーん!」
今日は浅浦クンと買い物に行くんだとウキウキして出かけたカズが、出かけたときよりもっとウキウキして帰ってきた。あ、ちなみにうちは部屋で一人原稿やってました。せっかくのデートを邪魔するのも野暮だしね。
じゃーんとカズが見せびらかしてきたのは、お鍋の写真が載った箱。えっ、もしかしてお鍋買いに行ってたの? でも確かにそういう買い物だったらうちよりも浅浦クンの方が適任だね。料理が出来る出来ないの差があまりにも大きいですからね。
「何これ。新しいお鍋?」
「これは電気圧力鍋です」
「普通の圧力鍋とは違うの?」
「普通の圧力鍋はガスを使うけど、これはその名の通り電気で調理が出来る」
「技術って日々進歩してるねえ。これって何が作れるの?」
「何でも出来るけど、代表例は豚の角煮とかビーフシチューとかが今までよりすっごい短い時間で作れる」
今日はさっそくこの電気圧力鍋を使ってみたいということで、夕飯のメニューはビーフシチューに決まっているそうだ。材料を入れてほっとけばいいって本当にいいよねえ。他のことをやってる間に機械がご飯を作ってくれてるんだから。
そしてカズはこの圧力鍋のどんなところがすごいかを延々プレゼンしている。無線LANに対応していてレシピをダウンロード出来るとか、音声で案内してくれるとか。すごいのはわかるけどカズの熱量がすごすぎて何も入ってこない。サッカーまではいかないけどこれも趣味の話の範疇だよねえ。
「それから慧梨夏さん」
「はい」
「もうひとつすごいのを買ってきたんですよ」
「何が出てくるの?」
「じゃーん。これです」
次に出てきたのは、オレンジ色でかわいいお鍋の絵が書いた箱。ってまたお鍋? 今使ってるお鍋がダメになってきたなーって話は聞かないんだけど。台所のことはカズに任せてるから好きにしてもらっていいんだけど、鍋ばっかり増やしてどうするの?
「えっ、またお鍋? これは何が出来るお鍋なの?」
「聞いて驚け。これは真空保温調理器と言って、電気も使わずに余熱で調理するタイプの鍋だ。内鍋と外鍋があってー」
「ちなみに、今日の買い物でいくら使ったの?」
「4万」
「さすが! 普段は無駄遣いしないのに趣味には一切惜しまない! オタクの鑑!」
「怒られるかと思った」
「オタクの買い物で4万は安いっしょ。むしろ実質無料。それに生活費統一してるとかじゃないし」
「まあな。つか俺はオタクではないけどな?」
「そもそもがサッカーオタクなんだから素質は十分。キッチンアイテムオタクとしても開花しつつあるよね」
「いや、どうせオタク認定ならそこに洗濯も追加してくれ」
怒りませんよね。だって趣味には不干渉がうちらのルールなんだもん。それに、圧力鍋とか真空何とかってお鍋ならうちもその恩恵が受けられそうな気がするし。真空何とかのお鍋の方ではデザートに桃のプリンを作ってくれるんだって。
そしてカズはそれぞれのお鍋でこんな物が作れますとプレゼンしてくれる。カズは電子レンジの魔術師みたいなことを高崎クンが言ってたけど、もっとすごいことになりそうだよね。メニュー見てるだけでお腹空いてきちゃう。あ~、これ太るヤツ~。
「カズ! これはうちを太らせて食べようとしてますね!?」
「太らせはしないって」
「あっ」
「どうした?」
「甘酒も作れるんだねえ」
「あー、そうみたいだな。何だっけ、飲む点滴だっけ?」
「美容にもいいらしいんですよー。その他諸々いい効果があるんですよー」
「そっかー、じゃあ作ってみるか。今年の夏は暑かったし、疲れを引きずらないためにも」
「やったー! あっ、米麹の方ね!」
計算通り…! これで学祭の女装ミスコンに向けたカズの美肌計画も一歩前進ですよ。これを習慣化することによって内面からカズがかわいい女の子になるのにじわじわと近付いているのであった。ふふふ、目的に対するうちの執念をナメちゃあいけない。
「って言うか浅浦クンは相談役だったんだよね?」
「相談役と言うか厳密にはドライバーだな」
「浅浦クンはこういうの買わないのかな。浅浦クンも料理するのに」
「アイツはな、こういうレシピや取説に縛られる系の道具とは相性が悪い」
「あー……結構大雑把と言うか豪快なところあるもんね。A型なのに」
「俺の使命はもうひとつ」
「うん」
「これを来月開催されるであろう無制限飲みまでにフルで活用出来るように極めることだ」
「あっ、誰とは言わないけど誰かさんの顔が浮かんでくるよ」
高崎クンに満足してもらえるようにっていうことを考えると、しばらくは圧力鍋と真空何とか鍋を使った料理の練習が続くんだろうなあ。まあ、好きでやってるし楽しそうだし、何より出来上がる物が美味しいから何でもいいんですけどね! カズならきっとお値段以上に使いこなすから。
end.
++++
本当は化学と料理についての話にするつもりがどうしてこうなった。いち氏の趣味のお買物です。
しかし今年はワールドカップもあってテレビなども買い替えているはずなので、今年は本当にお金をよく使っているいち氏である。まあ、長く使えるからね
そして慧梨夏。「オタクの買い物で4万は安い、むしろ実質無料」とな。うん、まあ将来の家計はどう管理するのかな
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