旧:短編まとめ
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《雷雨》
私は雷が大嫌いだ。
土砂降りの雨も苦手。
そもそも、大きな音と暗いところが好きじゃない。
……よくそれで危ない組織に所属してるよね。自分でも不思議。
なんて、思考を巡らせることで少しでも現実を紛らわしているところを
ピシャッ! ゴロゴロ……
『…っ!』
雷鳴がつんざいていく。
私はそれを、少しでも和らげるために。
毛布を頭から被って縮こまっていた。
「……案の定、芋虫だな」
『ジン…』
「明後日まで止まないらしいぞ」
防音設備のある部屋に行きたかったけど、もうこの状況で外に出るなんて嫌だ。
そんな中、突然、恋人であるジンの来訪。
『……来てくれたの?仕事は?』
「…この雨の中、星が見えると思うか?」
このロマンチスト。星とは、ホシ、で。ターゲットが傘に隠れてしまうのを、雨雲に隠れる星空に例えたらしい。
『…そうだね』
「おかげで、普段見れないお前のこんな姿が拝めるわけだが」
そう言って彼は、ロマンチストからうって変わってサディスティックな笑みを浮かべる。
私だって、本当は腕利きのスナイパーだ。
昼間のワンショットキルならば、赤井に引けをとらず700ヤードの狙撃も可能……だけど。
如何せん、音に対する恐怖心と暗闇に対する苦手意識が抜けず、その腕を披露する場面がない。
夜中の狙撃は手元が震えるし、撃ち合いになってしまえば微動だにできなくなってしまう。
……それくらい、大きな音と暗がりが嫌いだった。
そんな実情をひた隠して。強気な女参謀、クールなジンの右腕というキャラで生きている。
彼だけが、私の弱みを知っていた。
「…大丈夫だ」
『うん…』
その弱みを、嗤う癖に。
仕事と私を天秤にかけたら、迷わず仕事をとる癖に。
雷が鳴る程の豪雨の日は、決まって部屋に来てくれて。
毛布にくるまって震える私を抱き締めてくれる。
「しかし、こんなに苦手なもんか?」
『子供の頃から苦手。荒療治だーってヘッドフォンで爆音のヘビメタ聞かされてからは本当に無理』
「……荒療治にしても雑だな」
『ね。雨も暗くなるし、強いとずっと大きな音してて嫌。……怖い』
彼の腕に収まって、ジンの声だけ聞こえればいいのに…なんて思う。
低くて、大声じゃないのに響くこの声は、私を安心させる為になくてはならないもの。
彼の右腕が勤まるのも、彼がいれば辛うじて私の腕が発揮されるからに他ならない。
「…そんな子供みたいなこと言う奴は、子供みてぇに雨でも楽しいこと考えてろ」
『雨の日の…楽しいこと?』
彼を見上げて、窓に映る水滴を横目に考える。
『……ジンが、会いに来てくれる』
「…」
『ジンが優しい』
それだ。
私が、防音設備のある地下室に逃げなかった理由。
ここなら、彼が会いにきてくれるから。
『ジンが…』
ピシャッ!ゴロゴロ……
『きゃぅ!』
ジンが居てくれて嬉しい、と言うつもりだったのに。
雷に遮られて、私は震えながらジンに抱きつく。
「………それ、直した方がいいと思って色々考えたんだが…やめだな」
『へ?』
「こんなに素直なお前が見れなくなるのは、惜しいものがある」
稲光が走る窓を一瞥した彼は、私の両耳を、彼の両手でふさいで。
優しく優しくキスをした。
「…ただ、まあ……俺は雨の日、嫌いじゃねぇぜ?」
悪戯めいて愛しげに笑う彼。
その様に一瞬雷鳴すら霞んだ気がした。
……結局、私が雷雨を克服できたかは、想像にお任せするけど。
Fin.