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君のいない世界なら、僕は生きている意味が無い。
「初めまして。キリカです、よろしくお願いします」
すっと差し出された細い腕。琥珀色の瞳孔が僅かに開いた。
バッツは何か言おうとしていたが、結局その口は閉ざした。
彼女が悪気もなく「どうしたんですか」と尋ねるものだから、一度バッツの目が伏せられる。
これは堪えたんだろう。傍から見ていた俺でも一目でわかる。二人の今までの関係を近くで見てきたから余計に、きついな。
「バッツ・クラウザー。よろしく」
差し出されたままの手をようやくバッツが握り返した。その顔に映る表情は複雑で、見るに耐えなかった。
*
「…っはー。疲れたー」
朽ちた建物が転がる景色を独りで眺めていた。その横へやってきたバッツが大の字になって寝転んだ。
細かい傷が体のあちこちに見受けられる。服も所々裂けていた。
見回りに行っていた先で敵と衝突したのだろう。それにしても、だ。
「無理をしすぎているんじゃないか」
「全然。余裕だって」
最近のことだ。バッツは敵に突っ込んでいく事が多くなった。荒々しいその戦い方は結果的に傷を負う機会を増やしている。
仲間の姿に化けたイミテーションにも躊躇うことなく切り捨てていく。それは自棄になっているようにも見えた。
「自暴自棄になっている。いずれ致命傷を負うことになるぞ」
バッツは曇った空を見つめたまま何も答えない。頭上はどんよりと曇っていた。雨が降るかもしれない。
俺は腰を下ろし、隣を窺う。眉間に皺を寄せて空を睨みつけていた。
「あんたがそんな風に悩むなんて珍しいな」
「そう見える?」
「ああ。……らしくもない」
「ははっ。…俺らしいってなんだろうな。正直、つらい」
ぽつりと漏らした言葉は息が詰まっているように吐き出された。
俺達は今、十三回目の戦いの最中だった。
殆どの者は以前の記憶が失われている。ただ、俺とバッツの二人は前回の記憶が色濃く残っていた。バッツが彼女を好いていた記憶もだ。
だが、彼女は違った。すっかり記憶を失ってしまい、恋人であるバッツのことすら覚えていなかった。
それを知ったバッツは彼女を普段から避けていた。
今の台詞からして姿を見るだけでも辛いんだろう。
「あんたの態度にキリカが嫌われているんじゃないかと言っていた」
「いっそ嫌いになりたい」
ぼんやり厚い雲のかかった空を見上げる目は覇気がない。
「でも、好きなんだ」そう弱々しく呟いた。一方通行の想いが痛々しい。
「戦っているとその間だけは余計な感情持たなくて済むんだ。忘れられる。……どうして覚えてないんだろうな。俺だけ覚えてるなんて不公平だ」
「好きならもう一度行けばいい。もたもたしているとあいつに取られるぞ」
「それだけは嫌だ。フリオニールがカオス側なら容赦なく叩きのめせるのになあ」
自分が好意をもっている娘の恋を応援できないタイプだな。
俺は溜息をつく。
「仲間割れはよしてくれ。頼む」
「わかってる」
今は感情を抑えられているようだが、いつ爆発するかわからない。
仲間を監視するのは気が引けるが事が起きてからでは遅い。
できることならば解決の道しるべが現れればいいのだが。
「初めまして。キリカです、よろしくお願いします」
すっと差し出された細い腕。琥珀色の瞳孔が僅かに開いた。
バッツは何か言おうとしていたが、結局その口は閉ざした。
彼女が悪気もなく「どうしたんですか」と尋ねるものだから、一度バッツの目が伏せられる。
これは堪えたんだろう。傍から見ていた俺でも一目でわかる。二人の今までの関係を近くで見てきたから余計に、きついな。
「バッツ・クラウザー。よろしく」
差し出されたままの手をようやくバッツが握り返した。その顔に映る表情は複雑で、見るに耐えなかった。
*
「…っはー。疲れたー」
朽ちた建物が転がる景色を独りで眺めていた。その横へやってきたバッツが大の字になって寝転んだ。
細かい傷が体のあちこちに見受けられる。服も所々裂けていた。
見回りに行っていた先で敵と衝突したのだろう。それにしても、だ。
「無理をしすぎているんじゃないか」
「全然。余裕だって」
最近のことだ。バッツは敵に突っ込んでいく事が多くなった。荒々しいその戦い方は結果的に傷を負う機会を増やしている。
仲間の姿に化けたイミテーションにも躊躇うことなく切り捨てていく。それは自棄になっているようにも見えた。
「自暴自棄になっている。いずれ致命傷を負うことになるぞ」
バッツは曇った空を見つめたまま何も答えない。頭上はどんよりと曇っていた。雨が降るかもしれない。
俺は腰を下ろし、隣を窺う。眉間に皺を寄せて空を睨みつけていた。
「あんたがそんな風に悩むなんて珍しいな」
「そう見える?」
「ああ。……らしくもない」
「ははっ。…俺らしいってなんだろうな。正直、つらい」
ぽつりと漏らした言葉は息が詰まっているように吐き出された。
俺達は今、十三回目の戦いの最中だった。
殆どの者は以前の記憶が失われている。ただ、俺とバッツの二人は前回の記憶が色濃く残っていた。バッツが彼女を好いていた記憶もだ。
だが、彼女は違った。すっかり記憶を失ってしまい、恋人であるバッツのことすら覚えていなかった。
それを知ったバッツは彼女を普段から避けていた。
今の台詞からして姿を見るだけでも辛いんだろう。
「あんたの態度にキリカが嫌われているんじゃないかと言っていた」
「いっそ嫌いになりたい」
ぼんやり厚い雲のかかった空を見上げる目は覇気がない。
「でも、好きなんだ」そう弱々しく呟いた。一方通行の想いが痛々しい。
「戦っているとその間だけは余計な感情持たなくて済むんだ。忘れられる。……どうして覚えてないんだろうな。俺だけ覚えてるなんて不公平だ」
「好きならもう一度行けばいい。もたもたしているとあいつに取られるぞ」
「それだけは嫌だ。フリオニールがカオス側なら容赦なく叩きのめせるのになあ」
自分が好意をもっている娘の恋を応援できないタイプだな。
俺は溜息をつく。
「仲間割れはよしてくれ。頼む」
「わかってる」
今は感情を抑えられているようだが、いつ爆発するかわからない。
仲間を監視するのは気が引けるが事が起きてからでは遅い。
できることならば解決の道しるべが現れればいいのだが。