旧:短編まとめ
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《今宵君と出逢う》
海鳴様へ捧ぐ キッド夢2015/08/10
「快斗聞いた?セイントテールが復活したとかって話」
口火を切ったのは青子だった。
「セイントテール?んだそれ」
「KIDと同じ泥棒よ、一応悪党からしか盗まないみたいだけど。何年も姿がみられてなかったのに、最近現れたみたいなの」
「…ふーん」
「久々の登場とか、魔法みたいなトリックとか、KIDと似てるとこがあるから、お父さんも張り切っちゃって。次は豪商の館にあらわれるだかなんだかって…」
「豪商?宝石集めで有名な?」
「うん」
(獲物が被った…)
最初興味なさげだった快斗も、目的が被ったとならば聞かざるをえない。
青子やネットを使って相手を調べることになった。
一方。
『お姉さんも人使いあらいよね…。いいけどさぁ』
先代セイントテールの従姉妹にあたる雨月。
年が離れていたこともあって、憧れてはいた。
セイントテール引退も寂しくはあった。けど。
「いたいけな老夫婦から宝石を騙しとるなんて、あの悪党は許せない!でも、私これから家族旅行だからさ。雨月ちゃん任せた!」
って衣装とか諸々置いてくのどうかと思う。
いやまあ、私も許せないし?やってみたかったし?
ヤブサカではないってやつだよね!
宝石も取り返すし、館の主人もお縄頂戴にしてやるんだから!
と、こちらは気合い十分であった。
そう、気合いは十分だったのだ。
「セイントテール、捕まえたぞ。俺から宝石を盗もうとはいい度胸してるな」
『げ…』
先代セイントテールの時より遥かにレベルの高いセキュリティに、新米セイントテールのマジックもトリックもほとんど通用しなかっただけで。
(全然"だけで"じゃない!ヤバいよ、捕まるっていうよりこれは売り飛ばされる!)
そう。いかにも"いかにも"な感じの男に囲まれて絶対絶命なのだ。
(もう少しで、宝石取り返せるのに…っ)
「これはこれは。先代から蘇った少女一人に、随分無粋な歓迎をする館ですね」
そこに降ってきたのは気障ったらしい声と、真っ白なマントだった。
『え、な、えっ!』
文字通りマントを被された雨月が視界を失って、次に光をみた時には先程の声の主の腕の中。
『き、KID!?』
「ええそうですよ。貴女のお陰で予定が大分早まってしまいましたが…獲物が一緒でして。いっそ貴女ごと奪ってしまおうかと」
「アイツ、宝石をいつの間に!」
「まとめて取っ捕まえろ!」
「捕まるのはあなた方の方ですよ?」
その声と同時に扉から雪崩れ込んでくる警察。諸々の悪事はバレてるらしく、KIDの捕獲に走るもの、館の者に走るもの、それぞれで。
「では、私達は逃げますよ。セイントテール?」
『あ、はい』
どさくさに紛れて館から逃げ出した私は、未だにハングライダーで飛ぶKIDの腕に収まっていて。
(心臓が…痛い…)
見上げた横顔はかっこよく、ピンチを助けられたとなれば。
一目惚れしたという事実に気づくのは容易いことだった。
『あの、ありがとう』
どこか人気のない建物の屋上に降りて、慌ててお礼を言った。
「どういたしまして。まあ、これは俺が欲しかったやつじゃないみたいだし、元の持ち主に返すか」
そして、返ってきた言葉のフランクさにギャップ萌的なトキメキと既視感を覚えた。
『そうしてくれると嬉しいな。あのお婆さんには大切なものらしいから』
「ってか、危ないことしてんじゃねぇよ。お前、今までのセイントテールじゃないだろ。初戦でいく相手じゃねぇから」
『あ…うん。もうしないから、ごめん』
「謝んなくていいけどよ…」
ああ、やっぱりこの声と口調。仕草とか。みたことある。
きっと、一目惚れではない。もっと前から…
『今夜が二代目セイントテールの初舞台にして最後の舞台だったの。そのピンチを助けてくれた王子様に敬意をこめて』
そこで衣装と一応着けていた目元のマスクを外す。
『私は雨月、今宵の恩は忘れないわ。よければ貴方の名前も教えて?』
うん、本当はなんとなく解ってる。でも彼の口から聞きたくて、自分から正体を明かした。これなら、警戒する必要がないって解ってくれる筈。
「雨月…って、まさか」
そう言って衣装を畳んだ彼は、いつもの姿で笑った。
「助けてよかったぜ、雨月。俺は快斗…ひさしぶりだな」
『うん、ひさしぶり。卒業式以来だね』
彼とは同じ中学で、私が片想いしていた人だ。
今だって、密かに思っている。
私を覚えてくれていたなんて、それだけで嬉しい。
「高校は?どこいったんだよ、この辺じゃねぇよな?」
『県外だよ。ちょっと家の都合で…』
「そっか…」
多分もう。会うことはない。彼がKIDだと解れば、ニュースを通して応援できる。
きっと、これでいい。
告白する勇気は持ち合わせてないから。
「俺さ、お前にもし次に会うことがあったら…言おうと思ってたことがある」
『え』
「…好きだった」
その言葉に、世界が一瞬止まった。
そして、少しばかり湧いてきた勇気を振り絞って、私も紡ぐ。
『過去形なの?残念…私は現在進行形だよ?』
強がって、笑ってみせた
本当は恥ずかしいし、怖い。嫌わないで、綺麗な思い出でいて。
「…よかった」
『え?』
「県外だろうが国外だろうが会いに行くし、お前を盗みに行ってやる…俺だって現在進行形だ。それに、未来もな」
慣れた手つきで抱き寄せた筈の彼。
その心臓が驚くほど早鐘をうっていて。
(ああ、夢じゃないんだ)
逆に安心した私がいた。
『うん。盗みにきてね、待ってるから』
「ああ」
『遅かったら私が盗みにいく』
「…っ!」
『楽しみにしてるから』
不意討ちのキスは
月明かりでも見えるほど
君の頬を赤くした
(本当は)
(もう盗まれてる)
Fin