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対峙
「煩い。黙れ浮つき者」
一瞥の雷光。青年自身は浮ついているつもりなど一切ないのだが、全く言い返すことができない。敢え無くキリカを連れて行かれてしまった。
二人の姿が草原の向こう側に小さくなっていくのを見送るしか術がない。ぽつんと一人残された青年は肩を落とした。
草原の丘を滑るように風がざざっと吹き抜けていった。青年の肩で空色のマントが揺れ動く。その風が吹き止むと同時にバッツは振り向いた。小気味良い金属音が一度だけ響く。彼の手には長剣が握られており、不意を突いてきた相手の剣を受け止めた。眼前にある男の目が弓なりに細められる。
青年とは対極の色彩を身に纏う銀髪の男。自分とよく似たその姿に青年が驚きの声をあげた。瑠璃色の長剣を自ら引いた男は口の端を持ち上げる。
「さっすが俺。気配消してたのによく気づいたなー」
「……イミテーションにしては出来が良すぎるよな」
「そこら辺のと一緒にすんなって。俺はお前なんだからさ」
鏡像とも呼べるその姿は色鮮やか。イミテーションの様に硝子体のようには見えない。この世界で何が起こっても可笑しくはない。頭ではそう捉えているが、己その者が目の前に現れることは想定していなかった。
蒼い風を纏う青年に対し、男は銀色の風を纏っている。その男は「かっこいいだろ」と青年に問いかけた。瑠璃色の長剣を肩に担ぎ、手持無沙汰な片手に幅広い刀身の大剣を携える。細い腕でそれを支え、凛と声を響かせた。
「なあ、勝負しないか。自分の力量を見極めとくのも悪くないぜ?」
「何が狙いだ」
「別に。ヒマだったから」
どうも他人事には思えない。姿形が瓜二つのせいもあるが、それ以外に何か通じるものを感じていた。もしや本当に自分自身なのか。それを確かめるには自らをバッツ・クラウザーと名乗る男から吐かせるのが一番手っ取り早い。
青年が長剣を構え直すと、男はにやりと笑みを浮かべた。
「そーこなくっちゃな。でもただ手合わせだけじゃツマンナイよな……負けた方がキリカから手を引くってのはどうだ?」
「なっ…そんな条件呑めるか!」
「ふーん。俺に勝つ自信がないワケだ」
この男は逐一人の怒りを買う。奥歯をぎりと噛み締めた青年は鏡像を睨み付けた。新たに携えたガンブレードの切っ先を先方へ向け、吠えた。
「お前なんかに任せられるかよ!」
「そうこなくっちゃな。……その言葉、そっくり返してやるぜ!」
草原の丘を滑る風が二つ。互いの刃を交わらせた。
勝負の結果が周囲に知らされるのはまだ少し先のこと。
「煩い。黙れ浮つき者」
一瞥の雷光。青年自身は浮ついているつもりなど一切ないのだが、全く言い返すことができない。敢え無くキリカを連れて行かれてしまった。
二人の姿が草原の向こう側に小さくなっていくのを見送るしか術がない。ぽつんと一人残された青年は肩を落とした。
草原の丘を滑るように風がざざっと吹き抜けていった。青年の肩で空色のマントが揺れ動く。その風が吹き止むと同時にバッツは振り向いた。小気味良い金属音が一度だけ響く。彼の手には長剣が握られており、不意を突いてきた相手の剣を受け止めた。眼前にある男の目が弓なりに細められる。
青年とは対極の色彩を身に纏う銀髪の男。自分とよく似たその姿に青年が驚きの声をあげた。瑠璃色の長剣を自ら引いた男は口の端を持ち上げる。
「さっすが俺。気配消してたのによく気づいたなー」
「……イミテーションにしては出来が良すぎるよな」
「そこら辺のと一緒にすんなって。俺はお前なんだからさ」
鏡像とも呼べるその姿は色鮮やか。イミテーションの様に硝子体のようには見えない。この世界で何が起こっても可笑しくはない。頭ではそう捉えているが、己その者が目の前に現れることは想定していなかった。
蒼い風を纏う青年に対し、男は銀色の風を纏っている。その男は「かっこいいだろ」と青年に問いかけた。瑠璃色の長剣を肩に担ぎ、手持無沙汰な片手に幅広い刀身の大剣を携える。細い腕でそれを支え、凛と声を響かせた。
「なあ、勝負しないか。自分の力量を見極めとくのも悪くないぜ?」
「何が狙いだ」
「別に。ヒマだったから」
どうも他人事には思えない。姿形が瓜二つのせいもあるが、それ以外に何か通じるものを感じていた。もしや本当に自分自身なのか。それを確かめるには自らをバッツ・クラウザーと名乗る男から吐かせるのが一番手っ取り早い。
青年が長剣を構え直すと、男はにやりと笑みを浮かべた。
「そーこなくっちゃな。でもただ手合わせだけじゃツマンナイよな……負けた方がキリカから手を引くってのはどうだ?」
「なっ…そんな条件呑めるか!」
「ふーん。俺に勝つ自信がないワケだ」
この男は逐一人の怒りを買う。奥歯をぎりと噛み締めた青年は鏡像を睨み付けた。新たに携えたガンブレードの切っ先を先方へ向け、吠えた。
「お前なんかに任せられるかよ!」
「そうこなくっちゃな。……その言葉、そっくり返してやるぜ!」
草原の丘を滑る風が二つ。互いの刃を交わらせた。
勝負の結果が周囲に知らされるのはまだ少し先のこと。