花と蝶 番外
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《柳 ─ヤナギ─:2020まこたん④》
時々、思う。
私が私じゃなければ良かったのに、と。
『真君、』
私を受け入れてくれる彼は、格好いい。
頭もいい、運動もできる。
性格に多少難はあるが、私には優しくしてくれるし、一応人当たりよくすることもできる。
「…寝れないか?」
『ううん…ごめん、ちょっと呼びたくなっちゃった』
「なんだよそれ。朝までちゃんと居るから、安心して寝ろ」
私には、勿体無い人だ。
そんな彼と共依存になったのは、彼にとっては運が悪かったのかもしれない。
彼が居なければ眠れない私と、私の料理しか受け付けなくなった彼。
その関係が恋人になって、夫婦にまでなった今だからこそ。
(私が、もっと可愛くて)
(気が利いて、頭もよくて)
(真君の隣に相応しい人間なら良かった)
そう願う時がある。
持って生まれた顔は、どうしようもない。
いくら体型に気を付けたところで顔付きは変わらないのだし。
四六時中一緒にいる彼の前で、化粧で取り繕うのは不毛というもの。
せめて。と料理の練習だけは怠らないけれど…料理が出来る美人など、世の中に山ほどいるのだ。
『…ありがとう、おやすみなさい』
「…おやすみ」
この人のこと、こんなに好きなのに。
彼に相応しい人が現れたところで、彼が幸せなら…と退ける程の達観はしていない。………今後もしないだろう。
彼は私の料理をとても気に入ってくれているけれど、私がそもそも居なければ、彼はもっと自由に生活していた筈なのだ。
(この考えが、無意味だ)
(離れられないのは、私の方)
(彼に離されたくないのは、私)
~自由~
(そんなものを、望んでいない)
************
時折思う。
彼女は何故、"他"というものを考えないのだろう。
彼女の世界はとても小さく、すべて俺が中心で回る。
そんなの、とても、普通ではない。
(それは、俺も同じか)
添い寝をしなければ眠れない彼女と、その彼女が作った飯しか味を感じなくなった俺は。よくも悪くも似た者同士。
そうは言っても、だ。
彼女は可愛い方の類いだ。
人の気持ちに敏感で、庇護欲をかられる。
敵が少ないタイプの人種。
まして、色目なしで料理が上手いのだから、引く手あまただろう。
そんな奴が。
不誠実の塊で、ゲスのテンプレートみたいな俺を慕う。選ぶ。尊ぶ。愛しむ。
冷静に考えれば、不思議な関係。
「雨月、」
『なぁに?』
他に、いくらでも居るだろう。
優しい奴、明るい奴、真面目な奴。
「珈琲」
『いいね、お茶にしようか』
けれど俺は、そうはなれない。
もう取り繕うこともできないし。
「………ありがとう」
『ふふ、どういたしまして』
そんな俺を。
何も疑わず、何も不思議に思わず。
彼女は真っ直ぐ見ていてくれる。
~従順~
(その馬鹿さに 応えていたいと思う)
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((どうか))
((あなたを好きでいることを))
((赦して))
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