Viola mandshurica
貴方の名前
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初めて日野先輩と話をした翌日。
その日の放課後も廊下で先輩に出会った。
先に軽く会釈すると先輩も気付いたらしく、右手をあげて、よぉと声をかけてもらえた。
「菅原じゃないか。」
「日野先輩は今日も新聞部ですか?」
「ああ、倉田が原稿を持ってくる日になってしまったから…部活は無いけどな。」
「大変ですね。」
やれやれといった風にしながらも微笑んでいたから、私も口元に手を軽く添えながら小さく笑った。
「あ…でも、恵美ちゃんも先輩も寮生活ですよね?寮では駄目なんですか?」
首を傾げる私を見て、先輩は苦笑いした。
「公私のけじめは大事だからな…それに、何より。」
「?何より?」
「倉田の部屋から出来ないって声が聞こえてきてさ。」
「あはは…聞こえたんですね。」
「あぁ、だから今日も出来てなかったら参考の記事を見せてやろうと思って。」
手が焼けると言いたげな日野先輩だけど、それが何だか微笑ましくて笑ってしまった。
「どうした菅原?」
「あ、いや、恵美ちゃんが羨ましいなって。」
その言葉に日野先輩は笑った。
「なんだ、菅原もそんなに怒られたいのか?」
「それは遠慮します。」
「はは、素直だな。」
日野先輩は笑うときにとても気持ちよく笑ってくれる。
ほんとに理想の先輩だなー。
「遅れてすみません!」
勢いよく走ってくる恵美ちゃん。
日野先輩にぶつかるんじゃ、ってくらいの勢いで記事を渡す。
「お願いします!」
「お、出来たか。」
日野先輩は恵美ちゃんから紙面を受け取って新聞部の中に入っていく。
「じゃあな菅原、気を付けて帰れよ。」
「あ、ありがとうございます。」
軽くお辞儀をする、日野先輩はまたひらひらと手を振って部屋の奥に消えていった。
そしてまだ緊張した顔の恵美ちゃんも中に入る。
頑張って、恵美ちゃん。
心のなかでそう思ったのだった。
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