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Present,
「お宝を探しに行こうぜ!」
メンバーのうち一人が盗賊を生業としていると行動もそうなることも多く。異世界からひょんなことで合流した女もその流れを何度か経験しているうちにそれが自然となっていった。
宝探しに赴くのは主に盗賊の少年と旅人の青年。単独行動を好む青年も稀にどちらかと交代することもある。だが、大概はこの青年と共に留守番をしていた。
クールな印象が強いこの青年。思っている事があっても易々と口には出さない。その為考えている事がわからず、いつも機嫌が悪いようにも見られていた。しかし、女が出会った時点で本来の性格がちらちらと見え隠れしていた。その事に気づいていたので、いつからなのか尋ねるチャンスを常々窺っていた。
「スコール。隣、いい?」
磨かれた青い硝子玉のような瞳が女を見上げた。「ああ」と短く応え、止めていた手を動かす。青年は武器の手入れを特に欠かさない人だった。
邪魔はしないからと隣に腰を下ろし、その作業をしばらくの間観察していた。そのうちに質問するのも忘れていた。
「見ていて楽しいか」
「……あ。スコールの武器、みんなとは違って変わってるから。つい眺めちゃった」
「話があるから来たんじゃないのか」
「話し相手になってくれるの?」
意外な返事に驚きを隠せない。ついそう返してしまうと、青年は手元から目を離さずに作業を続けていた。機嫌を損ねてしまったかと心配になるも、ようやく青年の返事が聞こえた。思わず女は笑みを零す。
「俺は話すのが得意じゃない」
「その方が聞いてる方も疲れないわ」
自分は話すのが得意じゃないから、面白い話が出来ない、楽しくない。そういう意味合いで言ったのだろう。自虐的な所はガーデンを出るまでの頃と同じようだった。
それに対して「お喋りな人とは話を合わせるのが大変よね」と自分の経験を交えて話す女に青年が頷いてみせた。
「お宝探し、なにか見つかるかしら」
「さあな。あんたも行ってくれば良かったんじゃないか」
「私は自分を守る術がないからお荷物になっちゃうもの」
宝探しには危険がつきもの。地形に足を取られたり、敵と戦うこともある。武術や剣術、ましてや魔法も使えないただの一般人にはリスクが高すぎる。
一緒についていけば必ず足手まといになる。行きたいと言えば断りはされないだろうが、女は自ら同行を拒否していた。
「あの二人なら喜んでボディーガードを引き受けそうだがな」
「ジタンが率先して庇ってくれそうね」
レディーファースト精神の少年は女の子を敵の攻撃から『かばう』というスキルが特化していた。しかしながら、女の子だけをかばうものだ。
もう一人の旅人も同じスキルを持ち合わせているが、こちらは誰がピンチに陥ってもかばってくれる。もしナイト姿の彼に窮地を助けてもらったら、間違いなく惚れてしまう。その様を思い浮かべただけで女の頬は紅をさした。もはやカッコイイの一言では表せない。
「でも、私のせいで二人が傷を負うのは嫌だもの。大人しく帰りを待っていた方がいいわ」
「あんたは謙虚だな。……どこかの誰かみたいに自ら危険な事に平気で首を突っ込んだりしない。自分はレジスタンスのリーダーだ、だから行かなきゃならない。…本当に、無鉄砲なやつだった」
自然と出てきた文句をつらつらと並べていく。だが、その声は怒りや呆れよりも、相手を思いやるような憂いに似たものだった。
青年が誰と比べているのか。その人物には見当がついていた。青年の心を動かした女性。世界を敵に回してまで護りたいと思っていた人。
「……彼女?」
思わぬフレーズに青年は顔を上げた。その目は丸く見開いている。まるで今、思い出したかのように。普段、このような表情を見ることはできないので貴重だ。その反応に女はおもむろに眉尻を下げた。大事なその存在のことも曖昧にしか覚えていないのだろう。
「そうやって文句並べてるのに、ここに皺よってないもの」
女は自分の額に指をあてて、無邪気な笑みを浮かべた。皺ばかり寄せているから、いつまでも額の傷が治らないんだ。
ここの世界に居る戦士たちは皆、記憶を落としている。大切な人、大切な物。早く思い出せるといいのに。そう願うばかりだった。
「あんたは、どうしてバッツと?」
どうやら都合が悪くなったらしく、話題を擦りかえてきた。
あまりからかうと本当に機嫌が悪くなるので、あえてそれ以上は詮索せずに質問に答えることにした。
「……仕事帰りにバーに寄ったの。時々行く店だったんだけど、そこに見慣れない人がいた。それがバッツだった。気さくで、誰とでも楽しそうに話して、お酒作るのも上手いし。接客が上手な人ってああいう人のこと言うんだなーって思った。実は私もあまり話すの得意じゃないの。初対面だと特にね」
「意外だな。あんたは、普通に話しているように見えた」
「打ち解けたらそうでもないんだけど…それまでが大変。バッツのこともカウンター席から仕事ぶりを眺めてるだけだった。眩しい、輝いてるなーって。向こうからは良く話しかけてくれたんだけど、上手く話せてたかどうか」
当時の出来事を言葉に紡ぎながら振り返っていく。話の内容は覚えていないが、青年はいつも人懐こい笑顔を浮かべていた。
相槌を打つばかりで、向こうは何も楽しくなかったと思うと女は肩をすくめる。
知り合ったバーテンダーがまさかバッツ・クラウザーだとは思いもしなかった。これはあくまで内緒で、誰にもまだ話していないが。
ふと、ここで青年が大真面目な顔で女に問いかけてきた。
「……初恋がバッツだと聞いたが」
「スコールも知ってるのそれ?!というかねじ曲がってる!似た人、似てる人だから!」
「どちらも同じようなものだろ」
「違うってば!」
「今は好きなんだろ。あんたの態度を見ていればわかる、とジタンが言っていた」
恋愛に疎い青年がここまで気づいている。それほどまでに自分の態度はバレバレなのか、隠しているつもりだった。が、どうやら全てジタンから吹き込まれたようだ。まさかこの青年を使ってかまをかけてくるとは油断していた。
顔を真っ赤にした女は両手で顔を覆う。
「…少なくとも、向こうは好意を抱いているようだ」
「それ誰にでもでしょ」
「フラグクラッシャーだもの」と女は膝を抱えて呟いた。作中で数々のおいしいイベントフラグをことごとく壊してきたのだ。王女様をゴブリンから救った時もそのまま護衛につくのかと思いきや、一人旅を続けると言い出す旅人だ。自由すぎると突っ込みを入れたくもなる。
それに対して青年は何も言い返せない。八方美人とまではいかないが、誰に対しても明るく接する性格は意図が掴みにくいのだ。
こうして二人で青年の話をしていたせいか、噂をすればなんとやら。宝探しから戻ってきた青年が大きな袋を肩に担いで戻ってきた。
片方の手を大きく振り、留守番二人組に満面の笑顔を向ける。二人はお互いに顔を見合わせ、苦笑いを一つ。
「ん、二人で何か話してたのか?」
「おかえり。バッツ達どんなお宝見つけたかなーって」
「ああ、今日は大漁なんだ。ジタンのやつも大喜びでさ」
今日の戦利品だと袋を地面におろし、紐で縛っていた口を開ける。袋の中にはわんさとお宝が詰まっていた。金銀財宝、王冠や指輪などアクセサリーが多いようだ。
その中を掻き分けてアクセサリを拾い上げ、「あ、これは違った」と独り言を呟く。ようやく目当ての品を拾い上げた青年は女に手を出すように言った。
小さな両手を差し出すと、その上に金のイヤリングが一対手渡される。ゆらゆらと揺れる青い小さなクリスタル。多面体にカットされた雫がきらきらと輝いていた。それを一目見て気に入った女が「これどうしたの」と尋ねる。
「これ見つけた時、キリカに似合いそうだと思ってさ。俺からのプレゼント」
照れなど一つも見せず、爽やかな笑顔を浮かべた青年。ここで少しは恥じらうような、思わせぶりな態度をとれば相手に伝わるというのに。無自覚なのか、何も考えていないのか。若獅子の青年もこれには溜息をついた。
だが、女の方はそれを気にした様子もなく純粋に喜んでいるようだった。
「ありがとう、バッツ。大事にするね」
花のような笑顔が見れた青年も大層嬉しそうにしていたという。
「お宝を探しに行こうぜ!」
メンバーのうち一人が盗賊を生業としていると行動もそうなることも多く。異世界からひょんなことで合流した女もその流れを何度か経験しているうちにそれが自然となっていった。
宝探しに赴くのは主に盗賊の少年と旅人の青年。単独行動を好む青年も稀にどちらかと交代することもある。だが、大概はこの青年と共に留守番をしていた。
クールな印象が強いこの青年。思っている事があっても易々と口には出さない。その為考えている事がわからず、いつも機嫌が悪いようにも見られていた。しかし、女が出会った時点で本来の性格がちらちらと見え隠れしていた。その事に気づいていたので、いつからなのか尋ねるチャンスを常々窺っていた。
「スコール。隣、いい?」
磨かれた青い硝子玉のような瞳が女を見上げた。「ああ」と短く応え、止めていた手を動かす。青年は武器の手入れを特に欠かさない人だった。
邪魔はしないからと隣に腰を下ろし、その作業をしばらくの間観察していた。そのうちに質問するのも忘れていた。
「見ていて楽しいか」
「……あ。スコールの武器、みんなとは違って変わってるから。つい眺めちゃった」
「話があるから来たんじゃないのか」
「話し相手になってくれるの?」
意外な返事に驚きを隠せない。ついそう返してしまうと、青年は手元から目を離さずに作業を続けていた。機嫌を損ねてしまったかと心配になるも、ようやく青年の返事が聞こえた。思わず女は笑みを零す。
「俺は話すのが得意じゃない」
「その方が聞いてる方も疲れないわ」
自分は話すのが得意じゃないから、面白い話が出来ない、楽しくない。そういう意味合いで言ったのだろう。自虐的な所はガーデンを出るまでの頃と同じようだった。
それに対して「お喋りな人とは話を合わせるのが大変よね」と自分の経験を交えて話す女に青年が頷いてみせた。
「お宝探し、なにか見つかるかしら」
「さあな。あんたも行ってくれば良かったんじゃないか」
「私は自分を守る術がないからお荷物になっちゃうもの」
宝探しには危険がつきもの。地形に足を取られたり、敵と戦うこともある。武術や剣術、ましてや魔法も使えないただの一般人にはリスクが高すぎる。
一緒についていけば必ず足手まといになる。行きたいと言えば断りはされないだろうが、女は自ら同行を拒否していた。
「あの二人なら喜んでボディーガードを引き受けそうだがな」
「ジタンが率先して庇ってくれそうね」
レディーファースト精神の少年は女の子を敵の攻撃から『かばう』というスキルが特化していた。しかしながら、女の子だけをかばうものだ。
もう一人の旅人も同じスキルを持ち合わせているが、こちらは誰がピンチに陥ってもかばってくれる。もしナイト姿の彼に窮地を助けてもらったら、間違いなく惚れてしまう。その様を思い浮かべただけで女の頬は紅をさした。もはやカッコイイの一言では表せない。
「でも、私のせいで二人が傷を負うのは嫌だもの。大人しく帰りを待っていた方がいいわ」
「あんたは謙虚だな。……どこかの誰かみたいに自ら危険な事に平気で首を突っ込んだりしない。自分はレジスタンスのリーダーだ、だから行かなきゃならない。…本当に、無鉄砲なやつだった」
自然と出てきた文句をつらつらと並べていく。だが、その声は怒りや呆れよりも、相手を思いやるような憂いに似たものだった。
青年が誰と比べているのか。その人物には見当がついていた。青年の心を動かした女性。世界を敵に回してまで護りたいと思っていた人。
「……彼女?」
思わぬフレーズに青年は顔を上げた。その目は丸く見開いている。まるで今、思い出したかのように。普段、このような表情を見ることはできないので貴重だ。その反応に女はおもむろに眉尻を下げた。大事なその存在のことも曖昧にしか覚えていないのだろう。
「そうやって文句並べてるのに、ここに皺よってないもの」
女は自分の額に指をあてて、無邪気な笑みを浮かべた。皺ばかり寄せているから、いつまでも額の傷が治らないんだ。
ここの世界に居る戦士たちは皆、記憶を落としている。大切な人、大切な物。早く思い出せるといいのに。そう願うばかりだった。
「あんたは、どうしてバッツと?」
どうやら都合が悪くなったらしく、話題を擦りかえてきた。
あまりからかうと本当に機嫌が悪くなるので、あえてそれ以上は詮索せずに質問に答えることにした。
「……仕事帰りにバーに寄ったの。時々行く店だったんだけど、そこに見慣れない人がいた。それがバッツだった。気さくで、誰とでも楽しそうに話して、お酒作るのも上手いし。接客が上手な人ってああいう人のこと言うんだなーって思った。実は私もあまり話すの得意じゃないの。初対面だと特にね」
「意外だな。あんたは、普通に話しているように見えた」
「打ち解けたらそうでもないんだけど…それまでが大変。バッツのこともカウンター席から仕事ぶりを眺めてるだけだった。眩しい、輝いてるなーって。向こうからは良く話しかけてくれたんだけど、上手く話せてたかどうか」
当時の出来事を言葉に紡ぎながら振り返っていく。話の内容は覚えていないが、青年はいつも人懐こい笑顔を浮かべていた。
相槌を打つばかりで、向こうは何も楽しくなかったと思うと女は肩をすくめる。
知り合ったバーテンダーがまさかバッツ・クラウザーだとは思いもしなかった。これはあくまで内緒で、誰にもまだ話していないが。
ふと、ここで青年が大真面目な顔で女に問いかけてきた。
「……初恋がバッツだと聞いたが」
「スコールも知ってるのそれ?!というかねじ曲がってる!似た人、似てる人だから!」
「どちらも同じようなものだろ」
「違うってば!」
「今は好きなんだろ。あんたの態度を見ていればわかる、とジタンが言っていた」
恋愛に疎い青年がここまで気づいている。それほどまでに自分の態度はバレバレなのか、隠しているつもりだった。が、どうやら全てジタンから吹き込まれたようだ。まさかこの青年を使ってかまをかけてくるとは油断していた。
顔を真っ赤にした女は両手で顔を覆う。
「…少なくとも、向こうは好意を抱いているようだ」
「それ誰にでもでしょ」
「フラグクラッシャーだもの」と女は膝を抱えて呟いた。作中で数々のおいしいイベントフラグをことごとく壊してきたのだ。王女様をゴブリンから救った時もそのまま護衛につくのかと思いきや、一人旅を続けると言い出す旅人だ。自由すぎると突っ込みを入れたくもなる。
それに対して青年は何も言い返せない。八方美人とまではいかないが、誰に対しても明るく接する性格は意図が掴みにくいのだ。
こうして二人で青年の話をしていたせいか、噂をすればなんとやら。宝探しから戻ってきた青年が大きな袋を肩に担いで戻ってきた。
片方の手を大きく振り、留守番二人組に満面の笑顔を向ける。二人はお互いに顔を見合わせ、苦笑いを一つ。
「ん、二人で何か話してたのか?」
「おかえり。バッツ達どんなお宝見つけたかなーって」
「ああ、今日は大漁なんだ。ジタンのやつも大喜びでさ」
今日の戦利品だと袋を地面におろし、紐で縛っていた口を開ける。袋の中にはわんさとお宝が詰まっていた。金銀財宝、王冠や指輪などアクセサリーが多いようだ。
その中を掻き分けてアクセサリを拾い上げ、「あ、これは違った」と独り言を呟く。ようやく目当ての品を拾い上げた青年は女に手を出すように言った。
小さな両手を差し出すと、その上に金のイヤリングが一対手渡される。ゆらゆらと揺れる青い小さなクリスタル。多面体にカットされた雫がきらきらと輝いていた。それを一目見て気に入った女が「これどうしたの」と尋ねる。
「これ見つけた時、キリカに似合いそうだと思ってさ。俺からのプレゼント」
照れなど一つも見せず、爽やかな笑顔を浮かべた青年。ここで少しは恥じらうような、思わせぶりな態度をとれば相手に伝わるというのに。無自覚なのか、何も考えていないのか。若獅子の青年もこれには溜息をついた。
だが、女の方はそれを気にした様子もなく純粋に喜んでいるようだった。
「ありがとう、バッツ。大事にするね」
花のような笑顔が見れた青年も大層嬉しそうにしていたという。