人外霧崎とわちゃわちゃ
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人魚の古橋と秋にわちゃわちゃ
※人外霧崎 古橋落ち独立ストーリー
風が涼しくなってきた。
そろそろ仲秋の名月も近いという。
『康次郎、来たよ』
「ああ。待ってた」
そんな折、霧崎の中にある小さな湖に来ていた。
見た目以上に水深があるようで、この湖の主は池と呼ばれるのを大層気にしている。
その湖の上、白い石造りの綺麗な橋がかかかっていて。
そこに目的の人物、康次郎が立っていた。
『いやあ、絶景だね』
「だろ?」
彼の横に並び立って見る世界は極彩色だ。
突き抜ける青い空、深く染まった紅葉、豊かにむした緑色の苔、それから私達の乗るこの白い石橋。
水面に全ての色が反射して揺らめいているのがまた美しい。
『……康次郎…ちょっとお散歩しよ?』
「ああ」
橋を渡り、湖を一周するようにゆっくり歩く。
何とはなしに彼の浴衣の裾を掴めば、やんわりと手を繋ぐ形に直された。
『康次郎の手、冷たい』
「変温動物だからな」
『え、そういうとこ魚なの』
「知らん。というか冗談だ」
『なんだ。本気にしちゃった』
彼の冷たい指に、自分の指を絡めて引き寄せる。
「……お前は熱いな。火傷しそうだ」
『変温動物なら火傷してたかもね』
「だな。…久しぶりに、人で良かったと思った」
『魚のが楽なの?』
「ここに住むにはな。人の体は寒さに弱いし水中では生きられない」
『どうして、陸に居続けないの?』
こちらに視線を向けた彼は、その眼差しに影を落とす。
「俺が脚を得るには、代償が必要なんだ。目、というな」
『そんな…』
「まあ、霧崎の中では土地に力があるから、色を失う程度で済んでるよ」
『じゃあ、今も…』
「色は見えてない。お前の色は、前回世話になった時に知ったが」
この、大きな黒目は。今、色を映してないというの。
彼を外に連れだそうとしても、その瞳に光は差さないというの。
「そんな顔するなよ。別に脚を魚に戻せば色も戻る」
『だって…』
「…俺は人魚姫じゃないんだ。視力と引き換えに脚が欲しいとは思わない。仮に引き換えても、愛しの王子様が見えないんじゃ元も子もないだろ」
『……そっか』
大地を踏みしめる足は、やがて橋の反対側へたどり着く。
『康次郎の王子様は、会いに来てくれる人かここに住んでくれる人がいいね』
「…王子様ではないが」
『あ、お姫様か』
「…ああ。会いに来てくれるのも、ここに住んでくれるのも捨てがたいな。外の話を聞くのは楽しいだろうが、待つのは辛そうだ。住んでくれれば寂しくはないが、不便だろうし」
石橋に腰かけて、脚が水に触れない程度に浮かせる彼は、私をみやる。
その視線から、感情を読み取るのはとても難しかった。
『…』
「暖かい時はいいんだ。色も、動物も鳥も動くから。ただ、冬はな…何も変わらない冷たい世界に一人でいると、自分が存在してるのか解らなくなる」
この、紅葉が散れば冬なんてすぐだ。
私は彼の隣に座り、その頬をそっと手で包みながら紡ぐ言葉を考える。
『だからさ、冬は、私のとこに来てよ。色は無いけど…暖かいし、私もいるよ』
「……」
『春になったら、ここでピクニックしよう?夏は夕涼みして、秋はまた紅葉みようよ』
「………俺のお姫様になるつもりか」
『駄目?』
「いや、いい。そうだな、俺は、お前の王子様になれるだろうか」
『むしろ、なって欲しい』
冷たかった彼の頬が、じわじわと熱を帯びる。
そうか、表情が変わらなくても照れるんだね。
『康次郎、好きだよ』
「俺も…好きだ」
どちらともなく唇を寄せて。
それを離しながら目を開けば、康次郎は更に目を見開く。
「……[#dn=2#]は本当に俺の王子様かもな」
『え…』
「どうも、お前の口付けには魔法が宿るようだ」
そんな赤い顔で見るなよ。
なんて、微笑む彼は私の熱を帯びた頬を撫でる。
『色…赤って』
「見えてる。…お前と同じ世界が、同じ彩りで」
彼の脚は、未だ脚。けど、僅かに微笑む彼の言葉は真実だろう。
『そんなことが…』
「逆に人魚には戻れないのかもな、…っ!」
『ちょ、康次郎!』
彼は、何を思ったか湖に全身飛び込んだ。
戻れなかったら不味いでしょ、水深、深いんだから!
『…こうじろ?』
「……、戻った」
『あ、本当だ』
水面に顔を出す彼は、錦鯉の下半身をヒラヒラと見せて泳ぐ。
…綺麗。水面の紅葉と相俟って尚更。
「お前にも、俺と同じ世界を見せてやる。…来い」
『え、』
「大丈夫。信じてくれ」
湖の中で手を広げる彼に、一瞬躊躇したけど。意を決して飛び込んだ。
『ぷはっ』
「しっかり掴まってろ。目も開けられるし、息も出来るから」
水中で私を抱き締めた彼は、辛うじて浮き出ていた頭まで水に引き込んだ。
『…!』
「大丈夫、息はできるはず」
『っ、は、あ、嘘…なんで』
「俺からの呪いだ。…さあ、本題だ、上を見てくれ」
水中から、水面を見上げる。
そんな不思議な行動で見た光景は。
青い空と真っ赤な紅葉と、幾つもの光の筋と白く輝く気泡。
全部が揺らめいて万華鏡のようだ。
『き…れい』
「お前程じゃないがな」
『…………馬鹿』
揺蕩う紅葉を見上げながら、康次郎の胸にすり寄る。
視界の端に映る、彼の横顔が微笑みを浮かべている気がした。
私の王子様は、人魚姫。
(勝手に泡になったりしないでね)
fin
※人外霧崎 古橋落ち独立ストーリー
風が涼しくなってきた。
そろそろ仲秋の名月も近いという。
『康次郎、来たよ』
「ああ。待ってた」
そんな折、霧崎の中にある小さな湖に来ていた。
見た目以上に水深があるようで、この湖の主は池と呼ばれるのを大層気にしている。
その湖の上、白い石造りの綺麗な橋がかかかっていて。
そこに目的の人物、康次郎が立っていた。
『いやあ、絶景だね』
「だろ?」
彼の横に並び立って見る世界は極彩色だ。
突き抜ける青い空、深く染まった紅葉、豊かにむした緑色の苔、それから私達の乗るこの白い石橋。
水面に全ての色が反射して揺らめいているのがまた美しい。
『……康次郎…ちょっとお散歩しよ?』
「ああ」
橋を渡り、湖を一周するようにゆっくり歩く。
何とはなしに彼の浴衣の裾を掴めば、やんわりと手を繋ぐ形に直された。
『康次郎の手、冷たい』
「変温動物だからな」
『え、そういうとこ魚なの』
「知らん。というか冗談だ」
『なんだ。本気にしちゃった』
彼の冷たい指に、自分の指を絡めて引き寄せる。
「……お前は熱いな。火傷しそうだ」
『変温動物なら火傷してたかもね』
「だな。…久しぶりに、人で良かったと思った」
『魚のが楽なの?』
「ここに住むにはな。人の体は寒さに弱いし水中では生きられない」
『どうして、陸に居続けないの?』
こちらに視線を向けた彼は、その眼差しに影を落とす。
「俺が脚を得るには、代償が必要なんだ。目、というな」
『そんな…』
「まあ、霧崎の中では土地に力があるから、色を失う程度で済んでるよ」
『じゃあ、今も…』
「色は見えてない。お前の色は、前回世話になった時に知ったが」
この、大きな黒目は。今、色を映してないというの。
彼を外に連れだそうとしても、その瞳に光は差さないというの。
「そんな顔するなよ。別に脚を魚に戻せば色も戻る」
『だって…』
「…俺は人魚姫じゃないんだ。視力と引き換えに脚が欲しいとは思わない。仮に引き換えても、愛しの王子様が見えないんじゃ元も子もないだろ」
『……そっか』
大地を踏みしめる足は、やがて橋の反対側へたどり着く。
『康次郎の王子様は、会いに来てくれる人かここに住んでくれる人がいいね』
「…王子様ではないが」
『あ、お姫様か』
「…ああ。会いに来てくれるのも、ここに住んでくれるのも捨てがたいな。外の話を聞くのは楽しいだろうが、待つのは辛そうだ。住んでくれれば寂しくはないが、不便だろうし」
石橋に腰かけて、脚が水に触れない程度に浮かせる彼は、私をみやる。
その視線から、感情を読み取るのはとても難しかった。
『…』
「暖かい時はいいんだ。色も、動物も鳥も動くから。ただ、冬はな…何も変わらない冷たい世界に一人でいると、自分が存在してるのか解らなくなる」
この、紅葉が散れば冬なんてすぐだ。
私は彼の隣に座り、その頬をそっと手で包みながら紡ぐ言葉を考える。
『だからさ、冬は、私のとこに来てよ。色は無いけど…暖かいし、私もいるよ』
「……」
『春になったら、ここでピクニックしよう?夏は夕涼みして、秋はまた紅葉みようよ』
「………俺のお姫様になるつもりか」
『駄目?』
「いや、いい。そうだな、俺は、お前の王子様になれるだろうか」
『むしろ、なって欲しい』
冷たかった彼の頬が、じわじわと熱を帯びる。
そうか、表情が変わらなくても照れるんだね。
『康次郎、好きだよ』
「俺も…好きだ」
どちらともなく唇を寄せて。
それを離しながら目を開けば、康次郎は更に目を見開く。
「……[#dn=2#]は本当に俺の王子様かもな」
『え…』
「どうも、お前の口付けには魔法が宿るようだ」
そんな赤い顔で見るなよ。
なんて、微笑む彼は私の熱を帯びた頬を撫でる。
『色…赤って』
「見えてる。…お前と同じ世界が、同じ彩りで」
彼の脚は、未だ脚。けど、僅かに微笑む彼の言葉は真実だろう。
『そんなことが…』
「逆に人魚には戻れないのかもな、…っ!」
『ちょ、康次郎!』
彼は、何を思ったか湖に全身飛び込んだ。
戻れなかったら不味いでしょ、水深、深いんだから!
『…こうじろ?』
「……、戻った」
『あ、本当だ』
水面に顔を出す彼は、錦鯉の下半身をヒラヒラと見せて泳ぐ。
…綺麗。水面の紅葉と相俟って尚更。
「お前にも、俺と同じ世界を見せてやる。…来い」
『え、』
「大丈夫。信じてくれ」
湖の中で手を広げる彼に、一瞬躊躇したけど。意を決して飛び込んだ。
『ぷはっ』
「しっかり掴まってろ。目も開けられるし、息も出来るから」
水中で私を抱き締めた彼は、辛うじて浮き出ていた頭まで水に引き込んだ。
『…!』
「大丈夫、息はできるはず」
『っ、は、あ、嘘…なんで』
「俺からの呪いだ。…さあ、本題だ、上を見てくれ」
水中から、水面を見上げる。
そんな不思議な行動で見た光景は。
青い空と真っ赤な紅葉と、幾つもの光の筋と白く輝く気泡。
全部が揺らめいて万華鏡のようだ。
『き…れい』
「お前程じゃないがな」
『…………馬鹿』
揺蕩う紅葉を見上げながら、康次郎の胸にすり寄る。
視界の端に映る、彼の横顔が微笑みを浮かべている気がした。
私の王子様は、人魚姫。
(勝手に泡になったりしないでね)
fin