旧:短編まとめ
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《一生守ると誓った貴女達に》
※妊娠・出産ネタ
最近の悩み、なんだか熱っぽい。
実を言うと、食欲もあんまりない。
疲れてるのかなぁ、と思う。
お腹の調子も良くないし。
体が怠い気もする。
「…病院に行ってみたらどうだ?」
『え?』
「万が一、ってのがあるだろ」
『………』
万が一、というのが。
命に関わるという意味だと思って内科にかかった私は。
いつの間にか産婦人科へ回されていて。
「おめでとうございます」
そう、医師が言ったときは。
まだ頭の整理が追い付いていなかった。
(……出来てしまった、と)
あの人との子供。
あの人が、パパ。
想像出来ない、けれど。
(そのつもりで、万が一って言ったのかな)
どんな反応をするだろう。
なんて言葉で伝えよう。
思考巡回が覚束無いまま、二人暮らしのリビングに座り込んでいれば。
「随分と面白い顔をしてるな」
『!』
考えが纏まる前に、彼が帰ってきてしまった。
帽子とコートをハンガーに掛けて、彼は隣に座る。
「で?結果はどうだった」
ソファーを軋ませて、ゆっくり近づく彼を直視できないまま。
そっと彼の左手をとる。
それから、私のお腹に導いて、呟くように伝えた。
『…いるんだって。この中に』
言い終わる前に、ジンは目を見開いて。
私をぎゅっと抱き締める。
「…よくやった」
『嬉しい?』
「当然だろ。俺とお前が生きた証だ、愛し合った事実だ、喜ばずにどうすんだよ」
頬に、鼻に、目尻に、唇に。
キスを重ねては、満足そうに喉で笑ってみせる。
『そうだね。私も、嬉しい』
やっと、素直に喜べた。
信じていたけど、少し不安だったのは事実だから。
こんな組織に属してる以上、降ろせとか、別れるとか。言われてしまったらどうしようかと思ってた。
でも、それは杞憂に済んだらしい。
「お前は?体調悪かったのは和らいだのか?」
『ん、ちょっと熱っぽいけど大丈夫だよ』
「そうか…なんかあったら、すぐ言え」
『ありがとう』
優しく笑って尚もキスする彼に、私も微笑んで抱きついた。
それからジンは本当に甲斐甲斐しくて。
悪阻が始まれば、匂いの強い食事は彼も食べずにいてくれた。
空腹になると気持ち悪くなってしまう私の為に、食べやすい間食も常に用意してくれている。
荷物は軽いハンドバックすら持たせてくれなかったし、定期健診でクリニックに行くときは変装して必ず着いてきてくれる。
それに、当然のように煙草も止めてしまったのだ。
『…最近、ジンの煙草の匂いしない』
「離れて吸っても服とか髪に成分つくからな。思いきって止めた」
『……』
「ククッ、なんで寂しそうなんだよ」
『だって、ジンから、色々奪ってるみたいで…』
彼は私と一緒に禁酒してる。
その上禁煙もして、私に合わせた時間で生活していて…趣味も自由も奪ってしまった気分だった。
「…あのなぁ、お前は、俺に、家族をくれるんだぞ。それに比べたら趣味の一つや二つ、病院の待ち時間程度、いくらでもくれてやれる」
『……っ』
「だから、何も心配せず、二人とも健康でいてくれ。それだけでいいから」
膨らんできたお腹を擦りながら、彼は私の頭も撫でて。
あやすように、な?と笑った。
『…うん』
「good girl」
『I'm not kid!』
「I know.You are my dear」
それが、本当に子供にするソレだったから。つい恥ずかしくて反発したら、凄く色っぽい顔で"私の最愛"なんて。
ずるい。
最近、父親らしい顔ばかり見てたから、急に男の顔になられると本当ドキドキする。
『……!』
更に、私の左手を取って、スルスルと冷たい何かを指に嵌めていく。
地金が銀の、エタニティリング。
彼の左手にも同じものが光ってる。
「雨月…。俺は誓える神も無ければ約束の出来るような真っ当な人間でも無い」
『…』
「でもな。雨月とコイツだけは守る。絶対に」
彼はスルリとリングのダイヤを撫でて、私の指先を取ってキスをした。
王子様みたいに。
「コイツの父親になるにあたって、お前の夫にもなりたいんだが?」
『…喜んで。私も、妻にしてください』
指を絡ませて繋ぐ手と、合わさる唇と、抱き寄せられる背中が、全部幸せ。
お腹がかなり大きくなって。
歩くのが少し億劫になって来た頃。
ジンはどこに行くにも私の腰に腕を回して、付き添ってくれていた。
『ベビー用品はこれで揃ったかな』
「足りなかったら、また足せばいい」
『そうだね』
子供服、オムツ、ベビーカー、ベビーベッド、抱っこ紐やガラガラ。
ベビーショップで買い集めたそれらをポルシェから降ろして。
「お気に入りはあったか?」
と、ジンは私のお腹を撫でる。
「…!」
『あったみたいね』
丁度、赤ちゃんがお腹を蹴って。
彼は目を細めて笑う。
釣られて笑えば、彼は頬に唇を寄せた。
「元気で何よりだ。お前は辛いとこ無いか?今日はかなり歩いたろ」
『大丈夫。脚が浮腫んでるのと、腰がちょっと痛いくらいよ』
「…それは大丈夫に入らないだろ」
妊娠初期から甲斐甲斐しかったジンは、お腹の大きさに比例して一層優しくなっていた。
気分の浮き沈みが激しくて、言葉に出さなくても不安な瞬間は止めどなく襲ってきて。
でも、そんな時はいつもジンが気づいてくれて、口にはせず、ただ隣に座って私を抱き締めてくれる。
今も、私の足下に屈んで、足首からふくらはぎにかけてをマッサージしてくれた。
マッサージは勿論気持ちいいのだけど、何より、彼の温かい指が触れているのが心地好い。
『ジン』
「なんだ」
『…ありがとう』
あなたのお父さんは素敵な人よ。
お腹にそっと囁きながら、ジンを見つめる。
「少しは楽になるか」
『少しどころじゃないわ、すごく気持ちいい』
「それは何よりだ」
マッサージの終わりの合図は、爪先に彼がキスしてくれること。
その爪先の爪すら、彼が切ってくれたのだ。
お腹がつかえて、足先まで届かない私の為に。
(至れり尽くせりね)
足を滑らせないように、と、お風呂まで付き添ってくれるんだから。
据え膳下げ膳もいいとこだ。
因みに、風呂場で私の体を見たとき、自分自身、あまり綺麗だとは思えなかった。
体つきは変わらないのに、不自然に大きいお腹だけが異質みたいで。
けど、ジンはそんな私すら、"綺麗""可愛い"と抱き寄せて。
「2人いっぺんに抱き締められて、最高だな」
ぼそり、そう耳元に囁いた。
だから、私はこの姿を受け入れられてるのだと思う。
旦那の顔と父親の顔を両方覗かせながら、私に優しく笑いかける彼に。
何度惚れ直したかわからない。
(これからも、幾度となく惚れるんだろうな)
「…疲れたか?少し寝ててもいいぞ」
『ありがと。でも、夕飯…』
「俺が作る。それとも、俺の飯は口に合わないか?」
『まさか。ふふ、じゃあ、お言葉に甘えて』
「ああ。何か食べたいものはあるか?」
『何でもいい。…あ、ジンの作るトマトサラダ、あれ大好き』
「ククッ、メインじゃねぇし。じゃあ、適当にな」
『うん。おまかせします』
ジンは戸棚からブランケットを出すと、私にそれをかけてキッチンに消えていく。
去り際にキスを忘れないあたり、本当、ダーリンって感じ。
言ったそばからまた惚れた。
さて、そんな甘い10ヶ月も過ぎて、とうとう陣痛が始まった。
マタニティプランというか、どういう風に出産したいかもか考えていたんだけど
(分娩室がいいとか、和室がいいとか、立合出産とか、帝王切開とか)
どうでもよくなるくらい痛い。
痛くて痛くて、それしかわからないくらいで、叫んでる気はするけど、なんて声を出してるかは理解出来ない。
『ー!ーーー!』
「雨月」
『ジン!ージンっ!』
「息を吸え。それから吐け」
隣にいてくれる彼だけが、辛うじてわかったから。
微かに聞こえる彼の声に従って、何とか呼吸をする。
何時間、そうしていたんだろう。
痛みと疲労でぐったりした頃、
赤ちゃんの泣き声が聞こえて。
胸の上に、小さな身体が乗せられた。
「おめでとうございます」
やっと、産めたことを理解して。
『ああ、会いたかったよ…』
その子に声をかけた。
それから、ジンに視線を向ければ、ゆっくり近づいてきて
「俺も、会いたかった」
その子に視線を合わせて微笑む。
そして、私の頬を撫でて、
『よく頑張ったな、ありがとう』
一層目を細めた。
『……私、ジンの子が産めて、幸せ』
もう頭はあまり回っていなくて、思ったことをただ口にして、ポロポロと涙をこぼせば。
「ああ…俺も、お前が産んでくれて嬉しい」
彼も一筋、涙を流した。
私と彼とこの子に、どうか、優しい祝福を
fin
以下、オマケ
呼び方の話
※会話のみ
『ねえ、子どもには、なんて呼んで貰おうか』
「雨月は?」
『お父さんとお母さんが理想だけど、難しいよね。それに、ジンはお父さんよりパパとかがいい』
「パパ、よりはDadとMomの方がしっくりくる」
『ダッドとマム…ダディとマミィは?』
「小さいうちはそれでもいいな。英語圏ではそれがパパママのニュアンスだ」
『じゃあ、修学前はそうしようか』
『マミィ』
「まーみ」
『ま、み、い』
「ま、あ、み」
『……ねえ、ジン、微妙に違う』
「…だな。……ダディ」
「だーでぃ」
「だ、でぃ、い」
「だ、あ、でぃ」
「………諦めるか」
『そだね』
「お母さん、参観日のお知らせ」
『はいよ。何の授業なの?』
「国語。スイミーの音読会するの。ダーディも来るかな」
『お父さんはどうかなぁ、聞いてみようか』
(…なんでジンはダーディのままなのかしら?)
End