2018(02)

■人格・役割・キャラクター

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「プロさん、カレーの鍋ガス台の上に置いときますね」
「ありがとーコンちゃん愛してる」

 今日はプロさんの部屋でSDXの収録合宿だ。現在ソルさんが会社の繁忙期で動画への参加率も落ちてるんだけど、その間に俺たち3人で出来る企画を立ち上げてやってるっていう感じかな。学生の休みは長いから。
 合宿に備えて俺は星羅にカレーを作ってもらい、それを今日の夕飯として持参した。台所ではカンが米を研いでいて、炊飯器にセットしているところ。自分たちで準備しないとプロさんの部屋では紅茶以外の物が出てこないから。

「今日は何しよっか」
「そうねー、ダラダラとマイクラ?」
「エンドラ狩るかー」

 各々のマシンを立ち上げてマイクをセット。普段はオンラインをスカイプ通話でやることの方が多いけど、無駄に集合して顔を合わせながらやるということもある。その利点って何だろう、意志疎通がしやすいこと?
 目的もなくダラダラと遊んでいるところを収録するのもいいけど、目的のない物は破綻もしやすい。SDXはソルさんがまとめ役みたいな感じに自然と落ち着いてるから、あの人がいない時点でグダグダからは逃れられない。

「はっ!」
「どうしたチータ」
「福神漬けがない! カレーなのに!」
「コンビニならすぐそこだよ。行くならついでにお酒買ってきて」
「教授テメー人をパシんなよ!」
「俺にはカットサラダ買ってきて」
「コンテメー! まあでもコンのカレーだし福神漬けは要らないか。酒もサラダも欲しいヤツが自分で買ってこい」

 ……などと、草を刈ったり木を切り倒したりしながら雑談をするのだ。グダグダな動画ならとことんグダグダを貫かなければならない。真面目にやるというスパイスはほんの少しだけでいい。

「チータ、さっきご飯何合炊いた?」
「2.5合」
「足りないかもしれない。仕事終わったからソルが来るって言ってる」
「えー! 絶対足りないじゃんか!」
「コンビニにパックご飯あるからそれ買ってきて!」
「俺が行くのかよ!」
「僕は家主だし」
「コン!」
「俺ソルの為に牛を狩るので忙しい」

 牛を狩るのは当然ゲームの中でだし、あの人は焼き肉では肉しか食べない人ではあるけれど、今回の収録には果たして参加するのか。まあ仕事終わりだから音声のみっていう感じになるのかな?
 しかし今はご飯が足りなくなるのではという懸念。ソルさんはとにかく飯を食う人だ。ソルさんが忙しくなる前にもここで合宿をやってたけど、焼きそばの量が尋常じゃなかった。しかも具は肉だけっていう。
 こういうときにコンビニまで走るのは、飄々とした教授でも落ち着いているコンでもなく、お調子者のチータというキャラクターがSDXでは適している。しかも、やってくるのが横暴な殺戮マシーンのソルというキャラクターだからだ。

「しょうがねーなー……行ってくるよー……パックご飯な。あっ、金は寄越せよ!」
「あとお酒と」
「カットサラダとゆで卵」
「テメーらなあ! しかもコンの買い物が増えてやがる! それじゃあ行ってきま」

 玄関の扉を開けた瞬間、カンの声がピタッと止まる。

「おうチータ、まるで人の気配を察知して逃げたみたいなタイミングだなあ」
「ぎゃーっ! そんな滅相もない! 俺は買い出しに出るだけだったんです何でもしますんで殺さないでー!」
「あ、ソルだ。コンちゃんその牛の量で足りる?」
「どうですかねー」

 どうやら仕事終わり……にしては大分時間が早いような気がするけど、ソルさんがやってきた。その手には大きなスーパーの袋が下がっている。買い物をしてからここに来たようだった。
 首根っこを捕まれて部屋に戻されたカンは正座をしているし、俺とプロさんの留守番組はお勤めご苦労様です、とまるでソルさんが出所してきたかのようなお迎えを。あ、これ、SDX組のソル組長と舎弟たち、アリかな。問題はどのゲームでやるかだな。

「ソル、何買ってきたの?」
「肉だ。焼いて食う。コンロもあるぞ」
「さすがだね。冷蔵庫に入れとこうか」
「そうだな、頼む。一大行事が終わったと言え、繁忙期は折り返しただけに過ぎないからな。肉を食わないとやってられない」
「焼き肉だったらそこに店あるのに」
「収録してる横で焼きながら淡々と食ってる方が面白いかと思った」
「やめてよ、モニターに油が飛び散っちゃう」
「ああ、何なら今もうこれ収録中か」

 プロさんが勝手に始めたらしいソルさんとのゲーム実況動画の配信。それがSDXの原型。巻き込まれた形のソルさんもいつしか動画のことを考えてくれるようになってたし、案外真面目で実際育ちがいいんだよ、とはプロさん談。

「これ、コンはやたら生肉持ってるけど何だこれ。ネザーでも行くのか」
「ソルが来るって言うから、ソルのために牛を狩ってた」
「そうか。俺を迎えてくれるつもりだったんだな。チータ、お前は俺のために何をしてた」
「食うモンあった方がいいだろうからってリアルに買い出し行くとこだった」
「それを俺が戻したのか」
「そーだな! 何か言いがかりつけてきてな!」
「それは悪かったな。じゃあ行って来い」
「結局行かされるんじゃねーか!」
「お酒と」
「カットサラダと」
「ゆで卵だろ! ふざけんなよテメーら後で矢達磨にしてやるからな! 行ってきます!」

 久々に4人揃ったSDX、グダグダながらも今日はここからソルさんのおかげで一本芯が通りそうな気がします。

「コン、ゆで卵だったら俺が昼の残り持ってるぞ」
「あ、マジすか」


end.


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SDXはゲームもだけどこういうリアルな日常の様子とか4人でぎゃあぎゃあやってるところが実在する人でありつつもキャラクターとしての掛け合い的で面白い、という感じだといいなあ
そして久々に星羅カレーである。星羅のカレーはおいしいんだけど、これはある種スガPの惚気のようにも見えるぞ!
カンDはドンマイ。お調子者キャラがパシられるのが一番パターンっぽいけど、ゲームで決めても良かったかもね。誰が一番ソルさんのために牛を狩れるかとか。

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