四季織々
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《春 もちもち》花宮
暑がり花宮✕寒がりヒロイン
…花宮視点…
春うららを感じるこの頃。
お花見がしたい、と彼女が溢した。
世間では満開の桜がなんとかってニュースが、つけっぱなしのテレビから流れている。
映像を見ずとも、何処へ行っても混んでることは予想出来た。
それを考える一拍の間に、桜の花弁の中で歩く彼女が可愛いことも予想できてしまったので。
「いつ空いてる?行きたいとこあんの?」
桜見デートの約束をとりつけるために、スケジュールと近隣の花見スポットに思いを馳せて返事をする。
それから、休日よりは平日夜の方が空いてるか…なんて考えていれば。
『あ、えっと、どこでもいいの。……真君とデートしたいだけだから』
息を吐くのを忘れた。
やっと呼吸の仕方を思い出して、ゆっくり吐き出すそれは、溜め息にも近い。
「…ああ、うん。俄然ちゃんとしたとこ連れてってやりたくなったわ」
電車の乗り継ぎはあるけど、水面に桜が映る川沿いのとこ、あれ連れてこう。
『でも、ほら、真君は人混み好きじゃないって』
「人ゴミが嫌いなのとお前とのデート、天秤にかけてどっちが重いと思ってんだよ」
彼女の頭をポスポス撫でながら“なあ、ここは?”とスマホで検索した花見スポットを見せる。
彼女は頬を緩ませて、小さく頷いた。
***
花見の当日、昼間はそれぞれ用事があったから。夕方、会場の最寄り駅に待ち合わせた。ちゃんとライトアップもあるらしい。
『…おまたせ!』
先に着いていた俺に、駆け寄ってくる彼女。
薄紅色で厚手の生地の、長袖膝下ワンピース。裾も袖も少しフリルが見えて、ふわふわしたシルエットをしている。スカートから覗く脚は、相変わらず透けないタイツに包まれていた。今回は、焦げ茶色だろうか、真っ黒ではなさそう。
そして、ワンピースの上に濃い緑色のカーディガン。
(桜餅かよ…)
その上、色合いがピンクと緑。本来ならただ桜をイメージしたり春色ってだけなのに。
寒がりな彼女のことだ、夜風に備えて着込んだに違いない…ふくふくと着ぶくれて、丸っこいシルエット。
それが合わさると桜餅にしか見えなかった。
「待ってない。…いくぞ」
笑いだしたら、彼女はきっと拗ねてしまう。
拗ねてるのも可愛いんだが、せっかく可愛いことい言ってくれて花見デートになったんだ。しばらく黙ってよう。
そう思って、彼女の手を握って桜並木の方へ脚を向ける。
…握った手が、小さくてもちもちしてて、一層桜餅が頭から離れなくなった。
***
『…綺麗だね』
「ん」
薄紅のライトに照らされた夜桜、川面に映る同じだけの桜並木。
日取りがいいのか時間帯なのか、人ゴミも対したことなく、並んでゆったりと歩いていく。
彼女の視線は上へ下へとゆっくり往復して、桜を眺めていた。俺はといえば、少し見下ろす先にある、嬉しそうな彼女の横顔ばかり見ていて。水面の桜が背景として良い仕事してんな…と思っていた。
時折、夜風が走り抜けて花弁を舞わせていく。
それも、彼女の周りを彩って綺麗だった。
彼女の方は、頬を掠めていく夜風が冷たいのか。キュッと眉間を寄せて、あまつ繋いだ手にも力を入れる。
…確かに、指先は少し冷たいかもしれない。
指を絡めて繋いでいた手を少し緩めて、指先を包むように握り直す。
恋人らしさは少し減るが、この方が温かいだろう。…という考えは彼女にも通じたようで『ふふ、あったかい』なんて呟いた。
河川敷を歩き、橋を渡って、反対側の河川敷を歩いて戻ってくる。
花見の後の事は考えてなかった。なんとなく、どこかで夕飯を済ませて帰ろう、そんな空気。
駅まで戻るかもう少し散策するか思案する中で、彼女が不意に立ち止まる。
『お花見、楽しかった。真君、一緒に来てくれて、ありがと』
わざわざそれを言う為に、足を止めて。
相変わらず柔らかそうなもちもちとした頬を、桜色に染めて緩ませる彼女が。かわいくて。可愛いくて。
「…ん。」
俺も頷いて返しながら、つい、その頭を撫でた。
「ほんと、桜餅みてえ」
堪らず笑ってしまえば、彼女はしばらくきょとんとして。それから、ちょっと膨れてみせる。
『そんなに、着膨れてたかなぁ』
俯いて、自身の足元を見ながら彼女は拗ねた声を出した。
『でも。寒くて真君とのデート集中出来ないなんて、嫌だったんだもん』
しかも、続けてそんなことを言う。
彼女も心のどこかでは、着膨れとか色味とか、気にしてたんだろう。
何が桜餅みたいか、なんて俺は言ってないのに。俯いたまま顔を上げてこない。
「…ふはっ。なあ、揶揄ってたんじゃねえよ」
その頬を、指先でやんわりとつついて。つまんで。撫でる。
予想通りの、もちもち。しっとり吸い付く触感と柔らかな質感。
彼女は頬に限らず、どこもかしこもそうだ。
今は袖の下に隠れている二の腕も、タイツの下のふくらはぎも、スカート下の太腿も。……、それ以外も。
頬に手を添えて、顔を上げさせた。
潤む瞳と真っ直ぐ目を合わせて、沸き上がる感情は。
「あんまり美味そうだから、我慢してたんだ。すぐにでも、喰っちまいそうで」
耳元へ寄って囁けば。
ボンと音が出そうなくらいに赤くなった彼女が、しばらくフリーズして。
やっと出した声が
『ぜんぶ、のこさず、たべて』
だった。
(脳裏を駆けていく煩悩は、時折吹き抜ける夜風くらいじゃ払えなさそうだ)
Fin.
→秋:ヒロイン視点
暑がり花宮✕寒がりヒロイン
…花宮視点…
春うららを感じるこの頃。
お花見がしたい、と彼女が溢した。
世間では満開の桜がなんとかってニュースが、つけっぱなしのテレビから流れている。
映像を見ずとも、何処へ行っても混んでることは予想出来た。
それを考える一拍の間に、桜の花弁の中で歩く彼女が可愛いことも予想できてしまったので。
「いつ空いてる?行きたいとこあんの?」
桜見デートの約束をとりつけるために、スケジュールと近隣の花見スポットに思いを馳せて返事をする。
それから、休日よりは平日夜の方が空いてるか…なんて考えていれば。
『あ、えっと、どこでもいいの。……真君とデートしたいだけだから』
息を吐くのを忘れた。
やっと呼吸の仕方を思い出して、ゆっくり吐き出すそれは、溜め息にも近い。
「…ああ、うん。俄然ちゃんとしたとこ連れてってやりたくなったわ」
電車の乗り継ぎはあるけど、水面に桜が映る川沿いのとこ、あれ連れてこう。
『でも、ほら、真君は人混み好きじゃないって』
「人ゴミが嫌いなのとお前とのデート、天秤にかけてどっちが重いと思ってんだよ」
彼女の頭をポスポス撫でながら“なあ、ここは?”とスマホで検索した花見スポットを見せる。
彼女は頬を緩ませて、小さく頷いた。
***
花見の当日、昼間はそれぞれ用事があったから。夕方、会場の最寄り駅に待ち合わせた。ちゃんとライトアップもあるらしい。
『…おまたせ!』
先に着いていた俺に、駆け寄ってくる彼女。
薄紅色で厚手の生地の、長袖膝下ワンピース。裾も袖も少しフリルが見えて、ふわふわしたシルエットをしている。スカートから覗く脚は、相変わらず透けないタイツに包まれていた。今回は、焦げ茶色だろうか、真っ黒ではなさそう。
そして、ワンピースの上に濃い緑色のカーディガン。
(桜餅かよ…)
その上、色合いがピンクと緑。本来ならただ桜をイメージしたり春色ってだけなのに。
寒がりな彼女のことだ、夜風に備えて着込んだに違いない…ふくふくと着ぶくれて、丸っこいシルエット。
それが合わさると桜餅にしか見えなかった。
「待ってない。…いくぞ」
笑いだしたら、彼女はきっと拗ねてしまう。
拗ねてるのも可愛いんだが、せっかく可愛いことい言ってくれて花見デートになったんだ。しばらく黙ってよう。
そう思って、彼女の手を握って桜並木の方へ脚を向ける。
…握った手が、小さくてもちもちしてて、一層桜餅が頭から離れなくなった。
***
『…綺麗だね』
「ん」
薄紅のライトに照らされた夜桜、川面に映る同じだけの桜並木。
日取りがいいのか時間帯なのか、人ゴミも対したことなく、並んでゆったりと歩いていく。
彼女の視線は上へ下へとゆっくり往復して、桜を眺めていた。俺はといえば、少し見下ろす先にある、嬉しそうな彼女の横顔ばかり見ていて。水面の桜が背景として良い仕事してんな…と思っていた。
時折、夜風が走り抜けて花弁を舞わせていく。
それも、彼女の周りを彩って綺麗だった。
彼女の方は、頬を掠めていく夜風が冷たいのか。キュッと眉間を寄せて、あまつ繋いだ手にも力を入れる。
…確かに、指先は少し冷たいかもしれない。
指を絡めて繋いでいた手を少し緩めて、指先を包むように握り直す。
恋人らしさは少し減るが、この方が温かいだろう。…という考えは彼女にも通じたようで『ふふ、あったかい』なんて呟いた。
河川敷を歩き、橋を渡って、反対側の河川敷を歩いて戻ってくる。
花見の後の事は考えてなかった。なんとなく、どこかで夕飯を済ませて帰ろう、そんな空気。
駅まで戻るかもう少し散策するか思案する中で、彼女が不意に立ち止まる。
『お花見、楽しかった。真君、一緒に来てくれて、ありがと』
わざわざそれを言う為に、足を止めて。
相変わらず柔らかそうなもちもちとした頬を、桜色に染めて緩ませる彼女が。かわいくて。可愛いくて。
「…ん。」
俺も頷いて返しながら、つい、その頭を撫でた。
「ほんと、桜餅みてえ」
堪らず笑ってしまえば、彼女はしばらくきょとんとして。それから、ちょっと膨れてみせる。
『そんなに、着膨れてたかなぁ』
俯いて、自身の足元を見ながら彼女は拗ねた声を出した。
『でも。寒くて真君とのデート集中出来ないなんて、嫌だったんだもん』
しかも、続けてそんなことを言う。
彼女も心のどこかでは、着膨れとか色味とか、気にしてたんだろう。
何が桜餅みたいか、なんて俺は言ってないのに。俯いたまま顔を上げてこない。
「…ふはっ。なあ、揶揄ってたんじゃねえよ」
その頬を、指先でやんわりとつついて。つまんで。撫でる。
予想通りの、もちもち。しっとり吸い付く触感と柔らかな質感。
彼女は頬に限らず、どこもかしこもそうだ。
今は袖の下に隠れている二の腕も、タイツの下のふくらはぎも、スカート下の太腿も。……、それ以外も。
頬に手を添えて、顔を上げさせた。
潤む瞳と真っ直ぐ目を合わせて、沸き上がる感情は。
「あんまり美味そうだから、我慢してたんだ。すぐにでも、喰っちまいそうで」
耳元へ寄って囁けば。
ボンと音が出そうなくらいに赤くなった彼女が、しばらくフリーズして。
やっと出した声が
『ぜんぶ、のこさず、たべて』
だった。
(脳裏を駆けていく煩悩は、時折吹き抜ける夜風くらいじゃ払えなさそうだ)
Fin.
→秋:ヒロイン視点