名コナ
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Lost woman 03_5
不遇にもポアロのウェイターと雑談をするハメになり、予定よりも帰りが遅くなった。
夜道を女性一人で歩かせるには危険だと紳士ぶるので、丁重にかつ強引に振り切って家路を帰宅。
部屋の明かりをつけようと壁のスイッチに手を伸ばした。それを止め、隣の寝室へ真っすぐ向かう。バッグを放り投げて、ベッドに倒れる形でマットレスに沈み込んだ。その途端に全身の力が抜ける。溜まり切った一日の疲労が畳みかけるようにやってきた。それに抗おうと懸命に腕を伸ばし、ベッド脇のシェードランプの紐を震える指先で掴み、引っ張る。ぱたりとまたベッドに全身を伏した。
手繰り寄せた枕に頭を乗せ、枕元にいるテディベアを両腕に抱き寄せた。
この世界でも似通った共通点が見受けられた。
名前は違えど、顔形はそっくりな縫いぐるみ。同じようで名前が違う、そんな地名や場所ばかりの世界。
パラレルワールドに迷い込んで一年、そしてこの世界に来てから半年が過ぎようとしていた。世界を渡るのは此処で二度目だ。
一度目はそれこそ半狂乱状態で、本当に頭がおかしくなりそうだった。そこには私が生きてきた証が一切無くて、何も証明できなくて、自分が本当に葉月霧華なのか。そんな疑心暗鬼の私に光を差し込んでくれた人がいた。「貴女が貴女である事を忘れなければ、それは一つの証拠です」と、不器用な手つきで頭をそっと撫でてくれた。結局そこでは『迷子』扱いされた。
前回とは違い、この世界では私の人生は確かに存在していた。ただし、知らない両親、兄妹、友人。見知った顔は赤の他人で、赤の他人が知り合い。
私が培ってきた二十数年の人生をペンキで塗り替えられて、僅かに塗り残されたパーソナルスペースに私の記憶が息を潜めていた。自分の世界の事、あの人との思い出も。そして、この世界がどういう所なのか知っている。
早く帰りたい。私はいつまで『迷子』になっていればいいの。
帰れないなら、もう一度だけ、あの人に会わせて神様。
不遇にもポアロのウェイターと雑談をするハメになり、予定よりも帰りが遅くなった。
夜道を女性一人で歩かせるには危険だと紳士ぶるので、丁重にかつ強引に振り切って家路を帰宅。
部屋の明かりをつけようと壁のスイッチに手を伸ばした。それを止め、隣の寝室へ真っすぐ向かう。バッグを放り投げて、ベッドに倒れる形でマットレスに沈み込んだ。その途端に全身の力が抜ける。溜まり切った一日の疲労が畳みかけるようにやってきた。それに抗おうと懸命に腕を伸ばし、ベッド脇のシェードランプの紐を震える指先で掴み、引っ張る。ぱたりとまたベッドに全身を伏した。
手繰り寄せた枕に頭を乗せ、枕元にいるテディベアを両腕に抱き寄せた。
この世界でも似通った共通点が見受けられた。
名前は違えど、顔形はそっくりな縫いぐるみ。同じようで名前が違う、そんな地名や場所ばかりの世界。
パラレルワールドに迷い込んで一年、そしてこの世界に来てから半年が過ぎようとしていた。世界を渡るのは此処で二度目だ。
一度目はそれこそ半狂乱状態で、本当に頭がおかしくなりそうだった。そこには私が生きてきた証が一切無くて、何も証明できなくて、自分が本当に葉月霧華なのか。そんな疑心暗鬼の私に光を差し込んでくれた人がいた。「貴女が貴女である事を忘れなければ、それは一つの証拠です」と、不器用な手つきで頭をそっと撫でてくれた。結局そこでは『迷子』扱いされた。
前回とは違い、この世界では私の人生は確かに存在していた。ただし、知らない両親、兄妹、友人。見知った顔は赤の他人で、赤の他人が知り合い。
私が培ってきた二十数年の人生をペンキで塗り替えられて、僅かに塗り残されたパーソナルスペースに私の記憶が息を潜めていた。自分の世界の事、あの人との思い出も。そして、この世界がどういう所なのか知っている。
早く帰りたい。私はいつまで『迷子』になっていればいいの。
帰れないなら、もう一度だけ、あの人に会わせて神様。
