DFF
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
You're like the sky,I don't like the sky.
「飛空艇には乗ったことないわ」
「勿体ない。空は自由でいいぞ。どこまでも広がる大空を風を切って進むんだ」
「晴れている空だと眺めが素敵でしょうね」
「今度乗せてやるよ」
俺達の前を歩くヴァンとキリカの二人は会話を楽しんでいた。初対面にも関わらず、ヴァンの方は臆せずに話しかけていった。変な緊張を見せないヴァンに彼女もすぐに打ち解けたようだった。
仲睦まじいのは大いに結構なことなんだが、こいつの前でそれをやるのはちょっと遠慮してもらいたい。こいつらの後ろを無言でついていくバッツからただならぬ殺気が漂っているんだ。正直言って怖すぎる。
どうにかこの状況を打破できないかと、俺は背を屈めてオニオンに耳打ちをした。
「なあ、どうにかならないかこれ」
「……僕に言われても。というか無言のバッツ怖すぎるんだけど」
「自分は高所恐怖症だから会話に参加できないんだろうな」
「ああ、成る程。それで怒ってるんだ。……なんか大人げないよね」
いい歳してみっともないとオニオンは呆れた様子だった。いやいや、男と女の問題は幾つになっても複雑なもんだって。オニオンもそのうち分かることだ。
そもそもヴァンとオニオンに合流しちまったのが問題の原点か。とは言え、俺もバッツ達も仲間とはぐれていたから一緒に行動した方が良いと思ったんだけどな。どうしたもんか。
「ラグナ、ちょっと何とかしてきてよ。年長者でしょ」
「ムリムリ!俺にあの状態のバッツを正面から説き伏せるとか死亡フラグしか見えないっての!」
「そんな事言ってもさ、このままだと非常に雰囲気悪いんだけど」
「うーん。こういう時に限ってあいつら居ないしな」
ジタンとスコールが居れば打開策が何かしら浮かぶだろう。
俺達が引火寸前の導火線を食い止めようと目論んでいる間にも前方の二人は話に華を咲かせている。ヴァンの方がキリカにこっそり耳打ちをしているのが見えた。お互いに顔を見合わせて、笑う。あ、これヤバい。
俺のすぐ前でキンッと金属の音が響いた。バッツがブレイブブレイドの柄を握っている。その場で立ち止まったから俺達も必然的に立ち止まる。下手に刺激しない方が絶対にいい。
「ラグナ」
「お、おうっ!どうした」
「新しい技閃いたから試してくる」
「なにで試すつもり?!ちょっ、落ち着けバッツ!」
一度もこちらを振り向かないのが余計に怖い。この声色からして絶対にヴァンを試し斬りの的にするつもりだ。ここで今取り押さえないとヴァンの命が危ない。俺は決死の覚悟でバッツを羽交い絞めにして拘束することに成功した。
「…なんだよラグナ、離せよ!」
「頭冷やせ!そんな事したら嫌われるって!」
「男の嫉妬って醜いもんだね。会話に入れないぐらいでさあ」
「オニオン火に油を注ぐようなこと言っちゃダメ!」
会話に夢中だった二人がようやく外野に気が付いてくれた。俺がバッツを取り押さえていることにキリカがぎょっとする。それに比べてヴァンは「どうしたんだ?」と小首を傾げている。おいおい、勘弁してくれよ。謀った訳じゃないだろうな。それとも天然か。
俺の意識が一瞬他に気を取られたせいで、バッツがするりと逃げ出した。剣の切っ先を向けられたにも関わらず、ヴァンの表情は変わらない。
「ヴァン。ちょっとばかし俺に付き合ってくれないか」
「いいよ」
「いいのかよ!」
思わず声に出てしまった突っ込み。いや、あそこまで殺気向けられて普通に対応できることなのか。俺には出来る自信がない。
快く勝負を引き受けたヴァンは身軽に跳び上がって進路から反れる。それを追撃するバッツ。恐らく、ヴァンは何も気づいてない。
「……私のせい?」
「いや、君のせいじゃない。問題なのはバッツの方だ。うーん…どうしたものか」
恋人が異性と話しているのを寛容的に受け入れられない性格なんだろな。嫉妬深い通り越して女性側にとっちゃ面倒くさいよなきっと。横でオニオンが「器の小さい男だなあ」と呆れた溜息をついた。
「恋愛絡みだと難しいよなあ。……ん、あれってスコールじゃないか?」
ここぞという場面で救世主を発見。スコールならこの事態を何度も経験しているだろうから、何とかしてくれるはず。
俺がまだ遠くにいるスコールに声をかけた。こちらに気付いてはくれたものの、俺達とその横で激しい戦いを繰り広げているヴァンとバッツを見比べて「またお前か」みたいな表情をしてきた。ちょっと待って、俺止めに入った側だからね。
「スコール!見て見ぬふりは無しだぞおお!」
「…うるさい。叫ばなくても聞こえてる」
「良かった、スコール無事だったのね」
はぐれてしまった仲間を心配する彼女の気遣いは素晴らしいが、今はあいつらを何とかしないと。スコール、そんな嫌そうな顔しないでくれ。
「どうしたんだ(大体想像はつくが)」
「実は、バッツがヴァンに……」
俺は事の次第を掻い摘んでスコールに話をした。内容は理解してくれたみたいだが、スコールの顔が段々暗くなっていく。いやーな予感。
「……手に負えられないな」
「いや、もう少し考えようぜ?このままだと俺達も巻き込まれかねないんだぞ」
「私、止めてこようか」
「それはダメ!危険すぎるから!」
責任を感じてかキリカが名乗り出だけど、俺もオニオンも全力で止めに入った。
溜息をつきながらスコールが「少し前に一悶着あってな」と呟いた。
「何があったの?」
オニオンの質問にしばらくの間答えが返ってこなかった。腕組みをしたまま思案に耽っていたスコールが真っすぐ前を見据える。
「結果的には丸く収まった」
「いや、そりゃそうだよな。それまでの過程が知りたいんだけど」
「ええと……その、何て言ったらいいのかしら」
「バッツは難しい年ごろなんだ」
「それスコールが言っちゃうの!?」
バッツよりもお前の方が思春期真っ盛りだと思うのは気のせいか。ああ、もう埒が明かない。誰かジタン呼んできてくれよ。
痺れを切らしたのは俺だけじゃない。オニオンもだった。彼は瞬時に法衣に着替え、ロッドを高く掲げる。
「スリプル!」
相手を眠らせる魔法の球体がバッツの体を包み込んだ。そして、バッツがガクッと膝から崩れ落ちた。地面に伏した彼の手から剣が消える。
急に何が起きたのかとヴァンは剣を構えたまま首を捻っていた。
「お?いきなり昼寝タイムか」
「ヴァン、すまない。迷惑をかけた」
「え、何が?」
「いや、あんたがそれでいいなら……オニオン、礼を言う」
このままだとキリカが飛び込んでいきそうだったから、と口を尖らせるオニオン。さすがナイト、かっこいいなあ。オニオンが居てくれてほんっと助かったぜ。
「よーし!スコールも見つかったことだし、ここから俺達は別行動だ。スコール、キリカちゃん。そいつのことよろしく!」
「もう行っちゃうのか?あ、バッツに勝負の決着ついてないからまた今度って言っておいてくれよ」
「じゃあね。キリカに無理させないでよ」
あいつら面倒ごとを押し付けていった。俺は渋々地面に転がるバッツを肩に担ぐ。スリプルが効いているおかげでしばらく目を覚ますことはないだろう。
ようやく静かになったのはいいが、この状態でジタンと合流するのか。重い。敵が襲ってきたら放り捨ててもいいか。
いや、やっぱりさっさと起こした方がいい。俺はキリカにバッツを起こそうと提案した。
「眠り状態って、何で回復させるんだったかしら」
「万能薬、エスナ…あとは物理攻撃だ」
「……ほっぺ叩いたら起きるかな」
「やめた方がいいな。余計な事は今しない方がいい」
「でも、スコールすごく重そうに見えるわ。私じゃ身長足りないし…」
「……(重い。くそっ、なんでこいつ呑気に寝息立てて寝てるんだ)」
ふつふつと腹が立ってきたので、俺はその場にバッツを下ろした。
ここでジタンが来るのを待つことにする。
「飛空艇には乗ったことないわ」
「勿体ない。空は自由でいいぞ。どこまでも広がる大空を風を切って進むんだ」
「晴れている空だと眺めが素敵でしょうね」
「今度乗せてやるよ」
俺達の前を歩くヴァンとキリカの二人は会話を楽しんでいた。初対面にも関わらず、ヴァンの方は臆せずに話しかけていった。変な緊張を見せないヴァンに彼女もすぐに打ち解けたようだった。
仲睦まじいのは大いに結構なことなんだが、こいつの前でそれをやるのはちょっと遠慮してもらいたい。こいつらの後ろを無言でついていくバッツからただならぬ殺気が漂っているんだ。正直言って怖すぎる。
どうにかこの状況を打破できないかと、俺は背を屈めてオニオンに耳打ちをした。
「なあ、どうにかならないかこれ」
「……僕に言われても。というか無言のバッツ怖すぎるんだけど」
「自分は高所恐怖症だから会話に参加できないんだろうな」
「ああ、成る程。それで怒ってるんだ。……なんか大人げないよね」
いい歳してみっともないとオニオンは呆れた様子だった。いやいや、男と女の問題は幾つになっても複雑なもんだって。オニオンもそのうち分かることだ。
そもそもヴァンとオニオンに合流しちまったのが問題の原点か。とは言え、俺もバッツ達も仲間とはぐれていたから一緒に行動した方が良いと思ったんだけどな。どうしたもんか。
「ラグナ、ちょっと何とかしてきてよ。年長者でしょ」
「ムリムリ!俺にあの状態のバッツを正面から説き伏せるとか死亡フラグしか見えないっての!」
「そんな事言ってもさ、このままだと非常に雰囲気悪いんだけど」
「うーん。こういう時に限ってあいつら居ないしな」
ジタンとスコールが居れば打開策が何かしら浮かぶだろう。
俺達が引火寸前の導火線を食い止めようと目論んでいる間にも前方の二人は話に華を咲かせている。ヴァンの方がキリカにこっそり耳打ちをしているのが見えた。お互いに顔を見合わせて、笑う。あ、これヤバい。
俺のすぐ前でキンッと金属の音が響いた。バッツがブレイブブレイドの柄を握っている。その場で立ち止まったから俺達も必然的に立ち止まる。下手に刺激しない方が絶対にいい。
「ラグナ」
「お、おうっ!どうした」
「新しい技閃いたから試してくる」
「なにで試すつもり?!ちょっ、落ち着けバッツ!」
一度もこちらを振り向かないのが余計に怖い。この声色からして絶対にヴァンを試し斬りの的にするつもりだ。ここで今取り押さえないとヴァンの命が危ない。俺は決死の覚悟でバッツを羽交い絞めにして拘束することに成功した。
「…なんだよラグナ、離せよ!」
「頭冷やせ!そんな事したら嫌われるって!」
「男の嫉妬って醜いもんだね。会話に入れないぐらいでさあ」
「オニオン火に油を注ぐようなこと言っちゃダメ!」
会話に夢中だった二人がようやく外野に気が付いてくれた。俺がバッツを取り押さえていることにキリカがぎょっとする。それに比べてヴァンは「どうしたんだ?」と小首を傾げている。おいおい、勘弁してくれよ。謀った訳じゃないだろうな。それとも天然か。
俺の意識が一瞬他に気を取られたせいで、バッツがするりと逃げ出した。剣の切っ先を向けられたにも関わらず、ヴァンの表情は変わらない。
「ヴァン。ちょっとばかし俺に付き合ってくれないか」
「いいよ」
「いいのかよ!」
思わず声に出てしまった突っ込み。いや、あそこまで殺気向けられて普通に対応できることなのか。俺には出来る自信がない。
快く勝負を引き受けたヴァンは身軽に跳び上がって進路から反れる。それを追撃するバッツ。恐らく、ヴァンは何も気づいてない。
「……私のせい?」
「いや、君のせいじゃない。問題なのはバッツの方だ。うーん…どうしたものか」
恋人が異性と話しているのを寛容的に受け入れられない性格なんだろな。嫉妬深い通り越して女性側にとっちゃ面倒くさいよなきっと。横でオニオンが「器の小さい男だなあ」と呆れた溜息をついた。
「恋愛絡みだと難しいよなあ。……ん、あれってスコールじゃないか?」
ここぞという場面で救世主を発見。スコールならこの事態を何度も経験しているだろうから、何とかしてくれるはず。
俺がまだ遠くにいるスコールに声をかけた。こちらに気付いてはくれたものの、俺達とその横で激しい戦いを繰り広げているヴァンとバッツを見比べて「またお前か」みたいな表情をしてきた。ちょっと待って、俺止めに入った側だからね。
「スコール!見て見ぬふりは無しだぞおお!」
「…うるさい。叫ばなくても聞こえてる」
「良かった、スコール無事だったのね」
はぐれてしまった仲間を心配する彼女の気遣いは素晴らしいが、今はあいつらを何とかしないと。スコール、そんな嫌そうな顔しないでくれ。
「どうしたんだ(大体想像はつくが)」
「実は、バッツがヴァンに……」
俺は事の次第を掻い摘んでスコールに話をした。内容は理解してくれたみたいだが、スコールの顔が段々暗くなっていく。いやーな予感。
「……手に負えられないな」
「いや、もう少し考えようぜ?このままだと俺達も巻き込まれかねないんだぞ」
「私、止めてこようか」
「それはダメ!危険すぎるから!」
責任を感じてかキリカが名乗り出だけど、俺もオニオンも全力で止めに入った。
溜息をつきながらスコールが「少し前に一悶着あってな」と呟いた。
「何があったの?」
オニオンの質問にしばらくの間答えが返ってこなかった。腕組みをしたまま思案に耽っていたスコールが真っすぐ前を見据える。
「結果的には丸く収まった」
「いや、そりゃそうだよな。それまでの過程が知りたいんだけど」
「ええと……その、何て言ったらいいのかしら」
「バッツは難しい年ごろなんだ」
「それスコールが言っちゃうの!?」
バッツよりもお前の方が思春期真っ盛りだと思うのは気のせいか。ああ、もう埒が明かない。誰かジタン呼んできてくれよ。
痺れを切らしたのは俺だけじゃない。オニオンもだった。彼は瞬時に法衣に着替え、ロッドを高く掲げる。
「スリプル!」
相手を眠らせる魔法の球体がバッツの体を包み込んだ。そして、バッツがガクッと膝から崩れ落ちた。地面に伏した彼の手から剣が消える。
急に何が起きたのかとヴァンは剣を構えたまま首を捻っていた。
「お?いきなり昼寝タイムか」
「ヴァン、すまない。迷惑をかけた」
「え、何が?」
「いや、あんたがそれでいいなら……オニオン、礼を言う」
このままだとキリカが飛び込んでいきそうだったから、と口を尖らせるオニオン。さすがナイト、かっこいいなあ。オニオンが居てくれてほんっと助かったぜ。
「よーし!スコールも見つかったことだし、ここから俺達は別行動だ。スコール、キリカちゃん。そいつのことよろしく!」
「もう行っちゃうのか?あ、バッツに勝負の決着ついてないからまた今度って言っておいてくれよ」
「じゃあね。キリカに無理させないでよ」
あいつら面倒ごとを押し付けていった。俺は渋々地面に転がるバッツを肩に担ぐ。スリプルが効いているおかげでしばらく目を覚ますことはないだろう。
ようやく静かになったのはいいが、この状態でジタンと合流するのか。重い。敵が襲ってきたら放り捨ててもいいか。
いや、やっぱりさっさと起こした方がいい。俺はキリカにバッツを起こそうと提案した。
「眠り状態って、何で回復させるんだったかしら」
「万能薬、エスナ…あとは物理攻撃だ」
「……ほっぺ叩いたら起きるかな」
「やめた方がいいな。余計な事は今しない方がいい」
「でも、スコールすごく重そうに見えるわ。私じゃ身長足りないし…」
「……(重い。くそっ、なんでこいつ呑気に寝息立てて寝てるんだ)」
ふつふつと腹が立ってきたので、俺はその場にバッツを下ろした。
ここでジタンが来るのを待つことにする。