旧:短編まとめ
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《愛を請う》
ジンのことを好きなのは事実である。
だから、拳銃をつきつけた状態で
「俺のものになれ」
と言う横暴なまでの告白を、本心から二つ返事で快諾した。
その時は苦しいくらいに抱き締められて幸せだったのに。その後間も無く、何故か彼は私に寄り付かなくなった。
一緒に行う任務も減り、任務の帰りに私の部屋に寄ることもなくなり。
唯一の繋がりと言えば、彼からの絶えない贈り物。
レースをあしらったベッド。
白い小花模様のソファー。
ふわふわのクッション。
木製のクローゼット。
その中に沢山の服。
綺麗なテーブル。
兎のぬいぐるみ。
お洒落なランプ。
好みの本。
その他雑貨がいっぱい。
皆、彼が買い与えてくれたもの。
私が外出から帰ってくると増えているそれらは、この部屋を用意した彼の仕業としか思えなかった。
どれもこれも私の好みを熟知していて、不満なものは何一つない。
ないけれど。
彼に貰ったものに囲まれているのに、そこに彼はいないのだ。
一緒に選んだ思い出も。
彼に渡された高揚感もないまま。
そんなつまらないことはない。まして、今日テーブルに置いてあったのは。
色鮮やかな髪留め。
確かに綺麗で、可愛くて、凄く素敵なもの。
だけど、これを髪につけたところで、彼が似合ってるといってくれなければ意味がないのだ。
これをつけて、彼とデートがしたいのだ。
こんなに私の好みを熟知しているのに、私が本当に欲しいものは与えてくれない。
『ジン、寂しい』
(愛を請う)
(君から与えられない)
(君とのふれあいを)
初めて、彼の部屋に足を踏み入れた。白が基調の私の部屋とは対照的に、黒が基調のシンプルな部屋。
突然の来訪に彼も少なからず驚いたらしい。
『私、ジンのものになったんだよね?ジンの傍にいていいんだよね?なんで会いにきてくれなくなったの?』
続けた言葉に一層驚いたのか、目を丸くしたまま口を動かさない。
『ねぇ、贈り物嬉しいよ。でも、ベッドやソファーは一緒に使いたい。本やぬいぐるみは一緒に選びたい。アクセサリーは直接受けとりたい。これ…ジンがつけてよ。隣に行くから』
「っ、来るな」
髪留めを差し出して一歩踏み出した瞬間、彼は絞り出すように小さく叫んだ。
『な…んで?』
「……お前は、脆い。抱き締めたら背骨はすぐに折れそうで、縊り殺してしまいそうだった。だから、愛してるけど、愛せない」
彼らしくない弱い口調の台詞に、今度は私が目を丸くする番だった。
でも、気まずげに伏せられた視線が愛しくて、構わず隣に座り込む。
「っ!聞いていたか」
『うん。聞いてた。私、そんなに脆くないよ?この前、確かにちょっと苦しかったけど、同じくらい幸せだったの』
だから、愛してよ
(愛を請う)
(不器用でいいから)
(君の温もりがほしい)
「…髪留め、貸せ」
『はい』
「…ああ、やっぱり似合うな」
『じゃあ、また抱き締めて』
「……」
『もっと、強くていいの。もっと愛して』
私も愛してるから。
(愛を請う)
(君の愛で殺されるなら)
(それは本望というもの)
どうか、壊れるくらい抱き締めて。
Fin.
―addition―
彼女は清廉で純粋だった。
誰にでも優しいその姿は聖母と言っても過言ではなく。
自分にはないものを求める人間の性と、目的の為に手段を選ばない俺の性が相まって、彼女を恐怖で手に入れることに成功した。
結果、後悔したのだ。
抱き締めたら抱きしめ返してくれる腕は華奢で、微笑みは透き通っていて。
彼女は何故組織にいるのか解らないくらい真っ白だった。
自分には眩しすぎる。
彼女を俺で染めてはいけない。
近くにいたら壊してしまう。
かといって、手放せる程軽い想いでもない。
その結果が、あの贈り物の数々だ。
会う勇気はないのに、気持ちを押し留めておくこともできないから。
恐怖でねじ伏せなければよかった。
真っ直ぐに伝えれば、こんなに躊躇せずにいられた筈。
あの答えを、本心からの承諾ではないと思っていたから。
だから、
『寂しい』
彼女の言葉に喫驚して。
懐疑して。
『愛してよ』
その言葉に恐怖して。
歓喜した。
望んでも、いいのだろうか。
(愛を請う)
(俺が想うように)
(お前に想われたい)
end