メモと小ネタ帳

授ける(クライヴとジョシュア)

2024/07/23 23:37
FF16
疑いの矛先はすぐに兄に向かった。あの場にいたのは殺された父上、炎に巻き込まれたマードック将軍、中には助けを呼んだにも関わらずザンブレク皇国兵に手を掛けられた者を含め亡くなったロザリアの兵士たち。行方不明になったウェイドとトルガル、アンブロシアを除いたら僕たちを裏切った母様に連れていかれた兄のみだったのだから、当然だ。

ザンブレクの暗殺部隊にフェニックスの力を用いる雑兵がいる―。
瞬く間に教団の彼らは処分をどうするのか話し合っていた。

そのことを告げられあの日をすぐに思い出した。兄さんにフェニックスの祝福を送った―正式に兄がナイトへとなった日を。

手を取る時はなるべく右手を取った。剣を握る手がそちらだからだ。
腕を握る時も僕の右手で兄の右手を取って。真正面から向き合うよう姿勢を向ける。

兄さんの決意と僕からの信頼。それがいつもそこにあった。


「…すぐに会えないと分かっていても変わらなかったよ」
夜遅く、マーサの宿にてジルは2階の寝室でトルガルとアンブロシアは外の馬(チョコボ)小屋に先に眠りについてもらってから兄弟ふたりでマーサが特別に出してくれた酒を少しずつ口に含めながら語り合っていた。
「…ひとりでずっと抗ってくれていたのか」
「ひとりじゃなかった。あなたの意思でフェニックスに手を掛けた訳じゃない。それに兄さんは僕の仇を取ろうとそれまでずっと、ずっと耐えてくれていた…そう考えて動いていたから」
「買い被り過ぎだ…俺はお前もジルにももう会えないんだ、ひとりなんだと…せめてそれだけは…そんな風に考えていただけだ」
「そうかな。率先して誰かを守ろうとしていたの、変わっていないと僕はあなたを目にしてすぐに分かったよ。シドはそれが失われていないと気づいていたから兄さんに託した。
僕も同じだよ。一緒にはまだいられなくても。あの日と同じー…今度はフェニックスの尾を授けることにしたんだ」
懐からフェニックスの尾を取り出す。
神々しいまでの炎を宿す度にジョシュアの声が聞こえていた。

クライヴ、と。

それは遠い遠い過去から繋がっている炎の民の血筋であり。ロズフィールド家の長男であり。
5つ下の弟、ジョシュア・ロズフィールドの兄でもあり、ナイトでもある。
そしてー。
目の前に存在している同じ血を分けた男がもっとも信頼を寄せる存在であり誓いそのもの。

彼は他の召喚獣の力をフェニックスを除いてすべて吸収していた。
それでいて彼自身が授けられたのだと考えているのはフェニックスの祝福のみである。

自身が器である運命から抗い逸脱するのと同じ様に弟ももしかしたらー。
選ばされた器だとしても授け、信頼を示したのは彼自身の意思なのだと。
最後の戦いにおいて証明する決意を固めているのだろう。

―クライヴ、騎士としての道を歩む気はあるかー?
公子として位は下がるとしても父が授けてくれた別の道。
弟が授けてくれた守る為の力。不死鳥の盾。


「休むか。明日も早いぞ」
「子どもの頃は夜遅くまで宝探しをしていたね」
「…宝探しとは違うが、ネクタールから詳細不明のモブハントの依頼があったな。探し当てに一緒に行くか」
「誰に向かって言っているんだい、兄さん」
「怖気づいたりはしない、と。昔から負けず嫌いだったしな」
「あなたの弟だからね」



※分け与えられるのがフェニックスのみだということから。
ジョシュアからのその都度その都度の信頼を注がれる意味と、最後の最後で相手側の思惑では奪うだけだったクライヴが弟から授けられた力で分け与える意味について。




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