旧:短編まとめ
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《FBIとバスケ部》黒バス世界軸
『これは花宮君でも解けないんじゃないかな、赤井さんは読める?』
「…また作ったのか」
雨月が差し出す、英数字が羅列された紙。
それを暫く眺めて、答を口にする。
「……、しあいがんばれ。か」
『やっぱり赤井さんはすぐに解いちゃうね。難しかった?』
「これは数字の意味を知っているかどうかだけだろうな。その場で解けなくても、見当がついて調べられさえすれば難しくはない」
『そっかぁ…それは面白くないな。考え直そ』
彼女が一生懸命考えているのは暗号である。推理小説の踊る人形なんかの、それ。
彼女は恐ろしく頭がよくて、暗号を作ることにも読み解くことにも長けていた。
そのせいで悪いものに狙われて、俺のようなFBIと、保護対象と監視役といった関係で同居している。
ちなみに彼女が暗号を解かせたがっている花宮という人物は、彼女がマネージャーを務める男子バスケ部のキャプテンだ。
そいつも彼女と同じように頭がとてもいい。
「…今週末は大切な試合なんじゃなかったか?」
『うん、でも私ができることなんて殆どないし。休憩とかで、キャプテンが程よく暇が潰せる難題でも拵えてあげようと思って。彼、そういうの好きだから』
彼女はよく、自作の短編推理小説なんかを作っては、そいつに解かせた。
最初に見せられるのは俺。
俺がすんなり解いてしまうことに初めこそむくれていたが、最近では"やっぱり赤井さんだね!"と揚々としている。
それを今度はそいつに見せて、ある程度悩むのを楽しんでいるらしい。
『花宮君は頭がいいからさ、少し悩まないと答えが出ないくらいが楽しいんだって』
「その気持ちは解らんでもないな」
『だよねー』
「だが、お前は暫く外でそれを発揮するのは禁止だ。特に、お前を狙ってる奴等が捕まるまでは」
『解ってるよ。現にネットとかのは解けたり思い付いても書き込まないようにしてるじゃん』
ケラケラと笑って見せる彼女は、色鉛筆を取り出して長さも色もバラバラな直線を何本も引いていた。
「……今度は、try your best か」
『そう。あんましこういうの好きじゃないチームだけど、応援したいし』
「、試合は監視にいくからな」
『了解。しっかり監視してくださいな』
おどけて笑う彼女はどう見たって17歳の少女なのに。
監視がなければ通常の生活が送れないとは、才能も難儀であるとしか言えなかった。
…
……
…………
「お前が男だったら試合に出してたのに」
『私もそれ思った』
「来年までに性転換して練習しろよ」
『キャプテン横暴すぎ』
彼女に持たせている発信器兼盗聴器からはそんな声が聞こえている。
彼女が所属する高校は、本選出場が叶わなかった。
遠目で見る限り、悲しんでるようには見えないチームだったが、近くにいた彼女は何か感じたのだろう。
自分より遥かに高い彼の頭にタオルを被せると、背中を軽く叩いて退場を促していた。
その後の会話が冒頭である。
(青春だな)
頭がよすぎる子供は、お互いよき理解者になりえる筈だし、それが恋になるのも有りうることだ。
そう思ったら胸が軋むような嫌な音を立てた。
久し振りに聞いたそれは、今しがた(青春だ)といった頃によく抱く感情で。
(俺の青春は終わってる筈なんだがな)
自慢のポーカーフェイスに亀裂が入った気がした。
『じゃあ、私は兄さんと帰るから。またね』
体育館の外で待ち合わせ、彼女によくある嘘をつかせて帰路につく。
年の離れた兄と暮らしている、という体は便利であった。
『試合、見てたんでしょ?慰めてくれてもいいよ』
「慰めるような試合だったか?」
『それもそうだね』
体のいい嘘。というのは二つある。
第一に、俺達に血の繋がりはない。
第二に、俺達は恋人同士だ。
部屋に着いて、彼女を膝に乗せて抱きついたのはその所以である。
『赤井さん…?どうしたの?』
「お前が男だったら試合に出てるとすれば…俺がお前と同い年だったらバスケットをしていただろうな」
『……聞いてたの』
遠回しな嫉妬を汲み取ったらしい彼女は、抱き締め返しながら微笑んだ。
『赤井さんも嫉妬なんてするんだね。もっと涼しい顔してると思ってたよ』
「…生憎お前達みたいに若くないが、独占欲が強い方でね」
『別に嫌じゃないよ?子供だからって相手にされないくらいなら、少しくらい束縛してくれる方がいい』
「……」
『今度、ストバスとかちょっとやってみようね。赤井さんなら、ある程度まですぐ出来ちゃいそう』
ボール持った赤井さん、格好いいだろうなぁ。
なんて、彼女はにやけている。
「じゃあ、その帰りにファーストフードの店に寄ってハンバーガーを食べてこようか」
『うん。それで、ゲーセンで遊んで、プリクラ撮ろうね』
「…プリクラはいらないだろ」
『えー、赤井さんとのプリ欲しい。今は無理だけど、いつか私の彼って自慢したい』
「……」
『で、ファミレスでドリンクバー頼みながら一緒に宿題しよ。あ、赤井さんは宿題ないから…一緒に暗号作ろうね』
.
ニコニコと嬉しそうに語る彼女はとても可愛らしかった。
しかし、表情を崩せないでいる俺を見て小首を傾げる。
『まだ足りない?』
「…そうだな、俺だけがそれをできるわけじゃないし」
少し皮肉めいた口調でそうつげて見せれば。
『私、部活引退したら赤井さんの専属マネージャーになるつもりなんだけど。それでも?』
「ほぉ、何してくれるんだ?」
『おはようってキスで起こして、赤井さんが食べるご飯を作って、赤井さんの服を選択して、赤井さんの入るお風呂を湧かして。おやすみってキスするの』
「……足りないな」
『えー』
「一緒に飯を食べて、一緒に風呂に入って、一緒に眠る…でないと」
『、欲張り』
「なんとでも」
彼女は年齢に似つかわしくない微笑みを浮かべる。
『いいよ、それで。だからちゃんと、無事に帰ってきて?』
「……あぁ」
『何よ、その妖しい間は。…さては危ないことしようとしてるわね?』
でもそれは、途端に拗ねた子供の顔に戻った。
「…否定はしないが、お前を関わらせることはできないな」
『言うと思った。…赤井さんが私と同い年でバスケ部になるなら、私が赤井さんと同い年だったらFBIになってやる』
「それは、頼もしい限りだな」
『じゃあ将来の仕事確定。……だから、私が助けられないところで無茶しないで、ね?』
「…善処するよ」
あ、無茶するつもりなんだ。
そう呟いて彼女は力強く抱きついた。
本当ならこんな関係もよくないし、好きだからこそ、FBIみたいな危ない仕事になんか就かせたくない。
でも、同時に彼女がパートナーだったら、とても頼もしいと思ったのは事実。
「…お前が待っているなら、是が非でも帰って来るさ」
仮令、何年かかったとしても
Fin