旧:短編まとめ
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《半分は優しさで出来ている》
‐5周年記念 フリリク‐2017/08/10
怠い。
熱いし寒い。
お腹空いてるのに吐きっぽい。
…ええ。風邪ですとも。
「腹でも出して寝てたのか」
『…おしい。窓開けっ放しで寝たの』
「馬鹿か」
熱が出たから明日のデート出来ないかも。
と、メールを送ったのが数時間前。
デートの相手であるジンは、薬と適当な食材を買って部屋を訪問してくれた。
血も涙もない冷酷な人だけど、身内だと判断した人には優しくしてくれる。
ちょっと分かりにくいから、優しいとこもある、と思ってるのは私とウォッカくらいだけど。
「…食えそうなものはあるか」
『わぁ、こんなに買ってくれたの』
「どうせなんもねぇと思ってな」
『うん、冷蔵庫空っぽなの。本当にありがと。…プリン食べていい?』
「食べたら薬飲めよ」
袋の中にはパウチのお粥、スープの素、ゼリー、ヨーグルト、アイス。うどんや卵なんかも入ってる。
ウォッカに聞きながら買ったのかな。
『…甘くて美味しい』
「そうか」
『一口いる?』
「いらねぇ…さっさと食って薬飲め」
ベッドに入ったままヘッドボードに寄り掛かってる私と、サイドチェストに薬を置きながらベッドの端に座るジン。
『…』
「ククッ、そんなに薬が嫌か」
プリンを食べ終え、二粒の錠剤とコップの水を目の前に、私はにらめっこを始めた。
それを、ジンは楽しそうに笑って眺める。
『苦いし、飲み込みにくいもん…粉よりいいけどさ…』
「ガキかよ。イチゴ味のシロップなんざねーぞ」
『うぐぅ…わかってるよ。ちゃんと飲むから』
言葉では貶してくる癖に、届く距離にあったコップも薬も手渡してくれたり、背中にそっと手を添えてくれたり。
なんだか、とても優しかった。
あまつ薬を飲み込んだ私の頭を、良くできましたと言わんばかりに撫でて。
眉間寄ってんぞ、と額に口付ける。
『…ジン、いつもの数倍優しい』
怪我の功名?なんて言うんだろ、風邪も悪くないと思った。
それを、熱で浮かされた私の口は溢してしまう。
ジンから渇いた短い笑いが、吐息みたいに降ってきた。
「はっ、そうかよ」
怒らせたかな、と思ったけど違うらしい。
肩を抱くように引き寄せられて、冷たい手の平を額に当てられる。
「…まあ、風邪でも引いてくれねぇと甘やかし方もわかんねぇんだ。悪くないなら嫌がらずに享受してろ」
それで。
ああ、普段も優しくしようとしてくれてるんだ。と、察した。
『…えへへ』
「…」
『こんなに具合悪いのに、こんなに幸せでいいのかな』
正直、軽口叩いてるけど結構しんどい。
ジンが来る前に計った熱は38度越えてたし、さっき食べたプリンも胃が反芻しようと変な動きをしてる。
寒気と脂汗だって止まってない。
でも。
額から伝わるジンの体温が心地いい。
抱き寄せられる温もりに、背中を擦る手に、安心を覚える。
それは、私がジンを頼りにしてるからだし、ジンが私を大切にしてくれてるからだ。
「…明日のデート分だと思えば安いだろ」
『…。ごめんね、明日…休みとってくれてたのに』
「買い物も映画もいつでも行けんだから気にするな。それに、明日と今日を入れ替えたから付きっきりで看てやる。薬飲んだか見張ってやるからな」
こんなに甘やかされると、照れる暇もない。
少し目を細めて、優しげに笑いながら囁かれれば、いっそ熱が上がったんじゃないかとすら思う。
『…ありがと。大好き、幸せ』
「はっ、こういう時でもねぇと…それらしいことしてやれねぇからな」
『ジンは、いつもだって、解りにくいだけで甘やかしてくれてるよ。…ちゃんと、幸せ感じてる』
そんな風に思ってたのか、あのジンが。
なんて考えられるほどの体調じゃなかったから。
思ったことをするすると吐き出して、私から彼の頬に口を寄せる。
「…」
『唇は、風邪なおってから』
「チッ…早く治せ。馬鹿」
彼の言葉は相変わらず悪態だったけど、行動はやっぱり優しくて。
ゆっくり私を横たえて毛布を引き上げてくれる。
「…よく休めよ」
『そこにいてくれる?』
「…」
『付きっきりって、言ってたじゃない』
ベッドで二人きりなんて生殺しなのは承知してる。
けど、体調不良特有の、孤独感とか不安があって。
離れようとした手を掴んだ。
「…治ったら覚えてろよ」
『うん。治ったら、いっぱいお礼する。ジンがいるから、きっとすぐ治るよ』
「くはっ、なんでだよ」
『ほら、薬の半分は優しさなんでしょ?これだけ優しくしてもらえば寧ろ過剰摂取だよ』
半分は優しさでできてる。
もう半分はきっと愛しさで出来てる。
「…熱上がったか、寝言は寝て言え」
fin
addition
『…ジンに風邪移ったら、私が今度は看病するからね』
「とりあえず自分の熱が下がってから言うんだな」
『その時は、うんと甘えていいからね』
「……」
『デートも甘えていいからね!』
「…解ったから、今は俺に甘えて休め」
ぐっすり眠って回復しました。
End