短編
貴方の名前
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草食系とは言いますが
周りは僕のことを所謂、草食系と言いますが、そんなことは無いのです。
きちんと好きな人には思っていることを話すんです、そんな僕は寧ろ肉食系と言われても良いでしょう。
「あ、荒井君!」
勿論、今日は僕から誘ったデートです、僕もやれば出来るんです。
…15分前に着くように来た筈ですが、菅原さんは既に待ち合わせ場所に居ました。
ここは彼氏である僕が早く着いて、菅原さんに
『ごめん、待った?』
と言われて
『僕も今、来た所ですよ。』
…そう言いながら微笑みかける予定だったんですが
「すみません、待たせてしまいましたか?」
「ううん、私もさっき着いたの。」
彼女は僕に笑いかけて…こんな予定では無かったのですが…まぁ、良いです、今日は長いんですから。
「今日は映画館だよね、楽しみだな!荒井君と一緒だなんて!」
「えぇ、僕も楽しみです。」
…こういうのも僕が言うべきセリフでしたね…不覚です。
その後は他愛も無い話をしながら映画館まで歩いていきます。
彼女がずっと嬉しそうに笑っていたので、最初の失態は気にしない事にしました、彼女が楽しければ、僕も楽しいのです。
「コメディって面白いよね。」
「そうですね。」
ふと、彼女は映画館の廊下にズラリと並んだポスターを見ながら呟きました。
今日は彼女の希望もあってホラーを見ることになっていましたが…なるほど、菅原さんはコメディも好きなんですね、今後の参考に覚えておきましょう。
飲み物を持って(ここは男らしく「僕が払います。」と言ったら「ううん、気持ちだけで嬉しいよ、有難う。」と笑顔で言われたので、カッコいい所は見せれませんでした。)4と書かれた劇場に入ります。
席は真ん中の列の端っこの二席です。
開場と共に入ったので、人は少なく多少なら菅原さんと話せるでしょうか?
「菅原さんはホラーが好きなのですか?」
「うん、好きだよ。」
やはり好きでしたか…って、そうですよね、苦手なら自分から進んで選びませんよね。
「ん?どうかした?」
「い、いえ…」
その、本当ならこういうシチュエーションでしたら、彼女が彼氏に怖いと手を握るハズで…いえ、何でもないです。
「あ、もうすぐ始まるね。」
暗くなったのでその後は静かになりました。
今回の映画は小説で読んだ内容を殆ど忠実に再現されているらしいですから、僕には怖くなるシーンも分かっていて、特に驚く事も無く見ていましたが…
「わっ。」
小声で驚く菅原さんはとても可愛らしかったので、僕は少しニヤニヤしていました、暗くて本当に良かったです。
上映が終わった後、笑顔で怖かったね、という彼女は本当にホラーが好きで楽しめたのでしょう、僕も同じく楽しめましたが。
「まだ時間はあるね、どうしようか?」
自身の腕時計を見ると午後一時を指していました、この時間なら大体の場所には行けるでしょう。
「貴女が決めて下さって構いませんよ。」
「……じゃあ、荒井君の家に行ってみたいな。」
「え?」
今…僕の家、と仰いましたか…?
一応普段から掃除はしているので問題はないですが…
「……駄目かな?」
「あ、いえ、大丈夫ですよ。」
「そっか!良かった!」
…そんな訳で今、自室に二人で居るわけですが…
「やっぱり荒井君の部屋は綺麗だなー!」
…僕の部屋の中を物色して菅原さんは楽しそうです。
……ここは、やはり僕から手を繋いだりしてみるべきでしょうか?
いえ、そうですね、抱きしめる位しないと男じゃ無いですよね?
しかし…
草食系とは言いますが
(……やはり僕もそう思います)
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