水っぽいお題2
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溢
《溢れたものは》
彼女を幸せにしたい。
彼女と幸せになりたい。
犯行動機はそれに尽きた。
でなければ、こんな危険な犯行を、友人を巻き込んでまで実行しない。
彼女。は、先天性の心臓病を患っていた。
そのせいか体も虚弱で、捜査なんか連れてくとすぐに息切れをおこす。
そのくせ、
『眉月先輩の役にたちたいです!』
と、無茶するから。二人で国際捜査課に移って彼女は専ら通訳の仕事をしてもらった。
『私、役にたってますか?』
か細い声で、青白い頬を微かに染めて話す様は愛おしくて仕方ない。
(俺が、こいつを守るんだ)
折れそうな体を抱き締める度にそう思った。
しかし、彼女の心臓は急に悲鳴を上げた。
いや、彼女のことだからずっと我慢していたのかもしれない。
できるだけ早い手術が必要だが、その手術は日本ではできない上に莫大な金額を要する。
二人でコツコツ貯めていたお金では到底足りず、借金をすることもできなかった。
体が体故に彼女の名前ではローンが組めないし、俺の名前で借りようにも、保証人になってくれる奴がいなかったのだ。
だから。
友人を裏切って。
年端もいかない少年を巻き込んで。
大金を手に入れる方法を思いついた。
よくないことはわかってる
彼女が喜ばないこともわかってる
でも、もう時間がない
彼女の命が助かった後ならば、償いでも、逃避行でも構わない
「頼む、喋らないでくれぇぇえ‼」
そんな計画は泡と消えた。
消えた、どころか失ったものばかり。
得たのは殺人犯の肩書きだけ。
裁判の直前、病院から彼女の容態が悪化したからすぐに来てくれと電話があったのに。
彼女の命も、彼女と過ごす時間も、信頼も、何もかも失ってしまった。
「……ダイアン、病院を教えろ」
「響也?」
「…電話、彼女のことだろ。裁判所は上手く誤魔化してやる。1時間しか用意できないんだから急げ!」
けど、友情は、まだ残っていたらしい。
「…僕が保証人断ったからだろ?理由も聞かず……悪かった」
こんな切羽つまったことなら相談しろよ!僕らの仲だろ!
響也が小言を交えながら病院までバイクを飛ばす。
「雨月!」
病室に寝ている彼女は、息をするのが精一杯という程衰弱していた。
駆け寄って握った手は酷く冷たく、脈は弱くて遅い。
「雨月…」
間に合わなかった。
彼女を幸せにすることも。
彼女と幸せになることも。
もう出来ない。
-眉月先輩、私はずっと幸せでしたよ-
「⁉」
彼女の声が一瞬聞こえて。
次の瞬間、彼女の回りにあった機械がけたたましく鳴きだす。
医者や看護師が入って来て、色々していたが、彼女の心臓が再び動くことはなかった。
(そうか、幸せだったのか)
これから、を幸せにすることは出来なかったが。
これまで、を幸せにすることは出来ていたらしい。
(気づかなくて、ごめんな)
愛してる。
これまでも、これからも。
(溢れた水は元には戻らない)
(溢れた愛は行き場をなくした)
Fin