花と蝶 番外
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《ナナカマド:2019まこたん②》
原から、海外旅行のお土産だと東南アジア系の調味料や香辛料をいくつかもらった。
「花宮達なら、作ってあるものより作るもののがいいよね?」
なんて言って。
『すごい、エスニックな匂いがする』
「…これ、何に使うんだ?」
『えっと…うちにあるもので作れそうなの…ナシゴレンとか』
「なし…?」
『インドネシア料理だったかな?あっちの炒飯』
雨月の炒飯なら旨いだろうな。
と、見慣れない調味料の小瓶を横目に思った。
月末だったり週末だったり。冷蔵庫を片付けたい時や、食材を買い足す余裕が無い時は炒飯が多い。
頻度が高い分、キムチや納豆、ちりめんじゃこ、紅しょうが等々レパートリーは多様だ。
そもそもネギと卵だけの塩炒飯がとても旨い。パラパラなのに米そのものはふっくらしてるとか。
そんな彼女が作るのだ、期待もする。
……のは、さて置いて。
ナシゴレン、は聞いたことのない料理だったが、彼女は何やらレシピノートを持ってきて冷蔵庫と相談を始めた。
『えっと、ナシゴレンと…ソト・アヤム、も作れるかな』
「なんだって?」
『ソト・アヤム。インドネシア風の鶏スープだよ』
「うまそう」
『だよね!初めて作るから時間かかりそう……夕飯の準備、ちょっと早いけど始めるね』
どうやら、今晩の夕食はインドネシア料理らしい。
(インドネシアか)
数千の火山島からなる、多様な民族を併せ持つ国。
公用語はインドネシア語、マレー語。
とはいっても民族ごとの言語も数多く存在する。
有名所は…バリ島、ジャワ島。
遺跡よりも自然の方が知名度高いんじゃないか?スキューバダイビングとか、ジャングルとか。
コモドオオトカゲなんか最近テレビ出てただろ。
……火山島だからな、津波や地震の被害で知る人も少なくないだろうが。
(海が綺麗なんだよな)
(タナロット寺院とかボロブドゥール遺跡とかも感慨深い)
原は………旅行でテンション上がってて語彙力無いだけだとは思うが、「ヤバい」「熱い」ばかりだったけど。
『……真君、サラダは普通のサラダでいい?』
「ああ」
そんなことを考えながらダイニングテーブルを拭いている俺に、雨月はカウンター越しに話しかける。
『デザート、あんみつでもいい?』
「……あんみつでいいが、ここで和食か」
『…豆の缶開けたつもりが間違えてて…』
「ふはっ!ふ、ふふっ」
『笑わないでよっ!』
エプロン姿のまま、わざわざカウンターを越えてきて、彼女は頬を膨らませた。
「いや、だって、お前…っ、ふ、ふは」
『笑わないでってばぁ!』
「悪い、悪い。ふはっ、はは…」
『~~っ!』
彼女は反論できないのか、俺の胸ら辺をポカポカと叩く。
「わかった、わかった、笑い過ぎたな」
『真君、2回言うときはわかってない』
「ふは、手厳しい。いやな?料理に関してお前がミスするだけで珍しいのに、そんなこと間違えるなんて、可愛いと思って」
『…っ』
「俺も手伝うから、その…ソトアヤム?ナシゴレン?どんなのか教えてくれよ」
ちょうど目の前に、可愛い奴が来て、可愛い表情で、可愛いことしてる。
ぎゅっと抱き締めて、頭のてっぺんにキスすれば、あっという間に大人しくなった。
『…許す』
「どうも」
結局、俺が手伝ったのはサラダの野菜を千切ったのと。ナシゴレンに乗せる目玉焼きを作ったぐらいだった。
「なあ、海外、行ってみたいか?」
『インドネシア?』
「まあ、そこに限らず」
『うーん…景色を見たいとか、料理を知りたいとかはあるよ?でも、怖いなって思っちゃう』
夕食の皿を片付けて、リビングのソファーに並びながら、原が持ってきたパンフレットを眺める。
「治安か?」
『うん。あと、言語も文化も違うでしょ?楽しみより心配が勝っちゃうの』
写真のビーチを指でなぞりながら、彼女は視線を伏せて笑う。
「…ばーか」
『え?』
「俺がいるだろ。その気になれば言語の習得と地域文化学習くらいできる」
『……ふふ、そうだった。私の旦那様、凄く頭がいいんだった』
「ったく、俺がいてそこが不安とか」
『ごめんなさい、そうだよね、一緒に行ってくれるんだもんね』
「…当然」
~私と一緒にいれば安心~
『そう思ったら……真君と一緒なら何処でも大丈夫な気がしてきた』
「そうだな。…何処であっても、何があっても、俺がいればお前を幸せにしてやれる自信はある」
(お前は、俺がいれば幸せと言ってくれるから)
(雨月にも、同じ幸せを、安らぎを)
fin
花:ナナカマド
~私と一緒にいれば安心~
食:ナシゴレン