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無自覚な踊り子
情熱の赤を纏った蝶がひらひらと舞い踊っていた。
その蝶が珍しい物のようにジタンとスコールは少し離れた場所で見ている。
荷物整理を終えたキリカはテントの外へ出ると、青空の下よく映える赤い蝶がくるくると舞っていることに気がついた。
襟のついた赤いシャツ。それは裾を捲りあげて腹部で結んでいる。腰回りの筋肉が露わになった上に胸元も肌蹴ていた。両腕に嵌めた金の腕輪が動きに合わせて躍る。漆黒のスラックスに足元も同じ色の靴。腰には緑のスカーフを長く垂らしている。紛れもない、バッツの踊り子の衣装だった。
元々この衣装はカッコイイという理由でキリカは元来気に入っていた。
しかしだ。実際に見てみるとかなりあれだ。フェロモンを振り巻いているというか、溢れだす色気というか。
目のやり場に困る衣装だと今さら気づいたのである。
「スコール、バッツのあれどうしたの」
「さあな」
「急に着替えて踊りだしたんだよ。まあ、でもあの衣装カッコイイよなー」
「そ、そうだね。かっこい…」
真剣な表情で踊るバッツは確かにかっこいい。観客席を意識した流し目は女性ならばときめいてしまう代物だ。事実、キリカの心拍数はバクバクと高鳴っていた。
この胸の高鳴りは一体なに。普段と違う一面を見たせいかしら。ああ、うん、カッコイイ。
恋にも似たときめきさえ覚えていた。
ぽーっとハートが飛び交っているのが見えそうだった。それほど目が釘付けになっている。スコールはキリカの両目を片手で遮り、視界に赤い蝶が入らないようにする。
「あまり見つめていると厄介なことになるぞ」
「う、うん。…もはやなってる気もする」
「あれで敵を翻弄しながら戦うんだろ?すげえよな」
「……ふ、二人はバッツを見てて何ともないの?」
この時、冷静さを失っていたキリカは変な質問をしてきた。スコールの手をどけ、なるべくバッツの方を見ないようにする。
自分はこんなにもドキドキしているのに、二人は全く何も感じていないのか。
スコールは眉間に皺を思い切り寄せ、ジタンは苦々しく顔をしかめる。
「……男に魅了はされたくないな」
「右に同じく」
「だ、だって!あの真剣な眼差しや、身のこなしとか…あの服だって似合ってるし」
彼の良さを必死にアピールしたものの、ジタンとスコールは顔を見合わせて「これはマズイな」と真顔で頷きあった。
ジタンがキリカの両肩をがしりと掴み、鬼気迫るように説得を始める始末だ。
「キリカ、落ち着け。バッツがカッコイイのはわかるが、とりあえず冷静になるんだ」
「落ち着いてるつもり、なんだけど…うう」
「完全にやられてるようだな。しばらく別の場所で休んだ方が、」
原因を視界にさえ入れなければ、次第に落ち着きを取り戻すはず。どこか彼が見えない場所へと促したスコールだが、その前にバッツが戻ってきてしまった。
キリカの視界に美しい赤い蝶が映された。間近で見る逞しい筋肉。空気に晒されたそれにきらりと輝く汗。フェロモン全開のバッツを前にしたキリカは一気に頬を紅潮させた。
「いやー久々に踊った。どうだった俺の華麗な踊り」
「あ、えっと…ううんと」
爽やかな笑みを浮かべるバッツにしどろもどろになる。
直視ができない。全身が痺れるような感覚、心臓が爆発してしまいそうな胸元をぎゅっと掴んだ。
ここでキリカの異変に気が付いたバッツは小首をかしげた。
「…キリカ、耳まで真っ赤だけど、大丈夫か?熱あるんじゃないのか」
「ふぇっ!?」
バッツは己の額をキリカの額にぴたりと寄せる。あまりの不意打ちにキリカは奇声を上げてしまう。
「んー……やっぱ熱い。横になってた方がいいんじゃないか?テントまで連れてってやるよ」
「だっ、大丈夫!!何ともないから!うん!」
「ならいいけど…どうしたんだ?なんか変だぞ」
無自覚とは本当に恐ろしいものだ。と、後にジタンは語っていた。
服にこもった熱気を逃がそうと襟元をパタパタさせる踊り子。「あっちー。水浴びしてくっかなー」
その行動にまた打撃をくらったキリカはたまらず走り出した。捨て台詞を残して。
「バッツのばかああああ!」
「え、ちょっ…俺なんかした?!」
身に覚えのない罵声を受け、ジタンとスコールに尋ねる。すると二人はうんと頷いた。
スコールは班長として一つの命令をバッツに下した。
「むやみやたらにそれを着るのと色目使用を禁止とする」
情熱の赤を纏った蝶がひらひらと舞い踊っていた。
その蝶が珍しい物のようにジタンとスコールは少し離れた場所で見ている。
荷物整理を終えたキリカはテントの外へ出ると、青空の下よく映える赤い蝶がくるくると舞っていることに気がついた。
襟のついた赤いシャツ。それは裾を捲りあげて腹部で結んでいる。腰回りの筋肉が露わになった上に胸元も肌蹴ていた。両腕に嵌めた金の腕輪が動きに合わせて躍る。漆黒のスラックスに足元も同じ色の靴。腰には緑のスカーフを長く垂らしている。紛れもない、バッツの踊り子の衣装だった。
元々この衣装はカッコイイという理由でキリカは元来気に入っていた。
しかしだ。実際に見てみるとかなりあれだ。フェロモンを振り巻いているというか、溢れだす色気というか。
目のやり場に困る衣装だと今さら気づいたのである。
「スコール、バッツのあれどうしたの」
「さあな」
「急に着替えて踊りだしたんだよ。まあ、でもあの衣装カッコイイよなー」
「そ、そうだね。かっこい…」
真剣な表情で踊るバッツは確かにかっこいい。観客席を意識した流し目は女性ならばときめいてしまう代物だ。事実、キリカの心拍数はバクバクと高鳴っていた。
この胸の高鳴りは一体なに。普段と違う一面を見たせいかしら。ああ、うん、カッコイイ。
恋にも似たときめきさえ覚えていた。
ぽーっとハートが飛び交っているのが見えそうだった。それほど目が釘付けになっている。スコールはキリカの両目を片手で遮り、視界に赤い蝶が入らないようにする。
「あまり見つめていると厄介なことになるぞ」
「う、うん。…もはやなってる気もする」
「あれで敵を翻弄しながら戦うんだろ?すげえよな」
「……ふ、二人はバッツを見てて何ともないの?」
この時、冷静さを失っていたキリカは変な質問をしてきた。スコールの手をどけ、なるべくバッツの方を見ないようにする。
自分はこんなにもドキドキしているのに、二人は全く何も感じていないのか。
スコールは眉間に皺を思い切り寄せ、ジタンは苦々しく顔をしかめる。
「……男に魅了はされたくないな」
「右に同じく」
「だ、だって!あの真剣な眼差しや、身のこなしとか…あの服だって似合ってるし」
彼の良さを必死にアピールしたものの、ジタンとスコールは顔を見合わせて「これはマズイな」と真顔で頷きあった。
ジタンがキリカの両肩をがしりと掴み、鬼気迫るように説得を始める始末だ。
「キリカ、落ち着け。バッツがカッコイイのはわかるが、とりあえず冷静になるんだ」
「落ち着いてるつもり、なんだけど…うう」
「完全にやられてるようだな。しばらく別の場所で休んだ方が、」
原因を視界にさえ入れなければ、次第に落ち着きを取り戻すはず。どこか彼が見えない場所へと促したスコールだが、その前にバッツが戻ってきてしまった。
キリカの視界に美しい赤い蝶が映された。間近で見る逞しい筋肉。空気に晒されたそれにきらりと輝く汗。フェロモン全開のバッツを前にしたキリカは一気に頬を紅潮させた。
「いやー久々に踊った。どうだった俺の華麗な踊り」
「あ、えっと…ううんと」
爽やかな笑みを浮かべるバッツにしどろもどろになる。
直視ができない。全身が痺れるような感覚、心臓が爆発してしまいそうな胸元をぎゅっと掴んだ。
ここでキリカの異変に気が付いたバッツは小首をかしげた。
「…キリカ、耳まで真っ赤だけど、大丈夫か?熱あるんじゃないのか」
「ふぇっ!?」
バッツは己の額をキリカの額にぴたりと寄せる。あまりの不意打ちにキリカは奇声を上げてしまう。
「んー……やっぱ熱い。横になってた方がいいんじゃないか?テントまで連れてってやるよ」
「だっ、大丈夫!!何ともないから!うん!」
「ならいいけど…どうしたんだ?なんか変だぞ」
無自覚とは本当に恐ろしいものだ。と、後にジタンは語っていた。
服にこもった熱気を逃がそうと襟元をパタパタさせる踊り子。「あっちー。水浴びしてくっかなー」
その行動にまた打撃をくらったキリカはたまらず走り出した。捨て台詞を残して。
「バッツのばかああああ!」
「え、ちょっ…俺なんかした?!」
身に覚えのない罵声を受け、ジタンとスコールに尋ねる。すると二人はうんと頷いた。
スコールは班長として一つの命令をバッツに下した。
「むやみやたらにそれを着るのと色目使用を禁止とする」