2018拍手御礼
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2018 拍手
[エイプリルフール]
『真君、エイプリルフールしよ』
「エイプリルフールをするっていう意味が解らねぇよ」
『嘘しか言っちゃいけないの。今から12時…10分だけ』
「…面倒くせぇ」
『それは楽しみって意味?』
「勝手に始めんな」
昼も目前、彼女の提案は下らない遊びだった。
そんなに暇か。…暇だな。
『そろそろお昼だね、おなかいっぱい』
「そうか」
『…何食べたい?』
「…別に」
『……一人で食べるよ?』
「へぇ?」
彼女の言葉に、嘘とも本当ともならない返事をする。
彼女の困った顔をニヤニヤと眺めれば、"いじわる"と小さく聞こえた。
それが嘘なら、優しい…か?
「俺が意地悪?」
『…、真君は意地悪だけど優しい』
優しいけど意地悪…か。あまり変わらないな。
「意地悪な俺は嫌いか?」
『…』
「優しい俺のが好きか?」
『…っ』
困ってる困ってる。
彼女は、今、嘘しか言えない。
俺の事が大好きなコイツは、好きと言えば嫌いという意味になってしまう。
かといって、嘘でも嫌いとは言いたくない…ってとこだろう。
おろおろする顔が最高に楽しい。
『真君、』
「なんだ?」
『ばーか』
「は?」
『バカバカ、すっごくバカ』
「…」
ぎゅっと、抱きつきながら馬鹿を連呼される。
おい、バァカは俺の専売特許だろ。
彼女のお遊び通り、反対なら。
馬鹿の反対は利口、利発、賢い
…意味わかんねぇな。
バカ。他になんの意味がある?
……馬鹿。悪意を持って発する言葉。
ああ…なに、好意を向けてるって言ってんの。
わかりづら。
『ばぁか』
「…はいはい」
そのまま抱きしめ返して、時計を見る。
あと5分あるし。うわ。
『真君は、私のこと好き?それとも嫌い?』
ニコニコと、今度は彼女が問いかける。
俺が、同じように困るのを期待してるのだろう。
嘘でも嫌いなんて、云われたくない癖に。
「どっちでもない」
『え?』
「俺の感情の全てはお前のものじゃないから」
残り4分。
彼女は意味を一生懸命考えている。
これの答えは2つあるが、片方が正解。
まず、最後の打ち消しだけを嘘にする答。
「どっちでもない」は「どっちでもある」
「お前のものじゃない」は「お前のものだ」
になる。
彼女に"嫌い"という明確な悪意、敵意を抱いたことはない。
苛立つことはごく稀にあるが、可愛さ故だ。"彼女を嫌う"には至らなかった。
よって答は、全てが嘘の方。
「どっちでも ない」は「どちらか一方 である」
「俺の感情の全ては お前のものじゃない」は「俺の感情の一つは お前のものだ」
である。
『真君…』
彼女は答まで辿り着けないらしい、困ったように時計と俺を見比べた。
まあ、辿り着けたところでどちらとも明言してないが。
あと1分が長い。
「…不服?」
『…うん』
満足か?と聞けば否だった。
秒針を睨み付け、その針が天辺を越えた瞬間。
『あーー…もう、エイプリルフールやらない、終わり』
と、彼女は嘆いた。
「だな。で?バカとは何事だよ」
『え?愛してるの意』
「……やっぱ解らねぇ」
『私より、真君の答、ねえ、もう一度答えて?』
私のこと、好き?
「…当然だろ。俺は、お前以外に"好き"だと感じたことねぇよ」
抱きしめたまま、額に口づけた。
それから、固まってしまった彼女を見て笑う。
「腹へったな。飯にするか…何がいい?二人で食おうぜ」
.
実は花と蝶の二人