花と蝶 番外
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《ミント:2019まこたん③》
うたた寝をしてしまった。
そう気づいたのは、目が醒めたからだ。
うたた寝が出来たということは、真君がその時側にいて。
目が醒めたということは、真君が離れたということ。
『…まことくん?』
ローテブルの前で、カーペットに並んで座ってた。
真君がゲームしてるのを隣から覗いていて、難しいロジック?ギミック?が続いてるうちに眠ってしまったのだと思う。
けど、隣に彼はいなかった。
『…?』
寝ぼけ眼でリビングを見渡す。
真君の影が無くて、少し不安になった時。
チンッ
と、軽い音がした。
…電子レンジだ。
「お目覚めか?」
『うん、おはよ』
「つっても30分くらいだが。退屈なゲームだったな」
『ううん、ちょっと難しくて』
「まあ、小難しい割にワンパターンだったから、余計飽きたんだろ。飲み物温め直してきたから、違うのやろうぜ」
少しして、キッチンからマグカップを2つ持った真君が戻ってきた。
湯気を立てるミルクティーを受け取って、隣に並び直す。
真君は、ゲームが好きだ。
一番好きで得意なのはダーツだけど、競う相手もいないし私も下手だから、遊びにいく回数は多くなかった。
その代わり、パソコンにダウンロードするやつはかなりの数こなしてる。
場所を取らないし、フリーゲームは気軽でいいと言って。
パズル、シューティング、アクション、謎解き、脱出、もの探し、RPG、特に拘りはない。
面白ければ、何だっていい。
最近はRPGが多くて、謎解きとホラーをメインにやってると思う。
有名所のフリーゲームは大体エンディング回収終わってるらしい。
それを、週末や、翌日の講義が遅いときの夜なんかに進めるのが趣味で。
……私は、それを眺めるのが好きだった。
『…怖くないのがいいな』
「エフレメイの続編があるんだが」
『あれ怖かった…』
「あれでか。じゃあ…青蹄のユニコーンか、前向き勇者だな」
『ユニコーンが出てくるの?』
「ユニコーン男だな。それから猫耳ゴーレム」
『なんか可愛いね』
「じゃあ、それにするか」
スピードを求められるバトル系や逃走系のゲームではないらしい。
隣にぴったりくっついて、なんなら肩に凭れ掛かっても特に何も言われなかった。
『わ、絵も可愛い』
「ファンタジーな世界観に合う絵だな」
過保護なユニコーン男の旦那さんと、猫になりたいゴーレムの奥さん。
やりとりも可愛い。
操作プレイヤーはゴーレムの方で、探索と謎解きをしながら進めていくようだ。
『ユニコーン、奥さん大好きだね』
「…ゴーレムも大概だがな」
『うん。お似合い、って感じ』
ユニコーンにとって、ゴーレムとの出会いは世界が色づくような素敵なものだったらしい。
他愛のない会話が、何気ない仕草が、かけがえのないものになっていく。
君の意思を尊重したいけど、願わくば、僕の側に…
ストーリーを追うにつれて、なんでゴーレムが猫耳なのかもわかったし、ユニコーンが過保護なのかも解ってきた。
(私がゴーレムだったら)
(私がユニコーンだったら)
(……同じ行動をするかもしれない)
私は、どちらにも感情移入してしまって。
とうとう流れたエンディングでは
「え、おま、泣くか?」
涙さえ浮かべる程だった。
『…よかった。よかったぁ…』
「……。そうだな、よかったな」
ハッピーエンド、と呼べる終演でほっとしてしまったのもある。
ポンポンと頭を撫でる真君に甘えて、エンディングの余韻に浸った。
見てるだけでこんなんだから、私は操作できないんだ。用意されたエンディングが幸せでない時は立ち直れなくなってしまう。
「…さて、どっちも短かったな。…長めの謎解きやりたいんだが…」
『私も仮眠とったから、朝まででも見てられるよ』
「へぇ…?じゃあ、気になってたんだよな、これにするか」
『……?キョウコツ?』
「ああ。狂骨だ」
『…っ!絶対怖いやつじゃん!!』
「だろうな。明治が舞台の妖怪ホラーだそうだ」
そんな、ほっこり幸せな気持ちに浸っていた私の前に。
おどろおどろしいオープニングが流れてきた。
『うぅ…意地悪』
「そう言いながら最後まで一緒に見るあたり、本当に雨月は馬鹿だよな」
ポカポカと腕を叩けば、真君の膝の間に招かれて。
後ろから抱き締めるように…と言えば聞こえがいいけど。逃げられないように捕らえられてしまった。
『………うん。馬鹿かも。でも、少しでも多く、真君と同じものが見たい。同じように感じられなくても、同じ時を過ごしたい』
~かけがえのない時間~
『私は、真君ほど頭がよくないから。このお話が、真君にはどう映ってるのか知りたい』
「…俺も、お前ほど純粋じゃないからな。雨月にはどう見えるのか知りたい」
『ふふ。とりあえずね、怖い』
「……まだ冒頭だぞ」
二人でなにかを共有できる時間は、なんであっても大切なものだと思う。
fin
花:ミント
~かけがえのない時間~
食:ミルクティー