数字題/5題
貴方の名前
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二番でもいいよ
屋上を開けると君が居た。
…いや、僕は分かってて来ていますが。
君は何も読み取れない表情で遠くを見ている。
風が吹く。
君は髪を乱しても、その髪を自由に遊ばせている。
どうやら僕が開けた扉の音も聞こえていないようだ。
「今日は見えましたか?」
声をかけると、少しだけ顔をこちらに傾ける。
でも目線は変わらない。
「瑞希さん。」
名前を呼ぶと遅れて目線もこちらに向けられて。
緩慢な動作に僕は見惚れる。
「…ううん。」
僕だと分かると微笑みを浮かべる瑞希さん。
しかし、それも束の間。
君はまた遠くを見つめ直す。
ずっと前、夏に瑞希さんが言った言葉。
『今、見えた?』
その問いに、僕も屋上からグラウンド、近くの街並み、遠くに見える山を見てみる。
そこは青々と夏らしい山に赤色がじっとりと重なるように今日の終わりを感じる綺麗な夕日だった。
でも瑞希さんの見えたものが何かは分からない。
彼女の方に視線を戻すと悲しそうに首を振った。
『何でもないよ。』
季節はもう冬。
あの時、僕は嘘でも「見えた」と言えば良かったのだろうか。
強い風が吹いて、巻く行為も億劫だったのか君に頼りなく付いていた赤色のマフラーが飛ぶ。
勢い良く屋上から逃げ出しそうなマフラーを僕が追いかける。
幸い地面には付かず、僕の手で留まる。
瑞希さんは何もなかったように白い息を吐いて、遠くを見つめたまま。
僕がどれだけ近づいても、関係ない。
真後ろで僕の吐く息が瑞希さんの髪の毛に当たる。
僕より少し小さい君の肩を通り越してマフラーを瑞希さんの前に出す。
動かない君。
マフラーの両端を反対の手に持ちなおして、後ろに回す。
そして、一周したマフラーをもう一回前に回す。
短くなったマフラーで、より近くなった君との距離。
まるで抱き寄せているみたいじゃないですか?
今の僕は何だってできるのですよ。
そんな邪な思いを抱いてしまった人物が後ろに居るのに、それでも彼女は見ている視線を変えない。
「…僕も見えたら良かったのに。」
思わず出た言葉に、自分で驚く。
でも、彼女も驚いたのか、声がした僕の方へ振り向く。
いつもより、ずっと近くで目が合う。
「荒井くんは、そのままでいいよ。」
笑顔で答える君に僕は何も言えなくなる。
もう君の一番には、見えない何かが占めているのだろうか。
黒い感情を消して、精一杯の笑顔で返す。
二番でもいいよ
(君が僕を見てくれるなら)
後書き
お話自体は違うのですが、最近観た映画に感銘を受けてこうなりました。
(一応彼女が見た物もその映画みたく設定としてありますが、書くのも野暮なのでご想像が正解ということで)
荒井さんは分からない人ほど興味を持ちそうだなと思いまして…と言いつつ、興味だけでなく本当は一番になりたいくらいの好意が見えていれば幸いです。
今まで語り口調で書くのが多かったので、敬語じゃない荒井さんが大変難しかったです…。
屋上を開けると君が居た。
…いや、僕は分かってて来ていますが。
君は何も読み取れない表情で遠くを見ている。
風が吹く。
君は髪を乱しても、その髪を自由に遊ばせている。
どうやら僕が開けた扉の音も聞こえていないようだ。
「今日は見えましたか?」
声をかけると、少しだけ顔をこちらに傾ける。
でも目線は変わらない。
「瑞希さん。」
名前を呼ぶと遅れて目線もこちらに向けられて。
緩慢な動作に僕は見惚れる。
「…ううん。」
僕だと分かると微笑みを浮かべる瑞希さん。
しかし、それも束の間。
君はまた遠くを見つめ直す。
ずっと前、夏に瑞希さんが言った言葉。
『今、見えた?』
その問いに、僕も屋上からグラウンド、近くの街並み、遠くに見える山を見てみる。
そこは青々と夏らしい山に赤色がじっとりと重なるように今日の終わりを感じる綺麗な夕日だった。
でも瑞希さんの見えたものが何かは分からない。
彼女の方に視線を戻すと悲しそうに首を振った。
『何でもないよ。』
季節はもう冬。
あの時、僕は嘘でも「見えた」と言えば良かったのだろうか。
強い風が吹いて、巻く行為も億劫だったのか君に頼りなく付いていた赤色のマフラーが飛ぶ。
勢い良く屋上から逃げ出しそうなマフラーを僕が追いかける。
幸い地面には付かず、僕の手で留まる。
瑞希さんは何もなかったように白い息を吐いて、遠くを見つめたまま。
僕がどれだけ近づいても、関係ない。
真後ろで僕の吐く息が瑞希さんの髪の毛に当たる。
僕より少し小さい君の肩を通り越してマフラーを瑞希さんの前に出す。
動かない君。
マフラーの両端を反対の手に持ちなおして、後ろに回す。
そして、一周したマフラーをもう一回前に回す。
短くなったマフラーで、より近くなった君との距離。
まるで抱き寄せているみたいじゃないですか?
今の僕は何だってできるのですよ。
そんな邪な思いを抱いてしまった人物が後ろに居るのに、それでも彼女は見ている視線を変えない。
「…僕も見えたら良かったのに。」
思わず出た言葉に、自分で驚く。
でも、彼女も驚いたのか、声がした僕の方へ振り向く。
いつもより、ずっと近くで目が合う。
「荒井くんは、そのままでいいよ。」
笑顔で答える君に僕は何も言えなくなる。
もう君の一番には、見えない何かが占めているのだろうか。
黒い感情を消して、精一杯の笑顔で返す。
二番でもいいよ
(君が僕を見てくれるなら)
後書き
お話自体は違うのですが、最近観た映画に感銘を受けてこうなりました。
(一応彼女が見た物もその映画みたく設定としてありますが、書くのも野暮なのでご想像が正解ということで)
荒井さんは分からない人ほど興味を持ちそうだなと思いまして…と言いつつ、興味だけでなく本当は一番になりたいくらいの好意が見えていれば幸いです。
今まで語り口調で書くのが多かったので、敬語じゃない荒井さんが大変難しかったです…。
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