花と蝶 番外
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《柑 ─ミカン─:2020まこたん③》
『…どうしたの、これ』
「母さんが送ってきた」
リビングの片隅に大きな段ボール。
愛媛、と書かれたその箱を、もしや…と開けば。
『こんなに沢山の蜜柑、初めて見た』
ぎっちり詰め込まれた橙色。
大きさはミックスになっているけれど、ざっと40はありそうだ。
「俺もだ。二人で食べるには多いだろって言ったら"もう一箱送るから周りにも配ったら?"だと。意味わからねぇよ」
『あー…チームの人に配ったら、私達の分少ないでしょってことかな?』
「そんな何個も配るかよ」
『2箱になるなら1箱はそのままチームにあげてもいいくらいだけど…箱で持ってくのも大変だもんね』
「だな。段ボール箱持って電車は嫌だ」
『とりあえず、皆には袋で持ってける分だけだね。ね、私達も食べてみよ』
そんなことを話ながら、箱から蜜柑を2つ取り出す。
炬燵に座る真君に1つ差し出しながら、私も隣に並んだ。
「………無農薬だって書いてあったから、いいやつだと思うが」
『そうだよねぇ…何お礼しようかな』
「学生からの礼なんて期待してねぇだろ。甘えとけ」
『それでも…あ、蜜柑ジャムとかどう?』
「あー…喜ぶんじゃないか。ヨーグルトとか生食パンとか、はまってたし」
『じゃあ、そうしよ。頂きます』
瑞々しくてはち切れんばかり皮を、いそいそと剥いた。
『甘い…!美味しいね』
「…そうだな」
柑橘特有の爽やかな香りを漂わせながら、真君も口に一房放り込んで咀嚼している。
『はい、どっちが甘い?』
そんな彼に、一房つまんで口元へ近づければ。無言で口を開いたので、そのまま入れる。
「……どっちだろうな?」
それから首を傾げて、ほら、なんて笑いながら私にも彼が剥いた蜜柑を一房近づける。
『…。どっちも、だね』
それをパクりと口に含んで。答えを出せば、一層楽しげに笑った。
~愛らしい~
「これ、一箱なんてすぐ終わるんじゃないか?」
『そうかも。机に出しといたらずっと食べちゃうね』
「……。ひとまず、もう一箱が来るまではお裾分けは無しだな」
『でも、鮮度がいい内に配らない?』
「………蜜柑ジャムの分、とっとかないといけないだろ」
『、そうだね。』
~優しい~
『ねえ、真君も蜜柑ジャム食べる?』
「食う」
鮮度がいい内に、というのは料理の基本。お母さんに贈る蜜柑ジャムも今日の内に作ることにした。
一緒に蜜柑を剥いてくれる真君は、薄皮を剥ぎながら即答する。
『他にリクエストは?』
「リクエストってなぁ…ミカンのレパートリーなんて俺が解るかよ。オレンジとは違うのか?」
『オレンジより小ぶりだけど甘いかな。あと、薄皮も食べられる』
「………オススメは?」
『やっぱりそのまま』
「おい」
クスクス笑いながら、果肉を砂糖で煮つめていく。
『あとね、焼き蜜柑も冷凍蜜柑もいいよ。オレンジと同じように、グリルしてチョコかけても美味しいと思う。蒸しパンとかクッキーもあり。王道のゼリーとジュースも捨てがたい』
頭に沸いてくるイメージを、ポンポンと口から出していく。
みかんジュースが出来れば、応用はいくらでも利く。シャーベット、ババロア、ムース、スムージー…デザート以外なら、単純にソースやドレッシングにもなる。
「全部うまそうで困るんだが」
聞いていた真君が、煮沸した瓶にジャムを詰めながら苦笑する。
『ふふ、どうする?しばらくそのまま食べる?それとも、どれか試す?』
「…そうだな、とりあえずそのジャムが食いたい。雨月の料理を最初に食べるのは俺だ」
『…っ、うん』
~花嫁の喜び~
(貴方はそうやって 私を喜ばす)
紅茶とヨーグルトのティータイムは
蜜柑ジャムに彩られた優しいオレンジ色
fin.