花と蝶 記念・リクエスト
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[花と蝶と鷹と緑]
‐5周年記念 フリリク‐
莉緒様へ捧ぐ 花宮夢
※長編の花と蝶の番外編
※タイトル通りの人物との邂逅
2017/09/05
*****
……高尾視点……
余りに奇妙な1日だったので、誰かに話したくてたまらない。
とにかく、始まりからぶっ飛んだ日だったのだ。
「高尾、お前の母か妹は長髪か」
「は?ショートカットだけど?」
「黒髪でロングの知り合いはいるか」
「ぶっは!何、真ちゃん、夏休みに彼女欲しくなったの?www」
朝イチでかかってきた相棒からの電話は予想だにしないもので、笑いすぎてよく聞き取れなかったが、ラッキーアイテムが黒髪ロングの異性との会話…らしい。
それアイテムじゃねーし!
「この際なんでもいいのだよ、最下位な上にラッキーアイテムが手に入らないなんて生きていけないのだよ」
「大袈裟!」
「…今日、画ビョウを2回踏んだのだよ。窓ガラスを割って鳥が突っ込んでもきたし、家の前で接触事故も起きてる」
「…え、えぇ…」
「高尾、お前は今日の占い1位なのだよ。しかもラッキーアイテムは自転車」
「だぁっ、わかったよ!」
そうして、図書館の司書さんが黒髪ロングだったのを思い出し、いつものチャリアカーで迎えにいったのだ。
「………マジなんなの、犬に追いかけられるわバイク飛び出してくるわ…」
「ラッキーアイテムがないからなのだよ」
「俺の1位を相殺する勢いだよね⁉」
「1位だから怪我もせずにすんだのだよ」
図書館に満身創痍で辿り着いた俺達は、受付で愕然とする。
黒髪の司書さん、イメチェンとばかりに髪をバッサリ切っていたのだ。
「…最下位はアイテムゲットすら運がないのかよ…」
次はどうしようか、と。図書館から出てすぐ、黒髪ロングの女の子を見つけた。
しかも、隣にいるのは話したことこそないが、知っている人物。
唸れ、俺のコミュ力!
「あ!花宮さんですよね!」
「…あ?」
「俺、秀徳高校の高尾です、こっちが緑間」
「ああ…鷹の目とキセキのシューターのコンビだろ」
「知っててくれたんすか!」
「準決勝まで行っておいて下手な謙遜は止せよ。で?引退した俺に何の用?」
説明してなかったけど、俺は二年生になったし、今年のIHは既に終わっている。
今日は夏休みも残り僅かになった数少ないオフの日だった。
「いや、引退したからこそっていうか。同じPGとして話したいって思ってたんで、つい声をかけてしまいました!」
「……お前の相棒はそうでもないみたいだぜ?」
「ちょ、緑間!」
お前の為に話かけてんのに何でそんなに高圧的かつあからさまに嫌な顔してんだよ!
確かに嫌いみたいなこと言ってたけど、お前が話さなきゃいけないのは花宮さんじゃなくて彼女さんっぽいこっちの女の子だからな⁉
え、彼女さんだよな?
「スミマセン、緑間マジで変人かつ人見知りなんで。えと、改めて、高尾和成でっす、彼女さんもヨロシク」
『え、あ、羽影です。よろしくね?』
この流れで、自己紹介くらいしろよ!
一言二言の会話でもいいだろ!
「………」
ほらもう花宮さん完全に怪訝な顔してんじゃん!
あの眉を寄せられると高尾ちゃんの浅い笑いのツボがww
とか、怒りとも笑いともつかない感情を押し殺していた時だった。
急に隣にいた緑間がよろけて、近くにあった柱に激突したのだ。
「きょじん、くちくしたー!」
そして、足元から子供の声がして。
どうやらこの子が、膝に全力でタックルかましたらしい。
そして、その子は謝るでもなく、図書館の横にある公園へ走っていった。
「真ちゃん大丈夫!?てか俺がいるから怪我はしないんじゃ…あ!チャリ乗ってねーから!?」
こめかみに薄くではあるが痣を作ってるのをみて、ちょっと慌てた。
で、口から出た言葉に花宮さんは益々怪訝な顔をする。
『……大丈夫?』
「…真ちゃん、正直に話した方がいいんじゃね?」
緑間が頷いたのを確認して、大まかに今日の今までの流れと災難、緑間のおは朝信者っぷりを説明する。
信じがたい、という表情の花宮さんと、可哀想、といわんばかりの羽影さん。
彼女さんは優しいらしい。いや、逆に優しくなきゃ付き合えねぇのかも。てかやっぱ彼女だった!
「……少しでも構わない、会話して貰えないだろうか」
『うん、こんな機会めったにないし。いいよね?』
「はあ…まあ、急ぎでもねぇしな」
「ありがとうございます!」
緑間と揃って頭を下げた時だ。
頭上を野球ボールが通過して、さっきの柱にぶつかった。
…頭を下げなければ、直撃してた位置に。
「…お前ら、大変だな」
「は…はは」
『えっと、先に本だけ借りてきちゃうから、談話室の席とっておいてもらえるかな?』
「任せるのだよ」
こうして、なんとか女神との会話のチャンスを掴んだ。
てかなに、めっちゃ仲良しじゃん!
真ちゃんは多分気付いてねぇけど、
羽影さんはずっと花宮さんの服の裾いじってるし、花宮さんもずっと羽影さんの髪の毛触ってる。
俺らに見えないように、後ろ手に隠しながらだけど。
「じゃあ、談話室いこうぜ」
.
談話室の端の机をとって待っていれば、本を抱えた花宮さんと羽影さんがやってくる。
緑間の正面が羽影さん、その隣に花宮さん、その正面…緑間の隣が俺。
「にしても、俺をダシに使うとはいい度胸だな?」
「いやいや、花宮さんと話してみたかったのはマジです!」
「どうだか」
「だってPGの先輩でキセキとやりあえる人って花宮さんくらいだったから、中坊の頃は憧れてましたよ」
そうそう、これは本音。
高校入って、プレイスタイルの違いがよく解ったから、憧れから挑戦すべき壁みたいな感覚になったけど。
『なんか、後輩と話すことなかったからこういうの新鮮だね』
「霧崎だって後輩くらいは居ただろう、慕ってきたかどうかは知らんが」
『…』
「……おい、キセキの世代ってのはどいつもこいつも敬語使えねぇのか」
「あのバカと一緒にするな。使うべきと思った相手には使っているのだよ」
「真ちゃん普通に失礼だかんな⁉本当スミマセン!」
なんで救世主の羽影さん達を煽るかな!
しかも今夏の試合では怪我とかファールとか一切なかった。
まあ、桐皇学園との試合はさすが悪童って感じだったけど、誠凛戦は正当方で鳥肌もんの試合だったし。
ちょっとは改めてもいいんじゃない?
「俺は確かにお前らに敬われる筋合いもねぇし、敬われたいとも思ってねぇけど。…礼儀ってものはあるよな?」
「貴様に礼儀など説かれる覚えはない」
「やっぱ馬鹿だろ。俺"は"って言ったよな?」
「…!」
「この時間は俺が求めたものじゃない。お前らが欲して羽影が厚意で割いた時間だ…それも解らないでどの口叩いてんだよ。なあ」
この問答に、俺は黙った。
だって、花宮さんが正しい。
花宮さん達だって、受験勉強とや受験そのものの忙しさを縫っての貴重なデートだった筈。
それを、全く関わったことのない俺達に割いてくれたのだ。
それなのにこの態度。いくら1回頭下げてるからってそれでチャラにはならないだろう。
『……緑間君、』
そう思って、俺も押し黙った重たい空間を打ち破ったのは羽影さんだった。
『私もね、全部が全部許されるプレーだと思ってたわけじゃないよ。でも、私を受け入れてくれたあのチームを、花宮君を悪く言わないで欲しい』
「……」
『君だって嫌でしょ?他人に自分のチームメイトをそうやって扱われるの。マネージャーだって同じよ。…解ってくれるかな?』
真っ直ぐに緑間を見据えて柔らかく微笑んだ彼女に、思わず拍手したい気持ちになった。
優しいだけじゃなく、強い人。
でも、傷ついたんだろうな。
机の下で、震える手で花宮さんの手を握りしめているのが見える。
「……失言したのだよ。すまなかった」
『うん。じゃあ、この話はお仕舞い。会話だと敬語は邪魔だから、無理しなくていいよ』
「……お前なぁ」
『まあまあ、もうちょっと付き合おうよ。高尾君も話したいでしょ』
「はい!」
女神か!天使か!
高尾ちゃんの1位の功績はここに働いてるにちがいない。
そして、仕方無さげに溜め息をついた花宮さんが、熱っぽい視線を羽影さんの横顔に送るのを見てしまった。
いや、惚れるよな。
自分の為に怒ってくれて、且つ、印象を下げずに納めてくれたんだぜ?
花宮さんだって彼女さんの為に怒ってたんだろうし。
マジリア充。悪童って何。
そんなことを思いながら、花宮さんのスティールの話、俺の目の使い方や範囲。
とりあえずバスケの話をする。
花宮さんもそれなりに答えてくれて、俺にも興味を示してくれる。
もう一度、悪童って何。
「…」
『…?』
「……」
「ぶっ!ww真ちゃん、もしかして会話って何したらいいかわかんねぇの?ww」
そんな中、妙な沈黙が隣から流れてきて思わず吹き出した。
「笑うな高尾!」
「いやいや笑うでしょ、羽影さんめっちゃ困ってるwwwスミマセン、真ちゃんシャイなんで許してくださいww」
「誰がシャイなのだよ!!」
「……お前もしかして、さっきは会話の仕方解らなくて悪態ついてたのか?」
「…っ」
「ふはっ、図星かよ」
『そんな難しく考えなくていいのに…』
慌てふためく緑間が面白くて呼吸が苦しい。
そりゃ緊張するよな、羽影さんモロタイプだもんな!俺だって年上で清楚って絶滅危惧種だと思ってたわ。
でも、それを口にしたら花宮さんがソッコー羽影さんを連れて帰ってしまうのは目に見えてるから言わない。
『えっと、今更だけどちゃんと自己紹介しようか』
「お前は自己紹介させるの好きだよな」
『手っ取り早いじゃない』
「自己紹介させるの好きってなんすかww」
「合宿最終日でメンバー全員に自己紹介させた」
「最終日wwタイミングwww」
最早笑い袋の俺には誰も突っ込んでくれない。いいけどな!
てかいつまで手繋いでんだよ!
普通は見えないけど、俺の目からは見えてるからね!?
「…何を紹介したらいいのだよ」
「そこから!?特技とか、好きなことだろ。あ、バスケ以外な」
「特技…ピアノが弾けるのだよ。音楽や将棋は好きだな、読書もする」
『ピアノ弾けるんだ。将棋も、なんか頭良さそうな感じ』
「実際いいっすよ。あとお汁粉。夏でも自販で買ってます」
『夏でも!?』
「……」
「花宮さんその顔はやめたげてくださいww」
「お汁粉は美味いのだよ。あの甘さに小豆の重さと餅の質感、糖分が補給できるし実に良い食品なのだよ」
「料理壊滅的なのにお汁粉だけは語るよな」
「黙れ」
緑間の自己紹介に羽影さんは笑って相槌をうち、俺が茶化し、花宮さんがちょっと引いて、それを羽影さんがまた笑って。
と、結構いい感じ。
因みに羽影さんは特技も趣味も料理らしい。…また緑間の好み突いてきてるあたり、最下位って辛いわ。
『……ちょっとお汁粉食べたくなっちゃった』
「…真夏だぞ」
「冷た~い、があるではないか」
「缶はな!缶でもあんま見ないけど」
『…冷やしぜんざい、とか?あんこ冷まして、バニラアイストッピング』
「甘過ぎ」
『じゃあ小豆は砂糖無しで煮る、ならどう?』
「…そこまでして食いたいのかよ」
お汁粉の作り方を一生懸命提案する羽影さんと、いちいちげんなりする花宮さんが面白くて本当ヤバい。
てか一緒に食べるの前提なの?
「………、お汁粉作れるんですか」
そこに、緑間の今更な質問と唐突な敬語が降りかかって。
凄く奇妙な間ができた。
「ブハッ!もう真ちゃんマジ勘弁してよ!尊敬できるかどうかの判断材料、お汁粉ってww」
それに耐えきれなかったのは俺。
緑間、今ガチで羽影さんに惚れそうになったろ。
止めとけって、相手が悪すぎる。
誤魔化してやってる占い1位の蠍座、高尾ちゃんに感謝しろよ。
にしてもお汁粉wwwそりゃ料理得意なら作れるだろうなwww
『うーん…作ったことないけど、作れると思うよ。ていうか、そんなにお汁粉好きなんだね』
「……まあ」
「飲み過ぎで先輩からストップかけられた時絶望的な顔してたもんな」
『男の子の甘党って珍しいのかな。高尾君は甘いもの食べる?』
「いや、俺は辛いものが好きなんで甘いものはあんまり…」
「だから頭も舌も悪くなるのだよ」
「俺別に頭悪くはねーよ!?」
そこで俺が緑間の変人ぶりを暴露したり、緑間が俺の失敗談をしたりと、カッコ悪いとこばっか喋って盛り上がった。
羽影さんはずっと笑いながら聞いてくれたし、仲良しだねーなんて相槌もくれる。
ただ、花宮さんは面白くないんだろう。
机の下で靴を脱ぐと、爪先で羽影さんの脚をなぞって弄り始めた。
羽影さんもそれを感じたんだろう、同じくサンダルを脱いで、その足をつつき返す。
こんなときは見えなくていいんだよ、ホークアイ!
「花宮さんって、素敵な彼女さん居てマジ幸せもんっすね」
花宮さんを会話の輪に引き込もうと、軽い調子で声をかけた。
悪童だよ?どんな反応すんのかなって。
無視する?貶す…は無いか、めっちゃ大事にしてるし。怒る?照れる?
「…まあな」
俺の予想は全部ハズレ。
まさかのどや顔。しかも、微かにではあるが優しく笑ってみせた。
…女だったら惚れてたな。
「ははっ、敵わねー」
「高尾のエース様は奇人過ぎて大変だな…飽きねぇだろうが」
「仰る通りです。ひひ、それがいいんすけど」
この人は、バスケに対しては不誠実かもしれないが、羽影さんに対してはとても誠実だ。
照れることもなく、誤魔化すこともなく、肯定を示すなんて。誠実以外になんて言う。
「本当、今年の夏に対戦出来なかったのが残念です」
「…」
俺の返事に無言を返すのは、花宮さんの頭の良さから来るもの。
何であの言葉に至ったか解ったんじゃないかな。
だって、悪童が、本気でバスケしてたんだ…彼女の為とはいえ。
そんなの、生で体感したかったに決まってる。
『緑間君達との対戦も、してみたかったな』
羽影さんと緑間の話も、そこに辿り着いたらしい。
理由や経緯は解らないけど。
でも、
「…いつか、こちらからも対戦をお願いしたいです」
真ちゃんが、花宮さんを見て、敬語を使った。
なにか、思うところがあったらしい。
「そうだな。機会があれば」
それに、花宮さんも否定しない。
なんとも不思議な組み合わせは、最初の不協和を思わせない程穏やかに収束した。
「じゃあ、今度はお手合わせお願いしまっす」
「本当に、世話になったのだよ」
『いえいえ。楽しかったよ』
「次はもうちょっとまともな運勢の日にしろよ」
「はーい」
図書館を出た俺らは、女神の協力あって無事に1日過ごすことができた。
半日分のデートを潰したお詫びはいつかしたいと思う。
てか、本当仲良しな!最後は普通に隠しもせずに手、繋いでたんですけど!
「ってことが、夏休み最強の思い出」
「………それ、僕に話しますか」
「だって、あの図書館に黒子もいたじゃん?俺らを遠くから観察してたみたいだけど」
「…やっぱり君にはバレてましたか」
そう、この話をどうしても誰かにしたくて黒子を捕まえた。
理由は上記の通り。
「花宮さん、なだかんだで普通の高校生だったんだよな。そう思ったらやっぱ凄え人だし」
「……そうですね、アイツにも人間の血が通ってるんですよ。きっと、その彼女さんのおかげでしょうけど」
「黒子はさ、なんか他に気づいた?」
「強いて言えば……スーパーで彼らが小豆と餅を買ってるのを見ました」
「ブハッwww結局お汁粉作るんだwww」
fin
おまけ
『緑間君、面白い人だったね』
「おかしい、の間違いだろ」
『はは…でも、真っ直ぐ打ち込んでるからそのおかしなところも個性として魅力になるし、チームに受け入れられたんだろうね』
「……」
『何より高尾君かな。ああいう理解者に会えたことが、緑間君の最大のラッキーだと思う』
図書館の帰り、私達は手を繋いだままゆっくり歩いていた。
『あと、真君と緑間君ってちょっと似てる』
「…は?」
『頭がいいとこ。静かで頭の使う趣味を持ってるとこ。料理が苦手なとこ』
「……」
『それから、目元が色っぽい』
「そんなとこ見てたのか」
『緑間君は美人系だよね。それに、名前に同じ字を使ってる…かな?』
「……」
『でも、やっぱり真君が1番。真君のがカッコいいし、私を見ててくれる。…最初に緑間君に怒ったの、私の為でしょ?』
その、繋いだ手をぎゅっと握って、腕にすり寄るように距離を詰めた。
「…それはお前も一緒だろうが」
『ふふ、まあね』
真君は振り払うでもなく、空いてる手で私の髪を撫でた。
「…お前の言葉を借りるなら、俺の最大の幸運は、お前に会えたことだろうな」
それから、そんなことを優しい顔で言ってくる。
『~っ!それこそ、私も一緒だからっ!』
END!