Viola mandshurica
貴方の名前
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5月中旬、私は引っ越しをすることにした。
…というのも、思ったよりも高校が遠くて、とてもじゃないけど、通うなんて無理と気づいてしまったのだ。
まず、最寄の駅まで20分はかかるし、電車も乗り継ぎが多いし…というのが、帰りにもあるから、もう帰ったら寝る…みたいな生活が続いて…
でも、この高校に入る為に勉強も頑張ったし、実際にはまだ三週間位しか経ってなかったけど友達も出来たし…なんて思うと辞める訳にもいかず、悩んでいると……それを可哀想に思ったのか、お母さんが一枚のチラシを差し出した。
「瑞希、寮なんてどう?」
「寮?」
「学校管理じゃなくて認可してる寮だけど、駅も一駅位で、部屋も個室みたいだし中々良いと思うんだけど。」
そのチラシを受け取って、隅々まで読む。
大きく載った外装はレンガ造り風のお洒落な雰囲気で内装の写真には綺麗なリビングに一人部屋、まぁ流石にお風呂とかは共同だけど、規律もそんなになくて、食事は朝と必要なら夕食も作って貰えるらしい(キッチン使うって申請して自分で作ってもいいらしいけど)…でも…
「お母さん……申し込みは6月からだって書いてるけど、大丈夫なの?」
「あぁ、それなら大丈夫!今年の入居者がそんなに居ないから大歓迎だって、あ、お金は心配しなくていいのよ。」
「お母さん!有難う!!」
「瑞希、これからも高校生活を頑張りなさいよ!」
そう言うお母さんは嬉しそうだった。
荷物は既に割り当てられた部屋に届いてるらしいので、財布とか普段の出かけるときと同じような持ち物だけ持って寮を目指す。
地図を見ながら歩いていると、少し先で同じ高校の制服を着た子が地図と全く同じ道を歩いていたので、私は案内してもらおうと思い、声をかけた。
「あ、あの。」
その子は気づいてくれたみたいで、振り向くと笑顔で小首を傾げる。
「僕ですか?」
「あ、はい…その、此処に行きたいんですが…」
地図の載った寮のチラシを見せると彼はあぁ、とさわやかな笑顔を崩さずに私を見た。
「此処なら僕、住んでますよ、案内しましょうか?」
「本当ですか!?有難うございます!」
こうして、私は彼の少し後ろを付いていくことにした。
その間、彼は嬉しそうに話しかけてくれて、本当に出会ったのが彼で良かったと思った。
「そう言えば、名前はなんと言うんですか?」
「あ、えっと、菅原瑞希、一年です。」
「あ、それなら僕と同じだね、僕は坂上修一、一年だよ。これから宜しくね。」
「坂上君かー…あ、宜しくね。」
それから坂上君は寮に向かいながら、あそこの店はアルバイトを募集してるよ、とか…此処は女の子に人気だよ、とか、近所のお店を説明してくれた。
これからの高校生活、寮でも友達が出来たら良いな、なんて思いながら坂上君の話を聞いていたのだった。