御剣詰め合わせ
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《Confidentially birthday》
『御剣さん、今日夕飯一緒にいかがですか?』
検察補佐官の彼女から、夕飯のお誘いを受けたのは朝だった。
「…そうだな。今日は早く上がれそうだし、たまには」
『では一緒に帰りましょうね』
彼女、とは三人称の意で。恋人ではない。
…まあ、想いを寄せてはいるのだが…如何せんそういったことは不得意なのだ。
数年共に仕事をしているが、二人で食事をするのは初めてで。
…、そうか、二人では初めてだな。
……本当に二人でなのか?
いや、聞いて大勢だったとしても落胆するし、二人では嫌だと受けとらるのも意に反する。…黙っていよう。
「何か食べたいものはあるのか?」
『いえ、特に』
「…」
『あー…私決まった所しか行かないので、あんまりお店知らないんです』
困ったように笑う彼女を見て、私もつられて笑う。
「帰りまでに各々考えるとしようか」
「え、今日、ご飯いくの?」
「…なぜ驚くのだ」
「だって…あの娘、今日誕生日のはずよ」
「そうなのか?」
「ええ。…ふーん、教えずに誘ったのね。健気というか、計算というか」
帰国していた冥と、廊下ですれ違って立ち話をした。
彼女と冥は友人で仲が良かったので、夕飯に誘われたことを話したのだが。
含み笑いをされて少々戸惑っている。
「…何か用意した方がいいだろうか」
「なにかって…もうそんな時間ないでしょ。昼休みも終わるし、帰りにご飯食べるんだから」
「む…」
「ま、彼女は一緒にご飯食べたいだけなんだから、最高の時間にする努力をしてあげなさいね」
「それは勿論だ」
誕生日。
そうか、そんな日に私を誘ってくれたのか。
……、期待してもいいのか?
それとも、特別な相手の予定がつかなくて、仕方なく?
(…この際どっちでも構わないか、祝えるチャンスをもらったのだから)
頭に描いている店は、よく一人で飲みに行くワインの美味しい店。
彼女はワインを飲めただろうか…いや、飲めなくても食事も美味しいしノンアルコールの種類も豊富だった。
『御剣さん、お待たせしました』
「いや、大丈夫だ。…さて、店だが…行きたいところはあるか?」
『それが、考えれば考えるほどまとまらなくて…御剣さんは?』
「君にリクエストがなければ、ルージュというフレンチへ行こうかと」
『初めて聞くお店です。是非』
「そうか」
電車通勤だという彼女を車に乗せて、目的の店に向かう。
今回はワイン無しだが、まあよいだろう。
「いらっしゃいませ」
いつも出迎えてくれるウェイターが、隣の彼女を見て微笑む。
「本日はあちらの席でも?」
「お願いする」
「かしこまりました」
いつもは小さなテーブルに座るのだが、今日は連れがいるのを考慮して多少ゆとりのある席へ案内してもらった。
『…お洒落。よく来るんですか?』
「そうだな、それなりに」
『へぇ…』
キョロキョロと見渡して落ち着かない彼女がほほえましい。
ウェイターに今日は飲酒しないことを伝えて、オススメを聞いた。
食事なのであれば、と、白身魚のコースを薦められて、それに。
『……』
「そう固くならないでくれたまえ、静かな店だがマナーには煩くない」
『あ…そうですか?私、フォークとナイフが苦手で…』
「安心したまえ、箸もある」
『よかった』
「……すまないが、オーナーに挨拶だけしてきても?」
『はい、』
ほっとしたような彼女に、飲み物をオーダーして席を離れる。
………
「本日もありがとうございます」
「こちらこそ。臨機応変な席対応、感謝する」
「して、如何なさいました?」
「それが…どうやらあの子、今日が誕生日らしくてな。コースの最後にデザートを足して貰えないだろうか」
「ええ。承りますとも」
………
『美味しいです!』
「それはよかった」
カレイのムニエルを箸で食べる彼女は、ニコニコと顔を綻ばす。
そういえば、彼女はいくつなのだろう。
冥の友人であるから年上ということもないだろうし。かといって、幼く見える訳でもない。
案外同じくらいか?
『御剣さん?』
「ム?」
『えっと、飲み物のお代わり頂いても?』
「ああ、そうだな。紅茶かコーヒーか…」
『紅茶がいいです』
「ではそうしよう」
オーダーをすれば、紅茶と共に彼女へ運ばれるイチゴタルト。
ろうそくが付いており、プレートにはチョコでhappy birthdayの文字が見える。
『え…なんで知ってるんですか…』
「たまたま、聞く機会があってな。水臭いではないか、先に教えてくれたら準備もできたのに」
驚きで目をぱちくりさせる彼女を笑えば、少しどもった返事があった。
『その……御剣さんなら準備などをしてくれる気がしたので……申し訳なくて』
「…。それが水臭いのだ。祝わせてくれたまえ、素敵な日なのだから」
『……、ありがとうございます』
「それに、食事に誘ったということは、少なからず祝われたかったのだろう?」
そして、僅かに目を泳がせた後、困ったように笑う。
『祝われたかった……のではなく祝いたかった、ですね。御剣さんと食事した…という事実が、私へのプレゼントの予定でした』
「…それは、プレゼントになるのだろうか?」
『ええ。一人きりじゃない誕生日って、いいものですよ』
「ふ…その相手に選んで貰えて光栄だな……さあ、紅茶だが、改めて乾杯しようか」
はにかみながら、カップを手にする彼女はなんとも可愛らしかった。
こうして、私との食事がプレゼントになる…といってくれてるくらいだ、嫌われてはなかろう。
「君が生まれたよき日に、乾杯」
(…勇気だして誘ってみて、よかったな)
fin