花と蝶 番外
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※クトゥルフTRPG(CoC)シナリオ「毒入りスープ」(制作:泥紳士様)のネタバレ・改変を含みます
※リプレイではなく、PL=PC:花宮で花宮主観の物語です
※TRPGを知らない方は花宮が怪異に巻き込まれた話で、怪異の元ネタが泥紳士様作成の毒入りスープ…だと思ってください
※微グロ、微ホラー(血とかオカルトとか)
********
目を覚ますと、冷たい床の感覚と淡い電球の光が目に入る。
(ベッドで寝たよな…夢か?)
立ち上がってみれば、着ていた服はボロくて白いローブ1枚に変わっていて。
首を傾げつつ周りを見渡せば、さほど広くない正方形の部屋だとわかった。
部屋の中央には、木で出来たテーブル。
その上には赤い液体の入った木のスープ皿がある。
そのわきに、メモが置かれていた。
部屋の見取り図らしいそれには
今いる部屋『スープの部屋』を中心に
上の部屋『調理室』
下の部屋『礼拝室』
左の部屋『書物庫』
右の部屋『下僕の部屋』
と記されている。
それからもう1枚。
〜帰りたいなら 1時間以内に 毒入りスープを飲め。 飲むまでは 君じゃあここから 出られない。 一時間以内に 飲めなかったら お迎えが来るぞ〜
何気なく手に取ったメモを裏返すと、さらに文字が並んでいた。
〜暖かい 人間の 血の スープ 冷めない 内に 召し上がれ〜
途端、赤い液体から鉄錆のような匂いが立ち上がる。
(…!?)
夢の中でも、自由に動けることはよくあった。
けれど、匂いや温度を感じることはできなかったから。
俺は、確信してしまう。
これが、夢ではないことを。
(…………随分悪趣味なゲームだな)
背中を這い上がる寒気に、口端が引き攣る。
現実ならば、逃げなくてはならない。
十中八九、こんな舞台を用意する奴はろくなもんじゃない……が、わざわざメモを用意するくらいだ。謎解きをする姿を楽しんでもいるのだろう。
(1時間…スープが冷めるまでに。ってとこか。他の部屋の地図まで用意するあたり、このスープをそのまま飲んでも帰れないんだろうな)
ヒントを集めるなら書物庫に行きたいが、部屋の方角などはメモに書いていない。
4つの扉は木製のもの、白いもの、錆びたもの、覗き窓のあるもの。
感覚的に白が調理室…ならば木製が書庫か。覗き窓はトラップな気がする。
そう思いつつ開けた木製の扉の先には、大きな本棚と机。その上に火の点いた蝋燭。
(蝋燭も時間の目安か……毒の本でもあればいいが)
本棚に近づいて見上げた先、雑多に詰め込まれたジャンルを問わない本の中に、『スープの夢について』というタイトルを見つける。
そのまま引き出して手に取れば、ベトベトした黒い何かがまとわりついていた。
(きたねぇ……、…?花の匂い?)
黒い、花の蜜みたいなそれ。
ひとまずローブで拭いつつ、本のページをめくる。
書かれていたのは
~~~~~~~~~~~~~
真ん中の部屋・・・ちゃんとしたスープを飲まないと出られない。メモの裏にはスープの正体が記されている。
上の部屋・・・調味料や食器が沢山置いてある。ちょっとだけ予備のスープが鍋にある。
右の部屋・・・とっても良い子が待っている。いいものを持ってるよ。
左の部屋・・・本はとっても大事だから持ち出したら駄目。ろうそくはもってける。
下の部屋・・・神様が眠っている。毒の資料がある。番人は活きのいいものを食べなきゃいなくならない。
大事な事・・・死ぬ覚悟をして飲むように。
~~~~~~~~~~~~~
そんな内容。
(ちゃんとしたスープ…ってことはやっぱりアレは毒が入ってない)
(調理室の調味料が毒か?)
(そもそも番人に活きのイイモノってのがアウトだ。毒だと解れば資料なんて無くたっていい)
(…毒だと、解る方法…)
思案すれば、再び黒い蜜のような液体が手にまとわりつく。
本の表紙にもページにも、じっとりと染みているようだった。
(………………………!?これ、毒か?)
まじまじと見つめたそれ。
やたら甘い、花の蜜みたいな匂いを放つ、黒い粘液。
甘い匂いの毒、というのは実在する。
それから、花…というワードで西洋の伝承にある、蓮の実には食べると眠ってしまう毒があるという伝承を思い出した。
(…これをあの液体に入れて飲めば、終わる)
(…あっけないな)
本のタイトルからして、ここは『スープの夢』の中だ。
『死ぬ覚悟』をして毒入りスープを飲む…まあ、スープを飲んで死ねばいい。
それが、ここから出る…この夢から醒める方法なんだろう。
(スプーンくらい探すか)
そのスープ、いくら夢でも皿から直飲みはしたくない。
調理室に食器はあるらしいし、蝋燭だけ持って書庫を出る。
(白い扉…が調理室だな)
隣の白い扉を開ければ、中は綺麗な厨房だった。
食器棚には銀食器が整然と収納されている。
そこからスプーンを取れば、触れた柄がじわじわと黒ずんでいった。
(……硫化ヒ素)
指先に残っていた、黒い粘液が反応したのは明白だった。
そのスプーンを2つ持って再び書庫へ行き、一つのスプーンで本から粘液を掬い取る。
後は真ん中の部屋で赤い液体に混ぜ、それからもう1つのスプーンを浸けて、こちらも黒ずめば毒入りスープの完成。
案の定、2本のスプーンは真っ黒になった。
(スープからまだ湯気が出ている、蝋燭もまだ半分は裕にある。……見落としはあったか?)
時間に猶予がありすぎるのと、これを飲めば確実に死ぬという事実が、次の行動を躊躇わせる。
(下僕の部屋にいる、『いいこ』が気になるな)
ベッドで寝た筈の俺が巻き込まれたなら、隣で寝ていた雨月は?
ただの夢にしては、現実味のあるこの空間に、あの、『いいこ』ちゃんな彼女が巻き込まれた可能性は?
(たとえ、ただの夢でもアイツを見殺しにはできない)
1時間以内にスープを飲まないと、お迎えがくる。
お迎え、は助けようのない死だろう。
番人や、番人に守られた何かが絶対的な力で襲ってくるとしたら…
……一緒に、逃げないとな。
(下僕の部屋……錆びた扉か)
錆びついた扉は脆く、鍵がかかっているものの、力を入れたらそのまま開けることができた。
しかし、中は薄暗く、人の気配はあるが動いている訳ではなさそうだ。
蝋燭を持って、再び部屋を覗く。
一歩、二歩と進めば、俺と同じ白いローブを着た少女が立ち尽くしていた。
「雨月!」
見間違う訳ない、その顔。
ただ、その白いローブは血にまみれている。
「怪我してるのか?とりあえず明るいとこへ来い、蝋燭だけじゃよく見えねぇ」
手を引けば、彼女は大人しくついてきて。
スープの前で再び向き合えば。
『……』
どこか、困惑した表情で俺を見上げていた。
「雨月?痛むか?」
『……(首を横に振る)』
「…?声、でないのか」
『…(頷く)』
そこで気づく。彼女の服の血は返り血で、手には拳銃が握られていること。
「…………お前、雨月か?」
『………』
最後の質問に、彼女は、困惑し、怯え、それでも何か訴えるように見つめ返してくる。
「答えられない、のか?」
『…(頷く)』
「この空間の、カミサマ、とやらのせいで?」
『……っ』
どうやら、何か制約を受けていて。
自分の意思通りに体を動かせないらしい。
『いいこ』『下僕』でいる為に。
「……、そうか。その拳銃は、渡してくれるか?」
『…(頷く)』
「ふはっ!そんな顔すんなよ、この程度のギミックで俺がお前を見分けられねぇと思ってんの?」
不安そうに拳銃を差し出す彼女の頭を撫でて、拳銃を受け取る。
『…!』
「暴発したら危ないからな、避けとくぞ。そんだけだ、疑ってもないし、攻撃するつもりもない」
そして、テーブルの端へ置いた。
スープの湯気は僅かになってきている。
「……時間も無くなってきたな。手短に説明するぞ」
雨月に、毒入りスープを飲まないと出られないこと。
タイムリミットがあること。
…スープを飲めば、恐らく死ぬこと。
それらを伝えれば、不安そうに瞳を揺らす。
「俺は、これを飲む。お前にも、飲んでほしい」
『…』
「そんな難しい話でも怖い話でもねぇよ。雨月は、俺を信じればいい」
『……!』
「死ぬときも、助かる時も、俺達は一緒だろ?」
手をとって、お互いにスープの入ったスプーンを持つ。
「まあ、お前が作ったスープじゃないことだけが残念だ」
そう笑えば、彼女も小さく笑い返してくれた。
そして、二人同時に赤いスープを口に含む。
どろり、と。鉄臭い液体が喉を流れて。
次の瞬間には心臓が感じたことのないくらいの速さで動きだし、酷い息苦しさを覚えた。
思わず倒れ込むと、歪む視界に喉を抑えて苦しむ雨月が目に入る。
なんとかその体を抱き締めれば、彼女も同じように背中へ腕を回した。
(雨月…っ絶対に、連れて帰る)
離さない、と。強く願ったけれど。
もう腕に力を入れることは叶わなかった。
視界が、意識が、完全に白む。
すると、どこからともなく、咆哮のような声が響いた。
-勇敢なる者よ!現へと還るがいい!-
「……」
ゆっくりと、瞼を持ち上げることができた。
同時に、激しく脈打つ心臓と、喉を伝った嫌な感覚、倒れ伏した床の冷たさを鮮明に思い出す。
(……雨月)
慌てて腕に抱えた彼女を確認すれば、もぞりと動いた。
んん、と小さく呻くと、ぼんやりと目を開ける。
『…まことくん?…あ、れ、夢…』
「………夢、だ。きっと」
『……そうだね。……ふふ、真君は、夢の中でも助けに来てくれるんだね』
「お前は夢の中でも俺を信じてくれるんだな」
夢じゃなかった。
と、察してしまったのは後味悪いが。
あんな状況で、あんな状態でも。
雨月は俺を信じてくれると知って、心底嬉しかった。
(雨月と心中も経験できたしな)
「……、お前の作ったスープが飲みたい」
『ふふ、トマトスープ以外がいいね』
「ポタージュとかもちょっとな、のど越しが」
『んー、味噌汁かな?』
「十分だ」
fin
以下、あとがきとダイスログとキャラシ
※初心者なので色々間違いありましたらすみません
※ステータスは花宮をイメージしてロールなしで割振ってます。POWだけは女神にまかせました
※DEXなど使わないステは特に設定してません
※本当にダイス振りました※アプリ使用※
~キャラクターシート~
名前:花宮真 職業:学生(バスケ部)
STR 16 CON 14 POW 14
INT 18 EDU 18 SAN 70
アイデア 90 知識 90
図書館:80 芸術(バスケ):70
博物学:70 その他の言語(英語):50
回避 :60 応急手当て:60
跳躍 :60 心理学:80
投擲 :60 言いくるめ:50
目星 :80
~探索~
『スープの部屋』
目星80→○58
└メモの裏
アイデア90→○37
└スープが人間の血だと理解する
└SANC70→×78 減少3
└SAN70→67
『書物庫』
図書館80→○62
└「スープの夢について」の発見
知識1/2(45)→○32
└黒い液の匂いが花の蜜の匂いと似てる
薬学01(初期値)→◎01
└黒い液が猛毒と解る
『調理室』
知識1/2(45)→○40
└銀が硫化ヒ素で黒ずむと知っている
『下僕の部屋』
ドアとのSTR対抗→自動成功
『スープの部屋』
心理学80→◎04
└ヒロインの状態把握
人間の血を飲んだことによるSANC
└SAN67→○10 減少1
└SAN67→66
毒とのPOT対抗→自動失敗
~シナリオクリア~
死亡によるSAN減少1D10→4
SAN66→62
生還によるSAN報酬1D10→8
SAN62→70
ヒロイン救出によるSAN報酬1D6→3
SAN70→73
~技能成長~
薬学01→○02 1D10→6
薬学01→06 (クリティカル報酬)
薬学01→○31 1D10→10
薬学06→16 (初期値成功報酬)
心理学80→○87 1D10→5
心理学80→85 (クリティカル報酬)
あとがき
薬学の01クリ初期値成功は2度見しました。花宮の知識やばい。
しかも成長ロールで02とか無駄クリのうえ危ない数値出してる。
ヒロインへの心理学クリティカルも2度見しました。花宮の愛がやばい。
※リプレイではなく、PL=PC:花宮で花宮主観の物語です
※TRPGを知らない方は花宮が怪異に巻き込まれた話で、怪異の元ネタが泥紳士様作成の毒入りスープ…だと思ってください
※微グロ、微ホラー(血とかオカルトとか)
********
目を覚ますと、冷たい床の感覚と淡い電球の光が目に入る。
(ベッドで寝たよな…夢か?)
立ち上がってみれば、着ていた服はボロくて白いローブ1枚に変わっていて。
首を傾げつつ周りを見渡せば、さほど広くない正方形の部屋だとわかった。
部屋の中央には、木で出来たテーブル。
その上には赤い液体の入った木のスープ皿がある。
そのわきに、メモが置かれていた。
部屋の見取り図らしいそれには
今いる部屋『スープの部屋』を中心に
上の部屋『調理室』
下の部屋『礼拝室』
左の部屋『書物庫』
右の部屋『下僕の部屋』
と記されている。
それからもう1枚。
〜帰りたいなら 1時間以内に 毒入りスープを飲め。 飲むまでは 君じゃあここから 出られない。 一時間以内に 飲めなかったら お迎えが来るぞ〜
何気なく手に取ったメモを裏返すと、さらに文字が並んでいた。
〜暖かい 人間の 血の スープ 冷めない 内に 召し上がれ〜
途端、赤い液体から鉄錆のような匂いが立ち上がる。
(…!?)
夢の中でも、自由に動けることはよくあった。
けれど、匂いや温度を感じることはできなかったから。
俺は、確信してしまう。
これが、夢ではないことを。
(…………随分悪趣味なゲームだな)
背中を這い上がる寒気に、口端が引き攣る。
現実ならば、逃げなくてはならない。
十中八九、こんな舞台を用意する奴はろくなもんじゃない……が、わざわざメモを用意するくらいだ。謎解きをする姿を楽しんでもいるのだろう。
(1時間…スープが冷めるまでに。ってとこか。他の部屋の地図まで用意するあたり、このスープをそのまま飲んでも帰れないんだろうな)
ヒントを集めるなら書物庫に行きたいが、部屋の方角などはメモに書いていない。
4つの扉は木製のもの、白いもの、錆びたもの、覗き窓のあるもの。
感覚的に白が調理室…ならば木製が書庫か。覗き窓はトラップな気がする。
そう思いつつ開けた木製の扉の先には、大きな本棚と机。その上に火の点いた蝋燭。
(蝋燭も時間の目安か……毒の本でもあればいいが)
本棚に近づいて見上げた先、雑多に詰め込まれたジャンルを問わない本の中に、『スープの夢について』というタイトルを見つける。
そのまま引き出して手に取れば、ベトベトした黒い何かがまとわりついていた。
(きたねぇ……、…?花の匂い?)
黒い、花の蜜みたいなそれ。
ひとまずローブで拭いつつ、本のページをめくる。
書かれていたのは
~~~~~~~~~~~~~
真ん中の部屋・・・ちゃんとしたスープを飲まないと出られない。メモの裏にはスープの正体が記されている。
上の部屋・・・調味料や食器が沢山置いてある。ちょっとだけ予備のスープが鍋にある。
右の部屋・・・とっても良い子が待っている。いいものを持ってるよ。
左の部屋・・・本はとっても大事だから持ち出したら駄目。ろうそくはもってける。
下の部屋・・・神様が眠っている。毒の資料がある。番人は活きのいいものを食べなきゃいなくならない。
大事な事・・・死ぬ覚悟をして飲むように。
~~~~~~~~~~~~~
そんな内容。
(ちゃんとしたスープ…ってことはやっぱりアレは毒が入ってない)
(調理室の調味料が毒か?)
(そもそも番人に活きのイイモノってのがアウトだ。毒だと解れば資料なんて無くたっていい)
(…毒だと、解る方法…)
思案すれば、再び黒い蜜のような液体が手にまとわりつく。
本の表紙にもページにも、じっとりと染みているようだった。
(………………………!?これ、毒か?)
まじまじと見つめたそれ。
やたら甘い、花の蜜みたいな匂いを放つ、黒い粘液。
甘い匂いの毒、というのは実在する。
それから、花…というワードで西洋の伝承にある、蓮の実には食べると眠ってしまう毒があるという伝承を思い出した。
(…これをあの液体に入れて飲めば、終わる)
(…あっけないな)
本のタイトルからして、ここは『スープの夢』の中だ。
『死ぬ覚悟』をして毒入りスープを飲む…まあ、スープを飲んで死ねばいい。
それが、ここから出る…この夢から醒める方法なんだろう。
(スプーンくらい探すか)
そのスープ、いくら夢でも皿から直飲みはしたくない。
調理室に食器はあるらしいし、蝋燭だけ持って書庫を出る。
(白い扉…が調理室だな)
隣の白い扉を開ければ、中は綺麗な厨房だった。
食器棚には銀食器が整然と収納されている。
そこからスプーンを取れば、触れた柄がじわじわと黒ずんでいった。
(……硫化ヒ素)
指先に残っていた、黒い粘液が反応したのは明白だった。
そのスプーンを2つ持って再び書庫へ行き、一つのスプーンで本から粘液を掬い取る。
後は真ん中の部屋で赤い液体に混ぜ、それからもう1つのスプーンを浸けて、こちらも黒ずめば毒入りスープの完成。
案の定、2本のスプーンは真っ黒になった。
(スープからまだ湯気が出ている、蝋燭もまだ半分は裕にある。……見落としはあったか?)
時間に猶予がありすぎるのと、これを飲めば確実に死ぬという事実が、次の行動を躊躇わせる。
(下僕の部屋にいる、『いいこ』が気になるな)
ベッドで寝た筈の俺が巻き込まれたなら、隣で寝ていた雨月は?
ただの夢にしては、現実味のあるこの空間に、あの、『いいこ』ちゃんな彼女が巻き込まれた可能性は?
(たとえ、ただの夢でもアイツを見殺しにはできない)
1時間以内にスープを飲まないと、お迎えがくる。
お迎え、は助けようのない死だろう。
番人や、番人に守られた何かが絶対的な力で襲ってくるとしたら…
……一緒に、逃げないとな。
(下僕の部屋……錆びた扉か)
錆びついた扉は脆く、鍵がかかっているものの、力を入れたらそのまま開けることができた。
しかし、中は薄暗く、人の気配はあるが動いている訳ではなさそうだ。
蝋燭を持って、再び部屋を覗く。
一歩、二歩と進めば、俺と同じ白いローブを着た少女が立ち尽くしていた。
「雨月!」
見間違う訳ない、その顔。
ただ、その白いローブは血にまみれている。
「怪我してるのか?とりあえず明るいとこへ来い、蝋燭だけじゃよく見えねぇ」
手を引けば、彼女は大人しくついてきて。
スープの前で再び向き合えば。
『……』
どこか、困惑した表情で俺を見上げていた。
「雨月?痛むか?」
『……(首を横に振る)』
「…?声、でないのか」
『…(頷く)』
そこで気づく。彼女の服の血は返り血で、手には拳銃が握られていること。
「…………お前、雨月か?」
『………』
最後の質問に、彼女は、困惑し、怯え、それでも何か訴えるように見つめ返してくる。
「答えられない、のか?」
『…(頷く)』
「この空間の、カミサマ、とやらのせいで?」
『……っ』
どうやら、何か制約を受けていて。
自分の意思通りに体を動かせないらしい。
『いいこ』『下僕』でいる為に。
「……、そうか。その拳銃は、渡してくれるか?」
『…(頷く)』
「ふはっ!そんな顔すんなよ、この程度のギミックで俺がお前を見分けられねぇと思ってんの?」
不安そうに拳銃を差し出す彼女の頭を撫でて、拳銃を受け取る。
『…!』
「暴発したら危ないからな、避けとくぞ。そんだけだ、疑ってもないし、攻撃するつもりもない」
そして、テーブルの端へ置いた。
スープの湯気は僅かになってきている。
「……時間も無くなってきたな。手短に説明するぞ」
雨月に、毒入りスープを飲まないと出られないこと。
タイムリミットがあること。
…スープを飲めば、恐らく死ぬこと。
それらを伝えれば、不安そうに瞳を揺らす。
「俺は、これを飲む。お前にも、飲んでほしい」
『…』
「そんな難しい話でも怖い話でもねぇよ。雨月は、俺を信じればいい」
『……!』
「死ぬときも、助かる時も、俺達は一緒だろ?」
手をとって、お互いにスープの入ったスプーンを持つ。
「まあ、お前が作ったスープじゃないことだけが残念だ」
そう笑えば、彼女も小さく笑い返してくれた。
そして、二人同時に赤いスープを口に含む。
どろり、と。鉄臭い液体が喉を流れて。
次の瞬間には心臓が感じたことのないくらいの速さで動きだし、酷い息苦しさを覚えた。
思わず倒れ込むと、歪む視界に喉を抑えて苦しむ雨月が目に入る。
なんとかその体を抱き締めれば、彼女も同じように背中へ腕を回した。
(雨月…っ絶対に、連れて帰る)
離さない、と。強く願ったけれど。
もう腕に力を入れることは叶わなかった。
視界が、意識が、完全に白む。
すると、どこからともなく、咆哮のような声が響いた。
-勇敢なる者よ!現へと還るがいい!-
「……」
ゆっくりと、瞼を持ち上げることができた。
同時に、激しく脈打つ心臓と、喉を伝った嫌な感覚、倒れ伏した床の冷たさを鮮明に思い出す。
(……雨月)
慌てて腕に抱えた彼女を確認すれば、もぞりと動いた。
んん、と小さく呻くと、ぼんやりと目を開ける。
『…まことくん?…あ、れ、夢…』
「………夢、だ。きっと」
『……そうだね。……ふふ、真君は、夢の中でも助けに来てくれるんだね』
「お前は夢の中でも俺を信じてくれるんだな」
夢じゃなかった。
と、察してしまったのは後味悪いが。
あんな状況で、あんな状態でも。
雨月は俺を信じてくれると知って、心底嬉しかった。
(雨月と心中も経験できたしな)
「……、お前の作ったスープが飲みたい」
『ふふ、トマトスープ以外がいいね』
「ポタージュとかもちょっとな、のど越しが」
『んー、味噌汁かな?』
「十分だ」
fin
以下、あとがきとダイスログとキャラシ
※初心者なので色々間違いありましたらすみません
※ステータスは花宮をイメージしてロールなしで割振ってます。POWだけは女神にまかせました
※DEXなど使わないステは特に設定してません
※本当にダイス振りました※アプリ使用※
~キャラクターシート~
名前:花宮真 職業:学生(バスケ部)
STR 16 CON 14 POW 14
INT 18 EDU 18 SAN 70
アイデア 90 知識 90
図書館:80 芸術(バスケ):70
博物学:70 その他の言語(英語):50
回避 :60 応急手当て:60
跳躍 :60 心理学:80
投擲 :60 言いくるめ:50
目星 :80
~探索~
『スープの部屋』
目星80→○58
└メモの裏
アイデア90→○37
└スープが人間の血だと理解する
└SANC70→×78 減少3
└SAN70→67
『書物庫』
図書館80→○62
└「スープの夢について」の発見
知識1/2(45)→○32
└黒い液の匂いが花の蜜の匂いと似てる
薬学01(初期値)→◎01
└黒い液が猛毒と解る
『調理室』
知識1/2(45)→○40
└銀が硫化ヒ素で黒ずむと知っている
『下僕の部屋』
ドアとのSTR対抗→自動成功
『スープの部屋』
心理学80→◎04
└ヒロインの状態把握
人間の血を飲んだことによるSANC
└SAN67→○10 減少1
└SAN67→66
毒とのPOT対抗→自動失敗
~シナリオクリア~
死亡によるSAN減少1D10→4
SAN66→62
生還によるSAN報酬1D10→8
SAN62→70
ヒロイン救出によるSAN報酬1D6→3
SAN70→73
~技能成長~
薬学01→○02 1D10→6
薬学01→06 (クリティカル報酬)
薬学01→○31 1D10→10
薬学06→16 (初期値成功報酬)
心理学80→○87 1D10→5
心理学80→85 (クリティカル報酬)
あとがき
薬学の01クリ初期値成功は2度見しました。花宮の知識やばい。
しかも成長ロールで02とか無駄クリのうえ危ない数値出してる。
ヒロインへの心理学クリティカルも2度見しました。花宮の愛がやばい。