2018(02)
■一旦リフレッシュ
++++
テストも集中講義も終わって本格的な夏休みに入った。盆になれば実家に帰るし、そうこうしている間にインターフェイスの夏合宿がある。その打ち合わせや練習もあって何だかんだでスケジュールは埋まりつつあった。
今日はエイジがうちに遊びに来た。どうやらエイジも班の打ち合わせがあったらしく、その帰りに寄ったとのこと。提げてきてくれた買い物袋の中身は、テスト期間中は封印していたお酒類。
「高木、お前の班どうよ」
「順調じゃないかなあ。今度うちで打ち合わせするよ」
「いや、お前この部屋でよく打ち合わせしようってなったな!? 汚いにも程があるべ! 先輩らも上げるんだろっていう!」
「明日片付けようと思ってたんだ」
「今すぐやれ!」
今度この部屋で4班の打ち合わせがあると聞くやいなやエイジはすくっと立ち上がり、床の上にあるものを一斉にベッドの上に放り投げ始めた。そして手にする掃除機。こうなるとエイジの大掃除は止まらない。
元々俺は人を部屋に上げる前には気合いを入れて掃除をしていたし、そのために来る前には最低でも前日までにはお知らせをくださいと言っていた。だけどエイジがうちに来る頻度が上がってくると、まあいっかって。
だんだんうちの実状がわかってきたエイジは、どうやらこの汚さに耐えられなかったらしい。エイジはちょっと神経質なところがあるなあとわかってきたのも最近のこと。一宿一飯の恩義じゃないけど、泊まるからにはとうちの家事に手をつけ始めた。
「お前、台所はちゃんとしてるんだろうな?」
「うーん、まあ、死にはしない程度には」
「じゃあ全然だっていう! お前の班って班長が果林先輩だべ? あの人がいて飯を食わないワケないんだから台所はちゃんとしとけ!」
「あ、それは確かにそうだなあ。料理をする可能性はあるかも」
掃除機が一段落して、ベッドの上に放り投げられた主に洗濯物を今度は洗濯機に放り込み、スタートボタンをポチッと。そして次にエイジが手に取ったのはコロコロだ。ちなみにこのコロコロは元々うちにあったんじゃなくてエイジが持ち込んだ物。
「あっ! ベッドカバーまで剥がされてる!」
「ついでだから洗濯機にぶちこんだべ。洗濯機は中がスカスカすぎても汚れ落ちが良くないっていう。ところで冷蔵庫の中はどうなってる」
「中? まあ、食料がちょいちょい」
「盆には帰省すんだろ?」
「そうだね」
「9月まで保たないモンは全部班打ち合わせで果林先輩に食ってもらっとけ。体のいい冷蔵庫整理だっていう」
「先輩にやらせることかなあ」
「言わなきゃバレんべ」
エイジが言うには、実家から戻ってきたときにまたスムーズにスタートが切れるように、帰省前にしっかり片付けておくことが必要なんだとか。へーなるほどなーと納得していたら何納得してんだって叩かれた。痛い。
部屋の掃除が少し落ち着いて、洗濯機の音を聞きながら飲むコーヒー。これが終われば今度は水回りの掃除が始まるそうだ。本当に、エイジの働きは一宿一飯の恩義にしてはお釣りが来るよね。だって、現時点で俺は何もしてない。
「ところでお前、実家にはどーやって帰るんだっていう」
「さすがに今回は新幹線かなって。本当は夜行バスとか青春18きっぷも視野に入れてたんだけど、向こうの状況がよくわかんないし」
「雨とか台風ってマジ怖いべ。こないだの雨でお前の実家は大丈夫だったんか」
「うん、うちは何とか大丈夫だったみたい。でも、エイジの家の方も大変だったんじゃないの? 山浪も酷かったって」
「いや、うちも大丈夫だったんだべ」
「お互い、無事でよかったね」
「ホントだべ」
「とりあえず新幹線で行きは帰って、帰りは何の、どこの路線が生きてるのかを調べて鈍行で帰ってこようと思うんだよね」
「よくやるな」
「元々こういうちょっとした旅って好きだし」
帰省の道のりもちょっとした旅行にしようと思ってたけど、行きはとりあえず最短で帰っておくことに。交通費は出すから新幹線で帰ってきなさいって親からも釘を差されてるしね。寄り道好きなのもバレてるから。
最近は何十年に一度の豪雨っていうのが頻繁に降ってる気がする。俺がまだ紅社エリアに住んでた頃にも土砂崩れとかがあったし。いつ、どんな災害があるかわかんないし一度家族や友達に会っておくのは必要だなって。
「エイジ、何かおみやげ買ってくるよ」
「そーかそーか。期待しないで待ってるっていう」
「通り道に有名な地ビールがあるらしくてさ」
「気になる」
「でしょ」
冷蔵庫の中にはしっかりとビールが冷やされている。一通りの家事が終われば、夕飯はどうしようっていう時間になっているはず。スーパーに出かけて、必要最低限の食材を買って。簡単な乾杯とちょっとしたお喋り。それが夏の夜のちょっとした日常。
「おっ、洗いが終わった。すすぎだべ」
「洗濯するのはいいけどさ、干すのと取り込むのと畳むのがめんどうなんだよね」
end.
++++
久々にまともなタカエイをやった気がする。エイジ誕です。そういやTKGは集中講義取ってましたね。起こしてたんやろなあ例によって
確かに班打ち合わせの後に帰省なんだから、冷蔵庫は綺麗にしてもらえるんですよね。ただ、日持ちする物もすっからかんにされそう。
ところで順調な4班に対し、エイジのいる3班の様子が見えないのがなかなか怖いけれども…?
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テストも集中講義も終わって本格的な夏休みに入った。盆になれば実家に帰るし、そうこうしている間にインターフェイスの夏合宿がある。その打ち合わせや練習もあって何だかんだでスケジュールは埋まりつつあった。
今日はエイジがうちに遊びに来た。どうやらエイジも班の打ち合わせがあったらしく、その帰りに寄ったとのこと。提げてきてくれた買い物袋の中身は、テスト期間中は封印していたお酒類。
「高木、お前の班どうよ」
「順調じゃないかなあ。今度うちで打ち合わせするよ」
「いや、お前この部屋でよく打ち合わせしようってなったな!? 汚いにも程があるべ! 先輩らも上げるんだろっていう!」
「明日片付けようと思ってたんだ」
「今すぐやれ!」
今度この部屋で4班の打ち合わせがあると聞くやいなやエイジはすくっと立ち上がり、床の上にあるものを一斉にベッドの上に放り投げ始めた。そして手にする掃除機。こうなるとエイジの大掃除は止まらない。
元々俺は人を部屋に上げる前には気合いを入れて掃除をしていたし、そのために来る前には最低でも前日までにはお知らせをくださいと言っていた。だけどエイジがうちに来る頻度が上がってくると、まあいっかって。
だんだんうちの実状がわかってきたエイジは、どうやらこの汚さに耐えられなかったらしい。エイジはちょっと神経質なところがあるなあとわかってきたのも最近のこと。一宿一飯の恩義じゃないけど、泊まるからにはとうちの家事に手をつけ始めた。
「お前、台所はちゃんとしてるんだろうな?」
「うーん、まあ、死にはしない程度には」
「じゃあ全然だっていう! お前の班って班長が果林先輩だべ? あの人がいて飯を食わないワケないんだから台所はちゃんとしとけ!」
「あ、それは確かにそうだなあ。料理をする可能性はあるかも」
掃除機が一段落して、ベッドの上に放り投げられた主に洗濯物を今度は洗濯機に放り込み、スタートボタンをポチッと。そして次にエイジが手に取ったのはコロコロだ。ちなみにこのコロコロは元々うちにあったんじゃなくてエイジが持ち込んだ物。
「あっ! ベッドカバーまで剥がされてる!」
「ついでだから洗濯機にぶちこんだべ。洗濯機は中がスカスカすぎても汚れ落ちが良くないっていう。ところで冷蔵庫の中はどうなってる」
「中? まあ、食料がちょいちょい」
「盆には帰省すんだろ?」
「そうだね」
「9月まで保たないモンは全部班打ち合わせで果林先輩に食ってもらっとけ。体のいい冷蔵庫整理だっていう」
「先輩にやらせることかなあ」
「言わなきゃバレんべ」
エイジが言うには、実家から戻ってきたときにまたスムーズにスタートが切れるように、帰省前にしっかり片付けておくことが必要なんだとか。へーなるほどなーと納得していたら何納得してんだって叩かれた。痛い。
部屋の掃除が少し落ち着いて、洗濯機の音を聞きながら飲むコーヒー。これが終われば今度は水回りの掃除が始まるそうだ。本当に、エイジの働きは一宿一飯の恩義にしてはお釣りが来るよね。だって、現時点で俺は何もしてない。
「ところでお前、実家にはどーやって帰るんだっていう」
「さすがに今回は新幹線かなって。本当は夜行バスとか青春18きっぷも視野に入れてたんだけど、向こうの状況がよくわかんないし」
「雨とか台風ってマジ怖いべ。こないだの雨でお前の実家は大丈夫だったんか」
「うん、うちは何とか大丈夫だったみたい。でも、エイジの家の方も大変だったんじゃないの? 山浪も酷かったって」
「いや、うちも大丈夫だったんだべ」
「お互い、無事でよかったね」
「ホントだべ」
「とりあえず新幹線で行きは帰って、帰りは何の、どこの路線が生きてるのかを調べて鈍行で帰ってこようと思うんだよね」
「よくやるな」
「元々こういうちょっとした旅って好きだし」
帰省の道のりもちょっとした旅行にしようと思ってたけど、行きはとりあえず最短で帰っておくことに。交通費は出すから新幹線で帰ってきなさいって親からも釘を差されてるしね。寄り道好きなのもバレてるから。
最近は何十年に一度の豪雨っていうのが頻繁に降ってる気がする。俺がまだ紅社エリアに住んでた頃にも土砂崩れとかがあったし。いつ、どんな災害があるかわかんないし一度家族や友達に会っておくのは必要だなって。
「エイジ、何かおみやげ買ってくるよ」
「そーかそーか。期待しないで待ってるっていう」
「通り道に有名な地ビールがあるらしくてさ」
「気になる」
「でしょ」
冷蔵庫の中にはしっかりとビールが冷やされている。一通りの家事が終われば、夕飯はどうしようっていう時間になっているはず。スーパーに出かけて、必要最低限の食材を買って。簡単な乾杯とちょっとしたお喋り。それが夏の夜のちょっとした日常。
「おっ、洗いが終わった。すすぎだべ」
「洗濯するのはいいけどさ、干すのと取り込むのと畳むのがめんどうなんだよね」
end.
++++
久々にまともなタカエイをやった気がする。エイジ誕です。そういやTKGは集中講義取ってましたね。起こしてたんやろなあ例によって
確かに班打ち合わせの後に帰省なんだから、冷蔵庫は綺麗にしてもらえるんですよね。ただ、日持ちする物もすっからかんにされそう。
ところで順調な4班に対し、エイジのいる3班の様子が見えないのがなかなか怖いけれども…?
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