四季折々
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《梅雨② じわじわ》
春が終わって夏が来るこの時期、窓の外は水のカーテンで遮られている。
外の世界と完全に隔たれた気になるくらいの雨音と、風景が霞むくらいの雨量。
まあ、いわゆる、梅雨だ。
この時期は本当に、本当に苦手。なんせ
『暑い』
「寒い」
梅雨の湿気を『蒸し暑さ』と感じている私と、「肌寒い」と感じている真。
真逆な意見であるが、何方にしても嫌な季節に変わりなかった。
真は特に、気圧の変化に伴う頭痛に苛まれているようで。
あの、可愛い麻呂眉を、眉間に寄せて渋い顔をしていた。
良くも悪くも傲慢な性格の彼が苦しい表情をすることは珍しい。
その珍しさと一抹の色気に、クるものが無いかと言えば嘘だ。カッコいいとも可愛いとも違う愛しさが胸をギュッと締め付ける。
…とはいえ。好きな人が苦しんでる姿をみたいわけでもない。
私は纏わりつく湿気が暑くて仕方ないけど、エアコンの温度設定は下げず、除湿モードだけ動かした。
『まこと、甘くないココア飲む?あったかいやつ』
室内デート、のつもりだったけど。くったりとカーペットに寝転んでタオルケット被ってる彼に、映画やゲームを勧める気にもならなくて。
世話を焼くことで構ってみる。
「…コーヒーじゃなくて?」
『コーヒーは身体冷えるんだって。テレビでやってた』
「お前は?」
『私はアイスコーヒーにしようかな』
私はあっついから。体が冷えるならその方がいい。
「なら、俺もコーヒーがいい」
『…』
いま、コーヒーで、じゃなくて。
コーヒーが、って言った。
『んー、でも まこと がココアなら、私もココアにしようかな。久しく飲んでないし』
「…じゃあ、ココア」
彼はカーペットに突っ伏した顔を、少し横向きにして。瞼を上げるのも億劫なのか、薄目で私を見上げてる。
そんな、彼の前髪を指先で優しく払った。
『すぐ作ってくるから、ゆっくり起きて』
頭が痛いときって、急に頭動かすと辛いから。彼の様子をキッチンから見守りながら、ケトルが湧くのを今か今かと待った。
***
「…」
『あったまった?』
「少しな」
彼と隣り合って座る。
彼の両手に包まれたマグカップは湯気が立っていて、私が持つより小さく見えた。
私のグラスは結露で濡れていて、真が使ってるときより大きく見える。
ココアを啜る彼の眉間は少し和らいで。
どこかあどけなく見えるのが、彼の苦悶の表情に抱いたときとは比にならないくらい愛しかった。
『じゃあ、もっと温めなきゃね』
いまだ肩にかかるタオルケットの下から腕を差し入れて、真を抱きしめる。
冷えてるわけではないけど、彼が寒いなら。温めてあげたいと思ってしまう。
『くっついてれば、あったかいでしょ?』
私はじんわりと汗をかくくらいには暑いから、彼にジワジワと、この熱が移ればいい。
「…っ、お前は、暑いんじゃねぇの」
『暑いよ。でも、真が寒い方が嫌』
触れた頬が、少しずつ熱を持っていくのが嬉しい。ちゃんと伝わってる。
そう思ってたら、ピ、ピ、とリモコンの音。
彼の手にあるリモコンの画面は、さっきより2度も低い。
「お前があっためてくれんなら、暑いくらいだ」
はっと覗き込んだ彼の顔は真っ赤で。
『あ』と私が何か紡ぐ前に、彼が見えない距離まで抱きしめられてしまった。
(ジワジワと、私の体温が君に移ればいいな)
(ジワジワでいいから、君の痛みがとれるといいな)
→梅雨③
春が終わって夏が来るこの時期、窓の外は水のカーテンで遮られている。
外の世界と完全に隔たれた気になるくらいの雨音と、風景が霞むくらいの雨量。
まあ、いわゆる、梅雨だ。
この時期は本当に、本当に苦手。なんせ
『暑い』
「寒い」
梅雨の湿気を『蒸し暑さ』と感じている私と、「肌寒い」と感じている真。
真逆な意見であるが、何方にしても嫌な季節に変わりなかった。
真は特に、気圧の変化に伴う頭痛に苛まれているようで。
あの、可愛い麻呂眉を、眉間に寄せて渋い顔をしていた。
良くも悪くも傲慢な性格の彼が苦しい表情をすることは珍しい。
その珍しさと一抹の色気に、クるものが無いかと言えば嘘だ。カッコいいとも可愛いとも違う愛しさが胸をギュッと締め付ける。
…とはいえ。好きな人が苦しんでる姿をみたいわけでもない。
私は纏わりつく湿気が暑くて仕方ないけど、エアコンの温度設定は下げず、除湿モードだけ動かした。
『まこと、甘くないココア飲む?あったかいやつ』
室内デート、のつもりだったけど。くったりとカーペットに寝転んでタオルケット被ってる彼に、映画やゲームを勧める気にもならなくて。
世話を焼くことで構ってみる。
「…コーヒーじゃなくて?」
『コーヒーは身体冷えるんだって。テレビでやってた』
「お前は?」
『私はアイスコーヒーにしようかな』
私はあっついから。体が冷えるならその方がいい。
「なら、俺もコーヒーがいい」
『…』
いま、コーヒーで、じゃなくて。
コーヒーが、って言った。
『んー、でも まこと がココアなら、私もココアにしようかな。久しく飲んでないし』
「…じゃあ、ココア」
彼はカーペットに突っ伏した顔を、少し横向きにして。瞼を上げるのも億劫なのか、薄目で私を見上げてる。
そんな、彼の前髪を指先で優しく払った。
『すぐ作ってくるから、ゆっくり起きて』
頭が痛いときって、急に頭動かすと辛いから。彼の様子をキッチンから見守りながら、ケトルが湧くのを今か今かと待った。
***
「…」
『あったまった?』
「少しな」
彼と隣り合って座る。
彼の両手に包まれたマグカップは湯気が立っていて、私が持つより小さく見えた。
私のグラスは結露で濡れていて、真が使ってるときより大きく見える。
ココアを啜る彼の眉間は少し和らいで。
どこかあどけなく見えるのが、彼の苦悶の表情に抱いたときとは比にならないくらい愛しかった。
『じゃあ、もっと温めなきゃね』
いまだ肩にかかるタオルケットの下から腕を差し入れて、真を抱きしめる。
冷えてるわけではないけど、彼が寒いなら。温めてあげたいと思ってしまう。
『くっついてれば、あったかいでしょ?』
私はじんわりと汗をかくくらいには暑いから、彼にジワジワと、この熱が移ればいい。
「…っ、お前は、暑いんじゃねぇの」
『暑いよ。でも、真が寒い方が嫌』
触れた頬が、少しずつ熱を持っていくのが嬉しい。ちゃんと伝わってる。
そう思ってたら、ピ、ピ、とリモコンの音。
彼の手にあるリモコンの画面は、さっきより2度も低い。
「お前があっためてくれんなら、暑いくらいだ」
はっと覗き込んだ彼の顔は真っ赤で。
『あ』と私が何か紡ぐ前に、彼が見えない距離まで抱きしめられてしまった。
(ジワジワと、私の体温が君に移ればいいな)
(ジワジワでいいから、君の痛みがとれるといいな)
→梅雨③