2018(02)
■愉快な化け物たちと英雄の棺
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国公立大のテストと星ヶ丘のステージが終わって1週間、向舞祭の練習にも定例会のみんなが揃うようになった。ただ、今年は冗談じゃなく殺人級の酷暑だし、とうとう星港市でも観測史上初めて40度を超えた。えっなに、死ぬの?
俺たち定例会は交渉の末に時給900円のスタッフとして活動することになった。時給が発生するからにはちゃんとやらなきゃね、と意識も引き締まる。無給よりは断然賃金の発生する方がいい。俺たちはみんなこの件でスポンサー企業と交渉してくれた圭斗を誉め称えた。ところがどっこい。
「朝霞、圭斗が死んでる。暑いもんね」
「でも、何とかしないとマジで死ぬぞ。おい圭斗、休むならせめて日陰に入るぞ。立てるか? ……大石、右側頼む。俺左支える」
「わかった」
「行くぞ。せーのっ」
交渉を頑張ってくれたのが圭斗のピーク。それからは、この暑さでずっとダウンしているのだ。元々のらりくらり動く方だとは思ってたけど、日に日に動きが鈍くなってるし、あっこれバテてんな完全にって。
元々俺は暑さに強い方だしちーちゃんは体力お化け、カオルは星ヶ丘のステージからの延長と言うこともあって体が慣れている。ビッキーがちょっと辛そうだけど、お菓子を食べる元気があるからまだ大丈夫かな。3年の問題はやっぱ圭斗で。
カオルとちーちゃんに支えられながら日陰に入った圭斗は完全に茹で上がっている。言ってしまえばこの調子じゃ圭斗は900円を返上しなきゃいけなさそうだなってくらいの状態で。
「朝霞君、大石君、実に申し訳ない」
「いいから休んでろ。これを太い血管あるトコを冷やすといい」
「ありがとう。よくこんな環境で氷なんて用意出来たね」
「こんなこともあろうかとクーラーバッグを持ってきてる」
「カオル神かよ!」
「班のブース汚したまんまだから多分そのうち戸田にシメられるヤツな」
小さめだけどちゃんとした本物のクーラーバッグだけあって、中は冷や冷やだ。カオルはこの中に保冷剤やらジップロックのフリーザーバッグの中に水を入れて凍らせたヤツやらを入れて有事に備えていたと言う。
準備が良すぎることが逆に星ヶ丘はどんなところで最近までステージをやってたんだっていう恐怖感の方が強くなりますよね。だって、経験がないと屋外での活動で何が必要になるかなんてわからないじゃんな。
「でも、こうまで暑いと買い物に出るのも億劫だよねー」
「ホントにな。今日の夕飯どうしようっていう問題な。最悪食いに行けばいいんだけど」
「ご飯を食べる気になるのが僕からすれば意味がわからないよ」
「圭斗、食べないとバテるよ」
「ところでステージの期間中は食べないことで有名な朝霞君、今ではご飯を食べているのかい?」
「ステージが終われば気力と脳内物質だけじゃどうにも出来ないからな。ちゃんと三食食って、睡眠時間を取るのは生命活動を維持する基本だぞ」
「えっ、今日のおまいう。今の台詞よっぺに聞かせてあげたい」
ちなみにステージやってるときのカオルは「ご飯なんて食べてる時間がもったいないし寝るなんて以ての外!」っていうスタンスなんですね。よっぺが嘆いてたんだよね、このままだとトイレに行く時間も削るって。でもホント別人だよなー。
「圭斗、家に帰ってからも手首とか足とか水につけたらいいよー。体に籠もった熱を発散してあげるとちょっと楽になるもん」
「さすが大石、プールに住んでる奴は違うな」
「住んでないよもう!」
「ん、それは洗面器くらいで大丈夫かな」
「それくらいでも平気だよ。お風呂掃除とかに使うブーツに水を張ってもいいよ」
「あっ、俺それで冬足湯してる。一人暮らしだとなかなか風呂にお湯張れなくてさ」
「あー、そうだよねー。俺も兄さんいない日はシャワーで済ますよ」
やっぱりちーちゃんとカオルはきゃっきゃとしてて元気だなあと思う。圭斗と比べるから余計そう見えるのかな。さっきよりはちょっと楽になったのか圭斗も時折話には参加してるけど、それでもまだまだ立ち上がるには辛いようだ。
暑さが殺人的だからという理由で休憩時間も長く取ってもらえてる。少し恐怖を覚えるのは、スタッフ側でこうなんだから踊る側はどうなってるんだろうって。激しい踊りだし炎天下だし。絶対死人出るじゃんな。ま、俺はテントの中にいるPAなんですけどね!
「いや、マジで今日の夕飯どうしよう」
「俺豚キムチにしよー。炒めるだけで楽だし」
「俺もそうしよっかな。温玉と納豆も買って」
「豚キムチ丼かー、おいしそうだなー。俺もそうしよー」
「え、何なのお前らバカなの? この期に及んで自分でご飯を用意して食うとか化け物なの?」
end.
++++
今年は屍の圭斗さんがよく喋ります。向舞祭スタッフに時給というものをもたらした英雄としても語られていますね
夏の定例会はやっぱり圭斗さんが死んでて化け物たちがきゃっきゃしてるのが楽しいんだけど、最近は朝霞Pとちーちゃんが元気でかわいい。
っていうか朝霞P準備良すぎるな!? しかもクーラーバッグは朝霞班の私物っていうね。いやホンママジで片付けなつばちゃんに怒られるぞ……
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国公立大のテストと星ヶ丘のステージが終わって1週間、向舞祭の練習にも定例会のみんなが揃うようになった。ただ、今年は冗談じゃなく殺人級の酷暑だし、とうとう星港市でも観測史上初めて40度を超えた。えっなに、死ぬの?
俺たち定例会は交渉の末に時給900円のスタッフとして活動することになった。時給が発生するからにはちゃんとやらなきゃね、と意識も引き締まる。無給よりは断然賃金の発生する方がいい。俺たちはみんなこの件でスポンサー企業と交渉してくれた圭斗を誉め称えた。ところがどっこい。
「朝霞、圭斗が死んでる。暑いもんね」
「でも、何とかしないとマジで死ぬぞ。おい圭斗、休むならせめて日陰に入るぞ。立てるか? ……大石、右側頼む。俺左支える」
「わかった」
「行くぞ。せーのっ」
交渉を頑張ってくれたのが圭斗のピーク。それからは、この暑さでずっとダウンしているのだ。元々のらりくらり動く方だとは思ってたけど、日に日に動きが鈍くなってるし、あっこれバテてんな完全にって。
元々俺は暑さに強い方だしちーちゃんは体力お化け、カオルは星ヶ丘のステージからの延長と言うこともあって体が慣れている。ビッキーがちょっと辛そうだけど、お菓子を食べる元気があるからまだ大丈夫かな。3年の問題はやっぱ圭斗で。
カオルとちーちゃんに支えられながら日陰に入った圭斗は完全に茹で上がっている。言ってしまえばこの調子じゃ圭斗は900円を返上しなきゃいけなさそうだなってくらいの状態で。
「朝霞君、大石君、実に申し訳ない」
「いいから休んでろ。これを太い血管あるトコを冷やすといい」
「ありがとう。よくこんな環境で氷なんて用意出来たね」
「こんなこともあろうかとクーラーバッグを持ってきてる」
「カオル神かよ!」
「班のブース汚したまんまだから多分そのうち戸田にシメられるヤツな」
小さめだけどちゃんとした本物のクーラーバッグだけあって、中は冷や冷やだ。カオルはこの中に保冷剤やらジップロックのフリーザーバッグの中に水を入れて凍らせたヤツやらを入れて有事に備えていたと言う。
準備が良すぎることが逆に星ヶ丘はどんなところで最近までステージをやってたんだっていう恐怖感の方が強くなりますよね。だって、経験がないと屋外での活動で何が必要になるかなんてわからないじゃんな。
「でも、こうまで暑いと買い物に出るのも億劫だよねー」
「ホントにな。今日の夕飯どうしようっていう問題な。最悪食いに行けばいいんだけど」
「ご飯を食べる気になるのが僕からすれば意味がわからないよ」
「圭斗、食べないとバテるよ」
「ところでステージの期間中は食べないことで有名な朝霞君、今ではご飯を食べているのかい?」
「ステージが終われば気力と脳内物質だけじゃどうにも出来ないからな。ちゃんと三食食って、睡眠時間を取るのは生命活動を維持する基本だぞ」
「えっ、今日のおまいう。今の台詞よっぺに聞かせてあげたい」
ちなみにステージやってるときのカオルは「ご飯なんて食べてる時間がもったいないし寝るなんて以ての外!」っていうスタンスなんですね。よっぺが嘆いてたんだよね、このままだとトイレに行く時間も削るって。でもホント別人だよなー。
「圭斗、家に帰ってからも手首とか足とか水につけたらいいよー。体に籠もった熱を発散してあげるとちょっと楽になるもん」
「さすが大石、プールに住んでる奴は違うな」
「住んでないよもう!」
「ん、それは洗面器くらいで大丈夫かな」
「それくらいでも平気だよ。お風呂掃除とかに使うブーツに水を張ってもいいよ」
「あっ、俺それで冬足湯してる。一人暮らしだとなかなか風呂にお湯張れなくてさ」
「あー、そうだよねー。俺も兄さんいない日はシャワーで済ますよ」
やっぱりちーちゃんとカオルはきゃっきゃとしてて元気だなあと思う。圭斗と比べるから余計そう見えるのかな。さっきよりはちょっと楽になったのか圭斗も時折話には参加してるけど、それでもまだまだ立ち上がるには辛いようだ。
暑さが殺人的だからという理由で休憩時間も長く取ってもらえてる。少し恐怖を覚えるのは、スタッフ側でこうなんだから踊る側はどうなってるんだろうって。激しい踊りだし炎天下だし。絶対死人出るじゃんな。ま、俺はテントの中にいるPAなんですけどね!
「いや、マジで今日の夕飯どうしよう」
「俺豚キムチにしよー。炒めるだけで楽だし」
「俺もそうしよっかな。温玉と納豆も買って」
「豚キムチ丼かー、おいしそうだなー。俺もそうしよー」
「え、何なのお前らバカなの? この期に及んで自分でご飯を用意して食うとか化け物なの?」
end.
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今年は屍の圭斗さんがよく喋ります。向舞祭スタッフに時給というものをもたらした英雄としても語られていますね
夏の定例会はやっぱり圭斗さんが死んでて化け物たちがきゃっきゃしてるのが楽しいんだけど、最近は朝霞Pとちーちゃんが元気でかわいい。
っていうか朝霞P準備良すぎるな!? しかもクーラーバッグは朝霞班の私物っていうね。いやホンママジで片付けなつばちゃんに怒られるぞ……
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