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midnight
私は体の自由が利かないことで目を覚ました。今夜目が覚めるのはこれで何度目だろうか。
まどろみの中寝返りを打とうとするのだけど、上手くいかない。私の目の前に何かあることに気が付いた。抱き枕にしてはでかい。そっと触れてみると、自分よりも高い体温にとくとくと生命の証である鼓動が伝わってきた。
寝ぼけていた私の頭はここでようやく再起動を完了。私の横に居るのがバッツ・クラウザーだという事もやっと認識したのも束の間。悲鳴を上げそうになったが、慌てて口を押さえて静寂を保つ。ちらとバッツの顔を見上げれば起きる様子はなさそうだった。
ちょっと待って。冷静になるのよ。どうして私がバッツと一緒に寝ているの。確か、夜中に目が覚めてバッツと焚火の前で話をしていた。そこまでは覚えている。そのあと、私は……そうだ、子どもみたいに泣きじゃくって疲れて寝てしまったんだ。
それにしても、なんで隣にいるの。しかも人を抱き枕のごとく抱きしめながら。バッツの子ども体温が少し熱い。冷え性の私でも流石に二人分の体温は熱い。
この男、人があたふたとしているのにスースー寝息を立てて寝ている。心拍数が上がるのはこちらばかり。それが段々悔しくなってきたので、鼻を抓んでみた。数分経過しても特に変化は見られない。ああ、そうだった。七分潜水できる人だった。数分の息止めなんて軽いわね。
私は自分がしていることが虚しくなったので、バッツの腕から逃れようと身じろぎをする。しかし、がっちりホールドされてて全然解けない。胴体に絡みついている腕をどけようとしたのもダメ。じゃあいっそのこと輪っかをくぐるように抜ければ。そうやってもそもそ動いたのがいけなかった。
私を拘束する両腕がさらに締め付けてきた。さっきまであったバッツとの僅かな隙間がぴったりと埋まる。いわゆる密着状態というやつ。
逞しい胸板、くっきり浮かぶ鎖骨、太い首。こうして見ると改めて男らしい一面に鼓動が増していく。寝顔をしばらくぼうっと眺めていると、うっすらその瞳が開いた。
「……そんなに見つめられると照れるだろ」
「おっ起きてたの」
「んー…ねみい。まだ日ものぼってないだろ…朝になったらまた起こして」
よほど眠いのかバッツは眠そうに瞬きをして、すうっと眠りに入ろうとした。
ちょっと、その前に離して。
「バッツ。ねえ、バッツ」
「ん」
「…そろそろ離してほしいんだけど」
彼が身をよじったりして動きを見せたが、結局私の腰に回ってる腕の位置が微妙に変わっただけ。
これは寝ぼけている。どう言っても聞いてくれないかもしれない。そうだとしたらかなり厄介。
無理やりにでも振りほどこうか。でも、そうしたら雨に濡れた子犬みたいな目で訴えてくるだろう。それを宥める方がもっと面倒くさい。
うんうん悩んでいる私の耳元にバッツの声が聞こえた。至近距離すぎて、吐息も混ざってくすぐったい。
「キリカ」
「…なに?」
「キスしたい」
「は!?」
「だめ?」
そんな可愛らしい声でねだられても、困る。本当に困る。
生憎、私たちはそういう甘い関係じゃないのよ。恋人じゃないんだから。
「だ、駄目に決まってるでしょ!そーいうのは気軽にしていいものじゃないんだから!」
気のせいかな。今舌打ちが聞こえた気がする。
それからしばらく黙っているものだから、機嫌を損ねたのかとそっとバッツの顔を見上げた。
彼は目を開けていて、私の方を見ていた。この状態だとお互い顔が見づらいものがある。
そういえば眠いんじゃなかったの。それにしてはバッツの声は起床時と同じトーン。
「なあ、さっき聞きそびれたんだけどさ」
「う、ん」
さっきって数時間前の話のことか。思えば他人事なのに、ぼろぼろ泣いてしまって恥ずかしい。
そもそもそれのせいでこんなことになっているんだ。今度から気を付けないと。
けれど、本当にあの時は悲しかった。僅かに残った彼の記憶の中には何が残っているんだろう。
「キリカって恋人いるのか」
「いない」
「好きな男は」
「……いる」
「じゃあ片思いなんだ」
「うん」と私は頷いた。目の前に居る相手がそうだ、なんて言えやしない。
バレませんようにと小さな祈りを捧げた。
「どんなやつ?」
「どんなって……私が思っていたよりも明るい性格で、自由で……相変わらず、風みたいな人」
「ふーん。…それなら俺も負けてないと思うんだけどな」
「え?」
「なんでもない。よし、質問タイム終わり!ほら、早く寝ようぜ。寝坊したらスコールにどやされちまう」
この状態で寝ろっていうの。きっと朝まで眠れないわ。さっきから心臓が幾つあっても足りないぐらいなのよ。
そうごねるとバッツが眠くなるおまじないとやらをしてくれた。ただ、羊じゃなくてチョコボを数えていくやつだけど。
そんなので眠れるかなと疑っていたけど、チョコボを数える優しい声のおかげで眠りにつくことができた。
途中からチョコボじゃなくてボコになっていた。相棒のことは覚えているのかもしれない。
私は体の自由が利かないことで目を覚ました。今夜目が覚めるのはこれで何度目だろうか。
まどろみの中寝返りを打とうとするのだけど、上手くいかない。私の目の前に何かあることに気が付いた。抱き枕にしてはでかい。そっと触れてみると、自分よりも高い体温にとくとくと生命の証である鼓動が伝わってきた。
寝ぼけていた私の頭はここでようやく再起動を完了。私の横に居るのがバッツ・クラウザーだという事もやっと認識したのも束の間。悲鳴を上げそうになったが、慌てて口を押さえて静寂を保つ。ちらとバッツの顔を見上げれば起きる様子はなさそうだった。
ちょっと待って。冷静になるのよ。どうして私がバッツと一緒に寝ているの。確か、夜中に目が覚めてバッツと焚火の前で話をしていた。そこまでは覚えている。そのあと、私は……そうだ、子どもみたいに泣きじゃくって疲れて寝てしまったんだ。
それにしても、なんで隣にいるの。しかも人を抱き枕のごとく抱きしめながら。バッツの子ども体温が少し熱い。冷え性の私でも流石に二人分の体温は熱い。
この男、人があたふたとしているのにスースー寝息を立てて寝ている。心拍数が上がるのはこちらばかり。それが段々悔しくなってきたので、鼻を抓んでみた。数分経過しても特に変化は見られない。ああ、そうだった。七分潜水できる人だった。数分の息止めなんて軽いわね。
私は自分がしていることが虚しくなったので、バッツの腕から逃れようと身じろぎをする。しかし、がっちりホールドされてて全然解けない。胴体に絡みついている腕をどけようとしたのもダメ。じゃあいっそのこと輪っかをくぐるように抜ければ。そうやってもそもそ動いたのがいけなかった。
私を拘束する両腕がさらに締め付けてきた。さっきまであったバッツとの僅かな隙間がぴったりと埋まる。いわゆる密着状態というやつ。
逞しい胸板、くっきり浮かぶ鎖骨、太い首。こうして見ると改めて男らしい一面に鼓動が増していく。寝顔をしばらくぼうっと眺めていると、うっすらその瞳が開いた。
「……そんなに見つめられると照れるだろ」
「おっ起きてたの」
「んー…ねみい。まだ日ものぼってないだろ…朝になったらまた起こして」
よほど眠いのかバッツは眠そうに瞬きをして、すうっと眠りに入ろうとした。
ちょっと、その前に離して。
「バッツ。ねえ、バッツ」
「ん」
「…そろそろ離してほしいんだけど」
彼が身をよじったりして動きを見せたが、結局私の腰に回ってる腕の位置が微妙に変わっただけ。
これは寝ぼけている。どう言っても聞いてくれないかもしれない。そうだとしたらかなり厄介。
無理やりにでも振りほどこうか。でも、そうしたら雨に濡れた子犬みたいな目で訴えてくるだろう。それを宥める方がもっと面倒くさい。
うんうん悩んでいる私の耳元にバッツの声が聞こえた。至近距離すぎて、吐息も混ざってくすぐったい。
「キリカ」
「…なに?」
「キスしたい」
「は!?」
「だめ?」
そんな可愛らしい声でねだられても、困る。本当に困る。
生憎、私たちはそういう甘い関係じゃないのよ。恋人じゃないんだから。
「だ、駄目に決まってるでしょ!そーいうのは気軽にしていいものじゃないんだから!」
気のせいかな。今舌打ちが聞こえた気がする。
それからしばらく黙っているものだから、機嫌を損ねたのかとそっとバッツの顔を見上げた。
彼は目を開けていて、私の方を見ていた。この状態だとお互い顔が見づらいものがある。
そういえば眠いんじゃなかったの。それにしてはバッツの声は起床時と同じトーン。
「なあ、さっき聞きそびれたんだけどさ」
「う、ん」
さっきって数時間前の話のことか。思えば他人事なのに、ぼろぼろ泣いてしまって恥ずかしい。
そもそもそれのせいでこんなことになっているんだ。今度から気を付けないと。
けれど、本当にあの時は悲しかった。僅かに残った彼の記憶の中には何が残っているんだろう。
「キリカって恋人いるのか」
「いない」
「好きな男は」
「……いる」
「じゃあ片思いなんだ」
「うん」と私は頷いた。目の前に居る相手がそうだ、なんて言えやしない。
バレませんようにと小さな祈りを捧げた。
「どんなやつ?」
「どんなって……私が思っていたよりも明るい性格で、自由で……相変わらず、風みたいな人」
「ふーん。…それなら俺も負けてないと思うんだけどな」
「え?」
「なんでもない。よし、質問タイム終わり!ほら、早く寝ようぜ。寝坊したらスコールにどやされちまう」
この状態で寝ろっていうの。きっと朝まで眠れないわ。さっきから心臓が幾つあっても足りないぐらいなのよ。
そうごねるとバッツが眠くなるおまじないとやらをしてくれた。ただ、羊じゃなくてチョコボを数えていくやつだけど。
そんなので眠れるかなと疑っていたけど、チョコボを数える優しい声のおかげで眠りにつくことができた。
途中からチョコボじゃなくてボコになっていた。相棒のことは覚えているのかもしれない。