2018(02)
■路地裏のギブ&テイク
++++
「すごーい、こんなほっそい路地にこんなおしゃれなカフェがあるんだ」
「ケーキでも食いながら話そうぜ」
宮ちゃんとタンデムでやってきた、とある路地裏のカフェ。秘密裏に進めている計画のため、何としても俺はこの女をオトさなければならないのだ。ここなら絶対に奴にはバレるまい。
「それで、話って?」
「単刀直入に言うと、俺に協力してほしい。ただし、報酬はなしだ」
「えっ、うちの信条忘れたワケじゃないでしょ?」
「ああ。「世の中ギブ&テイク」だな」
「なのに報酬はなしって先に宣言されちゃうとねー、どうなのよそれは。ねえ、高崎クン」
「最後まで聞け。ちゃんと最後まで話を聞いたら俺に協力すること自体が前払いの報酬だってわかる。それ以外に欲しけりゃ自分で取りに行くか作り出せ」
「ふーん。そこまで言うなら聞いてあげる」
秋に入り、多少模様替えしたらしいメニューを見ながら話へと入っていく。俺はミルクコーヒーと栗のモンブランを、宮ちゃんは紅茶とサツマイモのモンブランを注文した。それを待ちながらの駆け引きだ。
「今年の学祭の目玉イベントが、女装ミスコンなのはお前も知ってるよな」
「うん。学内にバンバン看板立ってるし!」
「ここだけの話、その優勝商品が「某オーディオメーカーの機材カタログから好きな物を1品」らしいんだ」
「えっ、何それめっちゃよくない?」
「だから、俺はMBCCでそれを取りに行くことにした。だが、俺が女装しても結果が伴わねえ。そこでだ」
「何となく読めてきましたよ。最後までどうぞ」
「そこでだ、MBCCからは伊東を送り込む。奴なら線も細いし顔も美形だ。まあいい素材だろう。ちなみに本人にはまだ言ってねえ。外堀から埋めて奴の退路を断つ。どうか宮ちゃんの力を貸して欲しい。つか、お前がプロデュースして欲しい」
「は~、そうきましたか」
と言うか、宮ちゃんの顔がにやついてんだよな。前向きも前向き、とうとうこの時が来たかくらいの悪い顔をしてやがる。やるやらないじゃなくてどう料理してやろうか、そんな顔だ。ま、俺も奴が断らないとわかってて頼んでんだけどな。
「高崎クン、ぜひやりましょう!」
「よっしゃ」
固く握手を交わせば、契約成立。後は伊東を追い込むだけだ。ちなみに、今日の会談の場所を路地裏のカフェとかいうわかりにくいところにしたのは、方向音痴の奴には絶対たどり着けない場所だからだ。事故って見つかっても言い訳はいくらでも出来る。俺も宮ちゃんも甘党だしな。
「生徒会時代からの悲願ですよ」
「今の方がクオリティ高く出来るだろ。金も時間もあるんだ」
「ホントに。高崎クンの言ってた意味がわかりましたよ。このプロジェクトに携わらせてもらえること自体が本当に前払いの報酬だわ」
「だろ。ダテに悪友やってねえよ。お前のことなんざある程度わかってんだ」
高校の頃、俺と宮ちゃんが生徒会長と副会長として運営した文化祭の目玉イベントこそが女装ミスコンだったのだ。当然企画立案は宮ちゃんな。宮ちゃんはそこに伊東を出そうとしてたんだけど、猛烈に断られて現在に至る。
言ってしまえば宮ちゃんにとってのリベンジ戦だ。しかも当時からは比較にならないほど宮ちゃんもグレードアップしている。何がとは言わないが。伊東を落とすことさえ出来れば俺が求める以上のクオリティにしてくれるだろう。
「コスプレやってる友達もいるし、何なら京子さんに頼んでカズ用の下着作ってもらってー」
「そこまでやるのか」
「やるならとことんやらないと。えっ、高崎クンともあろう人がそんな生温いので満足?」
「いや、とことんやってくれ。つか確か京子サンてアイツのお袋さんだよな」
「そうだね。うちから見ると彼氏のお母さん。肌着メーカーの主任さんですよ。あっ、学祭までに日焼けを何とかしないと! 美白美白!」
髪だネイルだスキンケアだとやることリストがどんどん埋まっていく様を見ていると、俺がハメたとはいえ伊東が気の毒になってきた。いや、MBCCのためだ、多少の犠牲はやむなし。
「あ、内側からもケアしなきゃ! 美肌にいい食べ物とか女性ホルモン増えそうな食べ物とか調べて日頃の食事に取り入れなきゃ」
「つか作るのはアイツだろ」
「ですね」
「あとはあれだな。とことん女化させんのにこだわるならアイツの場合禁欲が一番の課題になるんじゃねえかと真面目に思ってんだけど、その辺はどうするつもりだ」
「うち×カズの百合でオケ」
「そうかよ」
何にせよ、やる気があるのはいいことだ。最強のプロデューサーを仲間につけたところで、あとはどうやって伊東をオトすかだな。そこは俺のプレゼン能力が問われてくるワケだな。
end.
++++
慧梨夏はいち氏のバイクでタンデム慣れもしてるし高崎の後ろに乗るのにもあんまり抵抗がなさそうよね。
高崎と慧梨夏の暗躍が始まりました。いち氏がんばえー。しかしあっという間に四面楚歌になるのであった
そういや高崎のカフェデータベースがとんでもないって話があったし1回やっといてみたいなあ
.
++++
「すごーい、こんなほっそい路地にこんなおしゃれなカフェがあるんだ」
「ケーキでも食いながら話そうぜ」
宮ちゃんとタンデムでやってきた、とある路地裏のカフェ。秘密裏に進めている計画のため、何としても俺はこの女をオトさなければならないのだ。ここなら絶対に奴にはバレるまい。
「それで、話って?」
「単刀直入に言うと、俺に協力してほしい。ただし、報酬はなしだ」
「えっ、うちの信条忘れたワケじゃないでしょ?」
「ああ。「世の中ギブ&テイク」だな」
「なのに報酬はなしって先に宣言されちゃうとねー、どうなのよそれは。ねえ、高崎クン」
「最後まで聞け。ちゃんと最後まで話を聞いたら俺に協力すること自体が前払いの報酬だってわかる。それ以外に欲しけりゃ自分で取りに行くか作り出せ」
「ふーん。そこまで言うなら聞いてあげる」
秋に入り、多少模様替えしたらしいメニューを見ながら話へと入っていく。俺はミルクコーヒーと栗のモンブランを、宮ちゃんは紅茶とサツマイモのモンブランを注文した。それを待ちながらの駆け引きだ。
「今年の学祭の目玉イベントが、女装ミスコンなのはお前も知ってるよな」
「うん。学内にバンバン看板立ってるし!」
「ここだけの話、その優勝商品が「某オーディオメーカーの機材カタログから好きな物を1品」らしいんだ」
「えっ、何それめっちゃよくない?」
「だから、俺はMBCCでそれを取りに行くことにした。だが、俺が女装しても結果が伴わねえ。そこでだ」
「何となく読めてきましたよ。最後までどうぞ」
「そこでだ、MBCCからは伊東を送り込む。奴なら線も細いし顔も美形だ。まあいい素材だろう。ちなみに本人にはまだ言ってねえ。外堀から埋めて奴の退路を断つ。どうか宮ちゃんの力を貸して欲しい。つか、お前がプロデュースして欲しい」
「は~、そうきましたか」
と言うか、宮ちゃんの顔がにやついてんだよな。前向きも前向き、とうとうこの時が来たかくらいの悪い顔をしてやがる。やるやらないじゃなくてどう料理してやろうか、そんな顔だ。ま、俺も奴が断らないとわかってて頼んでんだけどな。
「高崎クン、ぜひやりましょう!」
「よっしゃ」
固く握手を交わせば、契約成立。後は伊東を追い込むだけだ。ちなみに、今日の会談の場所を路地裏のカフェとかいうわかりにくいところにしたのは、方向音痴の奴には絶対たどり着けない場所だからだ。事故って見つかっても言い訳はいくらでも出来る。俺も宮ちゃんも甘党だしな。
「生徒会時代からの悲願ですよ」
「今の方がクオリティ高く出来るだろ。金も時間もあるんだ」
「ホントに。高崎クンの言ってた意味がわかりましたよ。このプロジェクトに携わらせてもらえること自体が本当に前払いの報酬だわ」
「だろ。ダテに悪友やってねえよ。お前のことなんざある程度わかってんだ」
高校の頃、俺と宮ちゃんが生徒会長と副会長として運営した文化祭の目玉イベントこそが女装ミスコンだったのだ。当然企画立案は宮ちゃんな。宮ちゃんはそこに伊東を出そうとしてたんだけど、猛烈に断られて現在に至る。
言ってしまえば宮ちゃんにとってのリベンジ戦だ。しかも当時からは比較にならないほど宮ちゃんもグレードアップしている。何がとは言わないが。伊東を落とすことさえ出来れば俺が求める以上のクオリティにしてくれるだろう。
「コスプレやってる友達もいるし、何なら京子さんに頼んでカズ用の下着作ってもらってー」
「そこまでやるのか」
「やるならとことんやらないと。えっ、高崎クンともあろう人がそんな生温いので満足?」
「いや、とことんやってくれ。つか確か京子サンてアイツのお袋さんだよな」
「そうだね。うちから見ると彼氏のお母さん。肌着メーカーの主任さんですよ。あっ、学祭までに日焼けを何とかしないと! 美白美白!」
髪だネイルだスキンケアだとやることリストがどんどん埋まっていく様を見ていると、俺がハメたとはいえ伊東が気の毒になってきた。いや、MBCCのためだ、多少の犠牲はやむなし。
「あ、内側からもケアしなきゃ! 美肌にいい食べ物とか女性ホルモン増えそうな食べ物とか調べて日頃の食事に取り入れなきゃ」
「つか作るのはアイツだろ」
「ですね」
「あとはあれだな。とことん女化させんのにこだわるならアイツの場合禁欲が一番の課題になるんじゃねえかと真面目に思ってんだけど、その辺はどうするつもりだ」
「うち×カズの百合でオケ」
「そうかよ」
何にせよ、やる気があるのはいいことだ。最強のプロデューサーを仲間につけたところで、あとはどうやって伊東をオトすかだな。そこは俺のプレゼン能力が問われてくるワケだな。
end.
++++
慧梨夏はいち氏のバイクでタンデム慣れもしてるし高崎の後ろに乗るのにもあんまり抵抗がなさそうよね。
高崎と慧梨夏の暗躍が始まりました。いち氏がんばえー。しかしあっという間に四面楚歌になるのであった
そういや高崎のカフェデータベースがとんでもないって話があったし1回やっといてみたいなあ
.