メモと小ネタ帳

まっすぐに(クライヴ・ジョシュア・ジル)

2024/07/27 23:33
FF16
エッダが語るアルケーの空へと変わってから空は覆われているものの変わらず月は煌めきメティアは赤く光っている。


混沌とした情勢と疲弊した心が黄昏から終息へと向かうのだとヴァリスゼアの人々が怯えている夜の刻。パチパチと火の粉がはぜる焚火は3人の姿と一匹の狼と一匹の馬(チョコボ)の姿を照らし出す。

焚火をぼんやりと眺めるクライヴの傍で右側に弟のジョシュア、左側にはつい最近彼と恋人と呼べる仲となった幼馴染のジルが寄り添っていた。
ルサージュ卿に協力を求めようとクリスタルロードを通りながらヨ―テと語った時を思い出すよ、あの時から僕らが引き起こすのが混沌であっても自分の意思で得ようとする不確実な世界だろうかと考えていたとジョシュアが語る。
クライヴはその想いの背後にあるものも受け入れながら頷くと共に、正式にナイトになってから3人で出ていった青空の日を思い出していた。
夜ともなれば魔物が危険を増す。そうなる前に戻ろう。それまではトルガルも喜んでいるし、ジョシュアの身体を気遣いながら少し遺跡を見て回ろう。夜にロザリスから出るとするなら自分がもっと大人になって激しい戦いに赴く時だ。弟を守るのだという誓いをこの胸に抱えながら。ある意味では今もそうである。
ジルは彼の左肩に頭を乗せ、兄弟ふたりの語らいに静かに耳を傾けている。ふとしたことでも気遣って彼らと血がつながっていなくても家族の様に傍にいて支えるのが自分の役目だとそう思っていたからと。
メティアに視線を向け、心の中でまた祈りを捧げる。
彼らと一緒にいられる大切なこの時がとって何よりの―…。

ジョシュアがジルのその様子に気づき、彼女が願いのことで苦しい想いをしない為にもおとぎ話に関連して話題を差し出した。
「ロザリアではフェニックスに関するおとぎ話がたくさんあったね」
その内の幾つかが拠点の図書室に置いてあるので子どもたちによく質問されたものだ。
「…ジル、北部地方にもそうしたものはあったのか」
トルガルの目覚めを思い出しながらクライヴが尋ねると。
「寒い地方だから暮らしに関係したものを偶に口ずさんでいたわ。針子をしながら、私に出来ることをずっと探していた…」
ぽつぽつと静かにそう語る。
「…私が来た頃にはふたり共もう書物に随分と親しんでいたわね。ジョシュアは特に才能があるのだと周囲の皆から言われていて。兄弟揃えば文武両道だとマードック将軍も語っていた…」
ジルはクライヴの肩越しにジョシュアを、そしてクライヴ自身へ視線を投げる。
「私は北部での暮らしや何か物語を語るより、ふたりの力になりたい。あなたたちの背中を見送る度にまっすぐにそう思っていた」
「…ありがとう、ジル」
「…今も変わらないな」
トルガルがジルの方へと寄っていく。ジルがトルガルを優しく撫で。
「トルガル、あなたも…うん。一目見てからクライヴにすぐに懐いていたものね」
アンブロシアはジョシュアの方へ寄って来た。
ジョシュアもアンブロシアを見つめ礼を告げる。
「雛の時から決めていたんだね、兄さんの役に立つと」
「…ふたりとも、まっすぐだったな」
「…兄さんだって」
「…あなたも」

おとぎ話は時に紆余曲折する。だからこそこのヴァリスゼアの舞台にはあまたの神話が生まれたのだ。
悲劇や痛み、混沌が避けられないとしても誓いに対してまっすぐに最後までやり遂げると決めたひとりの男の決意。


最後の物語としてこの風の大陸と灰の大陸に残るものを見届けたいとジルは願う。
あの場所には自分は行けない。だからこそ彼らが帰って来て語ってくれることを祈るのだ。

真実を知りたい。
その為にも辛くて悲しくも厳しい現実と戦う。
シドの前で彼女とそう誓った。

…各地を見て回っていた。ハルポクラテスとモースの書物に限らず幾つか見聞きしたものの語らいをしたよ。
…俺もジルと共にヴァリスゼア各地を回っていた。
ふたりで必ずあなたに会いに行くと、そう心に秘めながらね。


僕が書物を記す時にはそれを書いて、いいかな。



クライヴは黙って目を伏せてから少し考え事をした後に弟をまっすぐに見つめ。
静かに頷いた。
ジルは彼の傍らにまた寄り添いながら微笑んだ。

ジョシュアもまっすぐに兄とジルを見つめ返した。僕が人として生きている証にしたいんだと口元を少し緩めながら。







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